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by shin-yamakami16

菅「民主」敗北後:自民との「野合」可能性は?




「民主」右傾化:財界が「渇望」する「大連立」

                                 山上 真
 
 参議院選挙を一週間後に控えて、いずれの世論調査結果も、民主党単独では言うまでもなく、国民新党分を入れても、過半数確保の為の56議席獲得は難しいことを示している。ひょっとすると、民主党は50議席にも届かず、過半数議席を大きく割り込む恐れもあるようだ。7月7日付『東京新聞』は、「民主50割れも」と伝えている。
 
 とにかく、菅政権誕生直後の支持率70%近くから、「消費税10%」発言以来、一直線で支持率急落が止まらないのだ。「あれよあれよ」と言う間もなく、この分だと7月11日の選挙日には、「民主党支持率」は20%台に沈み込む可能性がある。そうなれば、これまで「比例区」で強いとされた民主党議席がかなり落ち込むことになる。

 民主党支持者が消費税に嫌気をさして向かう先は、一部は「共産・社民」であろうが、多くは手頃な「みんなの党」ということか。ともかく「消費税反対」を唱えているわけだから。自民党から離れても特に目立った政策が他にあるわけではないこの党の支持率は、10%に上るという異常な伸び方だ。

 菅首相の「消費税引き上げ」論に説得力が無いのは、仮に消費税引き上げが実現しても、氏の言う「財政再建」に何ら繋がらない点にある。それは、米国・英国が「戦争政策」を続けて財政破綻を来しているように、日本も又、世界第4位という、5兆円近い「防衛費」を「捨てる」が如く浪費していることを見れば分かる。「プラス」面があるとすれば、せいぜい軍需産業「三菱重工」辺りを太らせていること位だろう。
 
それに加えて、米軍基地維持費が米国の要請に基づいて野放図な状態だ。先日も、米国防長官ゲイツ氏が、沖縄駐留海兵隊の「グアム移転」を巡って、新たな経費負担を日本側に求めてきたという。これを伝える『東京新聞』は、「少なくとも数百億円規模の上積みを想定している」としている。世界中に軍事拠点を置いている米国は、自国の膨大な財政負担を免れるべく、現地政権に肩代わりを求めようとするのは当然の成り行きであるが、もし日本政府が毅然とした対応を取らなければ、際限のない負担を課せられることになってしまう。それが、「日米安保条約」に基づく義務であるとするならば、この際やはり、この条約を廃止することも考慮するのが当然というものだ。その代わりに、やや時間は掛かっても、極東アジアに於ける緊張緩和の努力によって、「安全保障」システムの構築に乗り出すことが賢明だろう。この動きになれば、沖縄などの米軍基地も存在理由を失うことになる。

 今度の参院選で菅政権が「過半数割れ」になった場合、しばし「呆然自失」した後、他党への新たな「連立工作」が始まるのは当然の動きだ。社民党・「みんなの党」への働きかけが先ず為されようが、問題は両党が「消費税反対」ということだ。社民党には、「普天間・辺野古」も譲れないところだ。民主党は今や、消費税「引き上げ」実現が主要課題になっている訳だから、これら両党とは、結局のところ、連立不可能ということになる。

 残る選択肢は、「敵同士」に見えた民主・自民が、消費税問題では「10%引き上げ」賛成同士である以上、「好むと好まざる」とにかかわらず、財界の「逹っての願い」を受けて連立する運びとなることだろう。勿論、それぞれに反対派を生むであろうが、多数派は「民・自連立」に纏まるに違いない.何しろ、財界逹っての要望であり、「国家の為」であるからだ。それに反対のグループは、他の少数党と組んだりして、所謂「政界再編」が進むことだろう。しかし、国会内で圧倒的過半数を握る「民・自連立」は、強圧的に国民に迫って来ることだろう。先ず、消費税引き上げだ。次に、憲法「改正」をスケジュールに載せることになる。日本の「対米従属」は、更に数十年続くことになるに違いない。

 特に「民主右派」と言ってよい前原、岡田、仙谷、枝野、直嶋、北澤、中井などの面々は、自民党連中と殆ど差が見出し難い程、保守的存在なのだ。

 以上のような長期的展望を描いてみることは、差し迫った参院選挙での投票の仕方について、それなりの示唆を与えるかも知れない。そして、もし上に描いた「構図」を避けたいとするならば、非常に困難なことではあるが、先ず今回の参院選で「民主・自民」を減らして「ねじれ国会」を現出させた後、比較的早期にやって来るであろう衆議院「総選挙」で、社民党・共産党・民主党「良識派」を含む「革新連合」が、無党派市民と組んで多数派を握る他ない。
                       (2010.07.07)

 

<追記 1> 先程見ていた『TV東京』の経済番組で、「ダイワハウス」」の株価が、菅首相の「消費税引き上げ10%」発言以来、大きく下がっていることを取り上げていた。例えば価格3,000万円の新築住宅の消費税が現在150万円であるのに対して、「10%」への引き上げで300万円に達する訳だが、このことが現今不況下で当然「注文減」になることは必至であるからだ。     
                                   (2010.07.07)



<追記 2> 7月9日付『朝日』、『読売』両紙は、「民主党参院当選者は、地方区・比例区合わせても、50に届かない可能性が大である」ことを伝えている。「民主」が比例区でも伸び悩んでいるということは、「生煮え」のまま菅首相が提起した「消費税引き上げ」が、大部分の民主党候補者自身が納得しておらず、民意も圧倒的に「反対」であることの、当然の結果である。これで、選挙後、菅首相に対する「参院選・敗退責任」論が、民主党内部で燃え盛ることだろう。
                                   (2010.07.09)


<追記 3> 今夕5:30からのtbs『報道特集』は、「民主党が目指すもの」というテーマで同党が議員定数を削減しようとしている問題を取り上げていた。菅政権は、少数政党が当選者を出し易い「比例区選出」議員定員を削り、民主・自民両党による「二大政党」定着を図ろうとしているが、これは事実上、少数意見を圧殺して、「消費税」、「選挙制度」、「沖縄問題」、「憲法」などで大きな政策上の違いがない民・自両党による「独裁」政治を横行させる恐れを示唆するものになっている。番組では、このような「民主政権」の行き方は、同党が「模範」としている英国議会が最近「部分的比例代表制」を採用して、少数政党尊重の方向を取ろうとしているのとは、全く逆であることを指摘している。
 一部週刊誌が先日、「菅は独裁を目指している」という大見出しを掲げていたが、満更「誇張」でもなさそうだ。                         
                                     (2010.07.10)
by shin-yamakami16 | 2010-07-07 10:45