世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

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アイスランド国民の「歴史的選択」

                       山上 真

今から8年程前に、筆者が英国滞在中、一度だけアイスランドを訪れたことがある。ロンドンから空路2時間程北上して、首都レイキャヴィークに着いた。そこは、首都と言っても、小さな地方都市と見える佇まいであった。静かな、どこか寂しい雰囲気を持っていた。


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 5日間の滞在中、日本の「北海道と四国」を合わせた程の大きさの島国の、凡そ4分の1の範囲を見て回ったが、氷河と火山活動を中心にした風物の見学の旅であった。水陸両用車での海岸見物中に、荒い波に激しく揺られて肝を潰したり、途方もない広さの露天温泉での入浴を楽しんだりした。
 

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帰路、空港での手続きでは、使い余したアイスランド・クローナをポンドに両替しようとした所、窓口が僅かしか無く、長蛇の列だった。これはどうも、「出来るだけ外貨を稼ぎたい」という国が意識的にやっている政策に依るものと思われた。出発時間を気にする旅行者は、両替を諦め、選択の余地の乏しい土産物を買うしかなかった。


 西暦930年に発足した「アルシング」という民主議会制度の歴史を持つアイスランドは、軍隊を保持せず、徴兵制の歴史も無い。一時期、米空軍基地の設置を許したことがあるが、今は無い。

 現代に於いてアイスランドが世界的に注目されているのは、その「クリーンな」エネルギー政策だ。この国は、全エネルギーの80%を水力に、20%を地熱発電によって得ており、火力、原子力発電は皆無だ。自然に恵まれている所為ではあるが、「火山国」日本が学べる点が少なくない。


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 この国の産業は、何といっても漁業であるが、タラの捕獲量をめぐって、英国と「戦争状態」になったことがある。鉱物資源としては、アルミニウム、硅素鉄があり、輸出されている。

 人口32万のアイスランドを、一時期GDP世界4位の豊かさを誇る国に仕立て上げたのは、他ならぬ「金融立国」だった。この国の銀行は、世界中から、特に英国から、「高利子」を唱って金を集め、その資金運用で経済を潤してきた。国家財政は、金融機関の利潤で賄われていたのも同然であった。
 
しかし、2008年の世界的金融危機の煽りを受けて、多くの銀行は破産し、国有化された。同時に、国家財政も破綻に瀕した。IMF(国際通貨基金)は、100億ドルの緊急融資を決めた。
 企業は相次いで倒産し、10%を超える失業率となって、人々は街頭に繰り出し、連日の反政府デモが展開された。こうして、18年に渉って政権を担ってきた保守・「独立党」の首相ゲイル・ホルデ氏は遂に政権を投げ出した。

 この26日に行われたアイスランド総選挙で、Johanna Sigurdardottir女史率いる社会民主党・社会主義党・緑の党連合が、52.4%の得票率をもって勝利し、政権を担うこととなった。首相に任命されたシグルザルドッティル女史は、
「人々は倫理の変革を求めている。国民は、ネオリベラリズムと、余りにも長く政権に居座っていた独立党との訣別を求めている」と語った。


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 新政権は、早速、EU加盟問題に直面するが、政権内部にも加盟を疑問視する勢力を抱えて、先行き不透明だ。更に注目されるのは、伝統的に捕鯨を是とする国策をどうするかということだ。

 アイスランドで起きた現象は、経済活動の普遍性を考えると、小国内の出来事と簡単に片付けられないものがあるようだ。産業が正常に機能していない国々の、それは米国という超大国も含めてだが、金融偏重の資本主義に不可避の宿命と言って差し支えないだろう。     (2009.04.27)


<写真> The Guardian, Le Figaro, Wikipedia 掲載のもの


 

 
by shin-yamakami16 | 2009-04-27 20:57 | Comments(0)
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冬ごもりを決め込んだ「北」政権

