世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

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追及されるブレア前首相の「戦争責任」

                               山上 真

 ロンドン・ウエストミンスターで、2003年3月に始まったイラク戦争への英国の参戦経緯を解明する為の「独立調査委員会」が、11月24日開始された。ブラウン政権に対して野党などが早くから求めていたが、政権及び政府機関の抵抗を押し切って、漸く日の目を見たものである。

 この委員会を率いるJohn Chilcot 卿は、調査の目的が、英国の「イラク参戦」を決めた経緯と誤謬を全面的に解き明かすことで、裁きを下す場ではないと言明したが、当事者の前首相トニー・ブレア氏などへの批難を避けるものではないとも付け加えている。

 最も関心が集まるのは、英国の情報機関が既に、サダム・フセイン指導下のイラクがWMD (大量破壊兵器)即ち、核・化学兵器を所有していないことを掴んでいたにも拘らず、当時のブレア首相が、「英国が45分以内にイラク軍のWMDによる攻撃に晒される」として、国民に対して危機感を煽って、米国・ブッシュ政権と共に、イラク侵攻に踏み切ったことの事情である。

 イラク戦争では、凡そ100万人のイラク人が死傷又は行方不明になり、英国軍は179人の兵士が戦死した。欧米軍死者は4646人で、その内米軍が4328人に上り、オバマ新政権が米軍撤退を決めた現在でも、バグダッドを中心に爆弾テロの被害者が絶えない。


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       ブレア氏に「自由勲章」を授けるブッシュ大統領 (2009.01.13)     



 最近の『テレグラフ』、『ガーディアン』紙などが伝えているところによると、既に為された証言の中で、2001年つまり「イラク開戦」2年前に、ブッシュ政権内部で、サダム・フセイン政権を打倒しようとする「レジーム・チェインジ」が画策され、英国にも打診されていたという。この時は、流石に英国政権内部でも、国際法上「違法性が高い」という判断が為され、米国政権に同調しなかったということだ。

 証言者としては、先ず開戦当時の国防省・外務省・情報省関係者、国連大使、米国駐在大使などが予定されている。ブレア氏、それに当時蔵相として戦争政策に加担したブラウン首相も来年初めに証言を求められる可能性が強い。

 開戦当時からイラク侵攻を告発してきた ‘Stop the War Coalition’ (反戦連合)などの団体は、今度の「調査委員会」では中途半端な結論しか期待できないとして、寧ろ、ハーグの国際司法裁判所でブッシュ・ブレアの「戦争犯罪」を裁くべきだと世論に訴えている。

 ブレア氏と言えば、先の「EU大統領」選びで、有力候補として名が挙がっていたが、やっぱり「イラク」が遠因?となって、選に漏れたようだ。大罪を犯した同氏に対しては、戦死者家族を始めとする多くの人々が、今後末永く追及の目を逸らさないことであろう。  (2009.11.27)


<追記 1> 前駐米大使 Christopher Meyer 氏は、「2002年4月に、ブレア首相が米国ブッシュ大統領と、同氏所有のテキサスの牧場で会談した翌日、初めてイラクでの『レジーム・チェインジ』を口にした」と証言した。
 また、当時の国連大使 Jeremy Greenstock 氏は、「イラク侵攻は合法的 (legal) であったが、大多数の国々、及び英国民多数の支持を得ない形で軍事行動に踏み切った点で、適正さ (legitimacy) を欠いていた」と述べた。
 

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         イラク戦争当時の国連大使 Jeremy Greenstock 氏


<追記 2> イラク戦争当時、英国の参戦に賛成していたメディア、例えば『タイムズ』、『テレグラフ』紙などを含めて、現在では殆ど全てが、ブレア氏の「開戦責任」を厳しく問うている。
 仏紙『リベラシオン』も、「ブレアの嘘 (mensonge) が白日の下に晒されている」というタイトルの記事を28日載せている。 



<写真> The Guardian, The Times,

 


 
by shin-yamakami16 | 2009-11-27 10:29 | Comments(0)
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天皇制は「政治性」を排除出来るか?

