世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

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途上国・先進国の対立と早急な国連改革の必要性

                     山上 真


 先週22日から今週にかけてニューヨークで開催された一連の国連の会合で、嘗て見られなかった程の大きな成果が生まれたことは確かである。

 米国・オバマ大統領が率先して、国連重視の姿勢を明示し、安保理で「核兵器廃絶」を全会一致で決議したことは、画期的な「事件」と言っていいだろう。

 日本の鳩山首相が「気候変動サミット」の場で、世界各国に先駆けて、CO2・25%削減の方針を明らかにしたことも、高く評価された。過去には殆ど顧みられなかった我が国の「国連外交」が、初めて認知された恰好である。

 こうした建設的雰囲気の中で、リビア・カダフィ、イラン・アフマディネジャド、ヴェネズエラ・チャベス各氏の演説は、「暴走的」などと形容され、少なくとも「挑発的」なものとして、主として西欧諸国代表の退場を誘発した。

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 リビア国家元首としての40年間で、初めて国連総会に臨んだカダフィ大佐は、米国オバマ大統領の就任を祝福しつつも、これまで米国など西側が引き起こした数々の戦争の責任を追及し、イラク戦争を開始したブッシュ・ブレア両氏を国際法廷で裁くことを提起した。そして、国連の「理想に背く」安保理理事会をテロリズムの機関と決めつけ、アフリカ諸国を常任理事国に加えるよう強く求めた。その揚げ句に、国連憲章を記した紙を破くような仕草を加えて、総会場の顰蹙を買ったりもした。

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 「挑発的」演説と言えば、近年ではチャベス氏が「北米帝国主義」大統領ブッシュ氏を「悪魔の硫黄の匂い」がするとした、2006年9月の悪名高い演説が思い出されるが、今回の同氏のものは、「希望の匂いがする」として、オバマ大統領を礼賛するなど、比較的穏やかな演説だった。しかし、オバマ大統領に対して、キューバへの経済封鎖を解除するように要求し、「社会主義の本」(『資本論』?)を掲げて宣伝するなど、相変わらず意気軒昂な所を見せた。


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 アフマディネジャド演説は、イスラエルのガザ侵攻及び米国主導のイラク・アフガン戦争を強く糾弾するものだったが、親イスラエルの西欧諸国などが退場する中、少なくない発展途上諸国代表が傾聴していたことは注目される。
一方、彼の問題発言「ホロコーストは存在していない」は取り消されておらず、このことが、西側諸国の「イラン核開発」の疑念を大きくしていることは否定できない。


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 これらの指導者の態度は、洗練され、かつ上品な外交姿勢の国々から見れば、野卑、野蛮な振る舞いとして、少なくとも敬遠の対象になるのは避けられないが、「貧しい国々」のフラストレーションを代弁しており、少なからずの支持を得ていることも間違いない。

 以上のように見ると、依然として、「世界的安全保障」を担うべき国連が多くの改善するべき問題を抱えていることが分かる。端的に言えば、発展途上国と工業先進国の軋轢、核保有国と非核国の対立などの構図が浮かび上がる。
 そんな中で、日本が果たすべき役割は自ずと明らかだ。これまでの欧米よりの外交姿勢を漸次改め、アジア・アフリカ・中南米諸国との関係に軸足を移し、欧米諸国との橋渡し役を務めるならば、希望する「安保理常任理事国」の一つになることの意味も見出されるに違いない。     (2009.09.28)

 

 <写真> The Guardian, Daily Telegraph, The New York Times
 
by shin-yamakami16 | 2009-09-28 20:04 | Comments(0)

「八つ場ダム」のこと

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              吾妻渓谷(「八つ場ダム」建設予定現場)



求められる「自然保護」優先の視点

                       山上 真

 一ヶ月程前、少しばかり気分転換しようとして、前橋—渋川—草津—上田への短い旅をした。

 このルートは5,6年前にも辿ったことがあり、緑溢れる谷間を経て、雄大な浅間山を望める、とても気に入った行程である。

 吾妻川沿いに暫く行って、中之条に差しかかった頃から、以前の様子とは大分違うことに気付いた。幾つもの新しい家屋、商店が現われて、嘗ての寂びた佇まいは消えていた。更に進むと、驚いたことに、Bを崩した頭文字で始まる、関東一円によく見られる大型スーパーまで在るではないか。

 不思議な気分で長野原に入った途端、谷間に突如として姿を現したのは、谷底から100メートルはあるかと思われるT字形の直立したコンクリート塊であった。しかも、二本立っている。
 思わず、「これは何だ!」と叫んでしまった。

