中南米に衰えぬ変革の嵐
2009年 03月 20日
エルサルバドルにも左翼政権誕生
山上 真
去る3月16日、中米の小国エルサルバドルに新たな左派政権が誕生した。
1959年のキューバ革命から数えて、中南米で11番目の、国民の選挙による左翼政権の成立である。
前テレビ記者のF.M.L.N.マウリシオ・フネス氏は、国民共和同盟(Arena) ロドリゴ・アヴィラ氏(国家警察長官)に対して、51.3% 対 48.7% の得票差で大統領に選ばれた。
勝利したマルクス主義F.M.L.N.(Farabundo Marti Nationalist Front) は12年間に渉って、親米・軍事政権に対するゲリラ闘争を組織し、75,000人の犠牲者を出したが、1992年の内戦終結の協定成立後は、議会を通した変革の道を選び、今回は20年間のその努力が漸く実ったものである。
米国オバマ氏に倣って、 4期に渉る長期保守政権からの‘CHANGE’ を国民に訴えてきたフネス氏は、 ‘Yes, We Could’ と歓呼して党旗を振り、車の警笛を鳴らす群衆の前で勝利宣言を行い、世界規模の経済不況下の「国民の団結」を呼びかけた。
「左翼・革新」政権樹立の国々
中南米の変革を呼び起こす動因としては、米国流「新自由主義」による貧困と不平等の拡大が擧げられ、「市場原理主義」に基づく民営化路線の歪みを見直すことが新政権の主要な政策になっているが、フネス氏は、「穏健路線」のブラジル・ルラ大統領に倣い、米国系企業接収、国有化などのベネズエラ大統領・チャベス氏の「社会主義」路線を採らないことを明確にしている。そして、米国・オバマ政権との友好関係を強調している。
嘗ては「米国の裏庭」と呼ばれたラテン・アメリカでの相次ぐ革新政権誕生は、「孤立したキューバ」の存在しかなかった数十年間前の状況からすれば、誠に隔世の感がある。キューバ革命成就後、ラテン・アメリカの新たな変革を夢見て、ボリビアの渓谷にその命を散らせたチェ・ゲバラの思想が、現在に至って漸く具現されつつあるかのようだ。
今では、FOX Radioに言わせれば、米国自体が「社会主義」に向かおうとしているのである。確かに、オバマ氏の唱える「変化」が、世界的に起きている。
(2009.03.20)
<写真> The New York Times, Le Monde, The Independent, Wikipedia
by shin-yamakami16
| 2009-03-20 13:22