世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

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2009年回顧と希い

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          英国南部 Wootton Bassett での葬列 (12 月29日)


地に平和と明るさを!
                            山上 真

 今年は、年頭に発足した米国オバマ政権への大いなる期待から始まったが、日本民主党政権誕生を経て、年末には、「失望」に至らないないまでも、両政権へのやや冷めた関心ということで終りそうだ。

 オバマ政権が内政の課題で、特に「国民医療法」の成立に、後一歩まで迫ったことは高く評価されていいが、対外路線では、アフガン兵力増強に見られるように、ブッシュ前政権を引き継いで、ドロ沼に嵌り込むような錯誤を冒しているのは、誠に残念至極だ。

 アフガン情勢は、日に日に悪化している。12月30日、アフガン東部の米軍基地で起きた自爆テロで、CIA要員など8人が死亡した。また、南部カンダハルでは、カナダ軍車両が哨戒中に路上爆弾が爆発し、兵士4人と、女性従軍記者が死亡した。


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     戦死英国兵 Michael Pritchard, Christopher Roney, Tommy Brown の各氏


 12月29日の英国『デイリーメイル』紙は、「友軍」による砲撃で死亡した2人を含む3人の英国兵の遺体が英国南部Wiltshire・Lyneham 空軍基地に帰還し、その葬列が、Wootton Bassett の町を雨の中、通過する模様を伝えていた。
アフガン開戦以来、244人の英国兵が戦死し、今年は107人に及んでいる。
 

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                  Bowe Robert Bergdahl 氏


 一方では、先週来、米軍人のヴィデオ映像がタリバンによって放映されて、米国民及びワシントンに衝撃を与えている。空挺部隊員 Bowe Robert Bergdahl 氏(23歳)は、東部アフガニスタンで今年6月30日タリバンに捕らえられたことが判明していたが、先週、突如として彼の動画と発言が登場したのである。
彼は、先ず、アイダホ州Sun Valleys 出身の兵士であり、誕生日・血液型・所属部隊名などを紹介した後、米国の戦争行為、イスラム世界との関係の在り方を厳しく非難した。彼の映像には、拷問などを受けた様子は見られず、非常に健康そうだった。彼は、タリバンが、米軍人の場合と異なり、極めて人間的かつ丁重に彼を処遇していることを述べた後、「米国指導部は、過去の幾つもの戦争の時と同様の陥穽に陥っており、もし米国民が立ち上がって、これら全ての馬鹿げた行為を止めさせなければ、もう一つの『ヴェトナム』ということになるだろう」と締めくくっている。
 このヴィデオ放映に対して、ホワイトハウス及びNATO軍司令部は、「非人道的行為」として非難しているが、扱い難い問題を抱えたことは確かだ。


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         アフガニスタン東部 Jalalabad での学生デモ (12月30日)


 昨日30日の仏TV5 Monde は、米軍機などによる誤爆で、多数の死傷者が出ていることに抗議する、数千人のカブール市民のデモの様子を放映していた。

 日本・鳩山政権は、夙に伝えられていた「個人金銭問題」については、無責任極まるメディアなどの「誇張宣伝」によって、やや足を取られている嫌いはあるが、「普天間問題」を除く内政面では、着実に実績を重ねていると言ってよいだろう。
 しかし、「政変」を経たからには、民主党政権は日米関係について、もっと大胆な交渉が可能ではないか、という印象を強く持っている。ともかく、在日米軍基地の縮小・海外移転くらいのことをしなければ、何の為の「対米盲従」自民政権打倒だったのか、ということになるだろう。その点で、鳩山氏の動揺が見られるのは、誠に残念だ。最近の「憲法改変」の発言についても、「支持率低下」の為か、右派メディアへの「サービス精神」が垣間見える。
 鳩山氏には、「チェインジ」を唱えていた頃の気概を忘れて欲しくないものだ。

 2010年まで、あと一時間余りを残すだけになったが、来るべき年に、様々な形の自殺、戦争を含む「殺し合い」が少しでも減り、人々の表情に明るさが戻ることを、願って已まない。           (2009.12.31)


 
<写真> Daily Mail, The Times, The Morning Star


 
by shin-yamakami16 | 2009-12-31 23:29 | Comments(0)
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               新彊ウイグル自治区火力発電所   