 周囲の美しい谷間風景とは、全く相容れない「異物」であった。何でこんなものがここにあるのか、という感懐に襲われた。

 先を行くと、次から次へとコンクリート塊が現われた。ダンプカーなど、大型車両が、絶え間なく通り過ぎる。殺伐とした工事風景に、旅気分が失せてしまった。

 「何だ、これは」の疑問が解けたのは、それから一週間程経った、「総選挙」直後のことである。「八つ場ダム・建設中止」で騒がれ始めて、漸く「あそこだったのだ」と分かったのは、我ながら遅きに失した観があるが、日本を暫く離れていた所為で仕方ない。

 繰り返すが、貴重な自然とは異質の、「疎外的存在」に見えてしまうのは、どうしようもない。月並みな言葉であるが、これほどの自然破壊は見たことがない。


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 現地住民は、当初、激しい建設反対運動を展開したというが、当然至極のことだ。美しい、静かな故郷を奪われることは、どれほど切ないことであったであろうか。

 当時の行政側は、金に物を言わせるようなことはせず、殆どの住民が反対した声を尊重するべきであった。もし「自然環境保護」の視点があったなら、そのことも可能であったであろう。

 今や「建設中止」は動かないこととして、後をどうするのかが肝心だ。先ず住民への十分な補償、次に「事後処理」の問題だ。


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 住民の納得の下に、建設現場を「自民党・土建政治の遺跡」として保全し、後々まで伝えるのもいいだろう。
 或は、全てを復旧するという、「見果てぬ夢」を追うのであろうか。             
                          (2009.09.25)


<写真> Wikipedia, 読売新聞, http://homepage2.nifty.com
by shin-yamakami16 | 2009-09-25 19:02 | Comments(0)
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               ワシントンでの「反オバマ」デモ


「平等か、自由か」・問われる民主主義の理念

                  山上 真

 米国オバマ大統領の「医療制度改革」の成否が最終段階に入ろうとしている。

 最近の米国統計局調査によると、厳しい経済情勢を反映して、無保険人口は、2007年の4570万人から、昨年は4630万人と急増している。
 
 この8月に議会での成立を目指していた法案が、共和党議員、及び民主党の一部の議員の反対に遭って、今年中に成立するかどうか微妙な情勢になっている。

 オバマ氏は当初、全国民に適用される、英国の*NHS 型医療制度の実現を頭に描いていたようであるが、既存の医療保険に入っている人々の「新たなる重税への危惧」、及び保険会社、共和党の猛烈な反対に直面することとなった。

 この制度を維持する為には、向こう10年間に1兆ドルを要する故に、富裕層への課税を重くすることになりそうなこと、国家管理の医療制度成立によって、民間保険会社の経営が困難を来す恐れがあることなどが、反対の理由である。

  これに対して、オバマ大統領は、「誰も、病気になったら破産してしまうということがあってはまらない」と訴えている。つまり、膨れ上がる医療費と膨大な「無保険人口」の存在をどうするべきかということは、「選択」の問題ではないとも。

 9月6日付『ニューヨーク・タイムズ』紙は、その社説で、オバマ大統領が共和党を中心とする反対派の猛烈な攻勢に怯むことなく、当初の「国民大多数をカバーする」公的医療保険制度を確立するように求めている。それが今後10年間に1兆ドルを必要とするとしても、前ブッシュ政権下で富裕層に対して施した、向こう10年間の1兆7千億ドルの減税額と較べれば、大した問題ではないとする。

 更に同紙は、9月12日、保守派によって組織された5万人の大規模デモでの多くのプラカードに、「オバマは社会主義者だ」という ‘epithet’ (形容辞・「渾名・悪口」)が用いられたことについて、5人の学者・雑誌編集者などの感想を掲載した。そこでは、米国民大多数が、「社会主義」という概念を漠然と「悪いもの」としてしか理解せず、ヒットラーを連想したりしていること、人間的な社会民主主義が存在することを知らず、旧ソ連型「共産主義」と混同してしまうこと、フランクリン・ルーズベルト大統領も『米国自由同盟』から「社会主義者・共産主義者」と呼ばれたことなどを指摘している。そして、オバマ氏の政策が「自由」よりも「平等」にウェイトを置いている点で「社会主義的」であるにしても、中央集中的経済計画・生産手段国有化というような「厳密な定義の」社会主義とは全く異なると指摘している。
 またTerence Ball 氏(アリゾナ州立大教授)は、米国には、19世紀末からの「社会主義的伝統」が生きづいており、「社会主義者」と「愛国者」とは相容れない存在ではないと主張している。

