世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2009年 01月 ( 7 )   > この月の画像一覧

フランス「ゼネスト」

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サルコジ政権に、
 < Ce n'est plus du ras le bol, c'est du désespoir. > ---- 'Libération' 紙
「もはや、うんざりどころでなく、絶望しているだからだ」
                       (ボルドー・デモ参加者)

                             山上 真

 この29日木曜日、フランス全土で、*250万人が「反政府デモ」を展開した。20年ぶりの大規模なゼネストで、公務員、私企業勤労者、病院関係者、教職員、学生、空港管制官・パイロットなど、社会のあらゆる階層が参加した。交通・運輸機関はほぼ止まった。France Radio、France 2などメディア関係者も加わり、平常放送を変更した。この日を'Jeudi Noir'「暗黒の木曜日」と呼ぶ向きもあるが、デモ主催者側は、このデモを 'Rêve général' 「みんなの夢」と名付けている。


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        「すぐに行動を!」呼びかけるパリのデモ      

 パリでは、*30万人がバスチーユ広場に集まり、オペラ座方面に向かった。参加者は口々に、「人減らしをするな!」(看護師、教員、官公庁職員)、「年金制度を守れ!」(全ての勤労者)、「会社は首切りをやめろ!」(一般勤労者)、「学級サイズを大きくするな!」(高校生)、「教育予算を減らすな!」(大学関係者)、「地方裁判所統合反対!」(裁判官)などのシュプレヒコールを叫んだ。


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              ボルドーのデモ

 米国型「市場原理主義」を引っ提げて大統領になったサルコジ氏は、海の彼方で「米国丸」が、世界的経済・金融危機の大嵐の波間に浮き沈みしているのを見て、必死に「資本主義自体が悪いのではない」という弁護論を展開してきた。現代の経済危機が、「やり方を間違えているから、混乱しているのだ」と述べて自己弁護に努めているが、公約の「購買力引き上げによる繁栄」どころか、経済活動が鈍化、失業率が10%に近づくに及んで、どうにも隠れようがない袋小路に追い込まれている。


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       「雇用と購買力を守ろう!全般的な給与の増額を!」


 サルコジ氏が、資本主義の理想的「モデル」を築いた大先輩として、師表としていた英国前首相トニー・ブレア氏は、中東特使という肩書を現に有しているにも拘らず、「ガザ危機」では何もせず影が薄れ、もう一人の米国ブッシュ氏は、史上稀な低支持率を記録して退陣し、ご本人、さぞかし寂寥感を強めているに違いない。


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  サルコジ大統領と「ゼネスト指導者」ベルナール・ティボー氏(エリゼー宮で)

 暫く前に、サルコジ大統領が
 < Quand il y a une grève en France, personne ne s'en aperçoit. >
 「フランスでストが有っても、誰も見向きもしない」
と嘯いた「勇姿」は、今回のゼネストでは見られない。それどころか、「デモ参加者の当然抱く不安感を理解する」と述べるに至った。国民の7割が今度のゼネストを支持しているという世論調査を見れば、そう語るのも致し方なかろう。
 しかし、その翌日にCGTなど労働組合指導者と会談しても、これ迄の「民営化」方針など「改革路線」を引っ込める意思は全く示していない。一方、労働組合、学生連合などスト企画側は、次のゼネストを計画している。


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         「悪法が病院を殺す」と言う看護師たち


 英国・保守系紙『タイムズ』(1月30日付)は、フランスでの出来事を
 「トロツキスト、マルクス主義者など左翼が大騒ぎして、歴史を彼らの側に近づけたと思っているが、せいぜいガス抜きという所で、大事にしている伝統を祝っているだけだ」
と皮肉っているのだが......。               (2009.01.31)
 


 
<注> *印の数字は主催者側発表。仏内務省は、全国ゼネスト参加者数を108万人、パリ参加者を6万5千人としている。


<写真> Libération, Le Monde, L'Humanité, Le Parisien
 

 

 
by shin-yamakami16 | 2009-01-31 09:38 | Comments(0)
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マス・メディアの役割の自覚を!

