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by shin-yamakami16

アフガン英国軍「即時撤退」支持・過半数に及ぶ

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タリバンとの「和平交渉」具体化へ

                              山上 真

 7月28日の英国『インディペンデント』紙によると、英国民大多数はアフガニスタンでの戦争に勝てないと思っており、英国軍の即時撤退を求めていることが分かった。

 この世論調査結果は、7月13日の『ガーディアン』紙のもの、即ち、国民の間で、アフガン戦争への英国軍派遣の支持・不支持が46%対47%で、ほぼ拮抗しているという結果とはかなり異なるものだ。

 英国民の52%が直ちに軍をアフガンから引き揚げることを望み、実に58%の人々は、タリバンとの戦争に勝利不可能としているのだ。


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 この大変化を生んだ動因は、明らかに、この7月中の英国兵戦死者が22人に及んだという厳粛な事実であることは疑いない。その多くが、南部ヘルマンド州での ‘Operation Panther’s Claw’ (豹の爪作戦)中に、タリバンが敷設した路傍爆弾などで死亡した。

 2週間毎に、8名或は4名の戦死者の車列が、英国空軍基地から南西部Wootton Bassettの町を粛々と通過するのを大勢の人々が見送る場面をTVなどで目にしている英国民は、否応なく戦争の酷薄なリアリティを思い知らされている。


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 ブラウン首相はしきりに、英国兵のアフガンでの戦闘が、英国本土でのテロを防ぐのに役立っていると強弁するのだが、遥か彼方での夥しい自国軍戦死者の悲劇を説明するには、根拠薄弱だと思われても仕方ない。

 ミリバンド外相は最近、ブリュッセルのNATO本部での演説で、アフガン政権がタリバンのパシュトン人を中心とする穏健派グループとの和平交渉を進めていることに支持表明している。軍事作戦と並行して、アルカイダ系と異なる多数派タリバンを政権側に近づける企てを支える構えだ。

 上記『インディペンデント』紙の7月28日付社説も、「我々はタリバンとの対話を恐れるべきではない」として、カルザイ政権が既に始めているタリバンとの休戦交渉を支持し、この方向への英国ブラウン政権の積極的イニシアチブを求めている。


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                サイモン・ジェンキンズ氏


 更には、7月29日付『ガーディアン』紙上で、著名な評論家・作家Simon Jenkins 氏が、「敗北を知らせるサイレンが、アフガニスタンでのブレアの虚栄に満ちた聖戦に対して、鳴り響いている」という長文の論説を掲載している。そこで同氏は、米国ブッシュ氏と共に、恰好よく「テロとの戦争」に乗り出したブレア前首相の自惚れた戦争が、過去に英国が遂行した帝国主義戦争と殆ど変わることなく、惨めな敗北を待つだけという本質を衝いている。それは、三派から成るタリバンが共通して持つ目標が、米英など西欧諸国の影響をアフガンから完全に排除しようとしているからだ、と指摘する。

 そうだとすれば、和平交渉は決して、西側の求める撤退の「花道」を保障してくれるものではないかも知れない。
 とにかく現時点で厳しく求められているのは、無差別爆撃などによる殺戮を止めることだ。                                       (2009.07.30)

 

<写真> The Independent, The Guardian, BBC News 
 
 
by shin-yamakami16 | 2009-07-30 22:54