「イラン」・「ミサイル」を巡る米・露「急接近」
2009年 03月 03日
オバマ氏は「ミサイル東欧配備」を放棄か?
山上 真
3月3日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙に依れば、オバマ米大統領は、3週間前にロシア大統領メドヴェージェフ氏に秘密書簡を送り、
「もしモスクワが、イランの長距離ミサイル開発を阻止することに協力してくれるなら、米国のミサイル防御システム・東欧配備を中止する用意がある」
と伝えたと云う。
そこには、
「もしイランが核弾頭や弾道ミサイルを製造する努力を止めるなら、ロシアが強く反対しているミサイル迎撃システムを米国が進める必要はない」とも付け加えている。
この書簡に対して、未だモスクワからの回答はないが、ラヴロフ外相は、ジュネーヴでクリントン国務長官に会った際に「何か」を言ったようだ。オバマ氏はメドヴェージェフ大統領と、4月2日にロンドンで初めて会談することになっている。
米国とロシアの関係は、ブッシュ政権時代、この米国ミサイル東欧配備計画と、去年の「南オセチア・グルジア戦争」が元で、冷戦復活の様相を呈していた。
オバマ新大統領就任直後に送られて来たメドヴェージェフ大統領の「祝賀の手紙」への返事の形で出されたオバマ書簡は、バイデン副大統領の言葉を使えば、’press the reset button’ (仕切り直し)の為の努力ということになる。
オバマ書簡は、今年期限切れを迎える「戦略兵器制限協定」を延長することや、アフガニスタンへの物資運搬ルート開設の協力の件にも触れている。
これ迄、国内の反対を押し切って、米国ミサイルの受け入れを決めたポーランドとチェコの指導者たちは、今度の、彼らの頭越しの米露接近の動きによって苦境に立たされることになる。彼らは米国に対して、代償を要求することであろう。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、先の日曜日(3月1日)に、メドヴェージェフ大統領が モスクワ紙 ‘Kommersant’ のインタヴューで述べた言葉で、記事を結んでいる。
「我々は、米国の友人たちから前向きの合図を貰っている。この合図が具体的提案になると期待している。バラック・オバマ氏との最初の会談で、ヨーロッパにとって重要なこの問題を論じることを希望している」
この報道を伝えているのは、これまでの所、米国以外では、フランスだけで、英国は全く触れずにいる。メディア、政治面を含めた英国とロシアの関係が未だ冷えきっている証左であろうか。 (2009.03.03)
ラブロフ外相とクリントン国務長官
<追記> 3 月6日ジュネーヴで、米クリントン国務長官と、ロシア・ラヴロフ外相が会談し、両国の最優先課題として、「戦略兵器削減条約」の新たな締結の為の交渉を開始することに合意した。これは、双方の核弾頭、ミサイル・爆撃機の大幅削減を目指すものである。
一方、NATO理事会は、アフガン問題などでロシアとの接触を再開することに合意した。
<写真> Le Figaro, Google 'University of Texas Libraries'、BBC News 掲載 のもの
by shin-yamakami16
| 2009-03-03 22:52