                        山上 真
 
 この前の日曜日25日に行われた山形県知事選挙で、新人女性候補吉村美栄子氏 (57歳)が、現職斉藤弘氏 (51歳)を破って当選した。

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 前触れの情報も殆ど無く、東北地方で初の女性知事誕生というのに驚いた。山形県知事選挙があるということを知ったのは、ほんの数日前のことだ。
  開票日(日)の深夜、インターネット情報で、選挙結果を知った。

 山形県と言えば、伝統的に「保守王国」として有名であり、現在の衆議院議員、参議院議員全てを自民党が独占している。

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 高等教育を米国で受けたことを誇り、日銀出身の現職知事は、一期目で、人件費、農林水産関係の補助金大幅カットなどの「行財政改革を断行」してきたと云う。ご本人のマニフェスト「自己評価結果」を見ても、確かに、「県債残高増減推移」をグラフで示して、「財政健全化」の実績をアピールしている。
 この県政が、中央の「小泉・竹中路線」と重なり合っていたことは明らかで、実際に,県民からそう看做されたようだ。

 これに対し、新人・吉村氏は、「県民に冷たい政治からあったかい県政の実現」を掲げた。知事退職金、二人副知事制などの「無駄遣い」を無くす一方、県民の声を聞いて、雇用対策、農業再生、医療・福祉充実などの県民生活に繋がる施策を訴えた。特に、最近問題となった「後期高齢者医療制度」、「労働者派遣法」の抜本的見直し、消費税の食料品非課税などについて、国に対する強い姿勢をあからさまにした。オバマ氏の「チェインジ」という合言葉も巧く用いた。
 
 吉村氏が敬愛している歴史上の人物は、江戸時代に「人間は皆平等である」ことを説いて、医者をしながら『自然真営道』を著した安藤昌益だと云う。

 二人共、無所属候補として出たが、前者は、自民,公明が支持し,後者は、民主,共産,社民などが支持した。自民党・参議院議員、県議の一部も支持に回ったと云う。

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 投票結果は、投票率65.5%という高率を記録し、約32万対31万票で、吉村氏の勝利となった。
 自民党は、いつもながら、一地方の事情から、このような結果になったと言うが、総選挙を前にして、動揺は隠せない。

この結果は,恐らく誰も、候補者本人たちは素より、どんな政党も、マス・メディアも予想出来なかったのではないだろうか。そのことは、勝った方,負けた方の様子、そしてTVなどの報道の「狼狽ぶり」で分かる。さすが、NHKだけは、控え目ながら、それなりの報道をしていたが。

 どうも、新聞関係など、記者・通信員を現地山形に配置しているものは別として、中央のテレビ各社は、「どうせ現職優位だろう」として、経費節減の煽りを受けて、継続的な取材を怠っていたのではなかろうか。だからこそ、「意外な」結果が出て、慌てて報道しようとしても、説明材料も無ければ,映像も殆ど無いことになる。視聴者が求めているのに,手も足も出ないことになってしまう。

 かくして、「大ニュース」を待って見ている前のスクリーンには、どの局でも「朝青龍優勝」、殺人事件、北朝鮮問題、振込詐欺、そして「ご馳走ニュース」など、大して急ぐ必要のない話題が展開することになる。
 開票翌日の朝の「ワイド・ニュース」で、「山形知事選結果」は、『フジTV』冒頭 2分、『朝日TV』末尾 1分、他のTVは無し,という風であった。

 月曜日の夕方も注意していたが、朝と大差がなかった。ますます取材がなかったんだという確信を深めた。これでいいのだろうかと、心配してしまう。
 上記のような仮説が違うとしたら、問題はもっと深刻なことになる。宮崎県のH知事の誕生のあの騒ぎ方と、今回との違いは何だ?こんどの場合は、奥州に「姫君」知事が初めて誕生したんだぞ!何故ちゃんと取材しないのだ、という大きな疑問だ。仮に、当選者が「野党色が濃いから」、或は「反体制的だから」というのなら、不偏不党を唱うメディアの報道姿勢の問題となる。

 徒に欧米マス・メディアを褒め讃える積りはないが、やっぱり、特に映像メディアの報道姿勢・内容のレベルの面で、彼我との間で大きな差があることを認めない訳にはいかない。「客観・公正報道を速く」という原点に立って、今後の大いなる改善を期待したい。                  (2009.01.27)



