世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2010年 07月 ( 5 )   > この月の画像一覧

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       横須賀を母港とする米原子力空母「ジョージ・ワシントン」



「自民」との違いは一体どこに?

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 参院選で大敗を喫した菅政権・民主党は、去年発足した鳩山政権の基本理念まで放棄して、「平和憲法」の不戦・平和擁護原則に背く政策を公然・隠然たる形で押し進めようとしている。それは,主として、米国政府及び日本財界の要請に基づくものであり、昨年の衆院選圧勝を利用した、強引な政策展開の一部を成す。

 民主党政権がその当初の「公約」を踏みにじった例、更には、自民党政権時代より踏み込んだ「防衛」関係政策を列挙してみよう.

* 普天間・「辺野古」自民案・復活で「沖縄米軍基地」固定化表明


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* ソマリア・ジプチ空港に対「海賊」軍事拠点構築 ー 哨戒機P3C2機の整備基地(7月14日 産経新聞)

* NATO の要請を受けて、ソマリア沖で海賊に対峙する各国艦船に洋上給油する為の補給艦派遣を検討(7月24日 時事通信)

* 「対空迎撃ミサイル」海外輸出許可の方向(7月25日 共同通信)

* 「中国海軍」の動きに備えて」宮古・石垣、更には与那国島に段階的に「自衛隊」駐留(7月29日 共同通信)



 上に掲げた軍事・「防衛」関係政策が国会の場で殆ど討議されず、恰も既成事実であるかのように、実施の方向に向かっているのはどういうことか。

 民主党政権内で、このような危険な動きを先導しているのは、親米・財界寄りで急先鋒の前原、北澤、それに岡田、直嶋、仙谷などの面々である。

 イラク・アフガニスタンでの戦争に米国に追随して参戦したNATOに肩入れすることは,取りも直さず真正面から「テロの脅威」に晒される覚悟がなくてはならず、米国・NATOに対して反感を抱く中近東・アジア諸国民の悪感情をかき立ていることになることは間違いない。
 また、今こそ平和愛好国としての日本をアピールするべきなのに、軍事的手段に訴えることは、一部軍需産業を利するばかりであり、中国を始めとする多くのアジア諸国民に「軍国日本」を想起させる契機となることだろう。


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            7月25日 日本海 「米韓軍事演習」



 日本の周囲の平和的環境がこのところ著しく脅かされているのは、何も「北」朝鮮の問題ではなく、未だに原因不明瞭な「韓国艦爆沈」事件を利用したと思われる米韓両国の「対抗措置」、即ち日本海での米韓軍事演習による緊張増大である。この挑発的軍事行動は、「北」ばかりでなく、中国が、極東に於ける緩和に逆行するものとして、厳しく抗議している。日本の場合特に問題なのは、オブザーバーとして初めて自衛官が、横須賀から出航した米原子力空母「ジョージ・ワシントン」に乗り合わせていることである。これは,当然のことながら、菅政権承認の下に行われた「重大事件」である。
 今後は、米・韓・日という事実上の「三国軍事同盟」にでも発展する動きが懸念される。こうなれば、朝鮮半島での軍事衝突が、直接的に日本本土にも及ぶ事態となるのだ。中国とも激しくやり合っている「民主党・岡田外交」は、この辺の所を明確に説明しなければならない。

 なお、極東アジアに於ける、最近の一連の米国政府の動きは、全て米軍「沖縄基地」の問題に繋がっていると見ることが至当である。米国はいつの間にか、あれ程熱を入れていた「北」の核武装阻止の為の「六か国協議」への関心を離れて、徒に「北」脅威論を煽り立てているのは、日本、特に沖縄の「反米軍基地」感情を逸らそうとする「無益な努力」と看做していいだろう。
 結局のところ、オバマ政権は、「世界の警察官」たらんとする米国の伝統的な「帝国主義的」世界政策を踏襲していることを今や自ら暴露している。米国が「沖縄」に飽くまで踏みとどまろうとするのは、究極的ターゲットが、脆弱な「北」ではなく、中国大陸だと看做しているからに外ならない。将来、仮に台湾問題で米中両国が交戦する事態が起これば、「中国出撃」可能な多くの米軍基地を擁する日本は、必然的に戦争に巻き込まれることを覚悟しておかねばならない。

 日本が未来永劫にわたって「核戦争」などの戦禍を遠ざけようと願うならば、一日でも早く「米国の傘」から脱して、「独立・平和・中立」の日本を確立しなければならない。

                           (2010.07.30)
 