 最近オバマ大統領の支持率が50%台前半にまで低下していることの原因は、必ずしも「医療制度改革」の為ばかりではなく、アフガニスタン情勢が、米兵などNATO軍兵士の戦死者数が激増する一方、総選挙の混乱で「次期アフガン政権」の展望が見えないことなどに由るものと思われる。9月17日のカブールでの爆弾テロで6人の兵士が犠牲になったイタリア・ベルルスコーニ首相は、アフガン駐留3100人の軍隊について、「出来るだけ早期に撤退させる」意向を明らかにしている。他のNATO諸国も、アフガン駐留続行について、ますます強い反対論が巻き起こっているのが実情だ。
 米国内でも、軍首脳部が求める兵士増派について、支持する世論は28%に過ぎない為、オバマ大統領も増派について態度を決めかねているようだ。

 これまで幾つもの画期的な政策を実行してきたオバマ大統領は、前向きの政策である「医療制度改革」と、「オバマのヴェトナム」、つまり「取り返しのつかない大失敗」となりかねない「アフガン作戦」という二つの難題をどう処理するか、胸突き八丁に差しかかっている。
                    (2009.09.19)


<注> NHS=National Health Service 国民保健制度
 英国民全てが、無料で医療を受けられる国営制度。しかし、高度医療や、歯科医療などについては、財源及び医師不足で不充分な面があり、改善が求められている。(外国人の利用も可能)

 
<写真> The New York Times 
by shin-yamakami16 | 2009-09-19 11:17 | Comments(2)
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9・27ドイツ総選挙の帰趨は?
                   山上 真

 先週末5日、ドイツ・ベルリンで約5万人のデモ参加者がブランデンブルク門一帯を埋め尽くし、原子力発電の中止を訴えた。

 ドイツでは、チェルノブィリ事故、国内での放射能事故・隠蔽スキャンダルが相次いだこともあって、2000年に当時の社会民主党シュレーダー政権が連立相手の「緑の党」の求めに応じて、2020年までに17原子力発電所を閉鎖することを決定していたのであるが、現メルケル政権は方向転換し、幾つかの原子力発電所を継続使用する意向に変わった。
 この国では、総電力の23%を原子力に、42%を石炭使用の火力に、そして、29%を天然ガスなどにそれぞれ依存している。
 
 5日土曜日の「反核デモ」には、ドイツ北部・Gorleben核廃棄物処理施設の周辺農民・住民を始めとして、環境保護活動家、労働組合員、青年組織、多くの政党関係者が参加した。

 「グリーンピース」の調査によると、59%のドイツ人は、原子力発電継続に反対しているという。

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 アフガン北部Kunduz市駐留ドイツ軍が「NATO燃料タンク車2台がタリバンに奪われそうだ」という情報に基づいて、米軍機に通報して、これら車両を爆破、60人から70人の現地人を死亡させ、多数に火傷を負わせた、という事件が起きたのは、先週4日金曜日早朝のことである。

 現在、NATO関係者が、この事件の真相を調べているが、被害者の大部分はタリバンとは無関係のアフガン人であることが濃厚になってきている。またもや重大な誤爆が繰り返され、その原因を作ったのは、他ならぬドイツ軍であったことが、衝撃的に本国に伝えられた。

 メルケル政権は、国内の強い反対意見を物ともせず、米・英国の要請を受け入れて、現在約4200人の部隊をアフガニスタンに駐留させている。ドイツ軍は、作戦を日中数時間に限定するなど、現地人に対する配慮を伴った行動をしていた様であるが、結局のところ、悲劇を避けられなかった。
 アフガニスタンで戦死したドイツ軍兵士は35人以上である。

 ドイツでは、アフガン早期撤退を求める世論が7割に達しており、先に述べた「反核」世論と相俟って、今月27日に予定されている総選挙結果が注目される。      (2009.09.11)
 

 
<写真> Morning Star, The New York Times


 
 
by shin-yamakami16 | 2009-09-11 23:40 | Comments(0)


OECD調査と「自・公」前政権・財務省の重い責任

                              山上 真

 筆者既述(2008年9月12日)のことであるが、今年度のOECD(経済協力開発機構)調査でも、日本の教育予算が、加盟28か国中、最低レベルである一方、家庭の負担する教育費が世界2位であることが分かった。

また、クラス・サイズについては、小学校で28.2人(OECD諸国平均21.4人)、中学校で33.2人(OECD 23.9人)で、大差がついている。いかに、日本の教育条件が「先進国」に似合わない劣悪さであるかを示している。