<写真> 『毎日』、『朝日』各新聞、候補者ホームページから


 
by shin-yamakami16 | 2009-01-27 09:35 | Comments(6)
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「大変革」を目指す米国・新大統領
  
                          山上 真
 
 オバマ新政権が漸く発足した。早速、「ブッシュ政策」の逆転が始まった。
 
 大統領宣誓式の日が終るまで、何か悪いことが起こるのではないかと心配していた。選挙中から、幾つかの「オバマ暗殺」未遂事件が続いていた。
 米国では、リンカーン、ケネディ両大統領が暗殺され、合わせて10人の大統領経験者が暗殺又は未遂事件に遭っている国柄である。今回は特に、「黒人大統領」誕生を何としてでも阻止したい勢力が存在していた。とにかく、無事に就任して欲しいと祈るような気持ちを抱いていた。

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 18日のリンカーン記念堂でのオバマ演説では、警備は厳重を極めた。数メートル措きに私服保安官が、50万人の聴衆前面を固めていた。上空ではヘリが不測の事態に備えていた。

 1963年8月に、この同じ場所で、マーチン・ルーサー・キング師が、白人と黒人が共生する社会の実現を訴えて公民権運動の記念碑的瞬間となった、 'I have a dream' 演説を行った。その半世紀後に、同様の気持ちを抱きながら「国家指導者」として登壇したオバマ氏の感慨は、誠に深いものがあったに違いない。
 
 貧困問題に取り組む「社会活動家」から大統領になったオバマ氏に対する米国民の期待感は、「異常な」程、高まっている。殆ど熱狂に近い。恐らく、多くの国民は、飾り気の無いオバマ一家に、「リンカーン」と重なるような、政治家としての理想像を見ているのではないだろうか。数十年間に渉る凡庸な「政治屋たちの時代」の後、漸く「人民の人民による人民の為の政治」が具現することを強く願っているのだ。

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             「やり直し」の宣誓

 20日の国会議事堂での「大統領宣誓式」では、ちょっとしたハプニングが起きていた。宣誓文を先唱する最高裁長官が、faithfully(忠実に)という副詞の位置を文の最後に持って来るという間違いを犯し、すでに条文を憶え込んでいるオバマ氏がそれに気付いて、相手に合図をし、再び長官が先唱するが、又もや、execute(執行する)という動詞を抜いてしまった。現場では、殆ど気付かれず事が運んだが、録音されていた誤りが問題となり、「念のために」ホワイトハウスで改めて復唱することになった。しかし、ここでも、聖書に「手をやって」という儀式の省略を問題視している向きもある。(FOX Radio) 
 この「事件」について、意識的にかどうか分からないが、恰もオバマ氏が間違えて宣誓したと受け取られる報道をしているメディアが、ちらほら見受けられる。(FOX, NHK news など)
 
 オバマ氏が最初に署名した大統領令は、キューバ米軍基地内にあるグアンタナモ収容所の一年以内の閉鎖と、世界各地のCIA秘密収容所の閉鎖、及び、テロ容疑者に対する拷問の中止である。これは、明白にブッシュ前政権のやり方に対しての訣別であり、先ず人権擁護の姿勢を示すことによって、国民に「新時代の到来」を熟知させる意味を持つものと受け取れる。

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          「中東和平特使」ジョージ・ミッチェル氏

 外交政策では、ガザへのイスラエル侵攻問題の対応が焦眉の課題であり、早くも、北アイルランド(IRA)問題で仲介役を演じたジョージ・ミッチェル元上院議員を中東和平特使に任命したことは賢明な選択であるが、それに先立って、オバマ氏自身が「イスラエルの自衛権」を強調し、「ハマスの武器持ち込み」を厳しく監視する態度を明示したことは、一方に偏っており、イスラエルの「戦争犯罪」が重大な問題として浮かび上がっている今日、かなり配慮を欠いた外交姿勢として国際社会で指弾される恐れが充分ある。ある意味では、自ら任じた国務長官ヒラリー・クリントン女史の、従来からの「イスラエル擁護」方針に対して、独自性を打ち出せないオバマ氏のディレンマを看て取れる。