 
<写真・資料> 「森かつみの活動報告」、産経新聞、The Morning Star (uk)
by shin-yamakami16 | 2010-07-30 12:10 | Comments(0)
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包囲されるブレア元首相の「正しかった戦争」論

                            山上 真

 7月20日付の英国各紙は、元英国情報部トップの「イラク証言」をやや衝撃的に伝えた。
 前日、英国「イラク侵攻経緯調査」委員会(委員長John Chilcot卿)は、前MI5長官Manningham-Buller 女史の証言を聴聞した。この委員会は昨年11月から始まったのであるが、未だ猶も、イラク開戦に関わった政府関係者の証言が続いている。


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      「聴聞会」会場に入る前MI5長官マニンガム・ブラー女史


 2007年、時のブレア政権によって辞任に追い込まれた英国軍情報局保安部(通称MI5=Military Intelligence section5)長官の証言は、当時の首相ブレア氏の証言、即ち「英国のイラク参戦は英国をより安全にした」ことと真っ向から対立するものであっただけに、特に注目されることとなった。


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           「イラク戦争」証言を行う前MI5長官



 この日、女史は冒頭で、

 ‘Our involvement in Iraq radicalized, for want of better word, a whole generation of young people – not a whole generation, a few among a generation - who saw our involvement in Iraq and Afghanistan as being an attack on Islam’

と語った。つまり、英国のイラク参戦が、若い世代の全部とは言わないまでも、「イスラム」に対する攻撃と看做す人々を「過激化」してしまった、というのである。
 そして、英国で生まれた多くの若者たちが、オサマ・ビンラーデンやアルカイダのイデオロギーに惹き付けられたようだと言うのである。こういう「危険な人々」が余りにも多くて、テロ取締まりの任を負う英国情報部は、手に負えない状態に追い込まれたということだ。


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         2005年7月7日のロンドン「同時多発爆弾テロ」現場


 彼女が言うには、MI5は、サダム・フセイン政権が「英国にとって脅威になる程の大量破壊兵器(WMD)を保有している」とするMI6 (Military Intelligence section 6 = 英国秘密情報局)の情報を、根拠薄弱と看做していたという。しかし、トニー・ブレアは、このMI6の方の情報を意図的に採用して、「イラク参戦」に踏み切ったのである。
 結局のところ、イラク占領後、米軍がどこを捜しても、WMD は全く発見されなかったのは、周知の通りである。


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 女史は現在,戦闘が激化しているアフガン情勢との関連性についても触れ、

 ‘By focusing on Iraq we reduced the focus on the al Qaida threat in Afghanistan. I think that was a long-term major and strategic problem’

と結んだ。つまり、米・英両国などが、本来的にアルカイダとは無関係であったサダム・フセイン政権打倒の為のイラク戦争に集中したことで、アルカイダのアフガンでの活動を活発にする余裕を与えてしまい、後にイラクへのアルカイダ侵入を促すことになった。そのことが、長期的に見て深刻な問題を引き起こしてしまったというのである。


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     下院議場で「イラク参戦は違法」と断言するニック・クレッグ副首相
     左は、硬い表情を浮かべる保守党オズボーン蔵相


 折しも、7月21日、キャメロン首相が渡米などで留守中の英国議会で、連立政権を担う副首相ニック・クレッグ自民党党首は、首相代理としての野党労働党との遣り取りの中で、「イラク侵攻は違法であった」と断定的に述べた。当時、労働党政権に同調して、イラク参戦に賛成した保守党議員の面々が、このクレッグ発言に苦渋に満ちた表情を浮かべていたのが印象的である。

 「クレッグ発言」を受けて、左翼・反戦団体などでは、ブレア氏を「裁きの場へ」との主張も強まっており、今後の展開が注目されるところだ。イラクに於ける戦争行為によって、百万人に達するとされるイラク人死者、約5千人の欧米兵士の戦死、莫大な戦費の浪費が齎された。そのことの「けじめ」をきちんと付けることは当然である。             

                                   (2010.07.25)
 
 

<写真> The Independent, Daily Telegraph, Daily Mail, The Guardian
by shin-yamakami16 | 2010-07-25 08:47 | Comments(0)

