世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2008年 10月 ( 5 )   > この月の画像一覧

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南オセチア・グルジア紛争が齎した「新冷戦」
                            山上 真

 去る8月7日、グルジア軍が南オセチアに侵攻して、ロシアの反撃、グルジア国内への進攻以来、3ヶ月が過ぎようとしている。
 この間、あからさまな事実を無視して、恰もロシアが侵略を始めたかの如き論説が、日本のNHKなど、マス・メディアを席巻しているのは、何とも不思議極まる現象である。欧米メディアは、ロシアの過剰進攻を批判しつつも、グルジア・サアカシュヴィリ大統領の「軽はずみな」行動を厳しく非難していることで、ほぼ一致している。

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 10月27日付読売新聞コラム「地球を読む」で、山内昌之東大教授が、現代史に於ける「グルジア戦争」の重大性を指摘している。
 「グルジアが不用意にロシアを挑発した8月の戦争は、国際政治の構造を変え、ロシアとアメリカとの勢力分割線をカフカス(コーカサス)にも引く新冷戦の到来を予知しかねないほど深刻なものだった」
 
 氏は、この戦争が、国際金融危機と共に、世界史の分岐点になるかもしれない事象なのに、日本の麻生首相を始めとして、外交関係者の間で、まともに議論すらしていない現状を危んでいるのは、誠に正鵠を射た見解である。ロシア側の「過剰反撃」によるグルジア国内の戦災被害ばかり強調されて、先にグルジア軍によって破壊・殺戮された南オセチアの被害状況を無視してきたのは、異常な片手落ちなのであるが、最近になって、漸く事態を冷静かつ客観的に見つめる動きが出てきた。
 
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 英国BBCは、10月29日、国際問題調査機関 'Human Rights Watch' に同行取材した詳細な記録を、ニュースや、論説番組 ' Newsnight' で放映した。
 
 このBBC放送に依ると、複数の目撃者の話として、グルジア軍戦車が、直接、アパートの建物に幾発もの砲撃を加えて破壊し、戦火を逃れて脱出しようとする車、人々に、ロケット砲、銃撃を加え、結果的に、300人以上が殺された、というのである。この数字は、南オセチア首都ツキンバリの全人口の1%である。しかも、掃討作戦に従事したグルジア兵士は、NATO軍の軍服を着ていたというのだ。
 この一連のグルジア軍武力行使は、明らかに、戦争犯罪を禁じた『ジュネーヴ協定』違反の可能性が大ということになる。
 
 この件について、デーヴィッド・ミリバンド英外相は、グルジアの侵攻を、「向こう見ずな」行動と断じ、グルジア政府に「戦争犯罪」の可能性を警告したということだ。
 
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 欧米諸国及び日本は、数千億円規模のグルジア再建援助に乗り出しているが、以上に述べたような事実を確認し、サアカシュヴィリ政権の責任を追及した上で行われなければ、「国際法の正義」が著しく損なわれることを銘記するべきだ。
                         (2008.10.31)

<写真> BBC News より

<追記1> 最近になって、グルジアの隣国ウクライナのユシチェンコ大統領が、この数年来グルジアに戦車、ミサイルなどの兵器供与を続けていたことが明るみになった。この事は、ティモシェンコ首相の「ロシアを刺激することを避ける」政策と衝突することになり、国内分裂の大きな要因になる恐れがあると言われている。

<追記2> 11月29日の『毎日』、『読売』両紙によると、グルジア国内でサアカシュヴィリ大統領の開戦責任を問う声が高まってきている。ニノ・ブルジャナゼ前国会議長は政府に対して、「ロシア軍との軍事衝突は何故避けられなかったのか」、「誰が紛争の政治的、軍事的、経済的結果に責任を負うのか」など43項目の質問状を突きつけたという。そして、新たな野党を結成して、議会で「サアカシュヴィリ強権政治」を追及を強めて行く構えだ。一方、11月7日には、大統領辞任を求める街頭デモも予定されている。

 
by shin-yamakami16 | 2008-10-31 09:34 | Comments(0)
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米国大統領選挙(5)
                              山上 真

 あと2週間を残すだけになった米国大統領選挙戦は、マケイン、オバマ両候補の間の、一層激しい口撃と中傷を伴って展開されている。第三回討論会を、政策論争に絞って優位の裡に通過したオバマ氏は、以後の全ての世論調査で、3〜14%という差を保ったまま、終盤戦を迎えている。一方、マケイン氏は、「経済破局の余波をもろに被って」苦境に立ち、出口を相手側への個人的中傷に求めたが、「根拠薄弱」故に、これまでの所、不首尾に終わっている。しかし、極めて不人気なブッシュ大統領の流れを汲む同氏としては、オバマ氏の「難点」を突くしか手立てはなく、最後まで醜悪な手練手管を、我々は目にすることになるだろう。以下は、中盤から終盤にかけての選挙戦の詳細である。

