世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2010年 09月 ( 5 )   > この月の画像一覧

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            英国労働党新党首エド・ミリバンド氏(40歳)



ブレア ‘ New Labour’ への「訣別の誓い」は果たされるか?

                           山上 真


 先日9月25日、英国政治史上誠に希有なことが起こった。
 次の首相に指名される可能性のある労働党・党首選挙で40代の二人の兄弟が争い、事前の大方の予想に全く反して、弟の「左翼活動家」とレッテルを貼られていたエド・ミリバンドが50.65 対 49.35 という僅差で選出されたのである。


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             左から5人の党首立候補者たち


 第一回目の5人の候補出馬から始まった選挙は、少しずつ絞られ、第4回目の選挙で漸く決したのである。最後は大会会場の誰もが驚く劇的な幕切れであった。選ばれた本人も全く予期していなかった「結論」だった。


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 この結末は、英国メディア一般が恐れていたものである。それは、英国「エスタブリッシュメント」(伝統的既成秩序)が最も嫌う「ユニオン」、つまり労働組合員が「左右した」結果だったからである。労働党国会議員の大半は、ブレア、ブラウン両政権の「ニュー・レイバー」路線を継承する、兄の方のデイヴィッドを支持していた。
 しかし、よく考えてみれば、労働組合員と言えども、れきっとした英国市民であることに変わりはない。労働組合員を敵視する側は、「自分たちの利益を守る」為に、ストライキという実力行使の手段を振りかざすことに居たたまれないらしいが、お隣・フランスの労働運動の激しさと較べてみれば、英国のものは「淑女の如き」大人しさなのだ。

 「より豊かな,より平等な、より公正な社会」の建設を標榜するエド・ミリバンドは、労働党「ニュー・レイバー」政権の下で、貧富の格差が拡大し、イラク戦争への加担という「大罪」を犯したと看做す。そして、「野蛮な米国流資本主義」からの訣別を目指している。党首当選直後の挨拶には、米国大統領オバマ氏と同様に、 ‘change’ という言葉を口にして、「新時代の到来」を宣言した。

 ある意味で、今度の労働党・党首選挙は、極めて特徴的だったトニー・ブレア元政権の「親資本・親米」路線からどれだけ距離を置けるかということを計る機会でもあった。その点で、二度に渉ってブレア政権の閣僚を務めたデイヴィッドは、英国「イラク参戦」への反省、「労働党政権がもたらした」経済停滞という環境の中で、不利な立場に置かれていたと言える。

 古参労働党議員の中には、エドの登場を ‘disaster’ (大惨事)だと言う者も居るのは、「エド労働党」が労組の言うが侭になる結果、マス・メディアの袋叩きに遭い、次の総選挙で再び惨敗を喫するのではないかという強い疑念があるからだ。それを充分に意識しているエドは、BBCの解説者アンドルー・マーのインタヴューを受けた際、‘I am my own man’ 「私は誰にも束縛されない人間だ」と述べて、「労組のロボット」になる恐れを強く否定している。

 ミリバンド兄弟の「生い立ち」は次の通りである。
 
 父Ralph Milibandはマルクス主義理論家・政治学者。ポーランド系ユダヤ人として、ナチスの迫害を逃れて、ブリュッセルから1940年ロンドンに移住。LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス)や、リーズ大学で教鞭を執る。1970年代に『ニュー・レフト・レヴュー』誌上で国家論をめぐる論争を繰り広げる。日本語訳著書として、
『現代資本主義国家論』(未来社、1970年)
『マルクス主義政治学入門』(青木書店、1979年)
『階級権力と国家権力』(未来社、1986年)     などがある。

 Ralph は、「ソ連型社会主義」を愛していた訳ではないが、「社会主義は議会主義を通じては決して実現されない」という信念から、彼の息子たちが生まれた時よりずっと先に、労働党を「捨てた」という。(BBC News 9月25日)
1994年死去。
 