‘The Cove’ を観て

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優れたドキュメンタリーの持つ「衝撃力」

                           山上 真

 先日、横浜の映画館に行って、今「物議を醸している」’The Cove’ 「入り江」を観た。この映画の封切当初は、右翼団体などの上映妨害騒ぎがあったりして、観に行くこと自体が不安を感じさせるような雰囲気であったが、この日行ってみると、全く平穏そのもので、落ち着いて観賞できた。

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 映画の前半は、’The Cove’ が何故「鯨の町」太地で「隠れた形」で撮影されなければならなかったのかということを細かく説明する映像が続き、そこでは、取材・撮影活動に対する現地漁民・警察の妨害・阻止行動が明確に捉えられていた。


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 日本では、毎年2万数千頭ものイルカが捕獲され、観光用に「生かされる」僅かなものを除き、その殆どが食用に回されている。「食の伝統を守る」という名の下に、民間・国ぐるみで「秘密裡に」貴重な生物資源を大量に処理しているという事実は、そのままでいいのか。


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 ‘The Cove’ の制作者は、この映画の中心的テーマであるイルカ漁を巡る問題、例えば、「イルカ漁の残虐性」ばかりでなく、「捕鯨」に関わる問題全体に視点を当てている。それは、海洋生態系で食物連鎖の頂点にいるイルカ・鯨を食用とすることの危険性、即ち「水俣病」で知られる水銀汚染の問題だ。

 イルカ・鯨肉の水銀汚染問題については、既に一部メディアでも、太地町住民の健康診断で、体内に高い水銀濃度が認められる事実を伝えている。日本水産庁は、この映画でのインタヴューで、「この程度」の水銀濃度が健康に影響を及ぼすものでないと、危険性を否定しているが、果たして真実なのか、より厳密な検証が求められる。ことに、イルカ・鯨肉が学校給食に出されているという事実は、大いに一般の不安を呼び起こすことだろう。

 先日のNHK『クローズ・アップ現代』(7月6日放映)で、「ザ・コーヴ・問われる表現」のタイトルの下、この映画の「問題点」を取り上げた際に、瑣末な「映像の作為」を大きく「クローズ・アップ」する一方、「イルカ肉水銀汚染」の問題に一切触れていなかったのは、どういう「作為」なのだろうか。この番組は、まるで、「上映妨害」を正当化しかねないような意図を感じさせた。
 


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   環境問題活動家リチャード・オリバー、監督ルイ・シホヨスとスタッフ一行


 『ニューヨーク・タイムズ』紙(2009,July 31 by Jeannette Catsoulis)は、この映画を「スパイ・スリラーのような展開で、驚くほどよく作られたドキュメンタリーだ。自然保護運動の歴史の中で、最も大胆で、危険な行動だ」と評している。(要約)

 筆者から見て、この映画は、「反イルカ漁」プロパガンダを超えて、アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞しただけの、文字通り「生死を賭けた」力作と言えるように思われる。久しぶりに、「真実の映像」に出会った感じだ。
                               (2010.07.19)



<写真・資料>  'The Cove' Google画像検索より、Wikipedia
by shin-yamakami16 | 2010-07-19 17:11 | Comments(0)



棄権率「42.1%」の示す「意味」は?

                           山上 真

 菅民主党に対する厳しい審判が下った。
 それは、どのメディア予想よりも大きく下回る獲得議席となって現れた。
 民主党は,当初、参議院で「単独過半数」60を目指していたのだが、いつの間にか、菅首相の言う54つまり「現議席維持」という目標になった。しかし、結果は,その数字より遥かに下回る44であった。
 
 今の政治は、次のような悲劇的現実にどう応えるのかを迫られているのだが。

<7月12日NHK 7 時のニュース: 大阪の派遣社員 「悪性血液ガン」罹患判明 入院間もなく「退社」を求められる 数十万円の治療費に悩む> 
 
 日本人の2人に一人が「ガン」に罹るという事実がある以上、これは「我が身」に起こり得ることとして受け止めなければならない。

 選挙前日、民主党は三大紙に莫大な費用(5,000+4,600+900=1億500万円)をかけて選挙・全面広告を出した。今後共、大新聞社との「持ちつ持たれつ」の関係を維持しようとの魂胆も垣間見える。他党に、これだけ派手な宣伝をしている例は見当たらないのだ。それでも大敗。さぞかし大ショックのことだろう。
 まあ、新聞広告など出しても、あまり宣伝効果などないということの、典型的な例証となっただけの意味はある。