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          「国務長官」ヒラリー・クリントン女史

 アフガニスタンでの戦争については、就任演説の中で、これまでの「テロに勝つ」ことから、「平和の実現」という表現に、オバマ大統領が変えていることが注目される。つまり、タリバンに対する「戦争勝利」一辺倒ではなく、「和平」による解決可能性の余地も残していると考えられるわけだ。すでに、英国指導者の少なくとも一部には、タリバンとの「和平」構想が見え隠れしている。

 オバマ大統領は、国民に向かって、米国が遭遇しつつある未曾有の経済危機に対して自覚的に立ち上がるように呼びかけた。それぞれの犠牲的奉仕を求める厳しい内容だった。
 政策的には、日本の国家予算70兆円に匹敵する公共投資を行う「新ニューディール」政策を具体化しようとしている。
 日本の経済社会が未だ米国の傘の下にあることを考えると、'Obama New Deal' が、可能な限り早期の効果を生むように願うばかりだ。 (2009.01.24)



<追記>
1. イラク駐留米軍の撤退時期について、オバマ氏は16か月以内の完全撤退を求めているが、現地治安の回復状況を重視する軍部との駆け引きが続いているようだ。

2. ブッシュ政権が倫理・宗教上の理由で制限していたES細胞(ヒト胚性幹細胞)研究を、医療向上の観点から、OKとする方針をオバマ政権は発表した。 (09.01.23)



<写真> The New York Times, The Independent, The Guardian,
Le Monde

 
by shin-yamakami16 | 2009-01-24 12:59 | Comments(0)

テロとの「戦争」とは?

 
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破綻した「ブッシュ・ブレア戦略」と、見えてきた新方向 

                          山上 真

 間もなくブッシュ大統領が辞任する。この15日の最後の記者会見の席で、「やり直せるなら、そうしたい」と述べたが、具体的にどの件についてなのかは、相変わらず言及しなかった。しかし、大方の見る所、同氏は、「イラク」は拙かったと思っているようだ。
 彼は、これまで、「サダムを倒したのは正しい」とする一方、「情報の不正確さ」による「イラク戦争開始」を失敗だったと述べている。他ならぬWMD(大量破壊兵器)の事である。

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  英国ブレア首相と共に、サダム・フセインのイラクが、核兵器を含む大量破壊兵器を使って、直ぐにでも他国を侵略する恐れがあるとの理由で、侵攻に踏み切ったことを述べているのである。しかし、イラク国土のどこを捜しても、WMDは見つからなかった。CIAや、英国情報部のイラク情報は、嘘っぱちだったのだ。
 
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 しかし実際には、「WMD情報の問題」は付け足しに過ぎず、特にブッシュ氏周辺は、石油資源確保の至上命題の下に、イラク侵略を実行したということは、紛れもない事実だ。現に、欧米石油資本がどっとイラク石油獲得に乗り込んでいる。
この理不尽な戦争で、これまでに、イラク人約100万人、米国など「連合軍」兵士4500人が犠牲になっている。以前のイラクには存在しなかったテロ犠牲者が跡を絶たない。米英のイラク侵略は、「アルカイダ・テロ」を引き込んでしまったのだ。
 
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             ブレア前英国首相     

 所謂、2001「9.11」航空機爆破テロ事件以降、ブッシュ・ブレア両政権による、'War on Terror'は、アフガニスタン、イラクでの戦争政策を追求したわけだが、この「テロとの戦い」という本来の目的に、どれだけ貢献したかということになると、はっきり言って、何も無い。むしろ、世界中でテロを蔓延させたというのが常識になっている。ロンドン、インドネシア、トルコ、或は,最近のインド・ムンバイでのテロ事件などを見れば、容易に分かることだ。今や,世界中の人々が身近に起こるかも知れないテロ事件に怯えて暮らしているのが実情だ。

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             ミリバンド英国外相

 こうした中、最近、二人の重要人物が、政治家としては「テロ」に関わる従来の言説とは異なる表現をしていることに,注目したい。英国外相ミリバンド氏と次期米国大統領オバマ氏である。

