世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

BRICS :「新開発銀行」 ‘New Development Bank’ 設立の「世界的意義」

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        BRICS首脳:プーチン・モディ・ルセフ・習・ズマ各氏


IMF「資本自由化・緊縮財政」に対置する「新金融システム」の必然性


                                    山上 真

 去る7月15日、BRICS5カ国はブラジル北東部フォルタレザ *’Fortaleza’ で開かれた首脳会議で、歴史的な「新開発銀行」を漸く発足させた。

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 これに引き続いて、翌16日、新興5カ国(BRICS)首脳と南米諸国との会合がブラジルの首都ブラジリアで開催され、中国・習近平国家主席、ブラジル・ルセフ大統領、ロシア・プーチン大統領、インド・モディ首相、南アフリカ・ズマ大統領らBRICS首脳、およびスリナム・ボーターセ大統領、アルゼンチン・クリスティナ・キルチネル大統領、ボリビア・モラレス大統領、コロンビア・サントス大統領、チリ・バチェレ大統領、エクアドル・コレア大統領、ガイアナ・ラモター大統領、パラグアイ・カルテス大統領、ペルー・ウマラ大統領、ウルグアイ・ムヒカ大統領、ベネズエラ・マドゥロ大統領ら南米諸国の首脳が同会合に出席した。

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 この快挙とも言える大事業は、米国支配下の「国際秩序」に挑戦する企てと看做されるだけに、日本を含む大方の西側メディアは無視か、或は極めて大雑把にしか取り上げていないが、此処では,比較的客観的かつ「良心的に」、この首脳会議及び「新開発銀行」についてレポートしている英国*『ガーディアン』紙の記事内容をご紹介しておきたい。—原文<注1>参照

 その見出しは、’Brics countries create $100bn bank to ease western grip on global finances’—「BRICS は欧米の世界金融支配を弱めるべく、1000億ドル銀行を創始する」というものである。

「BRICS 新興国の指導者たちは欧米支配下の国際金融秩序を再構成する為の最初の大きな一歩として、1000億ドル(583億ポンド)新開発銀行と緊急準備基金設立に着手した」

「BRICS はブラジル、ロシア、インド、中国、そして南ア連邦から構成される。発展途上国のインフラ整備計画に資金供与することを目指す新銀行は、上海に設けられ、インドは最初の5年間、総裁としてその業務を統括し、その後ブラジル、ロシア、更に首脳会議で公表された5カ国の指導者たちに総裁職が継がれる」

「BRICS諸国はまた、短期流動性圧力に対して未然に対処する為に、外貨準備プールを設ける」

「長らく待たれていた新銀行は、第二次世界大戦後、IMFと世界銀行を中心とする、欧米勢力によって創られていた世界的金融秩序に於いてより強い発言力を発するべく、2009年にBRICS結成以来初めての大事業である」

「BRICS 諸国は昨年,米国の景気刺激策の規模縮小によって引き起こされた新興国からの資本脱出の後、共同行動を追求することが急務とされた。新銀行は、世界人口の約半分と約5分の1の世界経済生産高を担うBRICS のますます高まる影響力を反映している」

「新銀行は出資5カ国の間で等分に分かち合う500億ドルの出資金で出発し、先ず総額100億ドルを7年間で現金で出資し、400億ドルは保証金とする。2016年から貸し出しを開始し、他の諸国の参加を広く認めることになっているが、BRICS の出資金比率は55%以下になってはならないと定めている」

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 ブラジルのDilma Roussef 大統領は、
「新銀行は、米国の金融拡大策の漸減の結果として、様々な経済の型を持つ国が直面した一時的不安定性を閉じ込めるのに役立つだろう」として、「新銀行は、時代の象徴であり、IMF の改革を必要としている」と述べた。

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 また、中国・習近平主席は、会合における発言で、「新興市場国家であり発展途上国であるBRICSと南米諸国はともに、国際的舞台において成長軌道上にある。我々は、より公正で合理的な発展に向けて、共同で国際秩序を推進し、各国の国民が自国の社会制度や発展への道を自主的に選択する権利を守らなければならない。また、グローバル・ガバナンスを強化し、国際社会が発展に関する問題に対してより重視するよう促し、南米諸国の貧困軽減戦略や持続可能な発展事業への取り組みを支援する。我々は、BRICSと南米という2大市場の連携を強化し、南米諸国のインフラ建設、資源開発、産業発展プロジェクト融資などに積極的に参加し、人的・文化交流を深め、各国の国民間の友情を推進していかなければならない」と指摘したという。