  このニュースは、一般メディアが例年になく大きく報道しているが、論評は様々だ。
 「読売社説」が従来の主張と較べて比較的妥当な「教育予算を拡充していくことに、誰も異論はあるまい」としているのに対して、「産経主張」が、「ダメ教師が増えては困る」というタイトルで、相変わらずピント外れの「日教組」攻撃に的を絞った駄文を連ねているのには呆れた。

 この数年の我が国の国家予算約80兆円の内、将来の日本を担う人材を養成する教育費は、約6兆円に過ぎない。その一方、日本国憲法が「戦力はこれを保持せず」と定め、「人を殺すこと」以外に何も役立たない「防衛費」が約5兆円にも達している。これは世界で二,三番目の大きさだ。

 このような理不尽な政策は、巨大な軍事力を背景とする米国の誤った世界戦略への従属的協力と、中国・「北朝鮮」などの脅威を殊更強調する右翼・財界・旧支配層のプロパガンダが生み出した所産である。

今こそ、新たな外交をすべての国々との間で切り拓き、極東に平和的環境を整備することによって、無駄な軍備を廃し、民生重視の政治を確立するべきだ。

 次期政権を担う民主党は、教育予算を現在のGDP 比3.3%から、5%レベルまで引き上げようとしているが、一般に、その政策実行の際の「財源難」を指摘されている。ここで、鳩山由紀夫氏の言う「チェインジ」が発揮されるとすれば、当然のことながら、財政政策の根本的転換が図られてしかるべきだ。「防衛費」を大幅に減らすという選択肢は、合理性に富んでおり、決して避けるべきではない。                    (2009.09.10)
 

 
by shin-yamakami16 | 2009-09-10 14:31 | Comments(2)
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米国の圧力をどう撥ね除けるか
                                 山上 真

 民主党の圧勝から一週間が過ぎようとしているが、一般的に言って、日本での出来事に昔程関心が高くはない海外メディアも、今度の「政変」には、かなりの関心を示している。

 英国では、保守系『テレグラフ』紙(9月2日付)が鳩山氏の登場を、米国・JFケネディのそれに喩えて、同氏の家系・周辺の事情を極めて好意的に描き、新政権への期待感を示している。

 経済紙『フィナンシャル・タイムズ』紙も、日本の「長期停滞との訣別」を可能にする絶好の機会が到来したと歓迎している。

 他方、中立系『ガーディアン』紙(9月2日付)は、次の3つの理由で、殆ど前政権と変わりないだろうとする。
 日本の政治権力中枢は、固陋な「官僚制」の支配下にあり、急激な変化を受け入れられる余地は無いこと、
 民主党が、旧左翼から保守系政治家までの寄せ集めであり、漠然とした政治綱領しか持たない為、結局のところ、ちょっとした手直しに止まること、
 今日の中国の台頭など、アジアに於ける大変化を前にして、「明治維新」と大平洋戦争敗戦後の「近代化」という過去二回のような、主として外的圧力に因る「戦略的方向転換」を、現在の硬直化した体制の下では、再現することが難しいことなどの理由である。


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 仏『ル・モンド』紙(9月2日付)は、「野党の歴史的勝利」と題する記事の中で、社会的不公平・失業・生活不安を招いた自民党政治に替わって、大胆なる「社会変革」プログラムを実行しようとしていると、高い評価を与えている。更には、民主党首鳩山氏が、「人々の生活に奉仕する政治」( une politique au service de la vie des gens ) を導入することを公約していると伝えている。

 「民主大勝利」に対する米国の反応は、既に日本の多くのメディアが伝えているように、これまでの所、かなり冷ややかだ。過去の自民党「対米一辺倒」外交から、「対等」関係を標榜するものへの「激変」に身構えている米国一般メディア・政府関係者の様は、やや滑稽に見える。
 「日米安保条約」に変更を加える気のない「民主外交」がやれそうなことは、せいぜい「沖縄」の現状改善と、「思いやり予算」の減額くらいではないか。
 むしろ、民主党内部の、対米姿勢についてのコンセンサスが出来ていないのではないかと、気になる。

 鳩山氏が早速、オバマ大統領と電話会談したり、米・露大使と会ったりしているのは、結構なことだ。首脳が官僚任せにせず、不信感を拭う為に直接交渉することが、今日では何よりも有効であるし、必要なことだと思う。

 クリントン国務長官を始めとする米外交部は、前ブッシュ政権とあまり変わりない、現状維持型の日米関係を追求しようとするであろう。それを変更させるには、「チェインジ」を標榜するオバマ氏を直接説得して、「従属」から「対等」へと持ってゆくことが得策だと思われる。    (2009.09.04)

 
 
<写真> The Financial Times, The Guardian
by shin-yamakami16 | 2009-09-04 22:40 | Comments(0)