世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2010年 01月 ( 8 )   > この月の画像一覧



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       今なお爆弾テロに見舞われるバグダッド中心部 (2010.01.25)


会場を包囲する「戦犯トニーを監獄に」の喚声

                                 山上 真

 ロンドン・ウェストミンスター、’Queen Elizabeth Centre’ で開かれている「イラク戦争経緯調査」の為の ‘The Chilcot Inquiry’ に呼ばれた前首相トニー・ブレア氏は、今日1月29日(金)午前9:30 から、イラク侵攻に関わる「責任」について、極めて「精力的に」自己弁護の陳述を始めた。ブレア氏は、ここでの発言の機会を、自己主張の「最後のチャンス」として活用する気のようだ。


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      イラク侵攻の「戦争犯罪」を問われる前首相トニー・ブレア氏


 この調査会では、既にブレア前政権の閣僚・官僚などが証言を行っており、その中でも特に、イラク戦争開始当時の法相ゴールドスミス氏、外相ストロー氏、それに、国際法顧問エリザベス・ウィルムズハースト女史などの「イラク戦争は国際法違反」という当時の主張が改めて確認され、大きく報道されている。
 

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            イラク戦争当時の法相ゴールドスミス氏
 (当初イラク侵攻を国際法違反としたが、後に米国務省の圧力などで、合法とした)  

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        エリザベス・ウィルムズハースト女史とマイケル・ウッド卿
       (いずれも法律専門家として、イラク開戦を国際法違反とした)       


 イラクの旧サダム・フセイン政権が「大量破壊兵器」(WMD) を保有しており、45 分以内に英国が攻撃される」という根拠薄弱な理由で、少なくとも数十万人の犠牲者を出した戦争に駆り立てた米国ブッシュ・英国ブレア両指導者の「戦争責任」を問う声は、今や日増しに英国で高まっている。


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 この日、ブレア氏は大要、
 「2002年の米国に於ける『9・11 同時多発テロ事件』を契機としてアルカイダとフセイン政権に対する脅威が米英指導者の間で大きく意識された」こと、

「ブッシュ氏の農場クロフォードでは、一般に言われているように、イラク開戦を『誓約』した訳でなく、米英が結束してサダムの脅威に対処することを確認した」こと


 
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  「フセイン政権が幾度も国連決議を無視しており、国内で数千人の虐殺を行っている」こと
などを、開戦の理由に挙げているが、サダム・フセイン政権の脅威が誇張され過ぎたことは認めざるを得なかった。

 日本時間の深夜 (11:22) 未だに尋問と証言が続いている。この後、ブレア氏が、「戦後処理」、更には「アラブ世界の混乱」の可能性をどのように把握していたのかが、焦点となる。        

 この日の「ブレア証言」を、BBC World、CNN は同時中継し、筆者もこれらを視聴しているのだが、他の新聞などメディアも「電子版」で逐一報道している。                     (2010.01.30)


<追記 1> 約6時間続いた聴聞会で、 最終的にブレア氏は、「モンスター」(怪獣)であるサダム・フセインを「取り除いた」ことは正しく、現在もなお、いかなる「後悔」もしていないこと、同じような状況があれば、「再び同じことをする」ことを明言した。彼が会場を去ろうとする際、「人殺し!」(Murderer !) という叫び声が、傍聴席から浴びせられた。傍聴席には、イラク戦争で戦死した兵士の遺族が何人も立ち会っていた。  (CNN News, 2010.01.30)


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         週刊誌『ニュー・ステーツマン』最新号表紙
                 「許されざる者」


<追記 2> 「ブレア証言」後の英国に於ける報道は、主要紙幾つかが、'Unrepentant Tony...' (改悛の情皆無のトニー...)で始まる見出しを掲げていたが、いずれもブレア氏の「違法な戦争の合理化」の論理を厳しく批判している。例えば、保守系『タイムズ」紙は、その論説記事で、「独裁者ブレアは英国民を無理やり戦争に突入させた」とする。また、当時イラク戦争を率先して支持していた『テレグラフ』紙は、「戦争を開始したことよりも、イラク戦後処理を準備して措かなかったことが決定的失敗だった」としている。終始イラク戦争に反対していた他紙は、今度の「調査会」が「裁判」ではないにしても、国民が「ブレアは有罪である」ことを審判するだろう、としている。なお、ブレア氏は再度、「調査会」に喚問されることになった。  (2010.02.01)