 蓋を開けて見れば、「こりゃーあ菅!」だった。そして、突然の「ねじれ」に困惑するマス・メディア。しかし、それは自ら撒いた種である。何故なら、マス・メディアは財界の「先兵」として、選挙前から、報道番組・「ワイドショウ」などで機会ある度に、「消費税引き上げ支持」を連呼していたのだ。事実上の「民主党支持・選挙運動」である。
 そして「民主敗退」選挙後には、菅氏の責任を問う声少なく、「しょっちゅう首相が替わるのは問題だ」として、寧ろ「首相擁護」という、これまた珍しい「風景」を見せてくれている。民主党内の「敗戦責任」を問う小沢派の台頭を恐れるからだろうか。

 今度の参院選挙では、民主・自民両党は殆ど「普天間・辺野古」問題に触れなかったようだ。何故ならば、それぞれが「過分の責任」を問われるからだ。菅首相が消費税問題を争点にしようとした理由に、この沖縄「米軍基地問題」の話題を逸らしたかったという説がある。先日のオバマ大統領との会談で、沖縄県民の意思を無視した「合意」を交わしたばかりなのだ。この是非を問われることは、選挙戦にマイナスに働くことを意識していたに違いない。
 マス・メディアも、政権の方針を既定事実のように扱い、「故意に」沖縄問題を避けていた。

 現今メディアの「寵児」の観がある「みんなの党」について見てみると、先ず驚いたことに、ある同党候補者は、「普天間・辺野古」問題に関するアンケートに「いずれでもない」、つまり回答不能とあるのだ。
 同党の「アジェンダ」(行程表)を見ると、外交的には「日米同盟基軸」であり、「議員削減」を主張しているが、やはりこれは、「少数意見尊重」という民主主義「原理」を理解していないことを示している。
 同党が主唱する「小さな政府」とは、民営化推進によって、弱者切り捨て「小泉自民路線」の徹底化に過ぎない。これは、嘗て英国・サッチャー、米国・ブッシュ政権がやってきたものであり、その政治の結果は、市場原理至上主義による「弱肉強食」であり、貧富格差の拡大と、失業率の増大をもたらした。結局のところ、自民党の「別働隊」と言うしかない。
 今は反対しているが、いずれ「消費税大幅引き上げ」支持の「連呼」に加わることだろう。

 経団連会長などは、「民主敗北」が「消費税によるものでない」と強弁し、引き続き、政権に消費税増税路線を採るように求めているが、これほど露骨に政策に干渉することを国民は許していいのだろうか。国政の主人公は当然のことながら「国民」の筈なのに、財界が主人公面をしているのである。一体,いつからこういうことになったのだろう。
 こういう動きに対しては、往時ならばマス・メディアが強く反撥したものであるが、今は、財界と同一歩調を取ることが普通で、本来の姿勢である筈の「批判力」は滅多に見られない。正に客観・公正・不偏不党を旨とするマス・メディアの「死」は近いと言わねばならない。

 日本での国政選挙に於いては、欧米では「誰が当選したか」と同等の重みで問題となる ’turn–out’ (投票率)のことが殆ど話題に上らないのは奇妙だ。選挙にどのくらいの人々が参加しているかということは、民主主義の原理的な問題であるからだ。もし、当選者が全体の中で僅かな人々によってしか選ばれていなければ、その主張の重みは軽いと看做されることになる。そして、棄権率が高ければ、社会の不安定化に通じる「政治不信」が無視し難い問題とされて、各政党・議会が対策を協議することになる。
 
 今回参院選・棄権率42.1% (前回2007年41.3%)は、一体どう見るべきであろうか。これだけ「消費税」問題が騒がれて、「天気も好かったのに」(東京など)投票に参加しなかった理由には、幾つかの「仮説」が可能だが、その一つを敢えて言ってみれば、「民主党も自民党も消費税引き上げを言っており、その反対派の『みんなの党』なども口先だけだ。社民や共産に入れても通らんし、この際棄権だ」というところだろうか。棄権が「目立つ」行為である地方では、恐らく、実行性のある政権党の「消費税云々」に恐れを為し、選択肢少ない中、自民党に投票せざるを得なかったのではないか。一人区で自民党が勝った所以である。

 不思議なのは、マス・メディアは一向に、この「投票率の低さ」を問題として取り上げなかったことだ。筆者は、どこに投票率が示してあるのか、あちこち探してみたが、容易には見つからなかった。更に驚いたのは、例えば『日テレ』の若いレポーターが、「出口調査」の結果と称して「消費税引き上げ」支持が五十数パーセントに上り、こんなにも消費税引き上げが一般に支持されているといった内容を伝えていたことである。40% 以上の棄権者が残っていることを全く無視するような報道姿勢は、言語道断というより、寧ろ,滑稽に近い。

