世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2010年 03月 ( 6 )   > この月の画像一覧

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「テロの根源」強圧政策で抑え込めるか?

                            山上 真

 今から40年程前、モスクワを訪れた時の思い出と言えば、屹立する「スターリン時代」の大ホテルの偉容、夕立の後の虹と夕日の美しさ、「モスクワ郊外の夕べ」が流れるレストランでの、注文した料理の「待ち遠しさ」、信号の無い大通りを横断した際に警官に見つかり、厳しく詰問されたことなどである。当時は勿論「ソ連」時代であり、現代のロシアの様相とはまるで異なっていたが、其処には一種の「長閑さ」があったように思われる。確かに「自由」の問題はあったが、少なくとも「旅の安全」は図られていた。

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 そのモスクワは今、恐怖の街と化している。チェチェンを中心とする北コーカサスでの「イスラム過激派」及び幾つかの共和国独立を要求する武装勢力の「自爆テロ」などによって、過去十年に渉り大混乱に陥ってきた。このような事態を招いた原因は、良くも悪くも「強権」で求心力を維持していた「ソ連」が、崩壊したのを機に齎された宗教・民族的大変動であろう。

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 今回の連続「地下鉄テロ」の場合、プーチン・メドヴェージエフ政権の厳しい「弾圧」下で殺された北コーカサス過激派の夫や親族の、復讐を目的とした「黒い未亡人」たちが引き起こしたものとされている。彼女たちは、ロシア軍によって3月2日に殺された精神的指導者 Said Buryatsky の訓練を受けていた、30人の ‘Black Widows’ の一部と推察されている。メディアによって「ロシア・ビン・ラーデン」と呼称されたSaid は、去年11月の列車爆破テロを始めとする幾つかのテロ事件を仕組んだとされている。

 ロシアに於ける過去10年間のテロ事件を列記すると次のようになる。
1999年  
 8月31日モスクワ市内の爆弾テロで1人死亡、約40人負傷。9月9日市内南東の10階建てアパートで爆弾テロ。94人が死亡、249人が負傷した。その4日後の9月13日、モスクワ市内南部の9階建物地下での爆弾テロにより118人が死亡した。結局、この年だけで214人が犠牲になった。これらのテロは全てチェチェン独立派に因るものとされる。
2002年
 10月23日から26日にかけて、モスクワ市内の劇場で、800人以上の観客がロシア軍のチェチェン撤退を要求する武装勢力の人質となる。ロシア特殊部隊はガス銃を使って鎮圧を図り、結局観客129人を含む169人が死亡した。
2003年
 7月5日モスクワ北西のロック・コンサートに侵入した2人の女性テロリストは、警備員に怪しまれて一旦改札口で逮捕されたが、僅かな間隙に身に着けていたベルト状の爆弾で自爆テロを行い、17人が死亡した。2人は所持のパスポートから、「チェチェン独立派」のメンバーと分かる。
2004年
 2月6日モスクワ地下鉄車内で、ラッシュアワーに女性テロリストによる自爆テロ発生、40人が死亡した。8月31日モスクワ北部地下鉄入り口で女性による自爆テロ、10人が死亡し、51人が負傷した。その翌日9月1日、モスクワ南方1900キロの北オセチア Beslan の学校で、約30人のチェチェン武装集団が1181人の児童と教職員を人質にする。ロシア治安部隊との戦闘で、児童186人を含む386人が死亡し、700人以上が負傷した。


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2009年
 11月27日ロシア北西部モスクワ・ペトログラード間で「ネフスキー・エクスプス」が爆弾テロに遭って脱線し、死者26人、負傷者約100人に及んだ。
2010年
 今回3月29日(月)の2女性によるモスクワ地下鉄車内の自爆テロにより、39人が死亡し、27人が負傷した。


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              3月31日のキズリャルでの爆弾テロ現場


 更に先程入ったばかりの報道によると、本日31日ロシア南部ダゲスタン共和国キズリャル中心部で連続爆弾テロがあり、現地警察幹部など12人が死亡し、20人以上が負傷したということだ。