<追記 3> イラクでは、更なる爆弾テロが続いている。2月1日バグダッド北東部で、一女性の自爆テロによって、Kerbara に向かっていた41人のシーア派巡礼者たちが死亡、約106人が負傷した。(Le Figaro 紙)


<追記 4> 2月1日の仏紙『ル・モンド』に依れば、英国民の52% 以上が、ブレア氏は英国民が望まなかったイラク戦争に駆り立てる為に、故意に虚偽を働いた、と看做しているということだ。


<追記 5> 2月2日、「調査会」証言を行った元国際開発相クレア・ショート女史は、ブレア氏が虚偽の情報に基づいて、当時の内閣を「イラク開戦」に誤り導き、この戦争が国際テロリズムの危険性を一層増大させたことを指摘した。彼女は、開戦に抗議して早期に辞任した元外相・院内総務ロビン・クック氏と異なり、開戦3か月後に漸く辞任したことを悔やんだ。イラク開戦に抗議して政府要職を辞任したのは、上記の外務省ウィルムズハースト女史を含む5人に上る。(2010.02.03)


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「調査会」会場に入るクレア・ショート女史(証言後に傍聴席から大きな拍手を浴びた)



<写真> The Times, The Guardian, Daily Mail, New Statesman

 
by shin-yamakami16 | 2010-01-30 05:52 | Comments(1)
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        オバマ大統領、後ろはバイデン副大統領とペロシ下院議長


「国民医療法」より「雇用創出」優先か?

                                山上 真

 今日午前11時過ぎ(日本時間)から71分間行われた米国オバマ大統領の議会演説は、相次ぐ「下院補選」の敗北後のことだけに、その首尾の程が心配されたが、落ち着いて、言いよどみが見当たらない「余裕の」演説だった。『ワシントン・ポスト』紙は、最早‘ Mr. Nice Guy’ ではなく、 ‘rough, tough, and undaunted ’ (粗野で、タフで、恐れを知らない)大統領と形容している。

 演説冒頭、オバマ氏は上下両院議員を前にして、徒に政争に明け暮れることなく、「国家的団結」を呼びかけた。
 内容は先ず、大統領就任一年間の、金融危機対策の成果についての肯定的自己評価、今後の中小企業援護の方針と、今年中の150万から200万人に及ぶ雇用創出、更には、1兆4千億ドルに上る財政赤字対策ということが中心的テーマであった。彼はこれら経済問題に、演説時間の3分の2を費やした。

 注目されるのは、演説中程で触れられたエネルギー対策である。環境対策を考慮して、「安全でクリーンな」核プラントを開発する方針を明確にしたが、これは、従来の民主党主流の「バイオ」など「非核エネルギー」の主張と相容れないもので、大きな論議を呼ぶことだろう。しかし議会場は、この件で、共和党議員からと思われる大拍手に湧いていた。

 焦眉の課題だった筈の「医療制度」改革については、「十分な説明を尽くさなかった」ことを詫びて、当初の包括的法案より小規模のものに変える意図を示唆しているのは、一般に驚きをもって受け止められている。今後どうするのかについて、明確な説明がなかったのは意外とされている。

 対外的な問題は比較的少ない言及しか為されず、はっきり言って、内政面重視の演説だった。深刻なアフガニスタン「情勢」の分析もなく、「北朝鮮」・イランの核開発問題についての「警告」以外、何ら新味が無かった。パレスチナ問題については、言及さえしていない。
 一方、中国・ドイツ・インドの数学・科学技術面などの水準高揚・進歩に比して、米国が立ち後れていることに警告し、すべての段階の教育水準を高める方策を明示した。


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 大統領就任時にモットーとしていた「チェインジ」については、オバマ氏は、「そう素早くチェインジが齎されるものではない」とした。
 共和党議員はオバマ演説に対して、「儀礼的起立」も少なく、嘲笑的な態度を取る者も居て、強い対抗意識を燃やしているようだった。