 母Marion Kozakも、長らく労働党員として活動し、英国「左翼」の世界で有名な人物という。今度の、家庭を真二つに裂いた党首選挙戦中は、混乱を避ける為に、ニューヨークで過ごしていたということだ。


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 デイヴィッド・ミリバンド(1965年—)はロンドン、リーズ、ボストンで学んだ後、オックスフォード大学コーバス・クリスティ・カレッジに入学し,哲学・政治.経済学を修めた。のち、マサチューセッツ工科大学に奨学生として留学。
環境・食料・農業相(2006-2007)、外相(2007-2010)

 エド・ミリバンド(1969—)は北ロンドンの公立校から兄と同じオックスフォード大学コーバス・クリスティ・カレッジ、更に父と同じLSEで学ぶ。1993年より、労働党現副党首ハリエット・ハーマン、及び前首相ゴードン・ブラウンの下でスピーチ・ライター、調査員として働く。
エネルギー・気候変動大臣(2008-2010)最近までは、‘European Studies’ コースのハーヴァード大学客員講師。「結婚」はせず、「パートナー」Justine Thornton との間に一歳半の息子がいる。

 二人の兄弟はマルクス主義者の父と教師の母という家庭の「政治談義」の中で育ったということだ。結局、父の「赤い血」は弟エドが引き継いだ形だ。

 関心の的は、兄デイヴィッドが果たして争い合った弟の「影の内閣」の閣僚として名を連ねるかどうかという点である。

 エドが労働党党首に選ばれたことについて、保守系『テレグラフ』紙(9月26日付)は早速、エドと同じ小学校に通っていたというロンドン市長ボリス・ジョンソンの「我々が小学校で一緒に習った教訓をエドは忘れてしまったのか?」というタイトルのエッセイを掲載して、当時、英国社会を「混乱に陥れていたユニオン」の罪を指摘し、併せてエドの「労組依存体質」を批判している。

 一方、革新系『インディペンデント』紙(9月27日付)は、

‘Even at a moment of heightened drama, Labour struggles to make a break with the past. In strange circumstances Ed Miliband is its first leader to be elected in a proper contested since 1994. A new generation takes over. Finally the Blair/Brown *duopoly is over’

「高揚したドラマの一瞬でさえも、労働党は過去との訣別をしようともがいている。異常な状況の下で、エド・ミリバンドは1994年以来、本来の競争に於いて選ばれた最初の指導者である。新世代が引き継いだのだ。遂に、ブレア・ブラウン時代という「権力の複占」は終焉を告げた」
で始まる論文を掲載し、エドへの激励の一方、ブレア支持層からの「ねらい撃ち」に対して完璧に備えた出発をするように警告している。

 また、中立系『ガーディアン』紙(9月26日付)のコラムニスト Polly Toynbee 女史は、「エド・ミリバンドは党の前面に若い世代の議員を登用して党を活性化させる機会を得た」として、主な対象を「年収25,000ポンド(約330万円)程度の低所得層にねらいを定めた」大胆な経済政策の展開を提起している。

 今年5月に発足したキャメロン保守・自民連立政権は、GDPの160%に及ぶ財政赤字を減らそうとして、福祉手当など公共サービスの削減、公務員20万人減員、トライデント・ミサイル更新の引き延ばし、新幹線など新交通システムの延期など、可能な限りの支出減らしに努めているが、それぞれの分野で激しい抵抗に直面している。特に、保守党と組んで、「労働者いじめ」に協力している自民党への風当たりは増すばかりで、「副首相」ポストを得たいばかりに党是の「弱者を守るリベラリズム」を捨てたと看做されているニック・クレッグ自民党の支持率は、以前の20%台から、15%程度まで低落している。労働党と保守党は肩を並べて37%である。なお、日本の「日立」が英国新幹線受注に成功していたが、これもキャメロン政権の「歳出見直し」で従来型の改良で済ます見通しとなり、最近菅首相が、その再「翻意」を要請する書簡を送っているようだ。