利害対立の途上国と既成工業国
                               山上 真

 デンマーク・コペンハーゲンで12月7日開催され、18日に閉幕した第15回「気候変動枠組条約締結国会議」・COP15 は、当初、世界的な気温上昇2度以内の目標、2050年までの世界全体でのCO2排出量を50%減、先進国全体の排出量80%減を目指した。そして、どこまでの拘束力を持った合意が可能かということが焦点であった。
 その結果は、「気温上昇2度以内」を目指し、世界規模でCO2 排出量を大幅に削減することを「合意する」だけに止まった。何の法的拘束力も無い形で終ったのである。約5万人の各国政府代表、NGO、環境保護団体が集まった大会議の結論としては、余りにもお粗末で、失望と落胆の声が会場内外に溢れた。

 最初から紛糾したことの根源には、EU, 日本など既成工業国の「排出量削減」義務化を目指す態度と、インド・中国など発展途上国の、「排出量規制」の法的拘束化を拒否する態度が真っ向からぶつかってしまったことがある。途上国側には、すでに存在する「地球温暖化」は、欧米など、既成工業国が生み出したものであり、これから本格的な工業化を図ろうとする途上国が、現時点で、同じ基準で排出量削減を押し付けられることは、不公平であるという認識がある。

 12月21日、英国外相 Ed Miliband 氏は今回の COP15 を「失敗」と認め、その主因を、「排出量削減」拘束化を阻止する為に積極的に動いた中国だと断言した。中国は、途上国の「代表」として、排出量削減目標をあくまで、「発展段階に応じた」任意のものとすることに固執した。そこには、中国自体の経済発展を阻害したくないという決意のみならず、世界中の発展途上国を代表する「旗手」としての気負いがあったのだろう。しかし、中国が「発展途上国」として、排出量規制を拒む態度には、聊か無理な面がある。GDP世界第2位に位置するからには、環境保護の観点を重んじて、工業発展のペースを落とす位の配慮を具備するべきだ。

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              会議に臨んだ温家宝首相


 一方、米国・オバマ氏は、厳しい「排出量削減目標」を嫌う国内世論を意識しつつ、途上国対先進国の対立を緩和する仲裁役を買って出て、今回の最終「合意」を纏める役割を演じたようであるが、ブラジル首相 Lula da Silva 氏や、キューバ外相 Bruno Rodriguez 氏らの烈しい批難を浴びている。
 「ワシントンは、京都議定書を終止させ、拘束力ある排出削減目標を反故にしてしまった」ということである。

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               会議場外の環境保護活動家デモ


 ともかく、COP15 の最終日、会議場にオバマ氏が入った際の、議場の拍手の少なさに驚いた。改めて、同氏の影響力の急激な失墜を示した形である。アフガン戦争を正当化して、爆撃などによる環境破壊を続行する態度と、地球環境保護を目指すCOP15の理念が、どう「整合性」を保ち得るのか、誰の目にも明らかなことだ。

 国内事情がどうであれ、世界最大のCO2 排出国である中国と米国の責任は重大である。地球温暖化の深刻さを真に理解していれば、現在のような中途半端な姿勢は取れない筈である。両国の猛省を促したい。
                              (2009.12.25)



<写真> The Guardian, The Independent, Searchim news
by shin-yamakami16 | 2009-12-25 12:10 | Comments(0)
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世界的反戦運動激化の予兆
                          山上 真

 ノルウェー・オスロでのノーベル平和賞授与式・オバマ講演から一週間が過ぎようとしているが、これまでオバマ氏を支持してきた人々の間での「当惑」と反撥の感情が未だに落着きを見出していないようだ。

 例えば新聞社説を見渡しても、あの講演後にある筈の論評が肯定・批判のいずれもごく僅かしか見当たらないのは不思議であり、何とか目にすることが出来るのは、読者の投書欄での反応くらいである。恐らく、オバマ氏が主張した「戦争正当化」の問題が、余りにも重く、論評陣の賛否両論が半ばしているからであろうと推察される。

 『ニューヨーク・タイムズ』紙は、12月11日の社説で、オバマ演説の内容が「ノーベル賞委員会が正に期待していたものとは異なるものではないか」と言っている。そして、控え目に、オバマ氏の、アフガンでの米国軍の戦闘を正当化する論理、或は、ガンジーやキング牧師の唱える「非暴力主義」を尊重しつつも、「ヒトラーの侵略行為のような悪」を克服する為には、武力行使もやむを得ないという論理、更には、「何が正しい戦争かということは哲学者たちに任せよう、しかし、このアフガン戦争は必要なものだという点で、我々は意見が一致している」という主張を紹介している。このように、「社説」としては異例の内容だ。