 米国内での「オバマ演説」直後の反応は、CNN調査に依ると、去年の一般教書演説の時より、熱狂的支持が20%程落ちているものの、約70%の視聴者が肯定的に評価しているという。この演説が、中間階級とされる「無党派層」の支持をターゲットにしたと言われているが、その目論見は一応うまく行ったようだ。 (2010.01.28)


<写真> The New York Times

 
 
by shin-yamakami16 | 2010-01-28 18:37 | Comments(0)
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            英国紙に報じられた「稲嶺勝利」(1月25日)



鳩山政権は直ちに「安保見直し」対米交渉を
                            山上 真

 昨日1月24日行われた沖縄名護市の市長選挙は、10% 程度の票差ながら、「辺野古」米軍基地設置・反対派の稲嶺進氏が競り勝った。過去4回の保守・米軍海上基地「誘致賛成」派の制覇を覆す、画期的な勝利だった。

 この「事件」についてのマス・メディアの報道の仕方は概ね鈍く、遅々たるものだった。開票当日午後8時過ぎに、「出口調査」などによる選挙結果が報じられ始めた。最初から、TBS、ANNなどのTVテロップで、「稲嶺当選」と出た。恐らく、選挙中の世論調査などで、基地反対の声が強いという「大勢」が把握されていたのだろう。しかし、日曜日ということもあるのだろうが、その後筆者が見たのは、11時過ぎの、選挙結果だけを知らせる手短なNHK ニュースのみであった。この選挙の及ぼす重大な影響を考慮するならば、何とも「軽い」扱い方であるという印象を抱かざるを得なかった。

 夜が明けて、7時から8時半ごろまで、主に民放TVの各チャンネルを回して見てみたが、ANN が取り上げていたのを除き、「名護選挙」報道は殆ど触れられていなかった。相変わらず「小沢問題」が話題を殆ど独占し、あの「ハイチ大地震」も皆無である。
 民放は余程、この選挙結果を「大きなもの」としたくないらしいと推測された。もし取材不足で報道できないとしたら、誠にお粗末と言うしかない。

 今度の選挙がいかに国際的にも大きな意味を持つかということは、この人口6万余りの都市の選挙結果が、翌日の米国・英国紙に大きく取り上げられていることを見れば分かる。(The New York Times, Washington Post, Financial Times)

 今日の昼間に、政府関係者の談話が伝えられて来た。先ず、国交省・前原氏の「重く受け止めるが、ゼロベースで臨む」、そして官房長官・平野氏の「国の方針を決めるのに、選挙結果を斟酌しなければならないということはない」など、沖縄住民の長い間の苦しみを一向に理解しない発言が続いている。要するに、彼らの意図する所は、沖縄の願いよりも、米国の求めを最終的に優先するということである。これが民主党政権の本音だとすれば、何ら自民党前政権と変わるところがない。
 残念ながら、民主党の少なくとも半分は、「自民」と然程変わらない保守だ。憲法「改正」・郵政「民営化」・米軍基地・日米安保問題など、多くの分野で自民党と同根である。
 結局、民主党政権に「国民本位の道」を歩ませる為には、厳しい批判と、必要に応じてのデモなど大衆行動に訴えて行くしか無い。

 NHK TVが「名護選挙結果」を夜7時のニュース、それに続く『クローズ・アップ現代』で、これまでの経緯を真正面から詳報し、解説していたのは流石である。特に、元外務審議官田中均氏が語ったこと、即ち、極東の緊張緩和を図りながら「直ちに対米交渉をやれ」という主張は極めて当を得たものである。

 この際鳩山首相には、是非とも、米軍基地問題を中心とする交渉を、米国との間で本格的に開始して貰いたい。この交渉は、当然のことながら、日米安保条約の在り方にも関わることになるだろう。米国の「核の傘」を脱するには、どうしたら好いか、という国民的論議に発展することにもなるだろう。
                     (2010.01.25)


<写真> The Financial Times (UK)
 
 
by shin-yamakami16 | 2010-01-25 23:16 | Comments(0)
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         1月20日、落胆のオバマ大統領とバイデン副大統領