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KGO-AM radio 10月4日 聴取者(女性)、オバマをヒトラーに喩えて、軍最高司令官になったら、とても怖いと言う。キャスターは丁寧に,誤りを指摘していた。
別の男性は、オバマが「イスラム教的社会主義者だ」と言って、やはり、諭されていた。

10月5日 Gallup 50/42、Zogby 48/44 でオバマ優勢とする。
 ABC news: ペイリン候補が、「オバマは過去に於いて、テロリスト・グループと繋がりがある」と、メディアに流し始めたことを伝えている。フランスのラジオ局 'FRANCE INFO' も同様のニュースを伝えている。
マケイン陣営は、支持率が低迷していることに苛立って、手段選ばずの手に出ているようだ。

FOX: オバマの大学時代の行動が秘密めいて怪しい、とする。何ら根拠を示さず、イスラム原理主義との繋がりを匂わす作戦。マケイン陣営のオバマ人身攻撃に呼応した番組。(10月6日)
相変わらず、FOXは黒人「過激派」教会指導者ジェレマイア・ライト氏との関係を衝く放送を執拗に流す。(10月7日)
一方で、FOXは、株価1万ドルを割ったことが、マケインに打撃を与えているとする。
BBC news:ノース・カロライナ州のオバマ遊説について現地ルポ。マケインの地盤に乗り込んでの、オバマ候補の余裕ある演説。保健制度の改革を訴える。有色人種系の支持ばかりでなく、白人の強い支持を受けている点をレポートしていた。(10月6日)

Gallup調査:オバマ、マケインとの差、8%に戻る。一般に、差が開くばかり、とされる。マケイン陣営の苛立ちが明白。

10月7日、テネシー州ナッシュビルで二回目の大統領候補討論ー市民との対話形式
経済状況と、外交問題に焦点が当てられる。マケインの攻撃的姿勢に対して、オバマ、前回より落ち着いた、力強い印象を与える事に成功したようだ。マケインが経済政策に失敗したブッシュとの違い、距離を強調するのに対して、オバマは、両者が本質的に相違がないことを指摘し、これが効いている。
 CNNの直後調査によると、無党派層の54%がオバマを勝利者とした。マケイン支持は28%に止まった。

英国、フランスのメディアは、軒並み、オバマの優勢が固まりつつあるとしている。 (10月8日)

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第二回目の討論会の後、オバマーマケインの支持率差が広がる。Gallup 52/41
Zogby 47/45、 CNN 53/45  オバマの「地滑り的勝利」を予想する向きもある。(10月9日)

仏『リベラシオン』紙 (10/10) インデアナ州でのオバマ候補の遊説の様子をヴィデオで流す。共和党の地盤での熱狂的な支持。聴衆の黒人、白人の比率、2 対 1か。

FOX radio (10/10): テロ、対外関係の点から見て、オバマは「危険な選択」とする言葉を頻りに流す。

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各メディア、一斉に 'Palin Trooper' 事件で、ペイリン知事が職権乱用したことをアラスカ州調査委員会が判定したと報道する。マケイン陣営にとって、少なからずの打撃になる可能性が指摘されている。(11/10)

マケイン候補の集会で、参加者が劣勢の苛立ちを、露骨な「オバマ中傷」の形でぶっつけていることが明らかとなる。「オバマは、テロリストだ」とか、「社会主義者だ」など。FOX グループが焚き付けているように思われる。マケイン氏自身もこういう傾向に当惑気味のようだ。   (11/10)

Gallup 調査 オバマとマケインは、50/43 で僅かにオバマ後退。ペイリン、「Trooper 事件」で「黒」の裁定が出て、オバマが有利になる筈なのに、少し不思議な数字に見える。考えられる要因としては、FOX、共和党集会でのヒステリックな迄のオバマ叩き作戦が功を奏している可能性がある。 (10月12日)

ABC news :オバマが政策論争を中心に遊説しているのに対して、マケインは相手への個人攻撃を主眼としている、という印象を選挙民に与えている。前者が 68/35 、後者が、26/59 という比率。 (10月12日)

KGO-AM radio : 解説者、マケインは、いつも 'Country first' (先ず国家)と言っているが、何故 'People first' (先ず人民)ではないのか、と怒っている。
                            ( 10月13日)
Washington Post - ABC 世論調査:オバマ 53%、マケイン 43% でリード拡げる。

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KGO-AM radio :解説者、マケイン演説会での狂気じみた雰囲気を語る。「オバマは、テロリストだ。やつを殺せ、殺せ!と、幾人ものマケイン支持者が叫んでいる。何というザマだ。クー・クラックス・クランと同じじゃないか。こういう類の無知な連中がマケインの支持者なのだ」

ニューヨーク・タイムズ - CBS News 世論調査:「今日大統領選挙があるとしたら」オバマに投票するのは53%、マケインには、39%。かなりの差がついている。
マケイン不支持の最も大きな理由は、副大統領候補者としてペイリン・アラスカ州知事を選んだこと、そして、オバマに対する激しい個人攻撃だとする。                              (10月14日)