  1月15日、英国外相 David Miliband は、11月にインドのムンバイで起きたテロ現場のホテルで行った演説で、'War on Terror' という概念は誤解を招き、間違っているとした上で、
 「米英など西側が採った戦略は、危険と言ってよい程、非生産的で、西側に反抗する集団を、共通の主義の為に結束させるだけに役立った」
 「我々がテロ集団を一纏めにして、穏健派と過激派、善と悪のグループというような単純な二者選択式に区分けをすればする程、互いに殆ど共通性のない集団を結束させるという、敵方の手中に嵌ってしまう」
 「テロは殺人を伴う戦術であって、体系的なイデオロギーではない」
 「'War on Terror' という考え方では、テロリストに対する正しい対応は、主として軍事的なもの、即ち、追跡して追い詰め、過激派の中核的人物を殺すことを意味する」
と述べている。

 ここで、ミリバンド外相は、米国軍司令官 David Petraeus 将軍の次の言葉を引用する。
 「イラクの欧米連合軍は、結局、反政府暴動と民族・宗派間抗争の問題を克服出来なかった」
 これを受けて、外相は、
 「テロリズムに対して、民主主義側は、相手を屈従させるのでなく、法の支配の為に闘うことによって、勝利しなければならない。それが、『グアンタナモ』の確かな教訓であり、次期米大統領オバマ氏の収容所閉鎖方針を歓迎する理由だ」
と結んでいる。
 ミリバンド外相は、ブラウン首相の後継者とされる者の内,最右翼に居る人物だけに注目に価する。

 2006年以後、英国公式筋は、ブッシュ、ブレア両氏が好んで使っていた 'War
on Terror' という言葉の使用を避けてきたのであるが、英国外相が初めて、米国「反テロ戦術」についての遠慮会釈ない批判の中で、公式に放棄した形だ。


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 一方、オバマ氏は1月14日、オサマ・ビンラディンの姿が、エルサレムにあるal-Aqsa モスクと重ね合わさったヴィデオが流された後、CBSのインタヴューを受けて、
 「ビンラディンはもはや戦場から取り除くことが必須の人物ではなく、米国の安全保障の為には、アル・カイダをただ敗走させておくだけで達成される」
と述べたことが注目されている。これは明らかに、ブッシュ大統領の目指してきた「ビンラディン殺害か捕捉」方針と異なり、オバマ氏自身の従来の、
 「我々はビンラディンを殺す。アル・カイダも潰す。それが、われわれの最も優先的な国家安全保障策だ」という、大統領選挙戦最中に行った態度表明をも一変させるものだ。更に、
 「今の最優先すべきことは、新たなテロ攻撃から米国を守ることだ。ビンラディンが生きていようといまいと、テロを育む土壌を弱め、彼をどうにも動けなくしておくことが米国をテロから守る要件だ」と言う。

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 以上のように、奇しくも同時期に、英米重要人物が、「対テロ」についての、大きな変更と思われる態度表明、しかも、ほほ共通の認識を示したことは、今後の欧米側世界戦略に少なくない影響を及ぼすに違いない。テロリズムに対する「根本的治療法」は、武力で押さえ込むことでは達し得ず、世界的貧困などの根源に迫った対策を取ることだと、漸く気づき始めたことは遅きに失しているが、結構なことである。                      (2009.01.17)

 

<追記>
1. オサマ・ビンラディンの新たなヴィデオは、オバマ次期米大統領に「軍事的敗北か、経済危機の中の溺死か」を無理矢理選ばせるような「重い遺産」を残したブッシュ氏を、嘲笑するものであった。

2. 1月12日付の英国『ガーディアン』紙は、イスラエルのガザ侵攻を支持した米国と、事実上、無為に終始した英国など西側諸国に対する「激しい憤りと怨念」が、英国在住の、特にイスラム民衆の間に鬱積して、危険な雰囲気を醸し出していることを伝えている。新たなテロの火種にならないように祈るばかりだ。



<写真> The Times, The Guardian, Libération, Daily Telegraph,
The Washington Post

 
by shin-yamakami16 | 2009-01-17 16:27 | Comments(2)
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米国「ユダヤ・ロビー」に支えられる侵略
  