「政権党弱体化」を招来しているオバマ「戦争政策」

                          山上 真

 昨日1月20日、米国オバマ政権は、西北部マサチューセッツ州上院補欠選挙で、共和党候補に「思いがけない」敗北を喫し、最終段階に迫った、民主党焦眉の課題である「国民医療保険法」成立を危くしかけない、重大事態を招いている。
 
 昨年8月に亡くなった民主党の重鎮エドワード・ケネディが47年間保持してきたマサチューセッツ州上院議席を、州司法長官Martha Coakley女史が固守するものと、誰もが信じていた。ところが、選挙1週間前の世論調査で、当初「惨敗必至」とされていた共和党無名候補Scott Brown氏が、民主党候補に追いつき、やや上回る支持を得ている可能性が認められた。この報に驚いたオバマ氏は慌ててマサチューセッツに入り、州民に民主候補への支持を訴えた。


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    マサチューセッツ上院補欠選挙で勝利した共和党 Scott Brown 氏と家族
 


 結果は、51.9% 対47.1% という得票率差で、Brown 氏の勝利ということになった。これで、共和党上院議席が41に達し、オバマ大統領が念願としていた、米国民の95%をカバーする「医療保険法」が、共和党議員の「長演説議事妨害」 (filibuster) によって、不成立に追い込まれる恐れが出てきた。

 このような事態を招いた原因は、医療法案自体に反対する白人層の批判の外、銀行など金融機関を莫大な資金提供によって救済した経済政策への不満及び、アフガニスタンへの「3万人兵力増派」への厳しい批判があることは間違いない。


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        高まる一方の「アフガン」を主とする「オバマ外交」への不満        




 オバマ氏は夙にイラク戦争反対論者として知られ、戦争によっての国際問題解決に強く反対していたという。ところが、2年程前大統領選挙に立候補した頃から、アフガン戦争については、肯定的な態度に変わり始めた。
 

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         マサチューセッツ州で高い比率の「無党派層」


 反戦論者であり、かねてからオバマ支持者でもある映画監督マイケル・ムーア氏は、最近、この「オバマ変節」を厳しく批判している。民主党支持者及び、一年前のオバマ大統領誕生に大きく寄与した ’Independents’ (無党派層)の中の少なからずの人々は、ムーア監督と同様の「アフガン戦争反対派」であることが知られている。これら無党派層が、マサチューセッツでは選挙民の半数に近いのである。彼らが今度は棄権に回ったか、或は不本意ながら共和党候補に投票した可能性が高い。


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       今回のマサチューセッツ「上院補欠選挙」で特に低かった投票率



 民主党は、これで、ニュージャージー、ヴァージニアに次いで、三度大きな選挙に破れたことになる。今年11月の「中間選挙」を控えて、オバマ政権は、厳しい経済環境・「アフガン戦争」・外交政策選択に迫られつつ、いよいよ正念場を迎えることとなった。                (2010.01.21)




<写真> Daily Mail, The Washington Post, Gallup Poll
 
by shin-yamakami16 | 2010-01-21 20:48 | Comments(2)
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「国際災害救援隊」の常設を

                              山上 真


 カリブ海に浮かぶ島国ハイチを襲った大地震は、広島型原爆30個分以上のエネルギーが動いた大地震と言われ、殆ど無防備に近い国の死者は20万人に及ぶものと推定されている。大統領府も潰れ、国家機能が完全に麻痺してしまった。


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 地震被害に縁深い日本が、他国の地震被害にどれだけ関わるかということが、今後日本で起きると予測されている大地震の際に、当然期待される国際的援助と、深く結びついていることを否定する人はいないだろう。

 ところが、今回の「ハイチ大地震」についての日本政府及びメディアの対応の仕方は、その常識を疑いたい程の軽薄・遅々としたものだ。1月12日に起こった大震災から5日目になるというのに、未だに日本「救援隊」が現地に到達したという知らせが無い。


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            「水を、食べ物を...」


 筆者が知る限り、最初にハイチに到達した国際救援隊は、米国・中国だ。次いで、スペイン、英国、フランスなど欧州諸国、更には、ブラジルなど中南米諸国だ。地理的に遠いロシアも、既に4機の大型輸送機で物資を送っている。
 岡田外相は、「現地からの要請に基づいて行われるもので、現地と連絡が取れない以上、直ぐには出来ない」といった趣旨の発言をしていた。しかし、現地が壊滅状態で、連絡不能な場合はどうするのか?
 結局、震災4日後に漸く日本が送ったのは、25人程の医療チームであった。先のインドネシアでの震災の場合もそうであったが、とにかく規模が小さ過ぎる。何故もっと多角的な救援隊を、少なくとも数百人規模で送れないのか。