第三回目討論会:マケイン、オバマへの個人攻撃を含めて、強い調子で口論する。オバマは、支持率でリードしている自信を持って、冷静に、しかも的確に応答した。特に、*「エイコーン」問題、「テロリスト」批判問題には、逸らすことなく丁寧に応えた。直後のCNN世論調査では、58/31でオバマ優勢とした。CBSは53/22で、やはりオバマに軍配を挙げた。(*注参照)

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KGO-AM radio:聴取者の声。「共和党支持者ブライアン、オバマを支持することにした。理由は、マケインがブッシュの政策から離れていないことと、個人的攻撃がひど過ぎることだ」
 次の高齢女性も、ほぼ同じ理由でオバマ支持。

10月16日Gallup調査:49/43 でオバマ優位。以前と余り変わらず、この時点では、最終回討論会の結果が反映されていないようだ。
 Zogby 調査では、オバマ、マケインの差が少し開いて、49/43.5 とする。

『ワシントン・ポスト』紙、次期米大統領として、バラック・オバマを支持すると発表した。(10 月17日)
 マケイン氏の問題点として先ず挙げたのが、「用意の出来ていない」副大統領候補ペイリン女史の「無責任な」指名であった。同氏は、財政、人権抑圧、環境保護などの諸問題で、人脈的に見て、ブッシュ大統領の誤った政策を引きずる恐れがある。
 オバマ氏は、経験という点からみれば、不充分な面があるが、「公正さ」と「財政健全性」という方向に導いて行く「偉大な」大統領となる資質を持っている。我々は彼に「壮大な希望」を託せる。彼は「しなやかな知性」の持ち主であり、複雑な問題をきめ細かく把握し、和解と合意形成の際立った手腕を備えている。

フランス 2 TV 米大統領選・第三回討論会:「オバマ優勢」の話の後、米国保健事情を放映。4000万から5000万人の無保険者がいる。 慈善団体の無料歯科治療 朝6時から数百人が列を為す。時間制限の為、大半の待っていた人々、この日は受けられず。「また明日の朝来て下さい」(10月17日)

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        オバマ候補支持を表明したジョニー・アリディー

KGO-AM radio:若い男性聴取者、「アメリカ大統領は白人か、アジア系であるべきで、黒人は駄目だ。マケインのウェブサイトによると、オバマはアフリカ生まれということだ」これに対して、解説者は、「いや、オバマはハワイ生まれの米国人だ。君の言うことは、人種差別に他ならないんだ」と、懇切丁寧に、諭すように云う。(10 月18日)

10 月18日付『ロサンジェルス・タイムズ』紙、「彼は米国の願望を代弁する有能な、自信に満ちた指導者だ」として、オバマを大統領として推薦した。
 同日、『シカゴ・トリビューン』紙も、オバマ支持を打ち出した。同紙が民主党大統領候補者を推したのは、161年の同紙の歴史上初めてということだ。
 共通する論調として、マケインの誤りは、副大統領候補に、セイラ・ペイリンという「用意のない」人物を選んだ無責任さとした。

FOX radio:遊説中のオバマ候補に、年収25万ドル(約2500万円)以下の小企業主への課税問題を尋ねたJoe The Plumber (配管工ジョー)の件を、マケイン氏が、オバマ氏への攻撃材料として使う。「オバマが当選すれば、ジョーなど企業主が税金に苦しむ」という訳だ。オバマは懇切丁寧に、彼が課税を免れることを説明していたのだが。(10月18日)

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英紙 『デイリー・テレグラフ』:元米国防長官コリン・パウウェル(共和党)が、「オバマに対する醜い個人攻撃」に義憤を抱いて、バラック・オバマ支持を表明するだろう、と報じた。(10月18日)

『ロサンジェルス・タイムズ』紙:マケインが、全国ラジオ放送を通じて、「オバマは米国を社会主義国に変貌させようとしている」と、非難した。(10月19日)
 オバマ候補が、課税方針で、95%の国民の減税を約束する一方、富裕層への増税を公約していることから、FOX radioが「オバマは社会主義者だ」と頻繁に言っていることを、マケイン候補は改めて追認、攻撃材料にし始めたようだ。
 
ABC news 世論調査:ACORN、 *Ayers問題、いずれの件も、6対4の割合でオバマに問題なしという結果になった。ペイリン候補の選択については、62%が、マケイン氏の信頼性が損なわれたとした。(10月21日)



<注> ACORN問題:シカゴの、オバマ氏が弁護士を務めていた選挙登録推進団体 'ACORN' が、「多数の実体のない登録によって,民主党側を有利にしようとした」というもの。これは、先日、連邦最高裁が根拠なしとして、共和党側の訴えを却下した。

 Ayers問題:現イリノイ・シカゴ州立大学教授William Ayers氏は、ヴェトナム戦争当時、反戦運動で「過激な闘争」に走っていたが、「オバマ氏は、『テロリスト』の彼と親密な関係にあった」とするもの。オバマ氏は当時8歳に過ぎず,一般に否定されている「疑惑」だ。