                            山上 真

 去年末から開始されたイスラエルのガザ爆撃から2週間になるが、侵略行為の爪痕は深くなるばかりだ。1月3日には、戦車など陸上部隊がガザ地区に侵攻し、一層の破壊・殺傷行為に踏み切っている。死者は800人,負傷者は3000人以上に上っており、電気・ガス、水道などの生活インフラがズタズタに破壊されている。


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 こうした中で、イスラエル軍による、到底許されない戦争犯罪が、1月9日、国連機関によって暴露された。以下は、英国紙『タイムズ』、『テレグラフ』、『デイリー・メイル』が一斉に報じた事件の概要である。


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 国連人道援助事務所 (OCHA) の発表によると、1月4日、日曜日、ガザ市南方の
Zeitoun で、侵攻したイスラエル歩兵が、先ず、110人のパレスチナ人を一軒家に避難させた。その半ばが子供であった。その24時間後に、イスラエル軍が、その家を繰り返し砲撃し、約30人を殺した。その攻撃を生き延びた者たちは、2キロ歩いて、現地の人々の車で病院に収容された。着いてから間もなく、3人の子供が死んだ。


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 事態を察知した国際赤十字要員は、被害民への接触を試みたが、イスラエル軍が課した「3時間休戦」の制限内では不可能だった。
 3日後に現地に到達してみると、ある家で、マットレスの上に12人の死体が横たわり、衰弱し切った4人の子供が、死んだ母親たちの傍らに居た。


 
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 このような家屋が幾つかあり、その僅か百メートルしか離れていない所で,イスラエル兵が何もせず、駐留していたと云う。被害者の状況を知っていた上での無為無策は,明らかに国際法違反行為であるとされる。 


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 イスラエル軍が意図的に民間人を狙い撃ちして殺戮した上、子供を含む負傷者を放置したことは、ナチス・ドイツの犯した民族「皆殺し作戦」と大差が無いことになる。自らがその被害者であったユダヤ人が、同様の行為を他民族に課すとは,何事かという思いがこみ上げてきて仕方がない。


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この外、国連支援物資の運搬に従事していたスタッフ2人がイスラエル軍の射撃を受けて死亡したり、救急車が砲撃を受けるなど、無差別攻撃化してきている。


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 現在、世界各地でイスラエルに対する抗議運動が展開されている。英国では、10万人の人々が集まったロンドンを初め、18都市で行われた。ヨーロッパでは、パリを始めとするフランス全土で10万人の外、ベルリン、ローマ,アテネでデモ行進が大規模に組織された。東京でも、9日、1500人の「イスラエルへの抗議」デモが繁華街を行進した。これに先立って、12月30日、『アムネスティ・インターナショナル』の呼びかけで、イスラエル大使館前での、キャンドル・ライトによる「パレスチナ人犠牲者を悼むサイレント抗議行動」も行われている。

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 国連安全保障理事会では、漸く「即時停戦決議」を採択したが、米国は棄権した。ブッシュ大統領は既に、イスラエル支持を明確に表明し、議会上院も8日、同様の決議をしたのは、いかに米国に於いて、ユダヤ団体の圧力が強いかを示している。
 
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 オバマ次期大統領は、今のところ沈黙を守っているが、英国9日付『ガーディアン』紙に依れば、彼に近い筋の話として、イスラエルの敵「ハマース」を交渉相手とする方向だと云う。ブッシュ政権は、ハマスを「テロリスト」として、一切話し相手にしなかっただけに、大きな変化が期待される。  (2009.01.11)


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<写真> Daily Mail, The Times, The Daily Telegraph, The Guardian,
The Sun, The Independent, Le Monde
by shin-yamakami16 | 2009-01-11 08:56 | Comments(2)
 
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             革命記念式典会場で


「オバマ米国」との関係改善は必然か?