                           山上 真

 日本全土がまるで核攻撃に晒されようとしているかのような騒ぎだった。
 
 過ぎてしまえば、「北」の人工衛星だか、ミサイルだかが、我が自衛隊のパトリオット・ミサイルの射程を超える遥か高空を飛び去っただけであった。

 人々は、政府やマス・メディアが喧伝する「被害の恐れ」にやや怯えながらも、日常生活を淡々と続けたようだ。得体の知れぬ恐怖に身を任せていられる余裕など、今時無いのは当然だ。

 はっきり言って、国連安保理で、最初から最後まで、強硬に「北」への懲罰を主張したのは、日本政府だけであった。当初、歩調を揃えてくれていた米国・ライス女史は、中途から一歩引いたスタンスに転じたのは、恐らく、オバマ大統領の主張する「話し合い路線」に障害を設ける結果になることを恐れたからであろう。「北」は、安保理による制裁が、6か国協議の場を閉ざすことになるとしきりに警告していたから。

 中国、・ロシアが一貫して、「安保理決議」が好い結果を生まないと主張していたのも、この「変哲もない人工衛星打ち上げ」が「北」の「引きこもり」の口実を与えることを案じていたからであろう。

 「北」の人工衛星実験が、他国の場合と同様の性質のものだとすれば、浅井基文氏(広島平和研究所長)の言うように、何ら日本などが口を差し挟むべき問題ではない。明らかに、内政干渉である。
 「飛翔体」のかけらの落下の危険性は、何も「北」だけのものではない。米国が主導した2006年の「北ミサイル」に関する国連決議適用は、不適当であろう。

 過去に於いて、「北」がどういう国家であったかは、この際、混同してはならない。拉致問題などは、別個に解決を図るべき問題である。

 「北」朝鮮は、案の定、6か国協議の場に「二度と戻らない」ことを宣言し、IAEA((国際原子力機関)査察を全面的に拒否、要員は引き揚げざるを得なかった。核問題を含んだ最重要案件が振り出しに戻ることとなった。
 これで、「北」は、「気兼ねなしに」核戦力開発の道を進むことになるだろう。

 日本にとっての最優先案件の「拉致問題」解決も、まず、頓挫したと言ってよいだろう。そこの見通しを立てて日本政府が動いていたのか、甚だ疑問である。
 拉致家族会の中には、「北」に対する制裁を強く主張する方々が居られるが、拉致されている本人たちへの配慮の点からみると、果たして妥当と言えるだろうか。
 先月、家族会のメンバーと会った金賢姫が日本側の制裁に賛成しなかったと報道されているが、これは理にかなった態度と言えるだろう。

 こうした状況を展望すると、極東という舞台での、深刻なる「子供の喧嘩」に見えてしまうのは、困ったものだ。特に日本では、外交の本道を辿るよりも、国内世論の動向に振り回される政治指導者の「無原則性」が目立って仕方がない。 (2009.04.18)

           

<写真> 中央日報
by shin-yamakami16 | 2009-04-18 09:11 | Comments(0)
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「侵略者」サアカシュヴィリは生き残れるか?

                           山上 真

4月9日、グルジアの首都トビリシで10万人規模の大デモが、大統領サアカシュヴィリの即時辞職を要求して展開された。このデモは、去年夏のロシアとの「南オセチア戦争」以来、最大の反政府示威行動である。

 サアカシュヴィリは、「南オセチア戦争」で、ロシア自治領南オセチアに侵攻したものの、グルジア軍は緒戦で壊滅し、却って自国領深くロシア軍の進入を許すという惨めな敗北を喫した。グルジアの鉄道、橋梁などインフラが破壊され、国民生活に多大な影響を及ぼす被害を蒙った。

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 サアカシュヴィリが糸目を付けない援助を当てにしていた米国共和党マケイン氏は敗北し、オバマ新政権が、グルジアの「仇敵」ロシアとの「対話協調路線」を採るに及んで、愈、サアカシュヴィリにとって事態は風雲急を告げることとなった。