<写真> The Washington post, Los Angeles Times, Chicago Tribune,
The Guardian, The Times, The Independent, The Daily Mail. The Daily
Telegraph, Le Figaro 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-10-21 22:24 | Comments(0)
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日本は「給油」よりも民生援助を
                             山上 真

 この10月初めから、アフガニスタン戦争の平和的解決の動きが急に浮上してきている。主として英国メディアが伝えている幾つかの情報によると、カルザイ政権が真剣に、サウジアラビア政府の仲介で、タリバン代表者と「和平」をめぐって接触しているようである。このことは、日本の一部メディアも既に報道し始めている。

 今、アフガニスタンの状況はどうなっているのであろうか。
 英国紙『タイムズ』(10月5日)は、現在のアフガニスタンでの戦闘の一断面を次のように描写している。
 
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 「第2落下傘連隊は、第16空挺旅団の、他のどの部隊よりも多くの生命を失った。6月に全部で11人、1週間で5人という時もあり、10人の内1人の割合で仲間を失ったのである」
 
 <アンドルー・ラモント伍長の話>
 「12年間の知合いだった友人を何人も亡くした。他の者も手足を失っている」
 「つい最近の犠牲者は、カジャキ・ダムをタリバンの攻撃から守るパトロール中に路傍爆弾で死んだニッキー・メイスン軍曹だ。僅か数十メートル離れた所で爆発音を聞いたんだが、どうしようもないショックだ。帰営して、19年ぶりに煙草に火を点けたよ」 
 「アフガン南部ヘルマンドに、2年前に派遣された時、当時の国防相ジョン・リード氏は、一発の銃弾も発射することはないだろう、と述べたのだが、状況は全く異なっていた」

 <マーク・カールトン・スミス司令官の話>
「現在では、当時の2倍の兵員を擁し、英国が海外に派遣した軍隊の中でも最強の装備を誇る部隊だ」
 「しかし、タリバンも戦術を変えている。即製爆薬(IEDs) を度々使い、パキスタンのみならず、チェチェン、ウズベキスタンから外国人戦闘員を雇っている。更には、英・米軍によって訓練されたアフガン国軍からの逃亡兵を、月額90ポンドの戦闘手当の倍額を提示して募ろうとさえしている」
 「タリバンは、ますます不人気なカブール政権と、米英軍の誤爆による死傷者に対する民衆の怒りに乗じており、彼らが権力を握った時には、これまでの厳しい戒律を押し付けない、などと民衆に約束している」

 こうして、英国軍の作戦が一定の功を奏しているのにも拘らず、ヘルマンドの半ばが依然としてタリバン支配下にあり、その戦闘力は衰えていないというのである。
   
 最初に述べたように、アフガンでの全般的混乱を収拾しようとする動きが漸く表面化してきた。前述の英国軍現地司令官カールトン・スミス准将は、NATO軍のアフガンでの最終的勝利はあり得ず、唯一の前進的解決の道は、タリバンとの話し合いによる方法だと提言している。これは、10月6日の英国各紙が大きく報道したものである。
 
 米国防長官ロバート・ゲイツ氏は、カールトン・スミス准将の発言「西側の軍事的勝利は不可能」を、「敗北主義者」の言として非難している。しかし、ゲイツ氏も、アフガン政府と協同する用意のあるタリバン指導者との話し合いは必要だとしている。
 
 一方のタリバン側は、カルザイ政権を米国の「傀儡政権」と看做し、全ての外国軍が撤退しない限り、「和平」は不可能だとしている報道もある。(10月 5日、Daily Mail 紙)

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          Karzai 大統領と実弟 Qayoun 氏

 しかし、10月8日の『インディペンデント』紙、『テレグラフ紙』によると、カルザイ大統領が、実弟の Qayoun 氏を仲介者として、サウジアラビアでタリバン代表者と密かに「夕食会」で接触しているということだ。この事実は、英国も承知しており、和平実現後の「新政府」での、タリバン代表の閣僚などの「地位保証」にまで話が及んでいる模様だ。勿論、「アルカイダ」との関係断絶が前提である。
 
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          タリバン指導者の一人 Hekmatyar 氏
 
 一方、8日の『毎日新聞』は、アフガン副大統領カリム・ハリリ氏が、単独記者会見の席上、「タリバン最高指導者オマル師に対して、アフガン政府が和解交渉を開始した」と語ったことを伝えている。タリバン側が、「武装解除」・「憲法承認」などの条件をのめば、政治勢力として受け入れるということだ。
 こう見ると、幾つものルートで和平交渉が始まっていると思われる。紆余曲折は当然予想されるが、大いに期待したいものだ。

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            戦禍の中の女性と子供たち
  
 日本政府は相変わらず、米国との関係を基軸として、「給油活動再開」ばかり強調しているが、これでは近い将来を見通しているとは全く言い難い。こうしたNATO軍への物的支援は、誤爆などによるアフガン民衆への被害を齎すだけだ。
  日本政府・外務省は、急展開しつつある情勢を把握し、アフガン新政権の誕生を見据えて、「民生への直接支援」となるような方策を具体化するべきだ。そのことが唯一、アジア民衆の期待に応える道ではないか。 (2008.10.15)