 同紙に寄せられた投書の冒頭に次のようなものがあったので、ご紹介したい。

 「ノーベル平和賞は、オバマ大統領のアフガン政策の皮肉と悲劇を際立たせるだけだ。一年前のあの記念すべき夜、シカゴのグランド・パークで、オバマ氏は、感動し、驚喜した米国民と世界を前にして、変化がアメリカに齎されるだろうと約束した」

 「我々はもう世界の警察官ではないのだから、戦争から解き放たれ、分け隔てない世界で、これまでとは違う変化を期待した。反米過激主義とテロリズムは、その動機の温床が無くなっている訳だから、次第に衰退し、消滅し始めている世界での変化を」
 
 「しかし落胆したことには、我々はLyndon B. Johnson, George W. Bush、 そして、 Donald H. Rumsfeld の循環的失策を目の前にしている」
 
 「 我々が今出来ることは、オバマ氏自身に変化がやって来ることを、彼が戦争と絶縁した、新たな国家として米国を再生させてくれるように希うことだ。そこで初めて、米国に対する憎悪は事実として消え果て、我々は遂に世界との平安を実現出来るのだ」

James Adler
Cambridge, Mass., Dec. 11. 2009

 英国では、新聞の論説記事で、一層手厳しいオバマ批判が展開されている。
『ガーディアン』紙 (11th , Dec.) では、「オバマと過去の戦争の亡霊」( Olivia Hampton ) の中で、オバマ氏が今後15年から20年も続くかも知れないアフガン戦争というギャンブルに嵌り込もうとしていると論難している。
 
 左翼紙『モーニング・スター』( 10th, Dec.) は、「戦争屋オバマが『平和』賞を貰っちゃった」 Warmonger Obama picks up ‘peace ‘ prize ‘ ( Tom Mellen ) と皮肉っている。

一方、一般に高級紙とされる『インディペンデント』( 11th , Dec.) は、誠に見るに耐えない風刺漫画を、’The Daily Cartoon’ として掲載し、同紙の「オバマ評価」を示唆している。


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                「全く相応しい…」


 仏紙『リベラシオン』( 12th , Dec.) の投書欄では、「オバマは、より見事なブッシュ・イズムだ。単純だ。何の新味もない」というコメントが載っている。

 当然のことながら、オバマ大統領の今後の行き方に期待している人々も少なからず居られるに違いないが、以上述べてきたように、明確な「オバマ批判派」が出現し、今後予想されるアフガン情勢悪化と共に、反戦運動など、「異議申し立て」の動きが、米国本土のみならず、世界中で活発化するに違いない。
 
 オバマ氏が、どの段階で「失敗」に気づくのか、注目して行きたい。しかし、それまでの間に、「敵・味方」双方の犠牲者が出来る限り少ないことを祈るばかりだ。
                            (2009.12.16)


<写真> The New York Times, The Independent

 

 
by shin-yamakami16 | 2009-12-16 11:26 | Comments(0)
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現実味を増す「オバマのヴェトナム」

                                  山上 真                                              

 12月7日、アフガニスタン南部・ヘルマンド州 Nad-e Ali で、タリバンと交戦中に、英国軍兵長 Adam Drane 氏(23歳)が射殺され、今年に入って、100人目の英国兵戦死者となった。2001年の参戦以来、アフガニスタンでは、237人の英国兵が戦死しているが、年々戦死者増加のペースが早まっている。


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           戦死した英国アングリア連隊 Adam Drane 兵長


 彼は、米国大統領オバマ氏が, 新たに30,000人の兵力増派を発表して以来、初めてのアフガン戦死者である。
 米国兵は今年既に、300人以上が戦死しており、開戦以来、少なくとも800人を超えている。

 英国・国防相 Bob Ainsworth 氏は今年100 人目の戦死者について、アフガン戦争を戦死傷者の数だけで判断しないように求め、
「この戦争の成否は、英国の安全保障にとって、極めて重要だ」
と強調しているが、ますます多くの英国民は、この見方に同調せず、アフガン戦争が無意味なものであると見ている。

 オバマ大統領も、タリバンの後ろに居るとされるアルカイダとの戦いが、「米国の安全保障にとって死活問題だ」としたブッシュ前大統領と同じ見方に立っているが、どの程度タリバンとアルカイダが密接な関係にあるかという点については、これまでのところ、明確な説明が為されていない。