 仏紙『ル・モンド』によると、10日にも25,000人のデモ参加者が首都に集まり、「2013年までの任期一杯務める」と強弁するサアカシュヴィリに辞任圧力をかけている。グルジア国民の多くが大統領に迫る辞任理由は、「不用意にロシアとの戦争に突入し、辛酸を嘗めさせた」こと、マス・メディア抑圧、デモなど示威行動に対する暴力的取締り、貧困対策の不在などである。

 野党などデモ指導者は、市民的不服従運動を展開して、首都周辺の道路封鎖、大統領官邸や、公共テレビ局への示威運動を計画し、サアカシュヴィリ大統領辞任まで続行すると言明している。(英国4月11日付『ガーディアン』紙)

 ウクライナのユシチェンコ大統領と同様に、2004年に「バラ革命」を担って登場したサアカシュヴィリは、その公約だった「米国流民主主義」を実現するどころか、その独裁的手法の齎した災禍故に、権力の座から引きずり下ろされようとしているのは、皮肉なことだ。 (2009.04.11)


<写真> The Guardian, Le Monde, 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2009-04-11 23:01 | Comments(0)

窮乏化する日本農業地帯

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米紙に紹介された「庄内」

                        山上 真

 先月29日の『ニューヨーク・タイムズ』紙に、「日本の米作農民は将来を危うんでいる」と題する長い記事が掲載された。MARTIN・FACKLER記者が山形県庄内地方を現地取材して書いたものである。

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「日本海に近いこの広大な平野は、豊かな水と土壌に恵まれ、早春には黄金色に格子縞の水田が光って、この国の最も豊穣な穀倉地帯の一つである。しかし、当地には、間違いなく漠とした不安が存在している」

「水田で働く農民は老いて、少なくなっている。見捨てられ、雑草が生い茂った土地がよく見かけられる。農地が狭く、米価が低くなっている為に、多くの農民は生活が苦しくなっている」

「『日本農業は金も無く、若さも無く、未来も無い』と、先祖から450年続く農業を守っているHitoshi Suzuki(57歳)は、海からの凍るような寒風の中で、語る」

 「農業の難局は、世界第二の経済力を持つ日本を総体的に包み込んでいる麻痺状態を象徴するものだ。老齢化と慢性的な低成長率から生じる諸問題に直面して、国は現状を維持しようとして、難しい変革よりも、これ迄に蓄積している富を食い潰している、と言うのは経済専門家だ。日本の田園地帯の危機は、人口減少、貿易自由化、そして国庫枯渇の結果であり、第二次大戦以来最大のものである」

 「庄内地方では、過去15年間に農地価格が70%も低下し、農民人口が1990年以来、半分になってしまった。日本全体では、過去10年間に、主要生産物である米の生産が、20%落ちて、今や食料の61%を輸入に頼っている始末である」
 
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 「農林省に依れば、日本の300万農業人口の内、70%の農民が60歳以上である。 農家の生計を補っていた農閑期の副業は、財政赤字に悩む政府による公共事業の縮小と、輸出減少による民間企業人減らしで、半減した」

 「現在進行中の世界的金融危機は、日本の農業地域に深刻な影響を及ぼしており、政治の世界にも大きな変化が生まれている。今年1月に山形県で、伝統的に強力だった自民党の現職知事が新人候補者に敗北したのも、農業の現実に対処できない自民党に対する厳しい批判の表れだ」

 「政権を握る自民党内部で、貿易自由化に対処する為に農業規模拡大を主張する者と、従来型の小規模農業を支持する者が対立しており、どうにも動きが取れない状態が続いている」

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 記者は、‘Without reform, it will just decline to death.’ 『改革なしには唯衰亡を待つだけだ』と語る農学者の言葉で記事を結んでいる。
  しかし、小規模農家が大規模耕作者に土地を譲って農業を離れたくとも、都会に出て就職することは、現今経済状態では、一層厳しい選択だ。
 政治は、そこの解決策を緊急に求められている。
                    (2009.04.05)


<写真> The New York Times 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2009-04-05 11:23 | Comments(3)