<写真> The Guardian, The Daily Mail, The Daily Telegraph 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-10-15 17:08 | Comments(0)
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「GMフード」反対の闘士たち
                            山上 真
 
 日本でも最近、アメリカから輸入している大豆が、遺伝子組み換え作物かどうかで、議論が高まっているが、米国で生産される大豆の92%が、このGMO( genetically modified organism ) であることが判明し、豆腐などの原料として輸入している日本にとって、大きな問題となっている。米国では、トウモロコシの80%、綿花の86%がGMOとなっている。最近では、中国も、このGMO大国に仲間入りしていることは,注目されるべきだ。(注参照)

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 虫害に強く、生産量が「飛躍的に増える」ことが、GMOの生産に傾く理由であるが、果たして安全性が確保されているのかは,依然として疑問符を付けられたままだ。GMOが除草剤への耐性が強い為、残留農薬の問題が生じること、アレルギー誘発物質の出現、そして、抗生物質に対する耐性などの問題が指摘されている。いずれにせよ、GMOを長期的に摂取した場合、予測出来ない健康への悪影響の可能性を排除することが困難とされている。

 更には、遺伝子組み換え作物が、周囲の環境に与える影響が深刻視されている。普通の作物が、GMOの花粉などによって「汚染され」、回復不可能な自然環境破壊に至る恐れがある。GMOを食べた虫類が死に、それらの虫を餌にしているヒバリなど鳥類が飢え死にしてしまう可能性も語られている。こうして、自然界の生態サイクルが大きく狂ってしまうことが、懸念される。

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                              (Greenpeace)

 現在、GMOを「種子」輸出の形で、世界的に展開させているのが、米国ミズーリ州セントルイスに本社を持つ多国籍化学メーカー「モンサント」社である。この会社は、商品 PCB と、ヴェトナム戦争中に米軍によって使用された、ダイオキシンを含有する「枯れ葉剤」で悪名高い。

 英国のチャールズ皇太子は、夙に「反GM フード」のチャンピオンであることが知られている。自ら有機農園を経営し、Duchy Originals などの食料品を売り出している皇太子は、「肥満問題の解決には、『マクドナルド』を禁止することが不可欠だ」と発言して物議を醸したこともある。

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 この皇太子が先日、インドのニュー・デリーで開催された「GM反対」講演会で披露したスピーチが、大きな反響を呼んでいる。
 「私がこの年で自分の主張に固執する理由は、自己の健康の為でなく、もし我々が自然と協調しなければ、この地球上で生存する為に必要とする平衡を実現することが出来なくなるからです」
「遺伝子組み換え農業は、世界的な道義問題であり、世界的な食料問題解決の間違った方法です」
 「GMは道徳なき商業であり、人間性なき科学です」
 こう述べた後、彼は直ぐにインドで自殺している数万人の小規模農民の問題に言い及んで、GM作物の種子の高騰、入手難が農民の困窮を齎している、と結論づけた。

 チャールズ皇太子は、前述の「モンサント」社が、'Bollguard' と呼ばれる遺伝子組み換え綿花の種子開発で特許を取り、インドに於けるその独占的地位によって、「価格吊り上げ」を行い、そのことが、インド農民の大量自殺事件に繋がっていることを示唆している。 (The Independent, 5 October 2008)

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 ブレア首相当時から、英国労働党政権は、GMOに対して肯定的な態度をとっており、労働党議員の中には、チャールズ皇太子の反GMO姿勢に、「無知」或は「ラッダイト運動派」という烙印を押している者もいる。19世紀初頭に、産業革命に反対して、機械打ち壊しに走った「連中」と同じく、時代遅れの者という訳である。しかし、皇太子は、そうした非難・中傷に怯むことなく、最近は寧ろ、反GMO姿勢を一層先鋭化させているように見える。

 ここで連想される人物が、フランスの戦闘的「反GM」運動家ジョゼ・ボヴェ氏だ。彼は、2004年7月に、「緑の党」活動家数千人と共に、フランス南部の「GM試験栽培畑」のトウモロコシを刈り取ったり,引き抜いたりする直接行動を起こして、逮捕された。それに先立って、「反グローバリズム」を掲げ、「グローバル化の象徴」マクドナルド店を破壊した罪で収監されてもいる。

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 José Bové は、「農業研究センター」の研究者であった両親が、彼が三歳の時に、米国カルフォルニア大学バークレー校に招かれた為、そこに数年滞在し、英語が堪能である。十代の頃には、「パリ・五月革命」の強烈な影響を受けた。学生時代は、「マルクスよりバクーニン」に傾き、以後、兵役拒否、NATO軍事基地拡張反対、フランス核実験阻止の為の直接行動に身を挺する。
 1987年に彼は「農業の企業化反対・土地に根ざした生産」を掲げる農民同盟( Confédération Paysanne ) を創設し、1997年からは、GMOに反対する運動を本格化させる。