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 震災直後からハイチで求められたのは、救出作業・医療は言うに及ばず、先ず飲料水・食料であった。これらを必死に求める民衆は、日を追うにつれて、一部であろうが、暴動化した。
 鳩山首相は第一段階で、5億円規模の救援資金を約束したが、現地で先ず求められる生活物資供給こそ、優先するべきだったのではないか。「遠過ぎてどうしようもない」という理由は、今時通用しないだろう。

 この際、非常時にいつでも即応できる「国際災害救援隊」とも言うべき体制を早急に整備するべきだ。現自衛隊を一部改組して、例えば5千人規模の、独立した組織を設けたらどうだろうか。これは勿論、国内の災害に対しても備えになる。                     (2010.01.18)


<追記 1> ハイチ大震災の取材は、米国・英国など海外メディアの場合、直ちにチーフ・キャスターを現地に送って、事の重大さを知らしめ、緊急援助をアピールしている。これに対して、日本メディアは、動きが遅いだけでなく、国内政治の問題にばかり比重を置いて、この大災害についての報道姿勢が実に弱い。改めて、日本メディアが如何に国際基準から外れているかを見せつけている。(2010.01.18)

<追記 2> 過去一世紀半に渉ってハイチの政治状況に深く関わって来た米国は、クリントン・ブッシュ両・前大統領、そして現オバマ大統領が国民に強くハイチ震災援助を呼びかけ、1万人の米軍を動員して、物的援助、治安活動、空港管理などに率先して当たってきたことは大いに評価されるが、一方では、フランスなどから、「占領行為」ではないかという批判が提起されている。例えば、野戦病院施設を積載してポルトープランス空港に着陸しようとした仏輸送機が米軍管制官によって、着陸を拒否されたというのである。ハイチを植民地としたことのあるフランスは、仏語を話すハイチ国民に、米国に劣らぬ親近感情を抱いているだけに、米国の「災害援助」に言寄せた専横振りに我慢がならないようだ。(2010.01.19)

<写真> The New York Times, The Independent, The Times, Le Monde
by shin-yamakami16 | 2010-01-18 00:07 | Comments(0)
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現地「世論調査」の虚実は? — 連日報道される NATO 戦死者 

                           山上 真

 ここ数日間のアフガン戦死者

1月10日 英国紙『サンデー・ミラー』記者 Rupert Hamer 氏、アフガン南部Nawa北西で、米軍海兵隊の装甲車に同乗して取材中、路傍爆弾爆発で、即死、もう一人のカメラマン Philip Coburn 氏も重傷を負う。Hamer 記者は、アフガン戦争・英国従軍記者の内、最初の犠牲者となった。


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                   Rupert Hamer 記者

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             Hamer 記者とカメラマン Philip Coburn 氏

1月11日 フランス機械化旅団所属下士官、カブール北東 Alasay 渓谷でタリバンの攻撃を受けて即死。もう一人も重傷を負い、2日後に死亡。氏名など未発表。

1月11日 アフガン南部でタリバンと交戦中の米軍兵士3人が死亡。詳細未発表。この日、南部で2人の米国民間人が死亡、道路建設に携わっていたアフガン人2人も死亡した。これで、今年に入ってから、少なくとも10人の米軍人が死亡したことになる。(『ワシントン・ポスト』紙)

1月11日 南部ヘルマンド州 Musa Qala で、路傍爆弾爆発により英国兵一人死亡。


 以上のように、タリバンとの戦闘中のNATO軍関係者の犠牲者は、相変わらず枚挙の暇がないくらいだ。

 こうした中、不思議なアフガン「世論調査」結果が、主として BBC News として発表された。
 それによると、約7割のアフガン人は、自国が正しい方向に進んでいると信じ、アメリカ軍の駐留を是としており、実に9割の国民がカルザイ政権を支持しているというのである。
 これを見て、筆者はイラク戦争最中に度々行われていた西側発表のイラク人「世論調査」を思い起こした。当時も、英米軍イラク占領が、いかにイラク人によって「支持されている」かを、知らしめていたものだ。後になってみれば、とんだ「お笑い種」だった。