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          キューバ・ラウル・カストロ議長と露プーチン大統領

 ハバナで老革命家・フィデル・カストロと会談した後、ブラジルに向かったロシアのプーチン大統領は、BRICS首脳会議に先立つインタビューで、国際社会におけるBRICSの影響力を増強して米国の対抗軸とすべきだとの考えを示し、米国の一極支配を批判した。また、ウクライナ情勢に伴い、欧米諸国がロシアに科した措置を「制裁的な攻撃だ」と非難。BRICSが共同歩調を取り、対処できる仕組みを創設すべきだと主張した。プーチン氏はイタル・タス通信のインタビューで、欧米の対露制裁に反対の立場を貫いてきたBRICS諸国に謝意を表明した。その上で、30億人市場とされるBRICS間の貿易促進策を通じて、関係を深化させることに意欲を示した。

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         プーチン氏とアルゼンチン・クリスティナ大統領

 ブラジル入りしたプーチン氏は15日、BRICS首脳との*2国間会談を行って友好関係をアピールした。ブラジルのルセフ大統領との会談では、防衛分野や原子力の平和利用で協力を促進することで合意した。中国の習近平国家主席との会談では、長期間のガス供給契約を交わしたことを改めて評価し、両国の関係性をより高いレベルに発展させることを確認し合った。ウクライナ情勢をめぐって欧米の批判にさらされる中、BRICSとの連帯を強調して国際的孤立を避ける狙いがうかがえる。プーチン氏はインタビューで、「一極の中で国際関係の枠組みを構築する試みは非効率であり、機能不全に陥る」などと述べ、米国本位の外交政策を批判した。

 さらに、米ドルを基軸とした国際通貨体制は、米国政府の通貨財政政策に大きく依存しているとし、BRICSが中心となってこのシステムを変革し、国際通貨基金(IMF)と世界銀行が決める政策決定の場でも、5カ国が積極的な役割を示さなくてはならないとも主張した。多極化世界を構築するための具体的な手段としては、国際社会における国連の主導的な役割を強化することやBRICS諸国による紛争解決のための定期協議体創設などを提案したという。
 
 新銀行を巡る様々な情報を纏めると、関係5カ国が「BRICS銀行」とせず、「新開発銀行」と名付けたのは、新たにトルコ・メキシコ・インドネシア・ナイジェリアなどの新興国が参加を予定しており、アフリカの殆どの国を含む、最終的には約130カ国が参加する可能性があるということだ。いずれは「共通通貨」を発行し、ドル・ユーロに対抗する形になりそうだ。

 ブラジル・ルセフ大統領の言葉通り、世界の金融秩序を支配してきた米国主導のIMFが、特に世界の大半を占める新興国にとって「役立たず」の存在に成り果てていたことが、世界的「新銀行」創設の動きに拍車を駈けたことは間違いない。

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         IMF批判「急先鋒」:コロンビア大学スティグリッツ教授      

 IMFの問題点を最も厳しく,体系的に批判してきた米国・ノーベル賞受賞経済学者*スティグリッツ氏は、その著書 ‘Globalization and Its Discontents’・邦訳『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』の中で、

「IMFの推し進めた資本市場の自由化は、米国の金融セクターのために広範な市場の開拓に寄与した反面、その本来の使命であるはずのグローバルな経済の安定には何ら寄与しなかった」
としており、さらに
「IMFはG7の債権国の代理者であり、貧しい国々が貧しいままである」
と酷評している。

 IMF の「典型的手法」を簡潔に示すと次の様になる。
・輸出増進
・外国企業の招致、管理の委託
・民営化・私有化(Privatization)
・税制の企業優遇措置→10年間の一時課税免除、タックス・ヘイブン
・環境に関する法制の抑制

以上の、投資家に都合のよい政策→すべての発展途上国に対する手本

国際通貨基金・世界銀行の融資の条件
・公共支出の削減 【緊縮財政】
・市場の開放 【自由貿易政策、TPP】
・助成金の削除
・公共サービス有料化 【公共サービスの民営化】