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 彼がGMOに反対する理由について、次のように述べている。
 「世界の農家の大多数は簡単な道具で働いているが、GMOはそういう農業と関係なく、工業的農業だ。発展できたのは特許のおかげで、農民は毎年、使用料を払わなければならず、その土地の伝統的な農業は破壊される。今の国際法は大きな組織、多国籍企業しか守らないようになっていて、まともな農民はGMOやダンピングで潰れるしかない。農業の世界に競争の論理を持ち込んではならない」

 大学時代に哲学を学んだことが、「グローバリズム」に対抗する農民運動に、新たな理論的裏付けを与えることになった。「直接行動」によって幾度となく検挙されても怯まず、不屈の闘志を持続させている。2007年の大統領選挙には獄中から出馬し、4%の支持を集めた。

 今日の日本でも、身近に「食の安全」を揺るがす数多くの問題が出てきている。外国から持ち込まれるものも少なくないが、国内の生産者の露骨な「利潤の論理」による、一般消費者の被害も莫大なものに上っている。こうした中で、以上に述べた二人の「仕事」から、学ぶべき事が少なくないと思われる。生産者は、「道義・人間性」が先ず求められているのである。       (2008.10.08)


<注> GMO が日本で製品化されている食品:
   大豆:食用油、味噌、醤油、豆腐
   菜種:食用油
   トウモロコシ:コーンスターチ、缶詰、ポップコーン
   ジャガイモ(冷凍輸入):フライドポテト、ポテトチップス

<写真・資料> The Independent, The Daily Mail, Le Figaro, Wikipedia

 
by shin-yamakami16 | 2008-10-08 11:46 | Comments(1)

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 ブッシュ大統領は、二人の次期候補者を呼んで、金融危機救済策を決めたのだが...


米国大統領選挙・経過(4)                    山上 真

 選挙戦が本格化してから、ほぼ一か月経った。当初は、マケイン陣営が,副大統領候補者として「異色の」ペイリン・アラスカ知事を擁立したことが話題を呼んで、支持率を上げていたが、九月中旬以降、経済危機が表面化するにつれて、形勢は劇的に変わって来ている。以下に事実経過を纏めてみた。                    
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 ペイリン候補の「名演説」の後、ワシントン・ポスト紙/ABC Poll 47/46 でオバマ優勢とする。しかし、他の多くの世論調査では、49/44 でマケイン優勢。                                     (9月10日)                           
 オバマ氏、「豚に口紅を塗るようなもの」で、マケインの言う「改革」に実体が無いことを批判したのに対して、「ペイリンを侮辱するもの」と共和党側非難する。
                              (9月10日   (仏)保守系フィガロ紙:フランス人の80%はオバマに投票する。(9月11日)                               
 オバマのTV広告:マケイン氏への攻撃「マケインは変化を口にしながら、コンピュータも使わなければ、e-mailも送らない」(9月12日) 

Gallup調査: 48/45でマケイン優勢             (9月12日)
                             
 この所、ABC TVによるペイリン・インタヴューの内容について、各局共に、話題に取り上げている。無駄な投資計画 'bridge to nowhere' に賛成した問題。 ペイリンの家庭生活と副大統領候補受諾の問題:女性の声「私だったら受けないわ」ペイリンの姿勢が改めて問われる。'Bush Doctrine' 「米国の安全が損なわれる恐れが出てきた場合、先制攻撃も辞さない」の内容を問われて答えられなかったこと。これまで海外体験が乏しい事。グルジア問題で、ロシアと'War' も辞さないという強硬な姿勢を見せたこと。地球温暖化を、これまで人為的でないという呆れた認識を持っていたが、これを変更し、「人為的かもしれない」とした。        (9月11日)

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  セイラ・ペイリン共和党副大統領候補とチャーリー・ギブソンABC Presenter

 メディアの間で、ペイリン候補のような経験不足の人物が、大統領になった場合の問題について懸念が広がっていることを伝えている。特に男性 radio-presenter の間で。

 9月8日 Newsweek誌世論調査、オバマとマケインは同じ支持率とする。
各紙で、ペイリンの主張「クエートからイラクに入った』は、嘘であったことが判明した。現地軍関係者の証言による。

 NHK:民主党ロスチャイルド女史、鞍替えして、マケイン支持を表明。「オバマは政治を知らない」とする。                 (9月19日)

 FOX radio:高校教師が教室での政治討論で,偏向した教え方をした。「マケイン・ペイリンを批判した」という男女二人の言い分を詳細に披露。
FOX は公正・客観放送と装っているが、番組の合間に頻繁に、民主党又は、オバマの主張を批判する決まり言葉を流す手法をとって、マケインへの肩入れをしている。例えば、「大抵のアメリカ人にとって、イラクのことは消えちゃっている」とする。「イラク」は、もう解決済みだという訳だ。オバマの反イラク戦争姿勢を意識したものであることは明らか。
 オバマ税制・経済政策を社会主義的とする言説しきりに流す。(9月20日)