 先程見たネット・ニュース(東京新聞)によると、参院選後の12、13日に行われた緊急世論調査で、管内閣支持率が36.3% に急落し、不支持率は52.2%に「倍増した」ということだ。改めて、菅政権への「国民的不信」が証明された恰好だ。いやはや大変なことになったものだ。

                                  (2010.07.13)


<追記> 参院選で「消費税10%引き上げ」を口にして惨敗を喫した菅政権に、救助の手を差し伸べるかのように、IMF(国際通貨基金)が、14日「日本は11年度から消費税を段階的に引き上げるべき」という提言を出したという。これは恐らく、消費税論議を何としても続けさせたいと願う「日本・財務省」辺りの求めに応じて出された声明であろうが、日本に於ける「生活実態」に無知な勧告と言うほかない。「一般勤労者に重くのしかかる増税は景気回復を一層困難にする」という見方こそ、真実に近い。
 IMFなる国際機関がいかなるものかということを示す記述を,以下にご紹介しておきたい。
           
                                  (2010.07.16)


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IMFの在り方を批判するコロンビア大・スティグリッツ教授(2001年ノーベル経済学賞受賞)


 1. 'Electronic Journal' (平野 浩氏)(一部省略)

2008年07月28日
●「スティグリッツの世銀・IMF批判」(EJ第2376号)

 ジョセフ・スティグリッツという米国の高名な経済学者がいま
す。彼は、1993年3月、発足後間もないクリントン政権の大
統領経済諮問委員会の委員に任命され、1995年6月には同委
員会の委員長に就任したのです。
 そして、1997年には世界銀行に移り、2000年1月まで
の3年間、世銀の上級副総裁と主任エコノミストを同時に務めた
のですが、世銀在職中から当の世銀とIMFのあり方について痛
烈な批判を繰り広げたのです。
 何しろ、スティグリッツは、2001年には情報経済学という
新分野での業績で、ジョージ・アカロフ、マイケル・スペンスと
共にノーベル賞を受賞したので、彼による世銀とIMFの批判は
国際的な注目を浴びることになったのです。
 2002年には、スティグリッツは『グローバリズムとその不
満要因』という本を米国で出版し、公式に世銀・IMF――とく
にIMF批判を展開したのです。この本の日本語版は次の題名で
出版されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
        ジョセフ・スティグリッツ著/鈴木主税訳
 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 スティグリッツは、この本のなかで、IMFの推し進めた資本
市場の自由化は、米国の金融セクターのために広範な市場の開拓
に寄与した反面、その本来の使命であるはずのグローバルな経済
の安定には何ら寄与しなかったとしています。さらにIMFは、
G7の債権国の代理者であるとし、貧しい国々が貧しいままであ
るような制度設計をした米国の金融セクターに対する不満を表明
しているのです。
 世銀やIMFは、開発途上国の経済開発に対し、貿易の自由化
資本の自由化、国内の経済の自由化、民営化などのグローバルな
市場経済至上主義を押し付けたのです。すなわち、構造改革とい
う改革の強要が行われたのです。
 しかし、開発途上国にとっては、貿易の自由化による市場開放
は、国際競争力のない産業分野に壊滅的な打撃を与え、雇用体系
を破壊し、資本の自由化は銀行システムが機能していない途上国
に大混乱をもたらしたのです。
 1997年のアジア金融危機でもIMFは被害国の救済に「構
造調整融資」と称して過激な改革と自由化の措置をとることを条
件に融資を行っています。しかし、こうした自由化の押し付けは
無理が多く、かえって被害国の経済を壊してしまう結果になって
いる――スティグリッツはこのように主張しているのです。
 日本は途上国ではないし、もちろんIMFから融資など受けて
いませんが、同じようなことを米国から押し付けられ、やらされ
ていないでしょうか。いわゆる小泉――竹中改革なるものは、ま
さにこのグローバリズムの先兵であるといえます。スティグリッ
ツはこういうやり方を批判しているのです。
 また、スティグリッツは、アジア的とされる日本の縁故主義や
不透明な企業統治についても頭から否定せず、その効用を認め、
当時日本の大蔵省が提案してすぐ米国に潰された「アジア通貨基
金」の発想にも賛意を表しており、日本についてはとても理解が
あるのです。
 スティグリッツは前掲書を書くにあたって、多くの学者や世銀
とIMFの関係者などに聞き取り調査をしているのですが、この
書の「謝辞」のところで、「それらの人たちの助けなしにはこの
本は完成しなかった」として、その氏名をリストアップしている
のです。
 最初はビル・クリントン大統領とジム・ウォルフェンソン世銀
総裁の名前があり、その他に163人の学者、官僚、政治家、言
論人、世銀・IMF職員などの名前が上がっているのです。
 しかるに、その163人中日本人はたったの1名しか上がって
いないのです。それも世銀やIMFとは直接何の関係もない、ス
タンフォード大学での同僚だった青木昌彦氏だけだったのです。
 どうしてこのようなことになるのでしょうか。どうやらスティ
グリッツは、日本人のスタッフとは聞き取り調査すらしていない
のです。これについて、日本人のベテラン正規職員は次のように
見解を述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 スティグリッツ氏が日本側の代表からはまったく話を聞いてい
 ないということは、世銀やIMFの政策討議の場では日本代表
 がまったく重視されていない、プレゼンスがない、ということ
 だといえる。日本代表はイコール財務官僚だから、やはり官僚
 主導の日本のアプローチは国際経済・金融機関の世界では、ほ
 とんど認められていないわけだ。他の主要国はみなトップには
 開発や金融に一家言を持つ学者や論客を送り込んでいる。
        ――古森義人著、『国連幻想』/産経新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに世銀やIMFに派遣されてから、ワシントンで仲間内で
英語や経済学を勉強しているようでは、政策会議でプレゼンスな
どできるわけはないのです。
 金の話と少し離れましたが、世銀やIMFにおける日本人代表
のお粗末な一面を古森義人氏の情報を借りてご紹介しました。か
つて財務官僚といえば、秀才の代名詞であったはずですが、どう
なっているのでしょうか。これでは日本の評価がどんどん下がっ
てしまいます。           ――[金の戦争/35]