                         山上 真


 先日、オバマ大統領が天皇・皇后に会見した際に、90度体躯を折り曲げて挨拶した写真が世界中に配信され、特に米国右派メディア、例えばFOXグループが問題にしている。

 一般的に見ても、確かにこれほどの「平身低頭」の挨拶の仕方が適当だったかということは、論議を呼ぶことだろう。「元首」同士の挨拶であれば、対等の形で好い。例えばチェイニー前副大統領の時は、天皇と握手しただけで、頭は下げなかったようだ。

 FOX が言うのは、オバマ氏が殊更「卑屈な態度」を取ったことへの疑問である。対するホワイト・ハウスは、外交上の礼儀を尽くしたに過ぎないとする。
 しかし、よく考えてみると、オバマ氏は何も天皇が特別に「尊い存在」だから、ああした挨拶をしたのでなく、恐らく、米国大使館関係者などから、こうしておいた方が先々米国にとって好都合だからと示唆され、「国益重視」の立場から出た行動と看做すことが可能だ。


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 例えば「沖縄米軍基地」問題をめぐって、これまでになく日米関係が緊張している今日、日本人一般に「人気ある」天皇を重んじる姿勢を示すことが、米国にとって少しでもプラスに働くという打算がなかっただろうか。とにかく、オバマ氏の心の中に、この侭では日本人が米国から離れて、中国辺りに関心が向かってしまうという、ある種の危機感があったかも知れない。

 もしそうだとすれば、ここには、天皇の「政治性」を利用したいという欲求が読み取れる。現実政治の「上にある」影響力を当てにしたいということだ。

 日本占領後の最高司令官ダグラス・マッカーサーが、大平洋戦争の「戦争責任」を問われた昭和天皇を擁護し、天皇制を廃止しなかった理由は、日本の戦後統治の為に、天皇の日本国民に対する「威光」を利用する方が有利と判断したからと言われているが、ここでも天皇制の「政治性」利用が認められる。

 英国の場合、女王が時の政府の「施政方針」を演説し、チャールズ王子が「遺伝子組み換え」作物をめぐって米国系企業を批判したり、政府の環境保護政策に異を唱えて、「政治的発言」という反批判を受けたりしている。王制運営経費が高過ぎることもしばしば攻撃の的になる。その廃止を含めて、君主制の問題が開けっぴろげに議論されている。

 日本では、「皇室」を真正面からの論議の対象とすることを避ける傾向が強い。例えば、皇室費が約67億円で、その世話をしている宮内庁の費用が110 億円だという事が、世上の経費削減の論議華やかな折、取り上げられていい筈であるが、少しも話題に上らないようだ。TVなどのマス・メディアは、「皇室礼賛」番組が殆どで、批判的なコメントを耳にすることはまず無い。

 確かに天皇・皇后、そして皇太子・妃、共にそれぞれが得難い人柄であり、立派な歴史観・見識を兼ね備えて居られることは幸運であるが、「天皇制」という制度の問題とは、切り離して考える必要がある。

 「天皇制」が、当事者の個人としての自由・人間性を少なくとも拘束し、その特殊な世襲制度に埋没させていることは、過去十数年の様々な事例を見ても明らかだ。そのことが、門外の者も感じ取れる「不幸」を生んでいる。
 
 その立場を象徴させる為の敬語の一般的使用、他と区別する為の異例な配慮などを見れば、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」とした民主主義の原理から全く外れている事は誰でも分かることだ。

 この際、「天皇制」論議を禁忌とせず、あらゆる角度から検討し始めたらどうだろうか。この制度が無ければ、日本という国が成り立たないと言う人々が少なからず存在することは事実であるが、世界の殆どが共和制に移行しつつある歴史的段階にあって、そのような主張がいつまでも通用することはないだろう。

 現実に少なからずの国民が窮境に陥り、その生活擁護が大事という観点に立つことに異論がなければ、「天皇制」周辺の全てについて、先ず規模縮小から始め、段階的に真の民主主義体制に移って行くことが自然な成り行きと思われる。
 
