世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

「消費増税・成立?」:問われる政治の「不正手続き」

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反国民「民主・自民・公明」3党への厳しい審判を!
                                  山上 真

 今夕5時半過ぎ、「消費増税」法案が成立した。

 例えば二時間程前に見た『朝日新聞』ネット版は、「主謀者」野田の満足げな表情を映した何枚かの写真と共に、如何にも喜び勇んだ調子で「増税成立」の成り行きを伝えていた。そこには、メディアとして「民主主義蹂躙」という大罪に加担したことの「罪の意識」の微塵もない。

 先程筆者が聞いていた、参議院での法案採決前の「反対討論」で、「消費増税は生活に苦しむ人々を殺す法案だ」と論断していたが、全く同感だ。
 

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 この際、国民世論の過半数が終始反対したこと、生活の厳しさを主因とする自殺が年間3万件を超えている事実、消費増税によって失業などで一層苦しむ庶民の存在を無視する政治屋・聞屋たちの「責任」を改めて問わなければならない。

 最近の各種世論調査結果では、「民・自・公」三党合わせての支持率は有権者の30%に満たない。にも拘らず、未だ審判を仰いでいない重大法案を、恰も国民多数派の代表の如き面構えをして、強引に押し通すという行為は「暴挙」以外の何物でもない。

「待ったなしの財政危機」という危機感を煽る手法で「反民主主義」行為を正当化する野田は、ヒットラー的横暴さを彷彿させる この男は、過去に自分が述べた信条を平気で逆転させて恥を感じない人物だ。


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 消費税増税によって、例えば「八つ場ダム」などゼネコン「コンクリート事業」が息を吹き返し、一機102億円「F35戦闘爆撃機」大量発注が容易になり、乗車率の低い「新幹線」延長が図られるなど、みな自民党政権時代の「代物」復活であることが明白になっている。増税分全額を「福祉に使う」ことなど、誰が信じようか。


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野田と同様、いい加減な答弁に終始したNHK 出身「財務相」安住淳 「厚生労働相」小宮山洋子
 

 右翼『読売』は言わずもがな、『朝日』・『毎日』、更には、国民に強制的視聴料を課している「公共」放送機関のNHK、民放TV など、殆ど全てのマス・メディアが民主主義の「イロハ」である筈の手続き、即ち、「選挙で問うた後での法案成立」という根本原則を無視した言論活動に終始したことは、日本の「憲政史上」稀なる重大事態と看做さなければならない。もし、斯くのごとき手法が将来も罷り通ることになれば、保守的2大勢力の不意の「大連立」によって、他国との「交戦」を許す様な憲法手続きの改変などが全く恣意的に行われかねない。まともなメディア無き現在、もはや、日本の戦後民主主義は「未曾有の危機的事態」に直面していると言う外ない。大阪の「ファッシスト」橋下某が、消費増税「三党合意」を「高度な政治判断」などと持ち上げているのは、野田たちの策謀が実質的少数勢力による「独裁的狼藉」であったことを暴露する結果になっている。

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   国会の上に「財界」があると勘違いしているらしい「経団連」会長・米倉弘昌

 ことあるごとに政権への増税圧力を強める発言をしている「経団連」米倉某の狙いは、国民一般への賦課によって経済界への法人税軽減を図り、企業収益を確保することであるが、結局の所、国民への増税さえ実現すれば、現政権存続など、どうでもいいのが本音だろう。財界の「走狗」たるマス・メディアも同様の態度だ。大企業「内部留保」461兆円と言われている今日、日本の「財界べったり」政権は、困窮著しい国民生活を他所に、なお一層の「財界奉仕」を事としているのだ。

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     野田・谷垣の「秘密取引」を取り持った財務次官・勝栄二郎(今月退任)

 大新聞・民放TV局が何故財界寄り姿勢を鮮明にしているかという理由は、偏に「企業から大利益を得ている」という事実に尽きるであろう。今や、大新聞は人々の購読料よりも、企業からの *「広告料」収入に半ば以上依存しており、一層大きく広告収入に頼るTV界も同様だ。だからこそ、財界の親玉・経団連などの「風向き」ばかり気にするニュース・論説をバラ撒く事態となっている。その仕組みに「悪乗り」しているのが、それらメディアに登場して金稼ぎする「御用学者」たちだ。こうして、日本という国は世界でも類を見ない「総ぐるみ」財界・企業支配社会に成り果てている。

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       首相地元で「落選運動」拡大中(8月13日・日刊ゲンダイ)