≪画像および関連情報≫
 ●大野和基氏のサイトより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「グローバリゼーションは世界の人々に幸福をもたらすはず
  だった。だが、実際にはごく少数の金持ちがますます裕福に
  なって、格差を広げただけだった。そしてこういう結果を招
  いた背景にはアメリカの横暴がある」――2001年、経済
  活動への情報の影響について扱う学問「情報の経済学」の分
  野の功績を評価されて、ノーベル経済学賞を受賞したジョセ
  フ・E・スティグリッツ氏は、グローパリゼーションの「失
  敗」と、その「理由」についてこう説明した。
   http://globe-walkers.com/ohno/interview/stiglitz.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

 2.「 hatehei666の日記」 (一部省略)

ジョセフ・スティグリッツのIMF批判


 ジョセフ・スティグリッツ教授の『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』を読みました。

 彼は2001年ノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者です。そしてこの本も良く読まれています。図書館予約から相当経てから手にする事が出来ました。

 350ページほどの大著ですが、無理なく読めたのは、彼の明晰な論理と分かりやすい言葉、そして訳者である鈴木主税の力によります。

 この経済の書におけるグローバリズムの定義をはてなキーワードで見ますと、「市場主義とアメリカ的価値観・社会システムの合体物を世界的に展開しようとする、『新手の文化的世界支配戦略』 のこと」とあります。正にこの定義に従ってスティグリッツは自説を展開しています。

 ではなぜこのグローバリズムが世界を不幸にしたのでしょうか。

 その正体はIMF(国際通貨基金というのが文字通りの訳。それを繰る国連の機関とも言えるでしょう)や世界銀行だというのです。特にIMFです。それは教授によれば、「世界の安定性を高め、景気後退の脅威に直面する各国が景気浮揚策をとる資金を確保すること」が本来の目標でした。ところがそればかりでなく、米国金融界の利益の為にも行動していたのです。IMF幹部の多くが金融界出身で、その仕事を終えた後、また金融界に「天下って」莫大な給与を得ていたのです。つまりIMFは二重の基準でもって世界に君臨していたのです。それが今日の世界を不幸にした正体だと教授は語っています。

 教授はこの本を書く前にクリントン大統領の経済諮問委員会、そして次に世界銀行にいて、グローバリズムが発展途上国の貧困層に破壊的な影響を及ぼした事をつぶさに見ており、IMFのエコノミストたちにもしばしばその誤りについて苦言を呈していたのでした。

