世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

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小政党尊重の為の「選挙制度改革」必要

                        山上 真

 どうやら民主党が今度の総選挙で勝利するのは、間違いなさそうだ。しかも、300議席を優に超える大勝利となる予測が殆どだ。

 自民・公明党による保守政権が、衆議院での絶対多数の上にあぐらをかいて、憲法改変の企て、自衛隊強化・「防衛省」設置、市場原理主義に基づく労働者酷使などの様々な悪政を十数年に渉って続けてきたことのツケを、今払わせられようとしている。国民多数が、漸く、これではいけないと覚醒したのだ。
 
 年間3万数千人の自殺者、老人の孤独死、餓死者の続出、実数2万人に達すると推定されるホームレスの存在など、誰が見てもこれが近代先進国家と言えるのかというような様相を呈している。これらの現象は、間違いなく、「小泉民営化路線」が齎した所産である。端的に言えば、米国の「新自由主義」、即ち、公的機能を民間企業に移管させて、競争原理に委ねてしまう手法だ。この結果は、米国で、74万人のホームレス、4570万人の無保険状態を生んでいる。
オバマ大統領は現在、何とかしてこの状態を改善しようともがいている所だ。

 最近の自民党は漸く間違いに気づいて、幾らかの手直しを図ろうとしているが、もう時は遅い。まあ、財界の言いなりになった政治に対する国民の反逆が始まったということだろう。

 日本の政治・社会をこの数十年間、誤った道に導いた責任の一端は、マス・メディア、特にテレビに責任があると思う。時事的なテーマを扱った番組の政府・財界寄り姿勢は、露骨なものがあった。特に、「小泉改革」の民営化路線美化は、目に余るものだった。
 NHKの場合は、政治権力への迎合、民放の場合は、商業資本・財界への媚びという形で現われた。それぞれが経営の首根っ子を抑えられているからだ。
 今後は「主人」がやや変わってくるので、これらメディアの出方が興味深い。

 メディア関係者の中には、今度の総選挙を「静かな革命」と呼んでいる方も居られるが、政権交代で大きく変わるかどうかは、民主党指導者の口先でない実行力を待つしかない。もし国民の期待を裏切ることになれば、自民党への回帰か、新たなる革新連合の登場を迎えることになる。

 ここで問題となるのは、現行選挙制度の不合理性である。小選挙区制では、政策が余り変わらない大政党の交代が繰り返されるだけで、少数議席の政党の代議権は、かなりの投票数を得たとしても議席に反映されず、所謂死票として、棄却されてしまう。
 
 この状態を修正する為に、比例代表制が加味されているが、最近の民主党の「マニフェスト」によると、比例部分を80議席減らすことを表明している。
 これは、一部に見られる「議員定数削減」を求める動きに媚びを売る公約であろうが、少数政党の議席を更に奪うことになる重大な錯誤である。民主主義を標榜する政党の主張とは思われない。

 公正な代議権を保障することが、民主主義を守る為の根幹である。議員経費削減を目指すならば、むしろ、議員歳費を減らすことを考えるべきだ。

 例えば、英国では、全人口が日本の半分以下なのに、日本の衆議院定数480より多い645人の下院議員が居て、歳費の方は年間5万9095ポンド (約910万円) に過ぎない。日本の国会議員歳費2400万円より遥かに下回るのだ。因に米国議員の場合は、1700万円である。
 日本の国会議員は一人当たり年間総額4800万円が支払われており、世界でもトップレベルにある。議員定数削減よりも、こちらを減らすのが、常識的であろう。

 この他、日本では、選挙に出ようとすると、300万円(小選挙区)〜600万円(比例区)もの供託金を支払わなければならない。他国では考えられない制度だ。これでは、組織に頼らない有為な個人が参加できない。
 供託金制度は、米国、フランス、ドイツ、イタリアなどには全くなく、英国の場合は、僅か約9万円だ。

 出来る限り国民の正確な声を反映させる為には、全ての政党参加の「全国一区比例代表制」か、中選挙区制が望ましい。後者の場合は、以前の中選挙区を拡大して、3〜5人区を設けるのが適当だろう。

 民主党への投票は、必ずしも「民主党マニフェスト」総体を支持したからでなく、生活に追い詰められた多くの国民が、「貧困対策」など具体的な施策を切実に求めた結果であろう。

 同党が仮に単独過半数を得たとしても、公約通り、他の少数野党との恊働を進めることが、長期的かつ安定的な展望を拓く鍵となるだろう。
 これまでの旧態依然たる自民党的体質をどう脱皮するのか、国際社会も見守っている。                    (2009.08.27)
by shin-yamakami16 | 2009-08-27 13:41 | Comments(4)
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                  バグダッド中心部