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この「調査」は、1500人余りのアフガン成人を対象に、アフガン政府、BBC・ABC など西側メディア、国連機関などによって、昨年12月中旬に実施されたものという。オバマ大統領が3万人の軍隊増派を発表して以来、連日アフガン現地で展開された「反米デモ」の最中に行われた。

 前述の戦争犠牲者急増の件を考えると、この「世論調査」も、米国・英国など西側関係者の「お手盛り」ではないかと疑うことが十分に可能だ。その真偽はそう遠くない内に明らかになることだろう。     (2010.01.12) 


<追記> 1月13日の『ニューヨーク・タイムズ』紙が伝える所に依ると、アフガン南部ヘルマンド州で12日(火)、米軍による住民家屋襲撃に抗議する数千人規模の反米デモが展開され、「アメリカに死を」などと叫んだという。これに対して、タリバンによって煽動されたデモと看做した米軍は発砲し、少なくとも8人のアフガン人が死亡し、数十人の負傷者が出た模様だ。一方、パキスタンで主に使われていた米軍「無人爆撃機」が、最近アフガンでも二カ所のタリバン攻撃の為に展開され、そのミサイル攻撃で十数人の「タリバン」が殺されたという。死者の中には、当然、一般民衆も含まれている恐れがある。

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<写真> Daily Mirror, The Guardian, BBC News, Le Monde, The Washington post
by shin-yamakami16 | 2010-01-12 22:39 | Comments(0)
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国際的に問われる日本「調査捕鯨」の妥当性

                            山上 真

 去る1月6日、南極海で日本捕鯨船団に随行していた監視船「第2昭南丸」(712トン)が、反捕鯨団体 Sea Shepherd の「ハイテク」抗議船 Ady Gil 号(26トン)と「衝突」し、後者の船体が切断される事件が起きた。船員は一人が肋骨を折ったものの、無事に Sea Shepherd の僚船に救助された。

 この事件を筆者が初めて知ったのは、NHK BS1のニュース番組であったが、その際は「日本船の前を故意に横切った抗議船に衝突した」と報じ、ヴィデオ映像も衝突直後の模様を映して、実態が不明確なものだった。その後の情報も、日本では、例えば『時事通信』が「アディ・ギル号が第2昭南丸の前方を横切る際に急減速、避け切れなかった第2昭南丸の前方とアディ・ギル号の船首がぶつかった」と伝えたような主旨の報道が続いた。
 

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 ところが、その後英国・フランス・オーストラリアなどのメディアが伝えたヴィデオ映像と説明では、明らかに日本での報道内容と異なるものであった。先ず、第2昭南丸と抗議船は、かなり離れており、後者は何らかの原因でほぼ静止状態にあった。ところが、前者は、放水しながら加速度的に接近し、 Ady Gil 号に向かって舵を切るようにして衝突したのである。しかも、沈没の恐れがあった抗議船の乗員救助をせずに、第2昭南丸は現場を離れたのである。
 YOU Tube 動画などで、何時でも見られるので確かめられるが、何らかの意図で、第2昭南丸は「衝突」したのである。明らかに、避けようと思えば避けられた「事故」であった。この辺の事情は、『ニューヨーク・タイムズ』紙(1月7日付)でも、報道している。

 日本側が「テロリスト」と断ずるSea Shepherd 側が、捕鯨船団に対して、異臭弾を投げ込んだり、レーザー光線を照射したりするなど、様々な妨害行為を行っていることは事実であるが、今度の場合は、「当たり所」が悪ければ、人命が失われる恐れが十分にあった重大事件である。
 この事について、日本政府の農林副大臣の談話は、日本側の正当性を主張するのみであったが、対外的反響を考慮するならば、極めて思慮を欠いた対応である。