 しかしIMFのエリートたちは、その苦言に対して全く耳を貸さなかったと教授は言っています。彼らは絶大な権力を握っていました。

 イエス・キリストは「目がありながら見えないのですか。耳がありながら聞こえないのですか。あなたがたは、覚えていないのですか」(マルコ8:18)と詰問されましたが、「悪」の権化と化した彼らには通じませんでした。

 教授はまた「市場経済が効率的に働くのはすべての前提条件が満たされたときだけである。ある分野で改革がなされても、他の分野での改革がともなわなければ、むしろ事態はいっそう深刻化するかもしれない」と警告していますが、現在の日本は失業が増えた場合に備える安全網(=セーフティネット)が整っていなかったので、まさに深刻な事態に陥っています。貧困層が続出し、自殺者が増加しています。

 IMFには企業のためのお金なら何億何兆とあるが、一般市民のためのお金はそれよりずっとわずかな額さえないというごうつくばりのスタッフばかりいます。

 教授はこの本で特に発展途上国の悲惨な実態を詳しく述べ、最後の章で「世界を幸せにするグローバリズムの道」を提示しています。

 それは私たちにかすかな希望を与えますが、それよりIMFという機関がいかに恐ろしいものかという印象の方がはるかに頭に残ってしまいました。

 「聞きなさい。金持ちたち。あなたがたの上に迫って来る悲惨を思って泣き叫びなさい。あなたがたの富は腐っており、あなたがたの着物は虫に食われており、あなたがたの金銀にはさびが来て、そのさびが、あなたがたを責める証言となり、あなたがたの肉を火のように食い尽くします。あなたがたは、終わりの日に財宝をたくわえました。見なさい。あなたがたの畑の刈り入れをした労働者への未払い賃金が、叫び声をあげています。そして、取り入れをした人たちの叫び声は、万軍の主の耳に届いています。あなたがたは、地上でぜいたくに暮らし、快楽にふけり、殺される日にあたって自分の心を太らせました…」(ヤコブ5:1−5)。

 かつての信仰大国アメリカは今や不信者に満ち溢れ、キリストの愛を全く失ってしまいました!
by shin-yamakami16 | 2010-07-13 23:18 | Comments(0)



「民主」右傾化:財界が「渇望」する「大連立」

                                 山上 真
 
 参議院選挙を一週間後に控えて、いずれの世論調査結果も、民主党単独では言うまでもなく、国民新党分を入れても、過半数確保の為の56議席獲得は難しいことを示している。ひょっとすると、民主党は50議席にも届かず、過半数議席を大きく割り込む恐れもあるようだ。7月7日付『東京新聞』は、「民主50割れも」と伝えている。
 
 とにかく、菅政権誕生直後の支持率70%近くから、「消費税10%」発言以来、一直線で支持率急落が止まらないのだ。「あれよあれよ」と言う間もなく、この分だと7月11日の選挙日には、「民主党支持率」は20%台に沈み込む可能性がある。そうなれば、これまで「比例区」で強いとされた民主党議席がかなり落ち込むことになる。

 民主党支持者が消費税に嫌気をさして向かう先は、一部は「共産・社民」であろうが、多くは手頃な「みんなの党」ということか。ともかく「消費税反対」を唱えているわけだから。自民党から離れても特に目立った政策が他にあるわけではないこの党の支持率は、10%に上るという異常な伸び方だ。

 菅首相の「消費税引き上げ」論に説得力が無いのは、仮に消費税引き上げが実現しても、氏の言う「財政再建」に何ら繋がらない点にある。それは、米国・英国が「戦争政策」を続けて財政破綻を来しているように、日本も又、世界第4位という、5兆円近い「防衛費」を「捨てる」が如く浪費していることを見れば分かる。「プラス」面があるとすれば、せいぜい軍需産業「三菱重工」辺りを太らせていること位だろう。
 
それに加えて、米軍基地維持費が米国の要請に基づいて野放図な状態だ。先日も、米国防長官ゲイツ氏が、沖縄駐留海兵隊の「グアム移転」を巡って、新たな経費負担を日本側に求めてきたという。これを伝える『東京新聞』は、「少なくとも数百億円規模の上積みを想定している」としている。世界中に軍事拠点を置いている米国は、自国の膨大な財政負担を免れるべく、現地政権に肩代わりを求めようとするのは当然の成り行きであるが、もし日本政府が毅然とした対応を取らなければ、際限のない負担を課せられることになってしまう。それが、「日米安保条約」に基づく義務であるとするならば、この際やはり、この条約を廃止することも考慮するのが当然というものだ。その代わりに、やや時間は掛かっても、極東アジアに於ける緊張緩和の努力によって、「安全保障」システムの構築に乗り出すことが賢明だろう。この動きになれば、沖縄などの米軍基地も存在理由を失うことになる。