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        爆弾テロ現場で献花するメドヴェージェフ大統領(3月30日モスクワ)

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           テロ負傷者を見舞うプーチン首相(3月30日モスクワ)

 メドヴェージェフ大統領などロシア指導部は最近になって漸く、テロ活動が軍事的対応だけでは防ぎ切れないことを理解し始めたようだ。軍事的に過激派を「根こそぎ」排除すると共に、北コーカサスでの人々の生活条件改善を図る為の施策を具体化しようとしている。遅きに失した観はあるが、世界至る所のテロリズムの主たる根源が「窮乏」にあることは間違いなく、これに有効に対処することが当事者の識見にかかっていると言っていいだろう。      (2010.03.31)



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<追記> Le Monde, Le Parisien など仏メディアが 4 月2日伝えているモスクワ発の情報に拠ると、29日に起きた「モスクワ地下鉄自爆テロ」の犯人の一人は、ロシア軍によって去年12月31日殺害された、「コーカサス反乱戦闘員」Oumalat Magomedovの17歳の未亡人 Djennet Abdourakhmanova であることが判明したということだ。



<写真・資料> The Times, Daily Telegraph, Daily Mail, The Independent,
Le Figaro, Libération, Le Parisien 
by shin-yamakami16 | 2010-03-31 22:33 | Comments(0)
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             ピンク色は「左翼連合」 青は「保守 UMP」



「自民・民主」に替わる日本での「革新連合」構築を

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 3月21日、フランス左翼は2007年成立のサルコジ政権に対する決定的な打撃を与えた。第二回目の地方選挙で、社会党・共産党・「ヨーロッパ・エコロジー」などから成る「左翼連合」は、保守党UMPに対して得票率で54%対35%という圧倒的な勝利を収めた。前者は22地方議会で多数派を握り、後者はアルザス地方で勝っただけである。


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                「落胆」のサルコジ大統領

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                同じくフィヨン首相

その一方、極右政党‘Front National’が Provence-Alpes-Cộte-d’Azur とNord-Pas-de-Calaisの2地方で20% 以上の得票を重ね、Languedoc-Roussillon, Picardie, Champagne-Lorraine-Ardenne の3地区で20%に近づく票を得て復活を遂げたことが注目される。これは、多くの保守党票が流れた結果とされるが、その党首ル・ペンが「ホロコーストは歴史の細部に過ぎない」と嘯く『国民戦線』の危険性は明らかなだけに、フランス政治の今後の動向が大いに懸念される。

 このような選挙結果を齎した要因は、一言で云えば「サルコジ政治」への仏国民の全般的不満である。10%を超える失業率、相次ぐ企業・工場閉鎖、若年層の暴動、労働争議・ストの頻発など、枚挙の暇がない。サルコジ政権の下で、フランス社会は「フリーズ」状態に陥った観がある。

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地方選後の23日には、フランス全土の80万人(警察発表38万人)の市民が街頭に出て、年金・雇用の改善を求めてデモ行進した。このデモには、サラリーマン、教員、看護師、年金生活者、失業者など全ての階層の人々が参加した。

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  「一昨日は投票所(又は棄権)、今日は街頭で、明日も戦い続ける」(パリ)


 更には、22日(月)20時から24日午前8時までの鉄道ストが、仏全土で行われた。これは、雇用・購買力確保、年金、労働条件改善を求めるものである。
 
 地方選挙の勝利と、間髪を入れぬ仏全土の「統一行動」は、2012年の大統領選挙「勝利」に向けた「左翼連合」プログラムの一過程に過ぎない。今後は、現実的になった「左翼連合」大統領の、統一候補として誰を選ぶかという大きな課題に目処をつけなければならない。今度の勝利を導いた社会党首Martine Aubry 女史が有力であるが、前大統領候補Ségolèna Royal 女史の線、或は、IMF総裁 Dominique Strauss–Kahn 氏など、全く別の候補を立てる可能性も残されている。