「安易な融資」に厳しい態度を取ることで有名な筈のIMFが、米国の言葉一つで総額270億ドルという「安易な融資」を決めた悪例として、最近のウクライナ・キエフ政権への「緊急融資」を挙げていいだろう。
 
 その融資について、例えば、英国*5月20日付『ガーディアン』紙は、「IMFはウクライナ国民を破滅させる」という趣旨の痛烈な批判を展開している。—原文<参考資料1>

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                Michael Burke 氏

そのBlog記事のタイトルは

‘Who will benefit from the IMF's $17bn bailout of Ukraine? Not its people’ —「IMFのウクライナへの170億ドル緊急援助で誰が利益を得るのか?その国民ではない」としている。経済コンサルタント Michael Burke 氏は、そのブログ記事で大要次のように述べている。

「国際通貨基金(IMF)は、ウクライナに対して融資と引き換えに緊縮財政を求めているが、ウクライナ国民への支援ではなく、ウクライナの西側債権者や、ウクライナ国債の保有者たちを支援しようとしている」

 「ウクライナ政府がIMFの要求を実行することで、ウクライナ国民は「貧困」に陥る。 特に、ウクライナ政府は通貨グリブナの切り下げを行わざるを得ず、その結果、全ての輸入品の価格が上昇し、銀行の「救済」は国が行い、政府の支出は増加し、エネルギー価格が高騰する」

「IMFは政府ではなく、民間の金融機関を支援しようとしており、ウクライナ政府は国の資金を使って破綻した銀行を救済する羽目に陥る」

 現在、ウクライナ・キエフ政権は、IMF の要請に沿って、国民の福祉関係・文化予算削減を行っているが、東部ウクライナでの戦争遂行の為に、「安い兵力」確保の目的で「徴兵制」を布く一方、軍事予算を増大させている。こんなことをして、如何に「ロシア憎し」で国民を動員させようとしても、何処迄国民が耐えて,政権に随いて行けるか甚だ疑問だ。

 3月29 日付『朝日新聞』はIMFを受け入れるキエフ政権について、次の様に述べている。
 ウクライナ議会は27日、政府が国際通貨基金(IMF)と140億ドル(1・4兆円)以上の財政支援に合意したのを受け、大規模な財政緊縮法案を可決した。一般家庭へのガス料金の大幅値上げなど生活を直撃する内容で、政変やロシアによるクリミア半島併合で揺れる同国の社会不安がさらに高まることを危惧する声もある。
 ウクライナは政府債務が700億ドルを超え、経済破綻(はたん)の危機にある。IMFによる支援は、欧州連合(EU)や米国など主要国からのものを含め計270億ドルに上るとされる国際支援の中心だが、ウクライナの経済改革が条件だった。
 ヤツェニュク首相が同日提出した緊縮法案には、ガス料金の値上げのほか、国家公務員の1割削減などが含まれた。収入の多寡に関係なく税率が一律だった所得税に、累進課税制を導入する。最低賃金の引き上げも凍結する


 結論的に言えば、「IMF 体制」を脱することは、各国民の総体的「福祉」を実現する為の、土台となる「民主的」経済基盤を確立することを必須条件とする。
 それこそが,この度のBRICS 「新開発銀行」の創設理由であり、その前途には、欧米勢力の激烈な妨害・抵抗を粉砕するという「大事業」が待ち受けていることだろう。文字通り,前途多難な「いばらの道」に違いない。
 
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 しかし、それはデリバティブ・ヘッジファンドなどの手法を駆使して*一国の運命をも左右する「巨大金融資本」支配下の既成資本主義の悪弊を断ち切る為の、「世界変革」の一翼を担うべき「壮大な営為」と言って差し支えない。                  (2014. 07.30)
 
<注>
1. 『ガーディアン』紙・原文
'The Guardian'
Brics countries create $100bn bank to ease western grip on global finances
Brazil, Russia, India, China and South Africa set up bank and currency pool to push for bigger say in global financial order
Reuters in Fortaleza
theguardian.com, Wednesday 16 July 2014 11.44 BST

