世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

「ウィキリークス」、或は「情報公開」礼賛

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正当化されるべき「米帝国」の「乱暴狼藉」暴露

                             山上 真
 
 先日ロンドンで、「ウィキリークス」創始者ジュリアン・アサーンジ氏が「不名誉な罪」に問われてロンドン警視庁に出頭・逮捕されたという。
 しかし、このことで、彼の「偉業」は聊かでも損なわれることなく、横暴極まる世界的権力に対する「果敢な闘争」という大事業は弛まずに展開されるに違いない。


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             ロンドン Westminster magistrates court 前


 今回ウィキリークスが公開を予定している文書は250,000点に及ぶとされているが、既に明らかになった約1,000 点の中で、特に注目されているのは次の諸点である。

* 米国務省が国連事務総長、常任理事国外交官の銀行口座番号・メールなどの暗証番号、更にはDNAサンプルを盗むように米国外交官に指示したこと
* イラク戦争犠牲者約11万人の内、民間人死者が約66,000人に及ぶこと
* 2007年にイラクで米軍「アパッチ・ヘリ」の機銃掃射により、ジャーナリスト数十人が射殺されたこと


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        「乱射・誤射」日常茶飯事の米軍アパッチ・ヘリ


* サウジアラビア政府が米国に「イラン爆撃」を求めていたこと
* ロシアはプーチン氏をトップとする「マフィア帝国」と看做されていること
* 米国政府は中東通信社『アルジャジーラ』をカタール政府の「代弁放送局」と看做していること
* 米国が「テロとの戦い」の上で、特に戦略的に重要であるとしている全世界数百か所の通信・エネルギー・軍事産業・製薬工場などの拠点を明示したこと


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               戦略的重要拠点・スエズ運河


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             ドイツ Ludwigshafen のBASF 化学工場


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                 フランス国内・外重要拠点

            
などであるが、英国関係について見ると、

* 米国外交官は、英国各政権が、「偏執病的」に米国との‘special relationship’ (特別な関係)を維持することに執着していることを「面白がっている」こと
* 英国キャメロン政権は、政権に就く前から、米国からの一層多くの「武器購入」を約束するなどの「親米姿勢」を示していたこと
* 「ロカビー航空機爆破」*事件の犯人が、釈放前に英国の刑務所で病死した場合、リビア・カダフィ大佐が、原油利権など経済面を含む全面的な報復行動を取ることを英国政府が恐れていたこと

などである。

 ウィキリークスは、英国紙『ガーディアン』、仏紙『ル・モンド』、ドイツ『シュピーゲル』紙などと協力関係を結び、内部告発者などからの情報の真偽を調査し、信頼性が得られたものから順次、公開している訳であるが、その協力者は世界中で800人を超えている。今回は米国が極めて激しくウィキリークスの「所業」を非難し、それに応えて、送金サービスのPayPal、Visa、Master Card、サーバー提供のamazon などが一斉に手を引く事態となっているが、このような米国「帝国主義」に対する抵抗運動もネット社会を中心に「世界的規模」で始まっているようだ。


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「情報の自由と真実を語られる権利を信じる故に彼を支持する」と言う「セリブリテ」カーン女史


 ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサーンジ氏がロンドン警視庁に身柄を拘束されるや否や、映画監督Ken Loach、慈善団体会長Jemima Khan女史など著名人がアサーンジ氏の「保釈」を求めて裁判所に集まり、総額200,000ポンド(約2600万円)を用意した。結局保釈は認められなかったが、今後の波状的支援の広がりを示唆する風景であった。

 ケン・ローチ監督は、
「彼のことを個人的に知っている訳ではないが、彼がやっている事は私心の無い公的事業だ。我々を統治している人々の取引の実態を知る権利があると思う」
と語る。

 こうして世界中で、ひたすら「真実」を追求する人々と、米国務長官クリントン女史やジョー・リーバーマン議員に象徴される「民主党」戦争屋の、恣意的情報管理との熾烈な闘いが開始された。      

<注> *「パンナム・ロカビー爆破」事件:1988年12月18日スコットランド・ロカビー上空でパンナム航空機が爆破され、機内の259人と、住民11人が犠牲となったテロ事件。容疑者はリビアの航空職員二人とされたが、一人は証拠不十分で、もう一人も「ガン」罹病の理由でそれぞれ釈放された。

                          (2010.12.09)


<追記 1> ロンドンの高等法院は今日16日現地午後2時頃、アサーンジ氏を「保釈許可」したということだ。「逃亡の恐れが無い」という理由である。高等法院の前にいた数十人の支持者からは、この知らせを聞いて歓声が挙ったという。その一人は「戦争犯罪を暴くことが犯罪になる訳がない」と語っていた。(『インディペンデント紙』より)             (2010.12.16)


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<追記 2> 16日のBBC News は釈放されたアサーンジ氏の意気軒昂な姿を紹介し、「今後も闘う」という同氏の声明を伝えた。BBCは、同氏が反体制運動の英雄としての「声価」が高まる一方だとしている。


<追記 3> 17日の朝 5時、日本のメディアも概ねトップニュースとしてアサーンジ氏の釈放を伝えているが、不思議なことにNHKTVニュースは一切報道しなかった。どういう「配慮」で伝えようとしなかったのか、興味深々だ。                     (2010.12.17)


<写真> The Guardian, The Independent, The Daily Telegraph, The Morning Star,
    BBC Nems, Le Monde, Le Figaro, AP




 
by shin-yamakami16 | 2010-12-09 23:28