 「天皇制」に付属する慣習をどうしても残したいということであれば、国家から完全に切り離した、一つの「宗派」として存続することが適当であろう。
  (2009.11.19)




<写真> AP, AFP
 
by shin-yamakami16 | 2009-11-19 10:57 | Comments(0)
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厳しさ増す米国「軍事基地配置」批判

                            山上 真

 大統領就任後一年を経て、初めてのオバマ氏の日本訪問は、何とか双方の面子を守った形で終った。日本に於ける「政権交代」の後、対立を顕在化しかねない沖縄基地の問題を先送りして、従来の「日米同盟」路線を確認することが先ず優先事項であった。

 しかし、より客観的、或は自由な立場から見れば、日米双方、特に日本側の遠慮がちな態度が目立ってしまうのはどうしようもない。例えば「普天間基地」の移転問題をどのように解決したいのか、本音が分からず、何とももどかしいというのが、欧米メディアのほぼ共通の印象だ。

 「オバマ訪日」の直前11月12日、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「日本はオバマ訪日を醒めた目で待ち構えている」、「沖縄の人々は米軍基地をなくす希望を打ち砕かれて、苛立っている」という見出しの2本の記事を掲載した。その主旨は、民主党政権が米国と「対等」の関係を求め、前自民党政権下で取り決められた「普天間」移転計画を反故にしようとする兆候を、米国政府を始め各方面が只ならぬ警戒心で見つめていること、日本側も、沖縄民衆の「反基地感情」が11・8大集会で示されたように極めて強く、鳩山政権も「沖縄見直し」をマニフェストで公にしている以上、「明らかな後退」が難しいことなどを指摘している。


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 英国『インディペンデント』紙(11月12日付)は、「ヒロシマはバラックを大歓迎したいが、忙し過ぎて無理だって」という記事を載せている。そこでは、広島・長崎がオバマ氏の「反核プラハ演説」を高く評価して、オバマ氏の訪問を熱望しているのに対して、米国内の政治的圧力が、今回の両市訪問を断念させた可能性を示唆している。米国では、今なお6割の国民が、1945年8月の原爆投下を是としているからである。尤も、テキサス州の基地内で直前に起きた「銃乱射事件」が、同氏のスケジュールを無理なものにしたことは確かだ。

 仏誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトウール』(11月13日付)は、米国大統領の誰も、これまで被爆地を訪ねて、「謝罪」したことがないという事実を指摘している。僅かに、退任後のジミー・カーター氏が広島を訪問した事実があるということを付け加えている。
 更に同誌は、先日沖縄県民が2万人集会を開いて、軍事基地撤廃を強く求めたこと、先週末には東京で幾つもの「反戦・反米デモ」が展開されていたことを伝えている。そして、極東で中国の台頭が目立つ反面、米国が次第に影響力を失いつつあると結論づけている。

 11月13日の英国『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、沖縄問題など米国との外交関係をめぐって、鳩山内閣内の不一致が目立ち、「うろたえている」(dither) ことを案じている。首相、外務大臣、防衛相がそれぞれ、「普天間」移転先の問題について異なる方針を示していることを衝いているのだ。ただ同紙は、政権に就いた以上は、現実的対応が必要だとする。

 仏紙『リベラシオン』(11月13日付)は、「沖縄は最早米国兵にとっての楽園であることを望まない」という見出しで、ルポルタージュを載せている。
 
 「140もの島から成り、美しい海岸、亜熱帯気候と独特の文化を持つ沖縄は、それこそ旅行に適した楽園であり得るが、日本全土に89ある米軍基地の3 分の1を抱えて、至る所が金網と有刺鉄線で囲まれている」


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 「私たちは普天間からの基地移転ではなく、全ての米軍基地撤去を求めているのです」と語るのは、反戦市民団体活動家の Hitomi Arakaki さん(26歳)だ。 彼女は、11月8日の大集会に参加して、「戦争はいやです」( Non à la guerre! )と訴える。

 沖縄国際大学の Nobuyuki Nishioka 教授は、
「米国人は、この沖縄駐留を正当化する為に、あらゆる形の『脅威』を煽っているのです。北朝鮮、中国、そしてロシアというように。しかし、どう言っても、彼らの利害のために我々を人質にすることは正当化できませんよ」と語る。