 昨夜遅く、BBC ‘Radio 5 live’ で、マンチェスター労働党大会場での エド・ミリバンド新党首「就任演説」を聴いた。確かに「現実をそのまま受け入れず、より良い社会を築こう」という言葉などに溢れるばかりの「若い熱情」が感じられ、特に経済政策で「資本の論理」を脱した「新しさ」を期待できそうに思われるが、外交に関しては、「テロを防ぐ為のアフガン戦争継続」という従来の労働党政策を踏襲する方針を示しており、残念ながら新展開は望めそうにない。
                       (2010.09.29)


<注> *duopoly: 「複占」:ある商品について売り手二人だけで市場を独占している状態


<追記1> キャメロン政権は、歳出削減の方針を貫く為に、国防相リアム・フォックス氏の激しい反対にも拘らず、国防予算の大幅な減額を決定したようだ。これで、50億ポンド(約6650億円)を要する二隻の航空母艦の建設や、20億ポンド(約2660億円)かかる核トライデント・ミサイル更新計画が延期又は中止となる。この変更は、ある意味では、連立に参加して「軍備増強」に反対しているニック・クレッグ自民党の「功績」と見ることも出来そうだ。 (2010.09.30)



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<追記 2> デイヴィッド・ミリバンドは、結局、弟の「シャドウ・キャビネット」に名を連ねないことになった。表向きの理由は、「ブレア・ブラウン」時代に見られた「陰湿な政争」を繰り返したくないということのようだ。              (2010.09.30)


<追記 3> エド・ミリバンド労働党・党首誕生後初めての世論調査(Guardian/ICM poll)で、ブラウン前政権発足以来保守党の後塵を拝していた労働党が37%と、「保守」の35%を抜いて優位に立った。自民党は18%。同じ調査で、キャメロン連立政権の「緊縮財政」政策が、43対37で、支持されていないことが明らかになった。 (2010.10.01)


<追記 4> BBC 「名物キャスター」Jeremy Paxman のインタヴューを受けて、エド・ミリバンドは自分が「無神論者」であることを改めて明確にしたが、労働党歴代党首のスミス、ブレア、ブラウン各氏が「敬虔なる」キリスト教信者故に、極めて対照的な英国「国家指導者」になり得る。この事は、右派メディアの攻撃対象として絶好の材料ではあるが、BBC radioなどの聴取者の声を聴いている限り、宗教的雰囲気が希薄化している英国では、影響を及ぼす恐れは余りないようだ。
                                 (2010.10.02)



<資料・写真> The Guardian, The Independent, Daily Mail, Daily Telegraph, BBC News,
Wikipedia 
by shin-yamakami16 | 2010-09-29 11:33 | Comments(0)
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         「釣魚島」(尖閣諸島)沿海で拿捕された中国漁船


「甚大な損失」もたらす菅政権「タカ派」外相登場
  
                                  山上 真

 去る9月7日、東シナ海「尖閣諸島」付近で日本海上保安庁巡視船と中国漁船が「衝突」して、中国人船長が逮捕・勾留されている事件は、「尖閣」領有権を巡る日中間の厳しい対立に発展し、日中友好関係そのものを根底から覆しかねない事態に立ち至っている。「船長逮捕」に抗議するデモが各地で展開されており、一万人規模の中国人観光客が来日を止め、千人の日本・青年「万博訪問団」が招待を取り消されたりして、小泉政権当時の「靖国参拝」問題に発した大規模「反日」運動を凌ぐ勢いを見せている。今日では、中国内には夥しい数の日系企業が展開しており、日本の輸出総額のトップを占めているのは米国を超して中国市場となっているだけに、現下日本の「経済低迷」を顧慮するならば、今度の事件が将来的に及ぼす影響は深刻なものと言わなければならないだろう。