Brics leaders, from left: Russia's president Vladimir Putin, India's prime minister Narendra Modi, Brazil's president Dilma Rousseff, Chinese president Xi Jinping and South Africa's president Jacob Zuma. Photograph: Klimentyev Mikhail/Itass
The leaders of the Brics emerging market countries have launched a $100bn (£58.3bn) development bank and an emergency reserve fund in their first major step towards reshaping the western-dominated international financial system.
The Brics group comprises Brazil, Russia, India, China and South Africa. The bank, aimed at funding infrastructure projects in developing nations, will be based in Shanghai, and India will preside over its operations for the first five years, followed by Brazil and then Russia, leaders of the five-country group announced at a summit. They also set up a currency reserves pool to help countries forestall short-term liquidity pressures.
The long-awaited bank is the first major achievement of the Brics countries since they joined forces in 2009 to press for a bigger say in the global financial order created by western powers after the second world war, which centres on the International Monetary Fund (IMF) and the World Bank.
The Brics were prompted to seek coordinated action after an exodus of capital from emerging markets last year, triggered by the scaling back of US monetary stimulus. The new bank reflects the growing influence of the Brics, which account for almost half the world's population and about a fifth of global economic output.
The bank will begin with a subscribed capital of $50bn divided equally between its five founders, with an initial total of $10bn in cash put in over seven years and $40bn in guarantees. It is scheduled to start lending in 2016 and be open to membership by other countries, but the capital share of the Brics cannot drop below 55%.
<後略>

2. 『現代ラテンアメリカ情勢』 
執筆者 伊高浩昭(いだか ひろあき)=ジャーナリスト
2014年7月14日月曜日プーチンがニカラグアとアルゼンチンを訪問
 ロシアのウラディーミル・プーチン大統領は7月11日、ハバナを発った後、ニカラグアのマナグア空港に立ち寄り、ダニエル・オルテガ大統領と1時間。会談した。プーチンは、ニカラグア大運河建設事業へのロシア企業の参加に興味を示した。
 ニカラグアは一昨年、国際司法裁判所の裁定により、カリブ海のコロンビア経済水域から広大な海域を与えられた。その海域で6月下旬、ロシアと米国の軍要員計300人が麻薬取り締まり訓練をした。これには、失った水域に依然関心を抱いているコロンビアに対しオルテガ大統領が牽制する狙いがあった。
 プーチンは12日ブエノスアイレスに到着し、クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)亜大統領と会談した。亜国のアトーチャ第3原発施設建設事業に参加しているロシアのロサトム社が、アトーチャ第4原発施設建設事業に参加することが原則的に合意された。
 また、大統領に同行しているロシア財界人一行は、ネウケン州バカムエルテの油田を視察した。
 CFK主催の晩餐会には、ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領も出席した。同様に招待されていたベネスエラとボリビアの大統領は出席しなかった。
 プーチンが首脳会談をしていたカサ・ロサーダ(大統領政庁)前の五月広場では、性的少数者団体がロシアでの取り締まりに対する抗議デモを展開した。また在亜ウクライナ移民協会も、ロシアのウクライナへの干渉に抗議するデモをした。
 プーチンは13日リオデジャネイロ入りし、アンゲラ・メルケル独首相とウクライナ問題を中心に話し合った。両首脳は次いで、マラカナン競技場でのW杯決勝戦を観戦した。ドイツが1対0でアルヘンティーナを下し、4度目のW杯をものにした。

<写真・資料> The Guardian, 人民日報, Wikipedia. The Moscow Post

                <参考資料>
1. ‘The Guardian’
Who will benefit from the IMF's $17bn bailout of Ukraine? Not its people
The IMF's standard prescriptions constitute a supranational form of loan-sharking aimed at enriching western creditors
http://www.theguardian.com/profile/michael-burke
Michael Burke