 幸いにして現今政界では、先の野党7党によって、反消費増税の為の共闘が成り、「民・自・公」野合に対して一定の有効な打撃を及ぼすことが出来た。
仮に「増税阻止」は力関係で未だ成らなくとも、もし来るべき「総選挙」で、「増税差し戻し」の為の選挙協力が図られるならば、国民にとって有力な「選択肢」が生まれることになり、反国民的「民・自・公」3党を撃滅する有効な手だてとなるに違いない。そのことを切に願って已まない。  (2012.08.10)

*注:例えば『朝日新聞』(2005年)の場合、総収入4000億円余りの内、広告料収入が2000億円以上とされている。民放『日本テレビ』では、総収入の約73% が広告収入とされる。

<資料・写真> ブログ 'Everyone says I love you!’、Wikipedia
                   
                   <追記>
1. 参院民主党から有田氏ら6人の「造反」が出て、消費増税の齎す「悲劇」を吐露したことは、衆院民主・造反派の多くが「節を曲げた」中で、未だに「良心的人士」が党内に残っていることを示すものとして、ほっとさせられるものがある。
 「消費増税」反対派が今後、成立した法を「無力化」する方策として残されているのは、次の衆議院選挙で多数派を握り、「増税法施行停止」法案を可決させることである。この件に関しては、8月11日付『東京新聞』が参考になる。 (2012.08.11)

『東京新聞』 【政治】
消費増税法が成立 民意が握る最終判断
2012年8月11日 07時07分

 消費税率引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革関連法が十日午後の参院本会議で、民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立した。関連法では現行5%の消費税率を二〇一四年四月に8%、一五年十月に10%へと二段階で引き上げる。一方で社会保障制度の抜本改革はほとんど先送りされた。募る生活不安にこたえる議論は展開されず「成立ありき」の民自公三党の思惑が先行。国権の最高機関としての役割を果たせなかった。
 <中略>
◆実施の前に衆院選
 消費税増税法が十日、成立した。だが増税実施が正式に決まったわけではない。止める道筋は、まだいくつも残っている。
 長引くデフレ経済下の増税は個人消費を冷え込ませ、景気をさらに悪化させるおそれがある。増税を実施するには景気回復が不可欠だ。成立した増税法にも「景気条項」と呼ばれる付則がある。そこでは、税率引き上げの条件として「経済成長率で名目3%、実質2%を目指す」と明記した。経済情勢が増税に耐えられるかどうかを見極め、場合によっては引き上げに待ったをかける規定だ。
 長引く景気低迷で「名目3%、実質2%」を達成するのは容易ではない。過去十年間では一度も達成していない。最も高い名目成長率となった二〇一〇年度ですら1・1%だ。付則の数字は「努力目標」ではあるが、法律に書かれた数字を達成しないまま、増税に踏み切ることは許されない。
 さらに大切なのは、増税前に必ず衆院選が行われることだ。
 野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表は「近いうち」に衆院解散・総選挙を行うことで合意。その解釈は割れるが、今秋ごろ解散するとの見方が強い。仮にずれ込んでも、衆院の任期満了は来年八月末。増税前には必ず、民意を表明する機会がある。
 増税の是非は衆院選後の政権が最終判断する。正式には来年秋ごろ経済情勢を踏まえて閣議決定で決まる予定だ。衆院選で増税反対を訴える勢力が多数を握り、政権を獲得すれば、増税しない判断をすることになる。
 閣議決定を待たずに、新政権が増税停止法案を提出し、多数で成立させれば、その段階で増税は止まる。
 その政権を構成する国会議員を決めるのは、衆院選で投じられる私たちの一票。増税するかどうか。その最終判断は民意が握っている。
 (関口克己・東京新聞)

2. 今のところ、日本「消費増税・可決」のニュースが海外で報じられている例を見出すのは難しい。僅かに仏紙『ル・モンド』(10日付)が少ない紙面で「日本では、消費税が倍加する」というニュースを経済面に掲載している。そこでは、「巨大な国家財政赤字の埋め合わせと社会保障制度の維持の為に増税法案が苦難の末、成立した」、「民主政権が公約した購買力回復が成らず、政権の支持率を落としているが、不人気な消費増税は少しも経済回復に役立たないようだ」としている。ー<参考資料1> (2012.08.11)

3. 「消費増税」成立後初めての「世論調査」が『東京新聞』(8月12日)で公表された。それに依ると、未だ猶、「増税反対」が国民の過半数であることが明らかになった。

