原爆と米「核艦艇」寄港問題
2008年 08月 10日
長崎原爆キノコ雲
'NO' と言えぬ日本政府
山上 真
この8月、久しぶりに日本に居て、広島、長崎の「原爆の日」を振り返ることができた。それぞれの「記念式」が一層充実した形で,整然と執り行われるのは貴重なことだ。
筆者は、これまでに広島を3回、長崎を2回訪れたが、行く度に原爆記念館・資料館が整備され、充実しているのを見てきた。新しい資料、写真などが内外で発見され、加えられている為だろう。
一方では、被爆者の高齢化が進み、「語り部」が少なくなっていること、被爆記念物を穢したり、壊したりしようとする不逞の輩が増えてきているという問題が生まれている。
広島爆心地近く
今年は、長崎在住で、その弟が未だに行方不明だという被爆者代表・森重子さんの、「平和を守る為に憲法九条を決して変えてはなりません」という訴えかけがとても印象に残った。式典でこの言葉を聞いていた福田首相はどう思っただろうか。自民党内の圧倒的に多い改憲派を説得して、きっぱり改憲を拒否するような姿勢を示せれば、北京でのオリンピック開会式から直行して、ここに出席した意味があるのだが。
先日、戦争直後に広島・長崎に入り、軍の命令で、原子爆弾の破壊力を記録する為に写真撮影に従事していたアメリカ軍人ジョー・オダネル氏と、死後、その遺志を継いで、米国で原爆被害の悲惨な実態を訴えている息子の「ドキュメンタリー番組」を、『NHK総合TV』が放映していたが、その中で、原爆投下を命じた当時の大統領トルーマン氏さえ、「前大統領(ルーズベルト)の決めたことを引き継いだだけで、自分としてはやりたくなかった」という趣旨の発言をしたという。<参考>
しかし今なお、6割近くの米国人は原爆投下について、何も悪いことはしていないと思っているようだ。国際法では、戦争に於いて、一般市民を巻き込む大量殺戮、所謂「ジェノサイド」は、戦争犯罪とされているが、彼らにはこのような「罪の意識」がまるで見られない。だからこそ、原爆のみならず、焼夷弾を住宅密集地に大量にバラ撒き、数十万人の人々を焼き殺すことができたのであろう。百万人の犠牲者を出しているイラク戦争という暴挙もこの文脈で説明がつく。
歴代日本政府が、太平洋戦争と、その戦禍についての日本の責任を曖昧にしてきたことが、今度は米国に対して、その非人道的行為の責任を何ら追及することなく曖昧にし、戦後の「対米隷従」とも思えるような卑屈な外交姿勢を取らせることになった。
放射能漏れを起こした米原潜ヒューストン
沖縄、佐世保や横須賀に寄港している米国「核艦船」即ち、原子力潜水艦、航空母艦が再三にわたって放射能漏れ事故、火災を起こしているのにも拘らず、日本政府はまともな抗議すらしていないのはどういうことか。
火災を起こした横須賀配備予定の原子力空母ジョージ・ワシントン
直接的な核事故の危険性ばかりでなく、米艦艇に積載していると考えられる核ミサイルなど核兵器の存在が、ひとたび極東で緊張状態が高まれば、相手方の「第一撃」を誘発し、三度、「ヒロシマ・ナガサキ」を再現しないとは誰が言えるのか。米国政府は日本への「核持ち込み」を否定しているが、それを「信じたい」のは日本政府だけで、中国など他国がどう思っているかは別問題である。
'I have a DREAM' --- それは、第1段階で、「日米安保」を解消し、朝鮮半島、沖縄を含む日本からの米軍全面撤退、同時的に、極東全ての国々・米国が参加する不可侵・集団安全保障条約の締結である。第2段階では、アジア・太平洋地域での全面「非核化」を実現すること。最終的には、世界規模の「核兵器廃絶」を実現する。
この願いを少しでも早く実現できるように、皆さんと共に頑張りたいと思っている。 (2008.08.10)
<参考> NHK 「解かれた封印・米軍カメラマンが見たNAGASAKI」
http://www.nhk.or.jp/special/onair/080807.html
<写真> Wikipedia, 日本図書センター, The Gazette, CNN.com 掲載のもの
by shin-yamakami16
| 2008-08-10 16:12