                           山上 真
 1959年1月1日、フィデル・カストロが、チェ・ゲバラと共にキューバ革命の勝利を宣言してから、今年で半世紀になる。現指導者ラウル・カストロは,兄と同じバルコニーの下から、経済的苦境と去年襲った三つのハリケーン被害を乗り越えて、更なる50年間の革命の持続を訴えた。

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              ラウル国家評議会議長

 米国の事実上の「傀儡」バティスタ独裁政権を打倒したキューバ革命は,当初、社会主義を目指していた訳ではなかった。しかし、革命政権が、米国などの外国資本への統制、農地改革に乗り出すと、当時のアイゼンハワー米大統領は、亡命キューバ人を組織・訓練して、革命政権の打倒を図った。1961年に大統領を引き継いだケネディは、この作戦を継承し、武装勢力をキューバに侵入させようとした「ピッグス湾事件」(正式名:プラヤ・ヒロン侵攻事件)を起こしたが、失敗に帰した。革命軍の力量を過小評価した為の、作戦上の初歩的錯誤であった。
 これを契機として、キューバ革命政権は急速に旧ソ連邦に接近し、社会主義革命の道を辿ることとなった。

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                フィデル・カストロ

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                チェ・ゲバラ

 1962年2月に、ケネディ大統領はキューバに対する輸出の全面禁止、経済封鎖を発表、対抗するキューバ側は、ソ連ミサイル基地の建設を進めていることが明らかになり、一気に米ソ核戦争の危機(キューバ危機)が迫った。
 この危機は、米・ソ妥協でミサイルが撤去され、土壇場で回避されたが、米国対キューバの対立が固定化した。

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 キューバの主要産業と言えば、モノカルチャーと言えるサトウキビ単一栽培、埋蔵量が世界最大規模のニッケル生産、海産物であるが、革命後は、工業化と、有機農業への転換が図られている。2000年以降は,砂糖の国際価格の暴落、輸入原油の高騰により、厳しい経済状況が続いているが、近年は観光産業に力を入れた結果、2003年には観光客数190万人、観光収入は23.2億ドルに達している。

 最近では、伝統的に米国の強い影響下にあった軍事政権が次々と打倒され、ヴェネズエラ、ボリビア、ニカラグア、チリなど、社会主義的民主政権が誕生するに至って、キューバは、これらの国々,更にはブラジルと、互恵的経済・教育援助協定を結んでいる。例えば、チャベス・ヴェネズエラ政権から日量100,000バレルの石油の供給をキューバは受けており、その代わりに、優れた医療体制を誇るキューバが、医師派遣・留学生受け入れなどの援助をしている。

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 旧ソ連をモデルにしたキューバは、世界的最高レベルの教育、医療制度、そして社会福祉制度を確立した。
 識字率95.7%を誇る教育は、大学に至るまで学費が無料である。小学校は、20人学級を導入し、国民の大半は高等教育を受けている。

 「キューバ・モデル」として有名な医療制度では、人口165人に1人という医師数は世界1位であり、乳児死亡率も、1,000人当たり6.5人と先進国並みである。医療費は無料である。キューバ国民の平均寿命は77.7歳で、コスタリカに次いで、ラテン・アメリカ2位を誇る。世界各地への医師派遣も積極的に行っている。


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    ロシア・メドベージェフ大統領とラウル・カストロ議長


 社会主義国キューバは、中国、北朝鮮との外交関係を安定的に維持し、特に前者とは、砂糖、ニッケルの輸出、バイオ医薬の生産・販売で、盛んな交流を行っている。
 ロシアとは、農業、鉱産物、医薬品、観光に加えて、科学技術、海底石油資源開発協力を進めている。最近、ロシア艦艇がハバナに寄港したことが注目された。
 去年8月のグルジア・南オセチア侵攻事件に於いては、キューバはロシアの反攻作戦を積極的に支持した。
 去年11月に、中国・胡錦涛国家主席、ロシア・メドベージェフ大統領が相次いで訪問し、ラウル議長と会談している。
 それに先立つ10月には、欧州連合(EU) との協力協定に調印し、緊張関係を終らせた。

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 過去50年間、キューバでは医師と、例えばタクシー運転手のような労働者が同じ賃金であることが、西欧社会では、驚きをもって迎えられる事実であるが、最近、新指導者ラウル・カストロは、「労働の質」に基づく賃金制度を導入し始めているようだ。中国型の「経済改革」を導入する方針だと云う。
 農業分野でも、新たに山野を開墾した者などの「土地個人私有」を認める方針に政策を転換したようだ。(米国ABC News, 1月3日)
 最近になって漸く、パソコン、携帯電話、レンタカー、ホテル滞在などを自由化したことは、遅きに失した政策変更と言えよう。