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 実射演習による汚染・環境破壊、戦闘機などの凄まじい騒音、加えて、米国兵士による数多くの犯罪行為も深刻な問題になっていることを『リベラシオン』は指摘している。

 米国オバマ政権は、当初「チェインジ」を標榜して、多くの期待感を引き寄せたが、こと外交政策に関する限り、大部分、前ブッシュ政権のものを引き継ぐだけに終始している。特に極東政策は、「北」朝鮮問題を梃にして、軍事基地配置の基本線を変えようとしていない。これは、オバマ氏が、嘗て共和党の為に働き、イラク戦争に賛成したこともあるヒラリー・クリントン女史を国務長官として起用したこと、及び、前ブッシュ政権の国防相ロバート・ゲイツ氏を再任したことが大きく響いていると思われる。

 日本新政権は執拗に、国民の利益を守る為の努力を米国に対して貫いてゆく外ない。今度の首脳会談で、「日米同盟深化」の為の協議開始が約束されたが、是非とも日米安保条約の「根本的見直し」にまで繋げて欲しいものだ。
                          (2009. 11. 15)
 


<写真> Le Nouvel Observateur, Libération, The Independent


 
 
 
by shin-yamakami16 | 2009-11-15 10:16 | Comments(0)
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「アフガン・イラク」の混迷と米英指導者たちの窮境

                           山上 真

何とも気が滅入るような事件が続いている。ここでは、遥か彼方の戦場の話であるが。


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 アフガニスタンでは、今月2日、南部ヘルマンド州 Nad-e’Ali で哨戒任務の訓練を受けていたアフガン人警官が、5人の英兵を射殺し、6人に重軽傷を負わせた上、バイクで逃亡するという事件が発生した。


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 英国兵は、哨戒任務を一旦終えて、アフガン人警官隊と共にお茶を啜りながら休んでいて、防弾服なども着用せず無防備の状態であった。突然、一人のアフガン警官が英国兵に銃口を向けて射撃し始めたという。この行動を助けた仲間も居た様だ。


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               射殺されたMatthew Telford 伍長


 数日後に、通称 Gulbaddinと呼ばれている其の警官は、タリバンに花を贈られて迎えられ、その保護下に入ったという現地情報が流されている。
 
 事件が示すのは、アフガン軍・警察中枢部にタリバン勢力が浸透しており、西側が企図する、「アフガン自立の為の自衛軍創設」後に撤退するというNATO軍出口戦略が、根本的に崩れていることである。


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 この事件が英国社会にいかに大きな衝撃を与えたかということは、通常、比較的冷静な反応を示すことで知られているFT (『ファイナンシャル・タイムズ』紙)が、トップ記事「世論の潮が反戦に傾いている」を掲げ、上記射殺事件で18歳と37歳の兵士二人の犠牲者を出した Grimsby と、その隣接する町の雰囲気が一変していることを伝えている事実からも分かる。

 Grimsby は、1960年代に漁業が廃れて、以来兵士を多く出すことで知られているが、27年間英国海軍にいた男性は次のように言う。

「私の18歳になる甥も、向うの戦線に行っているが、2012年の帰還予定前に、アフガン戦争が終わって欲しい。もう撤退して、お金は直接、英国本土をテロ攻撃から守る為に使った方がいい。ゲリラ戦なんだから、勝てる筈がない」

 こうした声は、今や英国政府高官 Kim Howells (情報・保安管理担当)から、Ashdown卿( 元アフガン駐在国連代表)に至るまで、幅広く聞かれる。


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           「アフガン撤退」を主張する Kim Howells 氏

 11月6日、ブラウン首相も遂に、「もしカルザイ政権が汚職.腐敗問題に正しく対応しなければ、これ以上英国兵を犠牲にする訳にゆかない」として、撤退の可能性を、消極的ながら仄めかすに至った。