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 ところが、新たに発足したばかりの菅政権の外相前原氏は、「東シナ海に領有権問題は存在しない」と嘯くばかりで、単なる「衝突」事件から「領有権」問題へと拡大して行く一方の現実を直視しようとしていない。日本が主張する「尖閣」領有権が、必ずしも、米国を始めとする国際社会で認知されたものではないことは、今度の事件を巡っての「日中衝突」を伝える海外メディアの報道姿勢からも窺えることだ。


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 『ガーディアン』、『ファイナンシァル・タイムズ』などの英国紙は、今度の「日中衝突」を巡る両国の遣り取り、歴史的背景、現場海域での「ガス田」など資源開発競争について、概ね客観的に経緯を伝えているが、「中国漁船と、進路遮断作戦中の日本巡視船の衝突」事件と、「尖閣諸島領有権についての両国の主張の対立」に関しては、全く中立的であり、日本側の立場を支持していない。むしろ、これまでの外相より ‘hawkish’ (タカ派的)な前原外相の「この地域に領土問題は存在しない」という挑発的発言に注意を喚起させる形になっている。一方、9月19日付保守系『デイリー・テレグラフ』紙は、「この事件は、第二次世界大戦中に中国を占領した日本軍の残虐行為に対して強い感情を抱く中国大衆の憤激を掻き立てている」と記事を結んでいる。



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 仏保守系紙『フィガロ』は、日本側の「中国漁船が故意に巡視船にぶつかって来た」という発表に対して、’bateau de pêche chinois est entré en collision avec deux navires des garde–cộtes japonais ‘ 「中国漁船は日本の沿岸監視船2隻に挟まれるようにして衝突した」という記述をしており、明らかに解釈が異なる。

 米国『ニューヨーク・タイムズ』紙は、9月10日付と20日付の二度に渉ってニコラス・クリストフ記者の論説記事を掲載している。前者の ‘Look out for the Diaoyu Islands’ 「釣魚台諸島に注目して!」と題する記事では、米国民一般に対して、
「皆さんが耳にしたことのない太平洋上のつまらない岩礁を巡って緊張が勃発しているが、耳を傾けていて下さい。と言うのは、いつか将来、中国・日本・台湾・米国にとって醜悪で計り知れない結果をもたらす恐れのある国境紛争なのです」と語りかけている。そして、今回の中国漁船拿捕事件の顛末に触れた後、
「尖閣諸島の領土主権を主張する各国の指導権が『ナショナリスト』に握られた場合、特に日中間の衝突に至った際には、米国が『尖閣』の日本主権を認めていなくても、日米安保条約の規定上、日本に味方をしなくてはならず、現実的にはそうしない可能性が大きいのだが、その場合には、日米関係が破局に瀕することになる」
「ところで、どの国がこれら諸島の領有権をより有利に主張出来るかと問われれば,私見では、数世紀に渉る航海史記録を具備している中国である。1783年の日本の地図でも、これら諸島を中国領としており、『日本領』となったのは、1895年に日本が台湾を奪い取った時が最初である」

 クリストフ記者は、結びに、尖閣諸島を「無国籍」とする考え方も選択の一つとしているが、いずれにせよ、最善策として、日中両国がハーグの「国際司法裁判所」に調停を申し入れるように提起している。しかし、現実的には、この地域が石油・ガス田に恵まれており、解決が困難であることを示唆している。

 同記者の2回目の記事は、10日の論説に対する日本外務省からの抗議に応える形で書かれているが、主眼点は、米国が日中間の領有権紛争に巻き込まれることを強く警戒することに置かれている。

 折しも,久しぶりに目にした日本の『朝日』(9月22日)には、「尖閣」問題についての、やや趣を異にする二つの論説が掲載されていた。社説では、「日本が実効支配する尖閣諸島」と記し、同紙の「菅政権外交を援護する」姿勢を明確に示しているのに対し、19面「オピニオン・私の視点×4」の天児慧氏「脱国家主権の新発想を」と題する小論文では、尖閣諸島を日中などの「共同主権」地域に指定する構想を大胆にも提起しているが、誠に時宜を得たものと思われる。