連続爆弾テロで、混迷深まるイラク・アフガン情勢
                           山上 真

 8月19日、バグダッドとカブールで、大爆発音が響き、多数の兵士、市民が武装勢力の爆弾攻撃の犠牲となった。


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 バグダッドでは、米軍の都市部撤退後のイラク国軍の警備能力を試すような形で、外務省など政府官庁が集中する「グリーンゾーン」内部での大胆な爆弾テロがあり、死者101人、負傷者300人以上を数える被害規模となった。
 

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                   カブール


 一方、カブールでは、大統領選挙の前日、NATO軍・アフガン国軍が厳重警備の最中に、大統領官邸など中枢部で自爆攻撃及び砲撃が行われ、NATO兵士, 国連スタッフ10人以上が死亡した。選挙ボイコットを訴えるタリバン勢力が、大統領選挙の投票所攻撃を予告する中で、その実力を誇示するかのように展開された。


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 これまでのカルザイ政権の統治能力と官僚の腐敗が批判を浴びる中、政治への関心が低下するのに加えて、タリバンの威嚇が加われば、当然のことながら、積極的な投票行動を期待することは難しいだろう。
 今回選挙の投票率は前回より25%程低下するものと推定されており、実効的な政権が生まれる可能性は薄い。

 オバマ大統領は最近も、アフガニスタンでの戦争の意義を訴えて、兵力増強の意思を明らかにしているが、英国を始めとする欧州諸国では、次第にこの戦争に対する懐疑論が大きくなっている。

 そんな中、当の米国内で、「アフガン戦争は戦うに価しない」という世論が初めて51%に達した。(ABC-Washington Post共同調査 August 20, 2009) この戦争を支持する声は、今年初頭は多数派であったが。

 この調査結果は、幾つかのメディアが指摘するように、最近の「オバマ支持率低落」の事実と相俟って、今後の米国・アフガニスタン戦争政策に少なからずの影響を及ぼすことになるだろう。オバマ氏を大統領に選ばせたのは、ブッシュ前大統領が始めた戦争続行の方針ではなく、現在火花を散らしている「国民医療制度改革」など、国内政策であることは明白である。民主党を支持した多くは、戦争に反対し、福祉の充実を望む庶民たちなのだ。

 バグダッドとカブールの状況は、戦争を開始するのは比較的容易だが、その終結をどのようにするかということが如何に難しいかを示している。オバマ大統領を始めとする西欧指導者たちの叡智が試されている。
                            (2009.08.21)

<追記1> 8月21日の英国各メディアによると、アフガニスタン大統領選挙当日、南部ヘルマンド州Sangin でパトロール中の英国兵2人が、路傍に敷設されていた爆弾爆発によって死亡したという。これで、アフガン戦争開戦以来の英兵戦死者数は206人に達した。 

<追記2> 26日のBBC Radio 4 ニュースによれば、25日、アフガン南部カンダハルで自動車爆弾テロがあり、40人以上が死亡したという。約40の商店が破壊され、日本の道路建設会社事務所が標的になったという情報もある。


<写真> The New York Times, The Independent, Daily Telegraph
by shin-yamakami16 | 2009-08-21 10:07 | Comments(0)

二つの大戦を憶う夏

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                広島市

「無責任体制」国家の夥しい犠牲者たち
                         山上 真

 この夏は、これまでになく、戦争のことを強く意識させられた。

英国では、去る8月7日、第一次世界大戦「最後の生き残り兵」 Harry Patch (享年111歳) の葬儀が、生まれ故郷の英国南部Somersetの教会で執り行われた。遺書に因り、国葬の申し出を辞退しての、ごく普通の葬儀であった。


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 Harry Patchはその晩年まで、「身の毛のよだつ」塹壕戦、そして3人の戦友が、目の前で 「木っ端微塵になる ’blown to pieces’ 」のを見たことを明かさなかった。戦争の「全くの空しさ」を公けに発言し始めたのは、1998年にBBCの番組の制作者に促されてからのことである。


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 2005年には、イラク戦争を開始していたブレア首相に対して、’War is organized murder and nothing else’ (戦争は組織化された殺人以外の何物でもない)とさえ言い切った。

 この夏日本に居て、主にNHK衛星の番組であるが、幾つかの「戦争シリーズもの」を見た。綿密な取材による視点確かな好番組が多く、久しぶりに感心した。その中で、特に印象深いのは、大平洋戦争「フィリピン・ニューギニア戦線」現地民・兵士たち、及び、原爆被爆者たちの証言を扱ったものである。