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                 オーブリ社会党首


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                社会党ロワイヤル議員


 敗北後のサルコジ大統領は、地方議会の議席を失った閣僚を主として、6閣僚を入れ替える内閣改造を行ったが、一般には次期大統領選挙に備えた「化粧直し」と受け止められている。
 他方、次期大統領選に出馬することが憶測されている前首相ド・ヴィルパン氏が、保守新党を立ち上げるという噂も出ている。

 振り返って日本を見ると、大いに期待された民主党政権は、些末な「金権問題」は措いても、沖縄・普天間問題のいい加減な処理、「原発推進」という錯誤など、心ある国民の意に反した愚策を続けている。本を糾せば、この「民主党」の「日米安保」への肯定姿勢と、大企業体に対する「擁護姿勢」に突き当たる。これらの態度は、殆ど自民党のそれに変わらないのである。
 この事実に気付いた国民は、急速に「民主党」を離れ始めており、その一部は、うっかりと「みんなの党」などという、本質は自民党と変わらない、訳の分からぬ党に掴まり、また、多くは「無党派」に回帰しているようだ。
 
 問題は其処に、自民・民主からの「迷い人」を受け入れるべき、まともな「受け皿」が備わっていないことである。今こそ、フランスに見られるような、民衆の真の利益を守れる「革新連合」を、この日本でも構築するべきだ。その基本政策としては、諸悪の根源たる「日米安保」解消と、政策的に優遇されてきた大企業への「規制強化」を含むべきだ。
 この連合の中核に、民主・社民党良心派、共産党が入るのは当然として、「無党派」市民が多く結集することが望まれる。英国でも、第三党が政権の行方を左右する程の勢力に成長しており、日本でも「第三党の出番」という機が熟している。相変わらずの保守政党の「衣替え」ではなく、真の「チェインジ」を遂行する「革新連合」が待ち望まれる。 (2010.03.24)


<追記 1> 地方選挙での大敗北を受けてフィヨン首相は3月23日、かねて重要政策と位置づけていた「炭素税」導入を、「他の西欧諸国との足並みに合わせる」為に、当面延期することを発表した。「炭素税」は、地球温暖化対策として、産業界などが排出するCO2に対して課税するものだが、仏国民の三分の二が反対しているとされている。サルコジ政権の「支持率浮揚」を図る為に、方向転換したと見られる。


<追記2> フランスの2月の失業率は、前月比0.1% 上昇した。過去5年間の状況は次のグラフの通りである。(『フィガロ』紙より)

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             フランス失業者:今年2月時点で387万人余り


<追記 3> 3月24日付の保守系『フィガロ』紙が掲載した、地方選挙直後の世論調査によれば、2012年の次期大統領選挙に於いて、59% の国民が左翼の大統領誕生を望んでおり、65% の国民は社会党書記長オーブリ女史がロワイヤル女史よりも大統領候補者として有力と考えているということだ。一方、ド・ヴィルパン氏が立候補した場合、保守票よりも多くの左翼票を集めることが見込まれ、国民の44%が大統領選出馬を支持しているということだ。

<追記 4> ド・ヴィルパン前首相は25日(木)、パリの Press club で記者会見し、2012年の大統領選挙に向けて6月19日に、「自由と独立」の新党を立ち上げることを表明した。この席で、同氏は「サルコジ政治」の政治手法を厳しく論難した。 (2010.03.26)


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           記者会見場の Dominique de Villepin 氏



<追記 5> 今日3月26日付の『ル・モンド』紙掲載のCSA世論調査(24,25日実施)によれば、2012年大統領選でサルコジ氏が再出馬した場合、第一回目投票では首位になるものの、第二回決戦投票では、「左翼連合」のMartine Aubry 女史がサルコジ氏に対して、52% 対 48% の得票差で勝利するという予測になった。



