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by shin-yamakami16

アフガン・英国兵戦死者「今年100人目」の衝撃

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現実味を増す「オバマのヴェトナム」

                                  山上 真                                              

 12月7日、アフガニスタン南部・ヘルマンド州 Nad-e Ali で、タリバンと交戦中に、英国軍兵長 Adam Drane 氏(23歳)が射殺され、今年に入って、100人目の英国兵戦死者となった。2001年の参戦以来、アフガニスタンでは、237人の英国兵が戦死しているが、年々戦死者増加のペースが早まっている。


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           戦死した英国アングリア連隊 Adam Drane 兵長


 彼は、米国大統領オバマ氏が, 新たに30,000人の兵力増派を発表して以来、初めてのアフガン戦死者である。
 米国兵は今年既に、300人以上が戦死しており、開戦以来、少なくとも800人を超えている。

 英国・国防相 Bob Ainsworth 氏は今年100 人目の戦死者について、アフガン戦争を戦死傷者の数だけで判断しないように求め、
「この戦争の成否は、英国の安全保障にとって、極めて重要だ」
と強調しているが、ますます多くの英国民は、この見方に同調せず、アフガン戦争が無意味なものであると見ている。

 オバマ大統領も、タリバンの後ろに居るとされるアルカイダとの戦いが、「米国の安全保障にとって死活問題だ」としたブッシュ前大統領と同じ見方に立っているが、どの程度タリバンとアルカイダが密接な関係にあるかという点については、これまでのところ、明確な説明が為されていない。

 一方では、タリバンとの「和平の道」を探る動きがアフガン政権周辺で生まれている。英国言論界でも、和平を求める動きが強くなっている。
 しかしながら、アイケンベリ在アフガン米国大使の「米軍増派反対」論にも拘らず、タリバンとの「主戦論」を唱える米軍司令官マックリスタル将軍が、オバマ氏を動かしてしまったようだ。
 オバマ氏の、「2011年8月アフガン撤退開始」を信じる識者は殆どいない。


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 かねてから囁かれていた「オバマのヴェトナム」論が、より現実味を増している。この「歴史的大失敗」について、後世の歴史家は、オバマ氏が、やはり「若過ぎた」大統領という、或は「米国の伝統的大統領の域を出なかった」、という評価を与えることになるのだろうか。
             (2009.12.10)

 

<写真> The Guardian, Daily Mail, Daily Telegraph
by shin-yamakami16 | 2009-12-10 10:41