 一方では、タリバンとの「和平の道」を探る動きがアフガン政権周辺で生まれている。英国言論界でも、和平を求める動きが強くなっている。
 しかしながら、アイケンベリ在アフガン米国大使の「米軍増派反対」論にも拘らず、タリバンとの「主戦論」を唱える米軍司令官マックリスタル将軍が、オバマ氏を動かしてしまったようだ。
 オバマ氏の、「2011年8月アフガン撤退開始」を信じる識者は殆どいない。


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 かねてから囁かれていた「オバマのヴェトナム」論が、より現実味を増している。この「歴史的大失敗」について、後世の歴史家は、オバマ氏が、やはり「若過ぎた」大統領という、或は「米国の伝統的大統領の域を出なかった」、という評価を与えることになるのだろうか。
             (2009.12.10)

 

<写真> The Guardian, Daily Mail, Daily Telegraph
by shin-yamakami16 | 2009-12-10 10:41 | Comments(0)
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     最高裁に入る「被告」・ 葛飾区の僧侶 荒川庸生氏 (2009.11.30)


政治・社会「活性化」を恐れる保守反動派

                              山上 真

 昔から日本では、特に政治的問題が関わると、裁判が上に行けば行く程、「悪い判決」が出ると言われて来た。今回も、その例に漏れないようだ。

 政党の宣伝ビラを戸別に配布したということだけで逮捕され、23日間も身柄を拘束される国とは、何と言えばいいのだろうか。それを法曹の最高機関たる「最高裁」が妥当としているのである。これはもう、民主主義という原理を全く弁えない輩が権力を牛耳っているとしか思えない事態だ。

 英国に居た頃、二階に位置する私共のフラットにも、よく政党宣伝物が郵便受けに入れられていた。特に選挙が近づくと、政党関係者が複数で訪れて、ビラ・パンフレットを手渡しながら、熱心に支持を訴えていた。戸別訪問が禁止されている日本では見られない風景で、「これが民主主義の姿だ」という印象を刻みつけられたものだ。

 訪問を受けて、嫌ならば断ればよいだけの話だ。これを、日本の裁判所では、「居住者の平安を不当に害する行為」として、禁止しているのである。マンションに立ち入って、ビラをポストに入れるだけで、「公共の安寧を乱す行為」として断罪する。それでは、街頭宣伝車のラウド・スピーカーによるけたたましい連呼は、現在見られる典型的選挙運動であるが、これは人々の「平安」を脅かさないのか?
 国家というものは、民主主義を守ろうとする政治活動を励ますことこそ為すべきで、威嚇して政治活動を消極的にするなど、全く論外ではないか。

 ビラ配り・戸別訪問を、居住権を侵害する行為とする見方は、世界的基準とは大凡外れている。政治家・裁判官は、世界的視野を先ず養って、民主主義の基本を学び直す必要がある。

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        「政党ビラ配布有罪」判決を下した最高裁判事・今井功氏

 
 加えて、国民側からは、自民党政権下で任命された「最高裁判事」などの裁判歴を知り、適格性について厳しい目を向けなければならない。現行の○×式「国民審査」方法を改めた、例えば、不適当と思われる判事に×印だけ付けるドイツ方式のような、より厳正な審判が可能な形に変えるべきだ。

 マス・メディア、特に新聞社説の多くが、例えば「表現の自由脅かす判決」(西日本新聞)など、最高裁判決を厳しく批判しているのは、結構なことだ。しかし、大新聞の『読売』が、取り締まる警察側の「慎重さ」を求めたものの、最高裁判決を「妥当」としたことは、誠に残念至極だ。

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       「共産党宣伝ビラ配布を今後も続ける」と語る荒川氏


 最近の民主党・小沢氏の発言「戸別訪問を、政治活性化の為に解禁するべきだ」(2009.10.19)、及び元首相・小泉氏の「戸別訪問を全面的に認めるべきだ」(1979.02.09) などの発言は、もっと注目されてよい。
 先の米国大統領選挙で大いに威力が発揮された、インターネットによる選挙運動が、我が国では禁止されているのも奇妙なことで、当然のことながら、時代の要請として解禁の方向に持って行くべきだ。
 
 「政治革新」を唱える民主党政権に対しては、積極的に現行制度の不合理性を正す努力が緊急に求められている。政治への関心を高め、真に公正な選挙制度を保障することが、民主主義確立の根幹であるからだ。 (2009.12.06)


<写真> 共同ニュース、読売新聞、COURTS IN JAPAN より
by shin-yamakami16 | 2009-12-06 10:32 | Comments(2)