 マケイン氏、ブッシュ大統領の「不良債権を買い取って,市場から一掃する」という方針から距離を置こうとする。               (9月20日)
 
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 九月中旬に米国で起こった経済破局によって、マケインの経済問題での主張「US Fundamentals are strong」(米国の経済実体は強力だ)は、根本的に間違っていたことが証明された。

 KGO-AM radio: ペイリン夫妻が、「Trooper事件」(注)で証言を拒否していることは極めて問題だ、と怒る。「約束違反。副大統領候補として、あってはならぬこと」                               (9月20日)
 各種世論調査 オバマ、マケインに対して、2〜5%リードしている。「ペイリン効果」終わりとする。                   (9月20日)

 この所、双方の副大統領候補者の適格性について、疑問が呈されている。オバマ氏の副官バイデン氏は、大恐慌の原因となった1929年の株価大暴落当時の大統領がフーバー氏だったのに、「ルーズベルト大統領時代に 'TV' で・・・」などと相当アナクロなことを言ったりしている。自ら、自分より、ヒラリー候補の方が副大統領に相応しかったと述べてもいる。

 一方のペイリン候補については、保守系コラムニストKathleen Parker女史が、「最初は素晴らしい候補と思ったが、幾つかの彼女のインタヴューを見て、やはり副大統領としては相応しくないという結論に達した。彼女は、幼子を守る為にも、家庭に戻るべきだ」と語っている。(National Review)
CBS News のKatie Couric女史のインタヴューを受けた中で、「ロシアの脅威」に就いてなどの質問に答えられず、どんな新聞を日頃読んでいるか、という問いにも、一紙として名を挙げることが出来なかったそうだ。
 流布している風刺ヴィデオ 'Saturday Night Live' でも、彼女の発言が笑い物になっており、マケイン候補にとって、深刻な「お荷物」になってきているようだ。
 
 KGO-AM radio: 女性キャスター及び聴取者の多くが、ダウン症の幼子を抱えたペイリン候補は、家庭に戻って世話をするべきだ、副大統領職とは到底両立し得ない、としていた。                          (10月1日)

 NHK 衛星『地球特派員2008』(20/09)10:10: 黒人差別感情と、宗教的要素に焦点を当てた,比較的公正な番組であったが、惜しい事に、取材時点が大分以前のもので、8月末の支持率を出していたのには驚いた。「マケイン有利」という印象を与えるものであった。

 テレビ東京 日高義樹『ワシントン・レポート』は、一応民主・共和両党にインタヴューしていたが、一般に「無能」と烙印の押されたクエール元副大統領との対談を長々とやっていた真意が理解できない。オバマは外交面で経験不足として、「マケイン勝利」を予測していたが、これも唐突な感じで、最初からの番組意図を窺わせる。既に大問題になっている 9月中旬の「経済混迷」を全く語らず、経済新聞系のテレビの名が恥ずかしい。結局、NHKの場合と同様で、情勢展開に追いつかない取材活動のお粗末さを暴露している。                      (9月21日)

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 9月20日、パキスタン・イスラマバードのマリオット・ホテルが爆弾テロに見舞われて、55人以上の死者と200人以上の負傷者を出した。イエーメンの米国大使館でのテロに続いての米国施設を目標とした事件の頻発は、ブッシュ氏の言う「アルカイダ・テロに対する勝利」が如何に空虚なものであるかを示している。


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 9月27日、テレビ公開討論会、ミシシッピー大学で行われる。経済危機、イラク、イランなどがテーマとなる。
 過去4回大統領選に出て、場慣れしているマケイン氏の老獪ぶりが窺われる。それぞれの問題の、彼の唱えてきた解決策は、大体に於いて間違っている訳であるが、説明の仕方が丁寧で,説得力があるように取られる。経験の強みを前面に出している。

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 オバマ氏は、もっと具体例を使って、分り易く述べるべきだ。彼がアフガンに兵力を集中するべきだと語っているのは、理解出来ない。「イラクの愚」を場所を変えて繰り返すだけだからだ。夥しい戦死者が出ることを、気にしないのか。ビン・ラディンを倒すためには、やはり、どんな犠牲でも払おうということなのか。こうなると、ブッシュと然程変わらぬことになる。テロを無くすには、武力を行使するだけでは、取合えずの解決を目指すだけで、根本的な解決からは程遠い。そこの理解が欠けているのは残念だ。仮にオバマ政権が誕生したとしても、このままだと、「オバマ政権打倒」の為のアフガン反戦デモが荒れ狂うことになるかも知れない。マケインもオバマも共に、アフガニスタンでの実情を分っていない。アフガン民衆が今や、米軍・NATO軍を嫌って、むしろタリバンに近づいているという現実をどうするのか、よく考えるべきだ。

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  「(銀行の債務を帳消しにするのなら)私のも帳消しにして!」