<写真・資料> Le Parisien, Libération, Le Monde, L'Humanité, Le Figaro
by shin-yamakami16 | 2010-03-24 15:26 | Comments(0)
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‘Hung Parliament’ (宙ぶらりん議会)での自民党の「役割」
                            山上 真

 第二次世界大戦後、「最も深刻かつ長期的」とされる経済危機を抜け出せないでいる英国は、この5月6日にほぼ決まった総選挙に向けて、3大政党を中心に活発な言論戦を繰り広げている。

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              「人員削減」反対のストを控えたBA


 折から、BA (英国航空)の乗組員ストが今月下旬に二波に渉って予定されており、ブラウン首相が、労働党支持母体のBA乗員組合に対してスト中止を強く求めたのも、総選挙を意識して、国民の反撥を逸らそうとする「空しい努力」であっただろう。


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 今月15日に実施された世論調査(Guardian/ICM poll)によると、各党支持率は、保守党40%、労働党31%、自民党20% ということで、2月の調査より保守党支持が 3% 増えている。これは、ブラウン首相が先の「イラク戦争検証」委員会で、英国兵装備費問題で「戦費削減せず」という虚偽の証言をしたことなどによる影響が出ている為と考えられる。
 しかし、保守党「単独政権」誕生を願っているのは29%に過ぎず、一方、労働党政権継続を期待しているのは18%に止まっている。更に注目されるのは、何と44%の人々が ‘Hung Parliament’ が生まれることを希望しているのである。つまり、保守党・労働党一方の単独政権でなく、そのどちらかに、第三党の 自民党・ ‘Liberal Democratic party’ が参画する連立政権を望んでいるということだ。
 

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                労働党・ブラウン首相

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                保守党・キャメロン氏

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                自民党・クレッグ氏


 その自民党党首・Nick Clegg 氏は、最近の党大会で、「政治の安定を図る為に」連立への意欲を示しており、その際の条件として、4つの基準を新政権が受け入れることを求めている。

1. 年収10,000ポンド(約140万円)以下の所得税免税と、富裕層への増税
2. 貧困家庭子弟救援を目指した教育費の大幅増額
3. 「環境保護」に基づく経済運営
4. 選挙制度改革(現行の小選挙区に替わる比例代表制実現)

 更に同氏は最重点政策として、英国の抱える巨額な財政赤字を減らす為
に、年150億ポンド(約2兆1千億円)の国家予算削減を呼びかけている。


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             自民党首ニック・クレッグ氏

     
 この自民党(下院議員63人)は、三大政党の内、イラク戦争への英国の参戦に反対した唯一の党であるが、アフガニスタンでの戦争については明確な姿勢を示しておらず、この戦争の戦死者と戦費増大について、「草の根」党員の指導部に対する不満が高まっているものと見られている。また、クレッグ氏が最近、「鉄の女」ことマーガレット・サッチャー女史の「断固とした」労組対策を称賛したことは、労働党から離れて自民党に回った支持者たちを「仰天」させている。


David Cameron 氏率いる保守党は、ひと頃の支持率52%から大きく減らしているが、その原因は何と言っても、減税対策などで労働党政策との違いを曖昧にしていることだ。最近目立つことと言えば、アフガン英国兵の「装備不足」の件で、ブラウン政権の「軍事支出」軽視を追及していること位である。大凡、庶民の「厳しい暮らし」とは無関係な次元の話だ。


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            閉店セール「全て5ポンド!」(Covent Garden)


 英国・日本など先進資本主義国の政治は、今や、誰が政権を握っても、大差の無い状況が続くことになりそうだ。国民は、「ただ生きること」さえも難しくなっているのだ。何処の国も「財政赤字」で、「福祉国家」は次第に遠い存在になりつつある。そんな中で、せめて他国での「人殺し」の為の財政支出だけはさせたくないものだ。                (2010.03.19)

 
<追記> BAは20日、ストに突入した。約2000便の内、1000便以上が欠航する。乗員組合は「ストライキは利用者の安全の為になる」としている。 (2010.03.21)