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 世界各国の、この事件についての新聞報道は、比較的穏やかな内容のものが多いが、ヴィデオ付の報道では明らかに日本船団側の「攻撃的」姿勢を示唆している。かねてから「反捕鯨」世論が圧倒的な英国など欧州諸国、オーストラリア、ニュージーランドでは、反日世論が盛り上がりを見せ始めている。注目すべきは、今度の事件を特に大きく報道している中国メディアである。
 中国系新聞及びブログが、日本捕鯨船団の「挑発的行為」を各国で大きく取り上げているのである。

 ここに、幾つかの新聞の読者欄の「声」を紹介しておきたい。

 「ヴィデオ映像を見れば、環境活動家が言うように、明らかに静止状態のAdy Gil 号に向かって日本船が舵を切っている」
 
 「クジラはこの地球上で最も美しく、素晴らしい哺乳類だ。私はクジラを絶滅から救うどんな行為も支持する。彼らは日本人の蛮行に立ち向かう英雄だ、というのが私の意見だ」                (The Times)

 この他、現ラッド政権が、オーストラリア経済水域での日本商業捕鯨を許していることへの批判や、日本の、「調査」に名を借りた商業捕鯨を非難する声が多く見られる。
 勿論、一方には、反捕鯨を標榜するNGO Greenpeaceが、危険行為を避けて、南極海での日本捕鯨船への「直接行動」を自粛しているのに対して、Sea Shepherd 側が, テロリストまがいの行動形態を取っていることに対する批判が、少なからずあることも事実だ。

 『朝日』など日本メディアが伝えているように、オーストラリア・ニュージーランド両国が、この「衝突」事件の調査に乗り出すことになった。外交か、国際法廷での解決に委ねることになる。


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            オーストラリア・ABC news (1月9日)より

 更には、「調査捕鯨」という名の商業捕鯨の妥当性についても、これを機にクローズアップされることは間違いない。今や遠洋に捕鯨船団を出しているのは唯一日本だけだ。
 この辺で、「調査捕鯨」などという屁理屈を止めて、日本沿海の「伝統捕鯨」に回帰した自己主張を、国際社会に訴える方向に改めたらどうだろうか。                      
                             (2010.01.08)

<追記> オーストラリアのニュースを見る限り、Sea Shepherd はテロリスト団体とは看做されず、「熱心な」動物愛護団体と遇されているようだ。野党・自由党は、ラッド政権が公約を果たさず、日本の捕鯨を事実上、容認してきたことを追及している。 (ABC News)
 なお、Sea Shepherd は、「沈没した」Ady Gil 号に替わる新鋭船を建造することを発表している。 (News.com.au)                          (2010.01.09)         


<写真> The Times, The Guardian, Libération
 
by shin-yamakami16 | 2010-01-08 16:24 | Comments(0)
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30人:3日間の「ドンチャン騒ぎ」

                          山上 真

 日本でも、日本海側・山岳地帯の大雪で、登山者の死者が出ているが、英国では、暮れから新年にかけて、特にスコットランド、ミッドランドを中心に、豪雪と厳寒に見舞われた。

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 1月4日の『デイリーメイル』紙は、大晦日から新年にかけて、パブで越年を祝おうとしていた客たち30人が、思いがけぬドカ雪に見舞われて、3日間そこに閉じ込められる羽目になった出来事を伝えている。

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 ヨークシャーデイルの真ん中に位置する ‘Tan Hill Inn’ は, 英国で最も高い所 (528m) にあるパブとして有名で、その日はリーズ大学のクロスカントリー一行などが訪れていた。夜が明けて見ると、周囲は60cmから2m余りの積雪に包囲されていた。除雪車を呼ぶも、町からは遠く、全く動きが取れない状態だった。

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 幸い、店は十分な食料と飲料にこと欠かなかった。約30人の客たちは。飲み食いしながら、共に店の掃除を手伝ったりして、結構楽しく時を過ごしたようだ。常ならぬ友情も生まれたという。

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 今度の天候で、スコットランドの大多数の学校が休校になっており、今週末にかけて、次の豪雪予報も出ている。子供も大人も、大雪による「休暇」を楽しんでいる趣だが、深刻な不況の中、経済活動への少なからぬ影響が懸念されている。                
(2010.01.05)


<写真> Daily Mail, The Guardian
by shin-yamakami16 | 2010-01-05 23:31 | Comments(0)