theguardian.com, Tuesday 20 May 2014 17.30 BST

After the measures imposed on Ukraine by the IMF, Arseniy Yatsenyuk says he will be “the most unpopular PM in the history of my country”. Photograph: Efrem Lukatsky/AP
In return for the latest $17bn bailout of Ukraine the IMF insists on dramatic measures in five main areas of the economy: a sharp currency devaluation, which will increase the cost of all imported goods, a government-funded bailout for domestic banks, government spending cuts, measures to regulate money laundering and a sharp increase in energy prices.
The latter are particularly ironic, since the widespread story in the west is that it is the Russian oil giant Gazprom that is threatening price hikes. The IMF calls for energy prices to be increased by between 240% and 425% over the next four years. No wonder Ukrainian prime minister Arseniy Yatsenyuk says he will be "the most unpopular prime minister in the history of my country".
Many of the usual arguments are advanced for the terms, such as the emergency need to "stabilise government finances". But on the fund's own admission the implementation of its policies will lead to an increase in Ukraine's public sector deficit in the short term, and the deficit "will decline only gradually thereafter". Preserving the private-sector banks seems to take precedence over the stated objective of improving government finances. The state will be expected to recapitalise the failed private banks using public resources.
It should be remembered that the actual beneficiaries of all such IMF bailouts are not the people of the country concerned but their creditors, the holders of government bonds and the large banks. The bondholders are set to be paid out in full despite their failed bets. Operating within the "Washington consensus", IMF bailouts are a supranational form of loan-sharking. Their impact is familiar to hundreds of millions of people in developing countries, especially in Africa and in Latin America. They are also increasingly familiar to the populations of the European periphery whose living standards have been driven lower throughout the current economic crisis.
<後略>

2. ‘Electronic Journal’ より
「スティグリッツの世銀・IMF批判」
ジョセフ・スティグリッツという米国の高名な経済学者がいます。彼は、1993年3月、発足後間もないクリントン政権の大統領経済諮問委員会の委員に任命され、1995年6月には同委員会の委員長に就任したのです。
 そして、1997年には世界銀行に移り、2000年1月までの3年間、世銀の上級副総裁と主任エコノミストを同時に務めたのですが、世銀在職中から当の世銀とIMFのあり方について痛烈な批判を繰り広げたのです。
 何しろ、スティグリッツは、2001年には情報経済学という新分野での業績で、ジョージ・アロフ、マイケル・スペンスと共にノーベル賞を受賞したので、彼による世銀とIMFの批判は
国際的な注目を浴びることになったのです。
 2002年には、スティグリッツは『グローバリズムとその不満要因』という本を米国で出版し、公式に世銀・IMF――とくにIMF批判を展開したのです。この本の日本語版は次の題名で
出版されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
        ジョセフ・スティグリッツ著/鈴木主税訳
 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 スティグリッツは、この本のなかで、IMFの推し進めた資本市場の自由化は、米国の金融セクターのために広範な市場の開拓に寄与した反面、その本来の使命であるはずのグローバルな経済の安定には何ら寄与しなかったとしています。さらにIMFは、G7の債権国の代理者であるとし、貧しい国々が貧しいままであるような制度設計をした米国の金融セクターに対する不満を表明
しているのです。
 世銀やIMFは、開発途上国の経済開発に対し、貿易の自由化資本の自由化、国内の経済の自由化、民営化などのグローバルな市場経済至上主義を押し付けたのです。すなわち、構造改革とい
う改革の強要が行われたのです。
 しかし、開発途上国にとっては、貿易の自由化による市場開放は、国際競争力のない産業分野に滅的な打撃を与え、雇用体系を破壊し、資本の自由化は銀行システムが機能していない途上国
に大混乱をもたらしたのです。
 1997年のアジア金融危機でもIMFは被害国の救済に「構造調整融資」と称して過激な改革と自由化の措置をとることを条件に融資を行っています。しかし、こうした自由化の押し付けは無理が多く、かえって被害国の経済を壊してしまう結果になっている――スティグリッツはこのように主張しているのです。
 日本は途上国ではないし、もちろんIMFから融資など受けていませんが、同じようなことを米国から押し付けられ、やらされていないでしょうか。いわゆる小泉――竹中改革なるものは、まさにこのグローバリズムの先兵であるといえます。スティグリッツはこういうやり方を批判しているのです。
 また、スティグリッツは、アジア的とされる日本の縁故主義や不透明な企業統治についても頭から否定せず、その効用を認め、当時日本の大蔵省が提案してすぐ米国に潰された「アジア通貨基金」の発想にも賛意を表しており、日本についてはとても理解があるのです。
<後略>
by shin-yamakami16 | 2014-07-30 22:00 | Comments(0)