<写真> The Times, The Guardian, The Independent, BBC News
by shin-yamakami16 | 2010-03-19 15:12 | Comments(0)


「民主」党政権の「非国際性」を象徴するか

                             山上 真

 鳩山民主党政権は、「高校授業料無償化」法案の適用対象から「朝鮮学校」生徒を除外する方向で動いているようだ。これは、日本に暮らす朝鮮の人々にとっては、到底納得し難いばかりか、正常な国際関係を期待する立場に立つ多くの日本人識者を慨嘆させる愚挙を、「友愛外交」をモットーとしている筈の鳩山政権が行うものとは思っていなかっただけに、その衝撃は大きい。

 「無償化除外」を主張する拉致問題担当相・中井氏は、しきりに、「北」朝鮮の拉致問題への対応を問題にしているが、これは、日本に長らく住む朝鮮人民、とりわけ、その子弟とは別のこととして考えるのが、「大人の常識」というものだ。「拉致家族会」などの感情的な圧力を排除出来なければ、核問題など、より重大な外交交渉を頓挫させるという大きな危険性を生むことになる。そこの所を、「アジア外交」を重視する鳩山氏は熟慮しなければならない。

 従来の日本政府の在日外国人に対する「人種差別的」処遇について、既に厳しい改善勧告が、国連人権委員会から出ているが、もし、今度の高校授業料無償化が、朝鮮学校に適用されないことになると、国際的に大きな波紋を引き起こすことは疑いない。日本は「特殊な国」というイメージが、最近の「捕鯨」問題、「クロマグロ漁獲禁止」問題などと相俟って、日本への風当たりはいやが上にも烈しさを増すことになるだろう。

 民主党は、自民党と異なって、日本と朝鮮との歴史的関係について、より深い洞察力を兼ね備えているものと思っていたが、どうも当てが外れたようだ。戦前の日本帝国主義が、朝鮮半島で数十年に渉って働いた「乱暴狼藉」を少しでも顧慮するならば、今度のようなさもしい「心の狭さ」は、出て来なかった筈である。この党には、自民党に劣らず、余程思慮を欠いた人物たちが集まっているようだ。どうも、「政権交代」は、「日米密約」暴露というメリットはあったものの、「普天間」問題の運び方や「原子力発電」の無思慮なGOといい、買いかぶっていたようだ。これまで無党派でいたものの、「人間無視」の自民政治の転換を願って先の総選挙で「民主」に投票した人々は、一つ一つの政策が多くは「自民踏襲」と知るにつれて、ますます離れて行くことは避けられない。                                 (2010.03.12)


<追記> 3月13日付の『毎日新聞」によると、ジュネーブにある国際監視・審査機関『人種差別撤廃委員』は、15日にも日本政府に対して、高校無償化の対象から朝鮮学校を除外することは、日本が1995年に締結した人種差別撤廃条約違反に当たるとして、改善を勧告する見通しになったということだ。
by shin-yamakami16 | 2010-03-12 21:27 | Comments(2)
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       3月5日「イラク証言」を行うブラウン首相(前蔵相)
       証言中の「納得率」が左欄に表示される(『テレグラフ』紙より)




総選挙を控えたブラウン首相証言「参戦は正しかった」の影響は?

                               山上 真

 先程からBBC World News Live で英国「イラク戦争検証委員会」でのブラウン首相の証言を聴いている。十数分の休憩後に、彼の証言が再開される。
 これまでの所、ブラウン氏の証言は、ほぼ、先に行われているブレア証言に沿ったもので、若干のニュアンスの差はあれ、何ら新味が感じられないものになりそうだ。ブラウン首相は冒頭、イラク戦争戦死者に対する哀悼の意を表して、証言を始めた。
 
 「2003年の英米のイラク侵攻は正しかった」
 「イラク・フセインが国際法に違背したから、戦争になった」
 「戦費に上限はなかった」
 「戦争開始にあたって、戦争内閣の意思疎通は緊密に行われた」