 11月8日の保守系紙『タイムズ』は、トップ記事で「英国軍指導部がアフガン戦線からの退却を検討している」と伝えた。Musa Qalaなど、タリバンによる烈しい攻撃に晒されている最前線基地幾つかを放棄して、ヘルマンド州の重要拠点のみを防衛する作戦に変更するという。

 一方、同日の『インディペンデント』紙は、やはりトップで、ここ30年来、アフガンで取材活動を続けている Patrick Cockburn 記者の「アフガンからの英国軍撤退が最善の選択だ」とする記事を掲載している。アフガン民衆の大多数が米英軍の駐留を望まない現実が厳然として存在する以上、新たな軍派兵は全くの無駄で、兵士たちの空しい血を流すだけであると断じている。

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 11月5日、米国テキサス州 Fort Hood 陸軍基地で起きた銃乱射事件は、13兵士死亡、30人負傷という最悪の惨劇となった。 犯人は、イスラム教を熱心に崇拝する精神科医Nidal Malik Hasan少佐(39歳)で、近くイラクかアフガニスタンに派遣されることになっており、そのことで大いに悩んでいた様だ。


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仕事上、戦線から帰還する傷病兵の治療に従事する過程で、戦場の悲惨さを熟知しており、少なくとも、イスラム圏での戦争参加に対しては厭戦的になっていたに違いない。加えて、軍隊内の人種差別的側面も、未曾有の規模の犯行に至る要素として、暴露される可能性がある。


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           乱射事件犯人とされる Nidal Malik Hasan 少佐


 引き続いて、Hasan少佐がアルカイダ系ウェブサイトに接触していたこと、「9.11テロ事件」への関与の痕跡があること、或は、自分の所持品を隣人に分け与えて身辺整理をしていたことなどの情報が流されているが、本人が生きて法廷に立つことになれば、その内面を含む全ての状況・動機が明らかになりそうだ。


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 どのような事情があれ、今度の事件は、アフガニスタンへの新たな「4万人兵士派遣」計画を策定中のオバマ大統領にとっては、最悪のタイミングとなった。自軍兵士の「派兵拒否反応」が凶行の原因とすれば、軍最高司令官としてのオバマ氏の足元を揺るがす出来事であるからだ。

今や米国民の大多数がアフガン戦争を無意味なものと看做しており、以前の「オバマ人気」も、最近の二つの州知事選挙(ヴァージニア・ニュージャージー)での民主党候補の敗北が示すように、陰りが目立ってきている。

 11月7日、アフガニスタン北西部でNATO空軍機による誤爆があり、アフガン兵士8人が死亡し、米兵5人を含む25人が負傷した。このような誤爆は頻繁に繰り返されており、アフガン戦線全域で、最早まともな作戦の体を成していないと言って差し支えないだろう。


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              バグダッド中心部 自爆テロ現場

 米軍が撤退途上にあるイラクでも、今猶バグダッド、モスルなどで自爆テロが多発し、それぞれ数十人から100人規模の犠牲者を出している。10月25日には、バグダッド中心部で死者137人、負傷者約600人を数える爆弾テロが発生した。

 今こそ、米英を始めとする西側指導者たちの「勇気ある決断」が必要とされる時であるが、もし、それが新たなる軍隊投入という愚かしい選択となるならば、世界世論の落胆・失望を招くことは必至である。 (2009.11.09)



<追記 1> 11月8日のBBC NEWS が伝えている世論調査結果では、英国民の 64% がアフガン戦争を勝利不可能と見ており、63% が可及的早期に撤退するように求めている。


<追記 2> 11月9日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じるところによれば、ハッサン少佐は、事件当日朝6時に基地近くのモスクで礼拝し、別れの言葉を友人たちに告げて、「これから旅に出かけるので、明日はここに来ない」と話した。その6時間後、基地内・海外派遣兵士向け健康診断施設に入り、当初は静かに坐っていたが、祈りをするかのように頭を何回か上げ下げした後、立ち上がって、ピストルを引き抜き、「アラー・アクバル」(神は偉大なり)と叫んで、発砲し始めたという。



<写真> The Times, Daily Telegraph, The Guardian, The Independent
     The New York Times, Daily Mail, Financial Times


