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by shin-yamakami16

ニュージーランド大地震:不十分だった「対策」

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             2011.02.22 大地震直後の Christchurch


2010年9月「カンタベリー地震」の教訓は生かされたか?

                              山上 真

 先日2月22日午後零時51分にニュージーランド・クライストチャーチで発生した地震は、日本人留学生28人を含む200人を超える死者・行方不明者を出し、この都市の三分の一が取り壊される被害を齎した。地震規模はマグニチュード6.3という、被害程度と較べればやや低いものだった。


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               2月22日 クライストチャーチ


 この地震に先立つ去年9月4日午後4時35分、クライストチャーチ西方約45キロのカンタベリー地方で、マグニチュード7.0の地震が発生したが、幸いにして死者・行方不明者は無く、負傷者100人以上という軽微な被害で済んだ。しかし、クライストチャーチの少なからずのレンガ建物が損壊し、「液状化」などによる道路被害も出たという。余震は最大でマグニチュード5.4を含むものが地震発生後15時間で28回、同年11月までに2500回を数えたということだ。
今度の地震は、「カンタベリー地震」の「余震」という説も為されている。


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    去年9月4日の「カンタベリー地震」クライストチャーチ・被害現場


 このような経過を見ると、素人目からも、現今のニュージーランドが果たして観光地、或は「留学先」として、大々的に宣伝することが許される様な「適地」だったのか、かなり疑われる余地があるように思われる。

 去年の地震による「被害が少なかった」ことが、「自然の実態」を殆ど無視する結果となって、ニュージーランドという国家としても十分な対策を取らず、また、日本の観光関連業者も、必要な注意を怠っていたのではないか。

 今度の地震被害について、去年の地震で多くの建物に割れ目などの被害が発見されていたのに、そのままになっていたという警察当局の指摘も出ているようだ。また、クライストチャーチ中心部は、エイボン川の流域に造られており、液状化現象が起こり易いという事実も以前から指摘されていたという。

 こうして見ると、今度の地震被害は起こるべくして起こったことではないかという強い疑問が湧いて来る。「人事」で地震自体を避けることは不可能であるが、被害の方はかなり避け得たのではないか。例えば、去年の地震被害を受けた建築物を精査し、危ないものには立ち入らないようにしていれば、日本人留学生が多数行方不明になったCTVビルでのような悲劇は未然に防げたであろう。

 現在は、最大限の努力を払って、被害者救済を優先させることしかないが、地震の「防げた被害」について、今後の「徹底的な究明」が待たれるところだ。
                                     (2011.02.28)


<追記> 'Global Post' 紙によると、ニュージーランドの地震現地では、精神的ショックと混乱に依るストレスで、平時の50%も「家庭内暴力」が増大しており、自殺者も増えているという。
(2011.03.01)


<参考資料> 東京大学地震研究所

2010年9月 ニュージーランド南島の地震
ウェブサイト立ち上げ: 2010年9月4日

更新日: 2010年9月5日

2010年9月4日,午前1時35分(日本時間,現地時刻では午前4時35分),ニュージーランド南島のクライストチャーチ付近でマグニチュード7.0の浅い内陸地殻内地震が発生しました(USGSによる).日本時間9月5日13時30分現在,この地震による人的被害は,死者0,重傷2,軽傷約100となっています(CNNによる).

この地震に関する情報を本ウェブサイトにまとめていきます.(広報アウトリーチ室)

更新情報
この地域の震源分布を掲載
震源メカニズムを改訂(9月5日)
この地域での過去の地震を掲載
テクトニクス背景を掲載
基本的な情報を改訂(9月5日)
リンク
基本的な情報(USGS,GNS Science, CNNによる)
地震発生日時: 2010年9月4日午前1時35分(日本時間;現地時間午前4時35分)
震源の位置: 南緯43.55°, 東経172.18°,深さ10km
マグニチュード: 7.0 (モーメントマグニチュードMw)
地震のタイプ: 右横ずれ断層型
関連するプレート: オーストラリアプレート,太平洋プレート
近隣のおもな都市: Christchurch,震源から東約44km
人的被害: 死者0,重傷2,軽傷約100(日本時間9月5日13時30分現在)

テクトニクス背景
ニュージーランドのテクトニクスは複雑です.北島全域と南島北部はオーストラリアプレートに,南島中央部・南部が太平洋プレートに乗っています.北島では太平洋プレートが東から西へ年間約8cmでオーストラリアプレートの下に沈み込んでいますが,南島南部ではオーストラリアプレートが西から東へ太平洋プレートの下に沈みこんでいます.この両者の中間にある南島中央部では横ずれ断層が発達しています.

今回の地震は,この南島中央部のテクトニクスを反映した,右横ずれ断層メカニズムである可能性が高いと思われます.


世界のプレート分布図.『謎解き地震学 No.1』参照.(http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/charade/platetectonics/)

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ニュージーランド周辺のプレートテクトニクス.PB2002モデルより(http://peterbird.name/publications/2003_PB2002/2003_PB2002.htm)

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震源メカニズム
世界中で観測された,この地震による地震波の記録からWフェーズおよびP波の部分を取り出し,それぞれKanamori and Rivera (2008)およびKikuchi and Kanamori (1991)の方法で解析した.その結果(図1)とGNS Scienceが決定した余震の分布(図2)を併せて考えれば,ほぼ東西の走向で垂直に近い断層面で起きた,右横ずれのすべりによるMw 7.0程度の地震と考えられる.ここではWフェーズ解析による震源メカニズムを採用して断層モデルを作成し,それを用いて改めてP波データをインバージョンした.その結果のすべり分布(図3)を見ると,断層破壊は破壊開始点★から西に進展しており,東のChristchurchには非常に強い揺れはもたらさなかった可能性がある(横田・尹・川添・大木・纐纈による).


図1 Wフェーズ解析(左)とP波解析(右)による震源メカニズム


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図2. 余震分布(日本時間9月4日14時15分現在)


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図3. 有限断層モデルによるインバージョン結果(すべり分布)


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この地域の震源分布
ニュージーランドでの地震の分布と3ヶ所での断面図.黄色い星は今回の地震の震源の位置,黄色い三角は火山の位置,点は1973年以降の震源の位置,色は震源深さをあらわす.また,黒い実線はプレート境界(PB2002モデル).北部での断面(E-F)では東から西へ太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に沈み込んでいるのが震源分布からもわかる.中央部での断面(C-D)では横ずれ断層のため震源は浅いものが多い.南部での断面(A-B)では西から東へオーストラリアプレートが太平洋プレートの下に沈み込んでいる.

データには,1973年以降のPDEカタログからM3以上のものを,また,GNS Scienceから2000年以降のM2以上のものを抽出しプロットした.断面図にはA-B, C-D, E-Fからそれぞれ幅50km以内にあるものをプロットしている.(西田・大木による)


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この地域での過去の地震(USGS,佐竹教授による)
1929年3月9日 Arthurs’s Pass(アーサーズパス)の50km南東でM7.1の浅い地震が発生した(死者はなかった模様).
1994年6月には今回の地震から40km北西でM6.7とM5.9の地震が起きているが,死者や被害はなかった.

リンク
USGS: “Magnitude 7.0 – SOUTH ISLAND OF NEW ZEALAND”
GNS Science: “shallow earthquakes within the last 60 days”(余震分布)
GNS Science: New Zealand Active Faults Database

                                   (2011.02.28)

<写真> The Daily Mail, The Press (New Zealand)
by shin-yamakami16 | 2011-02-28 16:55 | Comments(0)