 今度の参院選で菅政権が「過半数割れ」になった場合、しばし「呆然自失」した後、他党への新たな「連立工作」が始まるのは当然の動きだ。社民党・「みんなの党」への働きかけが先ず為されようが、問題は両党が「消費税反対」ということだ。社民党には、「普天間・辺野古」も譲れないところだ。民主党は今や、消費税「引き上げ」実現が主要課題になっている訳だから、これら両党とは、結局のところ、連立不可能ということになる。

 残る選択肢は、「敵同士」に見えた民主・自民が、消費税問題では「10%引き上げ」賛成同士である以上、「好むと好まざる」とにかかわらず、財界の「逹っての願い」を受けて連立する運びとなることだろう。勿論、それぞれに反対派を生むであろうが、多数派は「民・自連立」に纏まるに違いない.何しろ、財界逹っての要望であり、「国家の為」であるからだ。それに反対のグループは、他の少数党と組んだりして、所謂「政界再編」が進むことだろう。しかし、国会内で圧倒的過半数を握る「民・自連立」は、強圧的に国民に迫って来ることだろう。先ず、消費税引き上げだ。次に、憲法「改正」をスケジュールに載せることになる。日本の「対米従属」は、更に数十年続くことになるに違いない。

 特に「民主右派」と言ってよい前原、岡田、仙谷、枝野、直嶋、北澤、中井などの面々は、自民党連中と殆ど差が見出し難い程、保守的存在なのだ。

 以上のような長期的展望を描いてみることは、差し迫った参院選挙での投票の仕方について、それなりの示唆を与えるかも知れない。そして、もし上に描いた「構図」を避けたいとするならば、非常に困難なことではあるが、先ず今回の参院選で「民主・自民」を減らして「ねじれ国会」を現出させた後、比較的早期にやって来るであろう衆議院「総選挙」で、社民党・共産党・民主党「良識派」を含む「革新連合」が、無党派市民と組んで多数派を握る他ない。
                       (2010.07.07)

 

<追記 1> 先程見ていた『TV東京』の経済番組で、「ダイワハウス」」の株価が、菅首相の「消費税引き上げ10%」発言以来、大きく下がっていることを取り上げていた。例えば価格3,000万円の新築住宅の消費税が現在150万円であるのに対して、「10%」への引き上げで300万円に達する訳だが、このことが現今不況下で当然「注文減」になることは必至であるからだ。     
                                   (2010.07.07)



<追記 2> 7月9日付『朝日』、『読売』両紙は、「民主党参院当選者は、地方区・比例区合わせても、50に届かない可能性が大である」ことを伝えている。「民主」が比例区でも伸び悩んでいるということは、「生煮え」のまま菅首相が提起した「消費税引き上げ」が、大部分の民主党候補者自身が納得しておらず、民意も圧倒的に「反対」であることの、当然の結果である。これで、選挙後、菅首相に対する「参院選・敗退責任」論が、民主党内部で燃え盛ることだろう。
                                   (2010.07.09)


<追記 3> 今夕5:30からのtbs『報道特集』は、「民主党が目指すもの」というテーマで同党が議員定数を削減しようとしている問題を取り上げていた。菅政権は、少数政党が当選者を出し易い「比例区選出」議員定員を削り、民主・自民両党による「二大政党」定着を図ろうとしているが、これは事実上、少数意見を圧殺して、「消費税」、「選挙制度」、「沖縄問題」、「憲法」などで大きな政策上の違いがない民・自両党による「独裁」政治を横行させる恐れを示唆するものになっている。番組では、このような「民主政権」の行き方は、同党が「模範」としている英国議会が最近「部分的比例代表制」を採用して、少数政党尊重の方向を取ろうとしているのとは、全く逆であることを指摘している。
 一部週刊誌が先日、「菅は独裁を目指している」という大見出しを掲げていたが、満更「誇張」でもなさそうだ。                         
                                     (2010.07.10)
by shin-yamakami16 | 2010-07-07 10:45 | Comments(2)