 

 
by shin-yamakami16 | 2009-11-09 08:58 | Comments(1)
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                 沖縄・普天間米軍基地


日本「真の独立」と、極東の平和確立の為に

                          山上 真

 先日の国会論戦を聴いていて、確かに「新しい政治」の始まりが感じられ、雇用・貧困対策の面で、少なくとも幾らかの変化が期待出来そうだ。特に、鳩山首相が、年間3万人を超える自殺者の問題を強調したことは非常に印象的である。

 しかし、沖縄・米軍事基地問題になると、何とも弱々しい対応の仕方になるのはどうしたことか。普天間基地を沖縄県内にしろ、他県内にしろ、日本国内に移転したところで問題が解決しないことは、誰でも分かっていることではないか。国内の、100に及ぶ米軍基地そのものの存在が問題なのだ。

 戦後64年になるのに、依然として「占領国」軍隊の夥しい基地を許している国家は、他にどこにあるだろうか。しかも、米国務省・軍当局者は、我が国の政権交代後も、前自民政権との「約束」を盾に、強硬な要求を突き続けている。普天間から、グアムへの移転は言うに及ばず、嘉手納への統合も拒否している。日本「独立」 (1952年) から57年 の今、米国の日本での存在は、「お客様」の筈であるが、まるで占領下の「ご主人」面をしているのである。

 民主党政権の基本方針である「国民生活優先」の姿勢は、外交政策でも貫かれなければならない。「対米対等」を唱えている以上、遠慮なく、米国に対して政権交代の意味を説明し、相手の外交姿勢の「変化」を求めるべきである。少なくとも、オバマ大統領には、新しい極東外交政策の用意が期待できる。

 真っ先に問題となるのが、「北」朝鮮に対するアプローチであろう。最近、ゲイツ国防長官が訪韓した際、「北」に対する警戒心を殊更強調していた。これは、「北」の最近の韓国などに対する柔軟姿勢が、朝鮮半島に於ける米国の相変わらずの「北」封じ込め政策に不都合に働く一方、日本新政権が、旧来の厳しい対「北」政策を変更させて柔軟化し、米軍基地の存在を含めての対米政策に影響を及ぼすことを懸念したからに違いない。

 この際、鳩山首相は、国内問題の一定の落着きを得次第、「北」との交渉を開始し、米国・「北」間の核問題交渉開始を待たずに、「拉致問題」を始めとする日・「北」固有の諸問題話し合いの為に、「北」を訪ねたらどうだろうか。「北」も日本新政権との交渉を待ち望んでいる気配が濃厚にある。もし「北」との交渉が軌道に乗れば、鳩山氏の唱える「東アジア共同体」構想が具体化に近づくことになる。

 「北」朝鮮が、中国のような「開かれた」体制に移ってゆくように助けることは、極東の緊張緩和を決定的にして、量り知れないメリットを、日本を始め各国に齎すことになるだろう。軍事支出が抑えられ、米軍基地の存在も大半必要がなくなる。
 
 「北」の体制の問題は、民族自決の原則に基づいて、「北」人民の意思に任せるべきだ。時間を経れば、自ずと進み方が決まるに違いない。その場合にも、中国の「北」に対する影響力を期待出来よう。

 以上のような状況が生まれれば、米国が、莫大な経費を要する極東軍事基地の配備を行う必要が無くなる。日本本土は固より、沖縄基地を引き揚げることも可能になる。日本の「防衛費」も大幅に削減し、福祉関係財源に振り向けることが出来る。

 「仮想敵国」を失った日米安全保障条約は無用になる。日本政府がその意思を固めれば、今後5年以内に、日米の間で「安保」解消交渉を完了出来よう。その時に初めて、全方位型の「東アジア安保条約」が実現出来る一方、日米間で真に対等の親善関係を再構築出来るだろう。 (2009.11.01)


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  21,000人集まった11・8沖縄「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民集会」



<写真> 宜野湾市サイト、読売新聞
by shin-yamakami16 | 2009-11-01 00:01 | Comments(0)