 間違いなく明言出来るのは、現段階のキューバ国民は,みな貧しいことだ。月額給与が20ドル程度では、他に生活必需品の配給があっても、厳しい。

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チャベス・ベネズエラ、モラレス・ボリビア、ルラ・ブラジル各大統領とラウル議長

 嘗ては孤立化が目立ったキューバは、先に述べたようなラテン・アメリカ諸国の変革の波に助けられているが、その対外的環境を一層明るいものにしているのは,他ならぬ米国新指導者バラック・オバマの登場である。キューバ国民は言うまでもなく、ラウル・カストロも「密かに」歓迎しているようだ。
 オバマ氏は、大統領選挙戦最中に、「キューバ指導者との対話の必要」を唱えて、対立候補者マケイン氏に激しく攻撃されていた。オバマ氏は、「経済制裁解除」の条件として、政治犯釈放と複数政党制度の実現をキューバ側に求めているが、当面は、「旅行制限」の一部解除の上、対話路線を続ける方針を変えていない。
 最近の情報では、ExxonMobilなど、米国石油関連企業が、キューバ沖合油田の開発に参入する意思を示しており、この辺から、キューバ・米国関係が急速に進む可能性が出てきた。
 一方、キューバ側は米国に対して、国連総会の場で、経済制裁解除、グアンタナモ海軍基地の返還など5つの要求を突きつけている。

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 以上のように見ると、遅かれ早かれ、キューバ・米国間の外交・経済関係は間違いなく改善に向かうものと思われる。両国の国内事情が,それを何よりも必要としているからだ。
 キューバは、「原初型共産主義」から、個人の自由を重んじる「開放型社会主義」に体制を進展させて行くであろう。恐らく、それしか現体制維持の道は無いに違いない。                             (2009.01.04)


<写真> The New York Times, Washington Post, The Independent,
        The Guardian, Le Monde 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2009-01-04 00:51 | Comments(0)

元日「経済激論」を見て

                             山上 真

 元日には、相も変わらず大分前に作ったらしい「おせち料理」番組のバカらしさから、殆どテレビを見ない習慣になったいるが、偶然目に留まった夜8時から2時間に渉るNHK「経済・外交スペシャル」番組をじっくり見た。

 一番注目したのは、今や失敗が歴然となっている小泉政権の経済・外交政策を支えていた人物3人が出て、どういう言訳をするかな、ということだった。

 案の定、目立ったのは、竹中、八代君などが、彼らが唱えていた「市場原理主義」から、何とかして距離を置こうとする姑息な努力だった。彼らが理想として導入しようとした「ブッシュ・米国」型改革,即ち、経済活動活発化の為に、可能な限り規制撤廃を図るという政策が、「本家本元」米国で大失敗に帰したことで、その自説を取り繕う態度に終始した。日本での彼らの提言に依った小泉政権によって、今の経済・社会混乱が生じたことの責任を、まるで意識していないかのような言い方を続けていた。

 外交問題で気になったのは、殆どの論客が「日米同盟」を肯定した上で、イラク、アフガン、海賊問題などへの対応を述べていることだった。NHK番組では、日米安保条約に反対する態度をとる者は、出演させない「内部規定」でもあるのかな,と思った位だ。これでは、問題の本質に迫る解明は不可能だ。

 岡本君は、小泉政権の下で自衛隊をイラクに派遣させた張本人であるが、相も変わらず、米国への「軍事的奉仕」を主張していたのには呆れた。こういう人物が、大手を振って、公共放送に幾度も出て来られる所に、日本の「対米従属」の惨めな姿がある。

 彼らと対峙した金子、山口、斉藤氏の、問題究明の努力を高く評価してよいとは思うが、「激論」と銘打った番組であるからには、もっと激しく相手側を追い込んでも良かったのではないか。事はそれほど深刻だからだ。   (2009.01.01)

 
by shin-yamakami16 | 2009-01-02 00:11 | Comments(3)