消費増税反対が56% 早期解散35%、共同通信調査
2012年8月12日 19時00分
 共同通信社が11、12日実施した全国電話世論調査によると、消費税増税法成立に基づく税率引き上げに反対と回答したのは56・1%で、賛成の42・2%を上回った。前回7月調査の反対55・2%、賛成43・4%とほぼ変わらず、反対が依然根強いことを裏付ける結果となった。
 民主、自民、公明の3党首が「近いうちに信を問う」ことで合意した衆院解散の時期については「できるだけ早い時期」が最多で35・1%。「今年の秋から冬」22・5%を合わせると年内解散が57・6%に上った。「来年夏の衆参ダブル選挙」は24・6%、「2013年の早い時期」は10・6%だった。 (共同)

4. 今日13日早朝『毎日jp』掲載の「世論調査」に依れば、野田首相、自民谷垣総裁の「代表再選」を望まない声は、それぞれ60%、72%だったという。消費増税「三党合意」・「可決」が国民の間で、いかに支持されていないかを実証する数字だ。 (2012.08.13)



                 <参考資料>

1. 仏8月10日付『ル・モンド』紙 ー「日本では消費税が二倍になるだろう」

Le Monde Économie
Au Japon, la taxe sur la consommation sera doublée
Le Parlement japonais a approuvé vendredi 10 août le doublement de la taxe sur la consommation d'ici à 2015 pour contenir la dette colossale du Japon et garantir la pérennité du système de protection sociale. En échange du soutien des députés conservateurs dont il avait absolument besoin, le premier ministre de centre gauche, Yoshihiko Noda, s'est engagé à dissoudre la Chambre des députés et à organiser des élections législatives "dans un proche avenir". Dernière étape nécessaire à l'adoption de la loi, l'approbation du Sénat a été obtenue vendredi, avec une confortable majorité de 188 votes pour et 49 contre.
Le texte prévoit l'augmentation de la taxe sur la consommation, appliquée sur l'achat de la plupart des produits et services au Japon, de 5 % actuellement à 8 % en avril 2014 puis à 10 % en octobre 2015. L'adoption de cette réforme constituait l'objectif politique principal de M. Noda, afin de limiter la progression de la dette du Japon, qui représente déjà plus de 200 % de son produit intérieur brut, soit la proportion la plus élevée parmi les pays développés. Les fonds dégagés doivent aussi permettre de financer de nouvelles places de crèche, d'améliorer le système de santé, de payer une partie des retraites et de prendre en charge leurs dépenses de santé.

LÉGISLATIVES ANTICIPÉES

Le premier ministre a souligné que ces financements étaient nécessaires pour maintenir la protection sociale des Japonais, dont l'équilibre financier est mis à mal par le vieillissement accéléré de la population.

La loi avait été votée dès juin à la Chambre des députés, où le Parti démocrate de M. Noda est majoritaire, mais de longues négociations ont été nécessaires avant son adoption au Sénat, dépourvu de majorité stable. Pour obtenir le soutien du Parti libéral-démocrate et du Nouveau Komeito, le premier ministre a dû promettre d'avancer le prochain scrutin législatif, qui devait normalement se tenir en août ou en septembre 2013. La popularité du Parti démocrate s'est largement érodée ces derniers mois en raison de son incapacité à tenir la plupart de ses promesses électorales, notamment en termes de pouvoir d'achat. L'impopulaire augmentation de la TVA ne devrait guère y contribuer.

2. 英国8月10日BBC News ー 「日本の議会は消費税を倍増の10%にする法案を通した」

ー「野田政権は多くの反対者を出し乍らも、消費増税10% を成立させたが、消費者の購買力に大きな打撃を及ぼすだろうと指摘する人々もいる」

10 August 2012 Last updated at 11:38 GMT
Japan parliament passes doubling of sales tax to 10%
Japan's parliament has passed a contentious bill to double the country's sales tax by 2015, a move that could spark an early election.
Japan's Prime Minister Yoshihiko Noda has argued the rise will help rein in Japan's huge public debt and rising welfare costs.
However, some say the tax will severely hurt consumer spending.
Opposition parties supported the bill on the condition that Mr Noda set an election date.
This was the final hurdle for Mr Noda who has fought to bring the tax to 10% since he came into power in September 2011 as part of a financial reconstruction.
It has led to disagreements even within the ruling Democratic Party of Japan, with more than 50 lawmakers opposed to the tax leaving the party.
The tax bill was passed on Friday after a last minute deal between Mr Noda and the main opposition Liberal Democratic Party.
Mr Noda has promised to dissolve the lower house "in the near term" in return for endorsement of the bill in the opposition-controlled upper house.
Most bills must pass both chambers of the Diet before they become law.

