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by shin-yamakami16

麻生首相の国際的「評判」

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「世襲議員」と日本政治の後進性          
                            山上 真

 福田氏の、又もや思いがけない辞職の後、世界的「経済恐慌の恐れ」の最中の、訳の分からぬ 5氏 の掛け合い漫才じみた「総裁選挙戦」を経て、割合すんなりと「麻生首相」が誕生した。マンガの大好きな、「やや風変わりな」政治家しか、今の自民党には、票を稼げる「玉」が居ないということだろうか。
 
 日本では、放言癖のある、しかし、ひょっとすると「オタク」の若者の心を惹き付けるかも知れない、という程度の評判の「新総理」で通るだろうが、海外では、「札つき」と言ってよい程、よく知られている政治家である。
 
 9月25日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙社説は、
 「日本の新首相アソー・タローは、好んで思い出される訳ではないが、隣人たちに、喧嘩早い国家主義者として、よく知られている人物だ。2005年から2007年にかけて、外相として、中国・韓国との関係を悪化させて極東全体の緊張を高め、戦前日本の植民地主義を礼讃、戦時中の残虐行為を正当化し、中国を危険な軍事的脅威と表現した」
 「今や、長期政権を維持する自民党の権力ブローカーたちは、たった2年間に4人目の首相として、彼を選び、『実利主義者・アソー』にブランド替えしたのである」
  同紙は、経済的に日本が生き延びる為には、「醜い過去」と訣別し、中国を始めとするアジア各国と協調して、経済的実利主義を貫かねばならないことを力説する。そして、その方法でのみ、麻生首相の成功の可能性が残されているとする。
 
 英国のBBC、ガーディアン紙など各紙も、'right-wing' , 'hawkish' (右翼・タカ派)という見出しで、新首相を形容している。

 麻生氏の過去の暴言としては、朝鮮占領時代の「創氏改名」を、恰も朝鮮人が望んだものとした発言、天皇の「靖国」参拝を求める発言、従軍慰安婦問題での「日本軍による強制的な性奴隷化」否定発言など、枚挙の暇がない。こうした同氏の「過去の遺産」をどのように清算できるのかは、海外の目が注視する所だ。

 麻生氏の家系・経歴について、今後の論議を呼びそうなのは、祖父の代で、即ち1940年代に於いて、「麻生炭坑」経営の為に、約8,000人の朝鮮人労働者を強制連行・酷使したことである。もし仮りに、「麻生政権」が、次の総選挙後も継続するようなことがあれば、この事実について、麻生太郎氏の説明を、国際的に求められる時期が来ることは間違いない。

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 麻生氏の場合もそうであるが、所謂二世議員・閣僚の多さは、政治の革新・新陳代謝を阻む点で、由々しき事態と言わなければならない。今度の内閣でも、18閣僚中、9人が二、三世議員だという。彼らの多くは、「政治家社会」という「ぬるま湯」環境の中に生きて、一般大衆の生活実態を理解する所からは程遠い。政治家という職業の、「儲かる仕事」という面が、日本では目立ち過ぎているのではないか。

 フランスの『ル・モンド』紙(9月22日付)は、日本では、政治家は、先祖代々の家業のように,世襲的に引き継いでいる、と驚きをもって伝えている。衆議院では、3分の1以上の議員がそうであると。

 「手弁当」とまで言わないにしても、現行議員歳費・手当を半減させ、政治献金名目の「私利」を厳しく規制し、真に「国民の為に」尽くす議員・政党を支えようではないか。よく、「国家の為に」云々を口にする向きもあるが、これはかなり嘘嘘しい。政治というものが、犠牲的精神なしには成り立たないものになった時に初めて、国民の許に返って来るのではないだろうか。
 
 猶、政治に要する経費節減を、議員定数削減に求める動きがあるが、少数政党の消滅を狙っている節があり、極めて危険な動向だ。真の民主主義実現の為には、一定の議員数は必須である。
 
 今の日本について端的に言えば、一方では年間3万人を超す、主として貧困を原因とする自殺があり、他方には、安全性の保証が全くない、横須賀の米原子力空母「ジョージ・ワシントン」母港化問題を抱えている。いずれも極めて深刻な問題として、我々の目の前にある。

 次の総選挙では、現行憲法を維持・徹底化を図る政治勢力が増えることを願って已まない。経済格差社会を是正し、平和を守ることが、何よりも増して求められているからだ。                        (2008.09.26)
 

<写真> The Guardian, The Independent 紙掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-09-26 21:05