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などのブラウン証言は、「戦後処理について米国に充分な備えが欠けていた」などの点を除いて、ブレア証言を倣ったものであった。ただ、チルコット委員長に、イラク戦争の総費用を執拗に問われて、80億ポンド(約1兆8,400億円:当時)に上ることを漸く答えた際には、やや憮然とした表情を見せた。
  179人の戦死者を出し、戦費は、開戦当初の見積りの3倍に達したのである。その英国は今、西欧諸国の中で、ギリシャと並んで最大の財政赤字 (GDPの160%)となっているのだ。戦争がいかに国家に打撃を与えるかが、如実に分かる。

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 顧みて、我が日本が小泉首相時代に、米国の要請を受けてイラク戦争に深く関わったことを忘れている人々は少ないであろう。小泉純一郎氏は、日本国憲法の規定する「海外派兵禁止」を、非戦闘地域なら問題ないという強弁によって、イラク南部サマーワに陸上自衛隊を派遣した。しかし、日本自衛隊は十数回にわたって、現地で迫撃砲弾などを浴びた。イラク全土が戦闘地域になっていたのに、非戦闘地域が存在すると思う神経の持ち主は、やはり相当の「変わり者」に違いない。

 「人道復興支援」の航空自衛隊も、当初は軍事物資・連合軍兵士を運ばないと言っていたのに、実は米軍兵士などを半ば公然と輸送していた。全くの所、戦争に加担していたのである。

 2003年12月から2009年2月までの自衛隊イラク派遣に要した費用は総計約900億円と推定されている。このほか、イラク政府への開発援助額が、2003年から3年間だけで約1600億円である。もし「イラク開戦」というものがなかったら、これらは殆ど不要であっただろう。これだけ多額の税金が、何の大義名分のない戦争の為に浪費されたのだ。
 
 その責任を明らかにするのが当然なのは、「朝日社説」(2010.02.22)が冒頭で述べている通りである。
 
 「戦争にかかわったなら、後でその政策決定に至る過程をきちんと分析し、是非を判断する。それは国家としての責務ではないか。ましてや間違った戦争となればなおさらである」

 また、最近のNHK『クローズアップ現代』で、イラク民衆の中で援護活動に従事していて武装勢力に連れ去られ、釈放された後は、日本での「勝手な行動」というバッシングを受けた高遠奈緒子さんの不屈の活動を放映していたが、これも、イラク戦争の暗部を衝く証言となった。

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 ここで気になるのは、この問題に対する民主党政権の「優柔不断さ」である。支持率傾く中、自民党政権のエラーを衝く絶好の機会なのに、「お上品にも」それをしない。各方面のNGO、政党などがイラク戦争検証の為の「独立委員会」設定を求めているのに、これまで何ら政府側の動きが見られないのは、どういうことか?

 勘ぐれば、「普天間」問題との関わりで、主体的にイラクに侵攻し、「戦闘終結宣言」後も、未だに「戦争責任」を明確にしていない、オバマ政権下の米国の「機嫌」を害いたくないという「気配り」でもしているからなのか。

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               バグダッドでの反米デモ


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               イラク中南部・ナジャフでの反米デモ


 日本の「イラク検証」は、それこそ我が国の独自の課題であり、他国に何の遠慮もするべきではない。むしろ、イラク戦争に反対の立場だったオバマ氏に、好い意味の示唆を与えることになるだろう。「戦争国家」米国を正すのにプラスに働くに違いない。検証中の英国、既に「イラク戦争は国際法違反」の結論を下したオランダに次いで、日本も、米国に於ける「イラク戦争検証」を促すことを期待したい。 (2010.03.06)


