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by shin-yamakami16

オバマ政権 versus FOX グループ


FOX「公正中立」の欺瞞と「過敏過ぎる」報道官

                                 山上 真


 このところ、ホワイト・ハウスと米国右翼メディアとの確執が烈しさを増している。オバマ氏に対する「口撃」が、一年前の大統領選挙戦を通じて展開されていたことは、筆者の記事(2008.10.21, 11.05)で触れている通りであるが、オバマ政権の最重要法案「国民医療制」の成否が間近になった今日、愈頂点に達した観がある。

 FOX は、番組の合間にしょっちゅう、'Fair and Balanced’ という motto を発しているが、その割には、「公平・平衡」であるべきメディアの原則をいつも踏み外していることは、10分程その放送を聴いているだけでよく分かる。先日も、前副大統領候補者ペイリン女史の前述「医療制」批判を好意的に紹介する一方、オバマ大統領を 'communist’ と呼んで、訳もない中傷をしていた。オバマ政権側が FOXを ‘a wing of the Republican Party’ (共和党一派)と批難するのも無理からぬものがある。

 FOX の特徴と言えば、先ず、米国を最も優れた国として讃美する「愛国主義」の鼓舞、ヴェトナム・イラク・アフガン各戦争遂行の米国軍の「戦績」美化、排外的態度、反共・反社会主義、資本主義謳歌などの報道姿勢ということであろう。これらの基本姿勢に沿わない視聴者の意見は、一方的に論駁・棄却される。前ブッシュ政権下に於いては、常に政権擁護の「御用放送」を行っていたと言っていいだろう。このことは、マイケル・ムーアの映画『華氏911』の中で痛烈に描かれている。

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            ホワイト・ハウス報道官 Anita Dunn 女史



 しかしながら、オバマ政権報道官 Anita Dunn 女史が FOX について、「日常的に偽りの報道をしているメディアであり、公正報道を旨とする一般報道機関と看做さない」と宣言した姿勢については、多くのメディア関係者が必ずしも賛意を表していない。
 例えば、『ワシントン・ポスト』紙(10月 20日 付)Ruth Marcus 女史は次のように述べている。

 「FOX ニュースに対するオバマ政権の態度は、政権側をか弱く、小さく見えさせ、子供じみた印象を与えている。自らを Glenn Beck (FOX 論説者)のレベルまで貶めてしまう行為だ」

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                 FOX 解説者 Glenn Beck 氏


 「ブッシュ政権が自らに好意的なメディアに対して、他に先んじて情報を流していたのと同様の行為をすることになってしまう」

 そして、オバマ氏自身が「確かに FOX からはあまり好意的な取材を受けたためしはないが、これも民主主義の行き方の一部に違いない。まあ、我々皆が同じ姿勢でやっている訳ではない」と述べて、政権内部でも、FOX に対する姿勢が一様でないことを示唆している。

 この他、オバマ政権に好意的な『ニューヨーク・タイムズ』紙も、これまでの所、事実報道を続けるだけで、政権対メディアの「対決」には慎重な受け止め方だ。

 FOX 側は、政権側の「取材拒否」を、ナチス・ドイツの「ホロコースト」的行為として弾劾している。

 FOX の報道姿勢は明らかに客観報道を原則とするマス・メディアの範疇に入らぬものに違いないが、政権側がまともな「対決」相手として扱うことで、却って FOX の立場を強めてしまう恐れがある。オバマ政権報道官側の、より賢明な対応が期待される所以だ。 (2009.10.22)
 

 

<写真> The New York Times, FOX News
by shin-yamakami16 | 2009-10-22 15:06 | Comments(0)