 マニラで日本軍が現地フィリピン人を何の理由もなく虐殺したこと、自軍兵士の犠牲を減じる為に、現地人・日本兵の見境なく砲撃・爆撃した米軍の残酷さ、
ニューギニアの密林での逃亡中に飢えて、敵味方の区別なく、その死体を食った敗残日本兵の「率直な」告白など、筆者にとっては生々しい事実が溢れていた。

 司令部の命令に背いて、英軍に投降した部隊もあった。臆する部下の兵士たちに対して、その部隊長は、「お前らは生き残れ。生きて日本に帰れ」と諭したという。投降後、英軍の尋問を受けて、その部隊長は、「これは、財閥と軍閥の生き残りの為の戦争だから、戦って死ぬ意味がない」という趣旨の弁明を行ったようだ。当時の日本軍に、このような見事な認識を抱いている将校がいたことに驚く。
 しかし、これら投降兵士の運命は、戦死した者にも劣らない程、苦しく厳しいものだったに違いない。

 原爆生存者の、生涯に渉る筆舌に尽くし難い肉体的・精神的苦痛、特に「入市被爆者」に対する、これまでの国の不当な差別などを見ると、原爆投下を招いた「帝国日本」、戦後日本政府、そして米国政府の「人道に背く行為」を、今後も執拗に告発しなければならないと思う。
 
 背中一面にケロイドを負った、長崎在住の被爆者は、「北」朝鮮・イランの核武装計画を非難する米国について、「自分が数多くの核兵器を持っているのに、何言っておるんだ?」と、大国の横暴を衝く。

 米国人の6割が未だに原爆投下を是としており、その8割が共和党支持者だという。前大統領ブッシュ氏が属する共和党は、そういう類いの政党なのだ。
「核兵器廃絶」を唱えるオバマ大統領には、今直ぐ、米国民に核戦争の実態を知らせる努力など、具体的方策を求めたい。

 我が首相麻生氏は、核兵器廃絶を求めながら、米国の「核の傘」が必要と言う。米国の「核先制攻撃」にも反対しない姿勢だ。自家撞着に気づかないのだろうか。

 日本帝国『軍令部』総長の提言が、事実上、大平洋戦争開始を決定的にしたことを、初めて知った。しかも、この組織参加者は皆、「意に反して、大多数に従って」戦争に賛成したのだという。「異を唱える勇気がなかった」というのである。
「一億総無責任体制」の重大な結果は、見ての通りだ。

 この際更めて、「天皇制国家日本」の本質を抉り、戦争責任の在り処を明らかにする必要を感じるのは、筆者だけではないだろう。そのことが、国家による新たな戦争犯罪を生む「無責任体制」を、決して許さない保障措置となり得るからである。                                                       (2009.08.11)



<写真> Morning Star, The Guardian, Wikipedia

<参考> NHK『証言記録・兵士たちの戦争』、『NHKスペシャル・日本海軍400時間の証言』
by shin-yamakami16 | 2009-08-11 23:05 | Comments(0)
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            平壌空港に着いた米・元大統領クリントン氏


浮かび上がる「無為無策」の日本外交
                          山上 真

 昨日米国元大統領が、突如として「北」朝鮮・平壌を訪れ、金総書記と会談、抑留されていた2女性ジャーナリストと共に帰国して、世界を驚かせた。


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 これは用意周到に二国間で準備されたプロセスであったが、表向きはあくまで「民間外交」の成果として、米国の「北」政策の変更を示唆するものではないと、ホワイト・ハウスは言う。
 

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 しかし、元大統領を2ジャーナリスト解放の為にだけ送ったという説明には無理があり、当然のことながら、行き詰まっている核開発問題などの懸案解決の糸口を探ろうとする試みが含まれていると見るべきだろう。


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 今度の米・「北」交渉を実らせた仲介者は、恐らく中国政府だろう。六か国協議の頓挫という事実を前にして、その開催に責任を負う中国が、打開策として、「北」が求める二国間交渉開始を、先の「米中経済戦略対話」の際に米国に求めた可能性が濃厚である。


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 例の「拉致問題」に捕縛されている日本外交の頭越しに為された「電撃交渉」の行方を、我が政府当事者は静観しているしかない。みのもんたが言うように、数多くの「拉致被害者」を抱える日本政府は、3、4人の首相経験者を総動員して、「北」に行かせるような知恵も無い。


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      釈放されて平壌空港から出発するローラ・リンさんとユナ・リーさん

 オバマ大統領が世界的な核兵器廃絶の姿勢を示しつつ、「北」、イランの核武装計画を阻止しようとしていることは正しい。今度の交渉が、極東全体の核武装問題解決の突破口になることが強く望まれる。(2009.08.05)


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 <写真> The New York Times, The Washington Post, The Times
by shin-yamakami16 | 2009-08-05 16:32 | Comments(0)