  共和・民主両党の協力で、75兆円規模の税金を投入した「不良債権買い取り」という非常措置を決めたことで、米国民の少なからずの人々が、不満を抱き、「第三政党」出現を待望していることが、Gallup調査で明らかになった。このことは、オバマ、マケイン両氏の戦いに、微妙な影響を及ぼす可能性がある。特に、変革の必要性を強く訴えてきたオバマ氏は、既存体制に妥協したと看做され、彼に投じられる筈だった票の一部を、大統領選立候補を表明している消費者運動家ラルフ・ネイダー氏に奪われる恐れがある。
 
 9月28日の時点では,50%対42%でオバマ氏が優位に立っている。(Gallup)
通常、マケイン氏評価が高い 'Zogby' 調査も、初めてオバマ氏が47.1%で、45.9%のマケイン氏より僅かながら優位に立っているとしている。

 9月28日、バグダッドで二件の爆弾テロ事件があり、34人死亡、約100人が負傷したことを29日10時のNHKニュースが伝える。米国メディアで確かめた所、New Orleansのラジオ局は全く触れず、ABC news、New York Times、Washington post、でも記事見当たらず、CNN news のみが下の方に小さく書いていた。これでは、イラクの実情が正しく伝わらない恐れがある。結果的には、マケインの、「米軍イラク大量派遣は成功しつつある」という、根拠の薄い主張を支持することになる。

 9月29日KGO radio 男性キャスター:マケイン候補の首尾一貫していない最近の態度を厳しく批判。ウォール・ストリートの危機について、選挙戦を一方的に中断、オバマ候補にも呼びかけて、26日の公開討論会を延期させようとした。ワシントンに乗り込んでのブッシュ氏主宰の会議では、具体的な提案を一言も発することがなかった。未だ決着も着かないのに、今度は一転、「問題が解決した」として、討論会に出ることに決めた。非常に不可解な動きだった、とする。

 10月1日 KGO-AM radio 男性キャスター:マケインを叱責する。「とんだ『判断ミス』でペイリンを選んでしまった。彼女は、毎日トンチンカンな言動をしている。自分のことが全く分かっていない『子供』だ。それを副大統領に選ぶなんて!見ていられない。ただ、微笑と美しいだけだ。君は、馬鹿で、とんまだ。人間性への冒涜だ」
こうした対応と、TV討論での印象から、オバマが8ポイント程、リードを拡げる結果となったのは当然だとする。
 確かに、討論会では、オバマ候補の慣れの不十分さが目立ったが、そうした欠点を上回って、マケインの経済政策、イラク問題の間違った対応が失点となっている。
猶、ブッシュ大統領の支持率が、17%と、最低を記録している。

 ウォール・ストリートの株価、9月29日、777$余り、約7%暴落した。議会下院が、約20票差で「負債買い取り法案」を否決した為だ。共和党の三分の二以上の議員が、「税金を使って高給取りの株屋や銀行家を救済するのに反対」として、ブッシュ案に造反した。この影響を受けて、世界的に株価が4〜6%下落した。このままで行くと、本当に世界恐慌に陥るかも知れないと、専門家も懸念している。

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英国は、250万人の顧客を持つ住宅貸し付け大手の 'Bradford & Bingley' を、 欧州では、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルグ三国が 112 億ユーロを注ぎ込んで、銀行 'Fortis' を 国有化すると発表した。(9月29日)

ニューヨーク株式、485$回復。ブッシュ政権の「救済策」実現を当て込んでの動きとされる。         (9月30日)

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 マケイン候補に対して若干のリードをしているオバマ氏にとって、依然として最後まで残る懸念は、人種的 barrier を如何にして克服出来るかということである。米国の都市部以外の地方では、未だに「黒人大統領なんてとんでもない」と公然と言い放つ白人男女が珍しくないし、メディアが白人候補者ペイリン女史の「知識不足」を厳しく叩くにつれて、恐らく同情心からだろうが、白人女性の支持がマケイン陣営に向かっているという調査もある。(ABC news )オバマ氏にとって、 5、6% 程度の差は、「零の差」と看做さねばならないのである。  
                               (2008.10.02)

<追記>
 10 月2日に行われた副大統領候補・公開討論会で、双方共に大したミスも無く終えることが出来たが、個別の問題を詳細かつ丁寧に説明し、ペイリン候補への個人攻撃を避けた「老練」バイデン民主党候補の方が、予想されたより上出来だったものの、質問に対して不十分な答え方しか出来なかったペイリン候補より、51対 36%で優勢という結果になった。(CNN緊急調査)

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<注>
KGO-AM radio: サンフランシスコなど西海岸を拠点とする局。(ABC News系)

Trooper事件:ペイリン・アラスカ州知事が、彼女の妹の元夫 Mike Wooten 氏
(アラスカ州警察官=trooper)を解雇するように指揮官の Walt Monegan 氏に「命令した」のに対して、それを無視した Monegan 氏をペイリン知事が解雇した、という「職権乱用」事件。現在裁判中。


<写真> The New York Times, The Washington Post, Los Angeles Times
The Daily Mail, The Daily Telegraph, The Guardian 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-10-02 17:59 | Comments(0)