 
<追記> 「イラク証言」を行った翌日3月6日、ブラウン首相は突如としてアフガニスタン南部の前線を「電撃訪問」した。野党保守党幹部や元軍最高幹部に、ヘリコプターや、装甲車、兵士の装備などの必要経費出費を、蔵相だったブラウン氏が削減していたことを厳しく非難される中、総選挙を数週間後に控えて、「証言」の懸念される悪影響を弱めることと、メディアの「攻撃対象」を分散させることを狙った、多分に政治宣伝的スタンド・プレー(political stunt)と受け取られている。
BBC ニュースによると、そのアフガン戦線では、サンギン地区などで、過去6日間に6人の英国兵が爆弾・銃撃などで死亡しているということだ。 (2010.03.09)


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 <写真> Daily Telegraph, David Leeson, AfterDowningStreet. Org, PIGBIRD
   The New York Times, The Times
by shin-yamakami16 | 2010-03-06 11:11 | Comments(1)
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    3月1日フランス西部Vendée県の水害地・仏国内だけで少なくとも51人死亡


相次ぐ世界的大災害から学ぶ「教訓」
          
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 中南米のハイチ、チリと、大地震の壊滅的被害が世界の人々に衝撃を及ぼしている。ごく最近では、スペイン・フランス・ドイツなどを襲った「冬の嵐」が人々を恐怖のどん底に陥れている。


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 我々の住む地球が「生きている」以上、地殻変動、気象条件の大変化などは、いかなる人智を駆使しても、及びもつかないものと看做さなければならない。人間は、それらが必然的に起こるものと考えて、齎される被害を最小限に止めるように努めるしかない。もしその努力を怠ったとしたら、それは当然非難の対象となる。

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 大災害という現実に直面して、人命の救出活動という火急の事に加えて、先ず政府・自治体がやらねばならないのは、災害後の大混乱の中で、助かった人々の安全をどう確保するかということだろう。多くの場合、人々は「水を、食べ物を!」と叫ぶのが普通であるが、チリ大地震の直後の報道では、「この子にミルクを!」と泣き叫ぶ母親の表情が印象的であった。恐らく、辺りの様子から見て、ミルクは到底手に入らない「絶望」を感じ取っているのだ。


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 南米でブラジルに次いで「軍事的装備」が優れているとされるチリが、723人の死者と、200万人の被災者を出した大地震に対応して、どれだけまともな救済活動を実施出来るかという事は、当然注目される。先の「フォークランド戦争」で、隣国アルゼンチンに敵対した軍事出動をした国が、ミルクを求める自国の母親に、何れだけ早く手を差し伸べることが出来たのか、問われるのは当たり前だ。


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            2月28日烈震と津波に襲われたチリ・Talcahuanao   


 災害後につきものの安全・「ルーター」(集団窃盗)対策として、警察・軍隊を動員して取り締まるのはやむを得ないとしても、先ず統治当局側に求められるのは、避難民に対する迅速な「物質的手当」である。直ちに飲料水・食料、そして毛布・テントなど防寒具を被災地に届けられるかどうかが、行政能力の試金石と言ってよいだろう。

 大規模災害の場合、国を超えた支援が必要なことは言うまでもない。特に、日本を含む先進工業国は、自国の災害対策だけでなく、国際的な支援態勢を充分に整えておくことが急務である。既に述べているように、中国のように、少なくとも5,000人規模の国内・国際「災害支援隊」を常時整えておくことが喫緊の課題ではないか。最近のように、ハイチの未曾有の被災の後、間もなくチリ震災が続いているのだ。それぞれに並大抵でない規模の援助が必要なのだ。

 日本でも、今や何時大地震が起こっても不思議でない時点に差しかかっているようだ。個人として、その時の用意をしておくのは勿論であるが、あらゆる段階の行政機関が、迅速に適切な動きを出来るように、態勢を整備して措かれたい。ありもしない「北の侵略」への備えで、高価なミサイルを買い込むことよりも、必ずや来る災害への備えを「十二分に」用意しておくことが、良識であり、常識というものだ。           (2010.03.02)

 


<写真> Le Monde, Libération, The Guardian, The Independent
by shin-yamakami16 | 2010-03-02 17:36 | Comments(2)