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by shin-yamakami16

米英の「イラク侵攻」から6年

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苦難の中のイラク民衆とブッシュ・ブレアの「戦争責任」

                         山上 真
 
 2003年3月下旬に開始された米国・英国によるイラク侵攻から、早くも6年が経過した。戦争が終結した後も、激しい抵抗が続き、更には、新たに進入したアルカイダなどによるテロ攻撃が加わった。
 この間に、イラク人は少なくとも65万人、侵攻軍約4,600人が犠牲となった。(英国医学誌LANCET発表)
 

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 米国ブッシュ政権と英国ブレア政権は、「サダム・フセインが大量破壊兵器によって西欧を危機に晒している」からという何の根拠も無い理由を大げさに喧伝して、戦争に踏み切った。証拠がないと分かると、今度は、「サダムは独裁者だから打倒に値する」という理由に切り替えた。しかし、世界には他に幾人もの独裁者がいるのに、侵攻まですることはなかった。

 このような恣意的な侵略行為によって、平穏な生活を営んでいたイラク民衆は激しい戦火に晒され、生活基盤を奪われた。100万人以上の人々が国外に脱出することを余儀なくされた。

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 現在もなお、爆弾テロが続いている。この3月中に限っても、9日バグダッド東部警察学校で30人死亡。57人負傷、10日アブグレイブで33人死亡。46人負傷、11日バグダッド中心部で47人死亡。29日バグダッド中心部で、米国・イラク軍がスンニ派民兵と交戦し、4人死亡、15人負傷といった具合だ。
 
 現在のイラク民衆の生活状態について、英国紙『インディペンデント』(3月24日付)は、米英侵攻直後にバグダッドを逃れてロンドンに滞在していたイラク人記者が、帰国してルポする形で、現地の実情を紹介している。
 
 「嘗ては小型ミサイルの攻撃が心配されたバグダッド国際空港も、今は何の障害もなく、無事に着き、期待に胸が膨らんだのだが、両親の住む自宅に着いて直ぐに知ったのが、従兄弟と、近隣の友人が、何者かによって射殺されたという話だった」
 「生活面の不自由については、先ず、水道水がそのまま飲めず、煮沸したものを冷まして飲んでいること、気温が50度にもなると、水道がよく止まるので、溜めておかなければならないことであった」
 「食物では、新鮮な野菜、果物が手に入りにくく、食料品店に行っても何も無いことがよくある。有った時でも、昔とは較べようがなく、例えば、オレンジ10個が、英国では1ポンドなのに、ここでは、7ポンド(約1000円)する」

 「最も衝撃的なことは、自宅近くでも、嘗て通った大学でも、『どんな人のことも、他人に何も言うな。もし何かしゃべると、殺される』と告げられたことだった。サダム・フセイン時代には、サダムの悪口を言う自由は確かになかったが、今ではどんな事も言えず、昔より不自由になっていることだった」


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 これが、ブッシュ・ブレアが自慢していた「イラクの民主化」だとすれば、正に噴飯ものでしかない。彼らは、イラク民衆に与えた、想像を絶する苦難についての責任を取らなければ、それこそ不条理と言っていいだろう。

 イラクが、その埋蔵量でサウジ・アラビアと並んで誇る石油も、採掘施設の老朽化と、スタッフ不足、更には、数年前に1バレル150ドルだったものが、現在は50ドルに暴落したことが、マリキ政権と米国が目論む国家再建計画に重くのしかかっていると云う。
 米国オバマ政権も、「アフガニスタン」を抱え、撤兵計画を遂行することが精一杯で、とてもイラク再建に大規模援助をする余裕はない。

 日本のメディアも「イラク戦争6周年」の特集をやっていたが、例えばNHKがニュース番組で頻繁に、「イラクではテロも月に1、2回程度で、落ち着いて来ている」などという誤報をやる一方、歌手の踊りや、賑やかな街角風景を映して、「長閑さ」を殊更強調して見せていたが、どだい「疑心暗鬼」に囚われたイラク社会深層に迫るような取材の力量は、期待する方が無理なのだろうか。
 新聞社説も、『毎日』の「大甘な」ものを初めとして、NHKの報道姿勢と大同小異であった。そんな中で、『東京新聞』の社説が、米・英の「開戦責任」を厳しく追及していたのが印象的であった。

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             ロンドンの反戦デモ


 米国では、オバマ政権成立後初めて、「イラク・アフガン戦争」反対を唱え、米軍の即時撤退を求めるデモが、数千人規模で展開された。考えてみれば、「イラク戦争反対」だったオバマ氏は、未だ、国家指導者として、イラクでの米国の戦争行為についての謝罪を行っていないのではないか。いずれ、その時が来ると信じている。

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 率直に言って、私は、侵略によって他国の民衆に塗炭の苦しみを舐めさせたブッシュ・ブレア両氏は、旧ユーゴのミロシェヴィッチと同様に、戦争犯罪の容疑でハーグの国際司法裁判所で裁かれるべきだと思う。大国がやる事は、咎められることなく、何でも罷り通るとしたら、国際正義など無いと同然だ。  
                            (2009.03.31)

 

<写真> The Independent, Libération, The Guardian, Washington Post
by shin-yamakami16 | 2009-03-31 08:13 | Comments(0)