3. 8月11日付『東京新聞』
社会

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首相官邸前で行われるデモで脱原発を叫ぶ若者たち=10日、東京・永田町で

消費増税 成立 デモの若者「政府信用できない」
2012年8月11日 朝刊
 消費税増税法が成立した十日、首相官邸前では、金曜日恒例の脱原発を求める抗議行動があった。原発も増税も私たちの将来の生活に直結する。増税分は社会保障に必ず使うと首相は言っているが、原発再稼働のようにまた裏切るのではないか。抗議行動に集まった若者たちからは疑問の声が相次いだ。 (中山高志)
 「次世代につけを回さないため増税するというなら、政府はまず最大のつけである原発をやめるべきだ」。高校生桐山凜太郎さん(17)=東京都豊島区=は話す。手には、暴力的ではない意思の表明であることを示す白い風船。周辺では人びとが歩道を埋め尽くし、熱気と湿気が入り交じる。
 桐山さんは映画監督を目指しており、デモをテーマにした作品をつくっているという。原発について友だちと話すことも増えた。「目的も示さないまま原発を再稼働させるような政府の言うことを、増税でも信じることはできない」と懐疑的だ。
 <中略>
 一緒にいた父親で会社員の清孝さん(61)も「政府は新しく新幹線の建設を認めようとするなど公共事業にお金をかけようとしているが、本当に若い世代のために使ってくれるのか」と心配する。
 葛飾区の女性派遣会社社員(35)は「最初に消費税増税の話が出た時も、福祉目的とか言っていたが、いつの間にかどこかにいってしまった。今回もそうなるのでは」と不信感を募らせた。
 東京電力福島第一原発事故をきっかけに、政治について関心を強めた。デモにも参加し、国会議員に自分の意見をメールやファクスなどで送るようになった。「言いたいことは、きちんと言葉にしないといけないと感じるようになりました」
 杉並区の中学校女性教員(27)も「増税で本当に私たちの将来を守ってくれるのか」と首をひねる。「次の選挙では、誰が原発にノーと言ってくれるか、誰が増税分のお金をきちんと使ってくれるか、しっかり調べて投票したい」と語気を強めた。

4. 8月11日付『信濃毎日新聞』
長野県内ニュース
消費増税法成立 経済・生活に影響懸念の声
08月11日(土)
 消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法が10日、成立した。政府が掲げる「明日の安心」の具体像が深まらず、政治的駆け引きが目立った国会審議に、税負担の重みを実感する県民からは、増税後の経済や生活への影響を懸念する意見や不信の声が上がった。一方で、社会保障の財源問題が一歩前進したとの受け止めもあった。

 「ごまかしばかりの議論を重ねながら、ついに成立まで来てしまったという印象だ」。産業用光ファイバースコープなどを開発しているマツダ電子工業(長野市)社長の松田栄展(たかのぶ)さん(77)は語気を強めた。

 同社は1980年代に大手メーカーの下請けとして従業員約300人を抱えたが、その後、大手の海外シフトで受注が急減。規模を縮小し、自社開発で生き残りを模索している。今は数人が働くのみだ。

 取引先に税額を転嫁しにくい中小企業に、負担のしわ寄せが来るとの指摘がある消費税。「増税に賛成できるのは大企業だ。資金繰りに苦しむ中小企業の多くは10%に耐えられない」と訴える。

 中小企業の倒産が増え、雇用が失われ、税収も伸びず、社会保障安定にもつながらない―との悪循環を懸念。「政治の駆け引きではなく、成立前に本質的な論議を深めるべきだった」と指摘した。

 酒店などを営み5人暮らしの家計を預かる伊那市の中村美紀さん(47)は「本当に社会保障の充実に結び付くのでしょうか」と疑問を口にした。直前に生じた参院採決と衆院解散をめぐる騒動に加え、「脱原発」への道筋が見えない原発問題での対応をみていると、「政府はまったく信用できない」と思う。

 増税で家計負担が増すと、消費者の間に「安い品を選ぶ流れが強まる」とみる。「少し高くても作り手が思いを込めた商品が売れなくなり、生産者の意欲が損なわれるのではないか心配だ」と話す。
<後略>
 
5. 8月11日付『北海道新聞』ー 「社説」

消費増税法が成立 国民欺く理念なき改革(8月11日)

