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by shin-yamakami16

米海底油田爆発:一層拡大・深刻化する「海洋汚染」

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指弾されるBPなど会社側と米政府当局の「怠慢」

                          山上 真

 4月20日、米国ルイジアナ州40マイル沖合のメキシコ湾・海底油田爆発による原油流出の規模は、当初米国政府発表「日量5,000バレル」の約10倍に達する恐れがあることが明らかになった。これは、政府発表の数字に疑問を呈する科学者や、環境保護団体が公表したものである。重大なのは、未だに海底での重油流出が一向に止まっていないことだ。巨大な蓋で流出箇所を覆い、パイプで原油を吸収しようとする試みも失敗に帰した。


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 今度の原油汚染は、1989年にアラスカで起きた「エクソン・バルディーズ号」事故による「海岸汚染」の規模には現段階では達していないが、その被害が深海に隠れており、潜在的に遥かに深刻なものであることを科学者たちは指摘している。
 サンゴ礁やエビ・魚類など生態系への影響は、深海である為、科学者たちが見積もることが困難であり、漁業に携わる数千人の生活者にとっても、BPなど関係する3会社に求める長期的な被害額の確定が容易ではない。


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 今度のような原油漏れ事故が何故起きたかという原因究明が米国議会内で始まり、BP、掘削装置管理会社Transocean、セメント会社Halliburton の責任者が公聴会で証言したが、いずれもそれぞれの会社の事故責任を認めず、互いに責任転嫁し合った。これにはオバマ大統領が呆れ、5月14日の「ホワイト・ハウス」での記者会見で、大いに怒りを露わにしたが、実は、前ブッシュ政権から現政権に至る迄、 ‘The federal Minerals Management Service’ (MMS)「連邦鉱物資源管理局」が、そこに所属する科学者たちの「海底油田掘削が生態系に及ぼす悪影響について」の調査結果を無視して、BPなどの数十の石油会社と「馴れ合い」、掘削許可を与えていたことが判明した。


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 しかも、これら誤ったMMS の情報をそのまま真に受けたらしいオバマ大統領は、既に4月5日付本ブログで紹介したように、「米沿岸海底油田掘削」の方針を発表した。そして、今度の事故発生18日前に、サウス・カロライナでの「タウン・ミーティング」の席上で、
 
 「現代の石油掘削装置では石油漏れ事故が通常起こらないことが明確になっている。技術的に進んでいる訳だ。カトリーナ台風の時でさえも、掘削装置から石油漏れはなく、それが起こったのは陸上の精製装置からだ」

と語ったのである。この発言は、民主党リベラル派や環境保護活動家を激怒させているようだが、オバマ氏は、今度の事故原因が明らかになるまでは、米国政府の「海底油田掘削」方針を一時中止にしているものの、エネルギー政策の一環としても「石油掘削」方針は不変としている。

 未だに膨大な量の原油がメキシコ湾を汚染し続けている実状を、連日、あらゆるメディアが伝えている米国内では、今後、「原因企業」3社の責任追及が一層厳しくなる一方、オバマ政権の「対応の遅れ」と、政府機関の、石油会社との「癒着問題」が大きくクローズ・アップされつつあり、場合に依っては、「ブッシュのカトリーナ」と同様の成り行きを懸念する向きもある。

(2010.05.15)


<追記1> 今朝のFOX Radioニュースが報じる所によれば、当初発表の約12倍・日量2百万ガロンが海に流出しているという。(注:1バレル=31.5ガロン)

                                (2010.05.15) 

<追記 2> 5月17日早朝のFOX Radio ニュースによると、BPは1マイル程の長さのパイプを海底の「原油漏れ箇所」の一つに接合することに成功し、原油を海上のタンカーに汲み上げているという。ただし、どの程度「漏れ」を防いでいるかは未だ不明ということだ。                     (2010.05.17)


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       メキシコ石油会社 Pemex の Ixtoc 1リグでの原油流出事故(1979年)                          


<追記 3> 5月18日付『ニューヨーク・タイムズ』紙が伝えている所によれば、原油汚染海域が更に拡大していることに伴って、イルカからブルー・クラブに至る迄のあらゆる海洋生物が危機に晒されており、特にヒメウミガメが全滅する恐れが出て来ているということだ、このヒメウミガメは、1979年、メキシコ・Ciudad del Carmen 100キロ沖合の石油掘削リグ Ixtoc 1で起きた原油流出事故の為に数百個体まで減少した後、最近になって漸く約8,000個体まで増えたばかりであった。ルイジアナからフロリダまでの海岸線は、この小型ウミガメの産卵地である。
 一方、英紙『ガーディアン』によると、18日、「タールボール」(球状の原油塊)がフロリダ南部キーウェストに漂着し、原油被害がメキシコ湾から大西洋岸に達する恐れが避けられなくなってきたと言う。            (2010.05.19)




<資料1>


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<資料 2>


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<写真・資料> The New York Times, The Washington Post, Wikipedia  

   
by shin-yamakami16 | 2010-05-15 20:47 | Comments(0)