 政治主導で行政の無駄を削る。そう訴えた民主党に託した有権者の期待は「官僚主導の増税」という正反対の形で返ってきた。
 2015年10月までに消費税率を10%に引き上げる法案が、きのうの参院本会議で民主、自民、公明などの賛成で可決、成立した。
 最終盤で自民党が内閣不信任決議案に同調する動きを見せ3党合意は揺らいだが、野田佳彦首相の「近いうちに衆院を解散する」という口約束一つで収まった。増税を政争の具とする茶番劇にあきれる。
 与野党が入れ替わったこの3年間、政党と政治家の地金を嫌というほど見せつけられた。
 民主党は選挙時の約束を破り、自民党は与党をけん制する野党の役割を忘れ党利党略で増税に協力した。
 社会保障改革を棚上げしたままの増税先行に多くの国民が納得していない。信を問わずに与野党が談合した責任は重い。
 衆院選は「近いうちに」ある。増税の是非は、有権者一人一人の判断に委ねられる。

*消え去った政治主導

 政府は関連法を含め「社会保障と税の一体改革」と呼んでいる。
 だが、民主党内の議論に始まり政府による法案化、そして3党合意を経て「一体改革」は次々と崩れた。
 政府や財務省の本音が、社会保障改革ではなく、年々厳しくなる歳入の手当てにあったからだ。
 消費税率を上げたいが、国民の理解を得づらい。そこで財政を圧迫する社会保障を財源と共に見直すという「一体改革」を唱えた。
 しかし、止まらない少子高齢化に対応する社会保障の将来像を示すことはなく、年金改革も高齢者医療のあり方の見直しも棚上げされた。
 増税する5%分のうち、子ども・子育て新システムなど新制度に充てるのは1%分にすぎない。4%分は従来政策の赤字を埋める増税だ。
 民主党は、無駄削減で年間16兆円の財源を生み出すとしていた公約を早々と投げ捨て、財務省が描いた名ばかりの一体改革の図式に乗った。
 政治主導の姿はどこにもない。
 3党合意では、増税で生じる財政の余裕を公共事業に振り向けることまで盛り込まれた。民主党は「コンクリートから人へ」をうたっていたが、自民党の要求をすんなり受け入れた。変節にあきれるほかない。
 社会保障改革は国民会議で1年間かけて考え直すことにし、さらに先送りした。3党が一致しているのは増税だけで、社会保障の理念は全く異なるのだから当然の成り行きだ。
 国民を欺く「一体改革」だと言わざるを得ない。

*経済悪化させる恐れ

 消費税率引き上げそのものの問題点も少なくない。
 国と地方合わせ1千兆円の借金を抱える財政再建は喫緊の課題だ。だが消費税率を10%に引き上げても、20年度までに基礎的財政収支を黒字化するという政府目標の達成はめどが立たないのが実情だ。
 長引くデフレ、東日本大震災の影響、歴史的な円高傾向、くすぶる欧州債務危機がのしかかり、経済情勢は不透明さを増している。
 そんな四重苦の下での増税は景気をさらに落ち込ませる懸念が強い。
 今回は所得税などの減税を伴わない純粋な増税で、国民に大きな負担となる。中小企業も増税分の価格転嫁が難しく事態は深刻だ。
 とりわけ零細企業が多い北海道経済へのダメージは大きい。個人消費や観光関連に緩やかながら回復傾向が見え始めた中、政府がどれだけ地域の実情に目配りしているか不信感は拭えない。
 消費が低迷して税収が伸びず、財政を立て直すどころか悪化させる可能性もある。
 消費税率を3%から5%に上げた1997度以降、所得税などを合わせた一般会計税収が同年度の53兆9千億円を上回ったことはない。

*逆進性緩和は不透明

 成立した消費増税法には経済好転が確認できなければ増税を見送る「景気条項」が盛り込まれたが、あくまで努力目標との位置付けだ。増税に踏み切るかどうか、政府には慎重な判断が求められる。
 サラリーマンの平均給与は97年の約467万円から2010年は412万円に目減りしている。この間、非正規労働者も急増した。
 低所得者ほど負担が重い消費税を引き上げられる環境とはとても言えない。そうした逆進性を緩和する手だても明確に示されていない。
 国会審議でこれらの疑問点を指摘されても、野田首相は「どの党が政権を担っても一体改革は必要だ」と財政悪化を強調するばかりで、議論は深まらなかった。
 国民の期待をないがしろにした民主党と、これに相乗りした自民、公明両党の責任は重大だ。
 各党は次の衆院選で増税についての立場を明確に説明し、しっかりした社会保障政策を示す必要がある。
 その場しのぎの公約はもういらない。
by shin-yamakami16 | 2012-08-10 17:49