 ともかくも、如何に天然資源に恵まれた島々とは言え、それらを巡って戦火を交えるといった「愚の骨頂」だけは御免蒙りたい。賢明な政治家の「賢明な選択」を期待したいものだ。
(2010.09.23)


<追記 1> 今晩9時からのNHK「ニュース・ウォッチ9」では、二番目のニュースとして、国連総会に出席中の菅首相と「強硬姿勢」を見せる中国・温家宝首相の動きを追っていたが、ニュース・キャスターが、「尖閣」を何の躊躇いもなく「日本領土」と断言し、如何にも中国が理不尽な振る舞いをやっているかのような言い方をしていたのは、「国営NHK」放送の職員としての「自覚」なのだろうか。
 なお、普段は首相の「国連演説」を、少なくとも一部を欠かさず放映するのに、今日の演説は一切報道しなかったのは、菅氏が日本語原稿での演説中に、「疾病」を、「しつびょう」と読んだ所為だろうか。或は、菅氏演説中の国連会場が「ガラ空き」だった為だろうか。                                              (2010.09.23)

<追記 2> 今日24日、那覇地検が突然、日本巡視船に「故意に」衝突した中国船の船長の釈放を発表したことは,各方面に衝撃を及ぼしている。この決定は、明らかに日本政府主流の意向を酌んだものであろう。例えば、中国の「レア・アース」輸出停止の問題一つ取ってみても、日本の産業界を揺さぶる「死活問題」なのだ。それほど迄に、相互依存関係が進んでしまっていることに無知で、「あの国はヤクザだ」などと「吠えている」のは、「アホな」石原君ぐらいだろう。別の観点から見ると、菅政権は漸く、「尖閣」領有問題で、日本が「国際的支持」を得られていない現実を理解し始めたということだ。中国との関係を深めているEU諸国や、米国さえも、今度の事件の如き「瑣末な」問題で、足を取られたくないのが本音なのだ。                (2010.09.24)


<追記 3> 今朝のNHK「日曜討論」で自民党から共産党まで「尖閣・日本領土」で一致していたが、国民意識が「反中」に傾いていることに合わせた「大政翼賛会」の臭いがぷんぷんだ。中国が主張するだけでなく、国際的に「尖閣諸島」の帰属問題が必ずしも確定していない以上、国際的な裁定の場に提起するべし、という声があって当然である。
 また、テレビ朝日の10時からの番組の中で、これまで「進歩派」面していた東大・藤原「センセイ」が、自衛隊上がりの右翼「学者」に媚びて、「孤立しているのは中国だ」などと宣っていたが、一応一流とされる大学で講じる以上、世界にまともに通じる「国際関係論」を学び直さないと恥ずかしいですぞ、藤原君!                           (2010.09.26)




<写真> Le Figaro, The Guardian, FT
by shin-yamakami16 | 2010-09-23 16:58 | Comments(2)
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          ファルージャでの「誤乱射」事件の犠牲者たち



米軍「特殊作戦部隊4,500人」の未だ続く戦闘行動

                           山上 真

 9月15日付『ニューヨーク・タイムズ』紙が伝える所によると、ファルージャ市近郊の村で、15日、「反政府武装勢力」の指導者と疑われる人物の家屋に対する米・イラク合同軍の急襲中に、7人のイラク人が殺され、4人が負傷したということだ。イラク警察及び住民の話では、死亡者の内、4人は10歳から18歳までの兄弟だった。明らかに、幾度となく繰り返されてきた「誤射事件」のケースだ。


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 米軍筋のe-mail 発表によると、これはイラク軍が計画した「反テロ」合同作戦ということだが、8月31日をもって撤退した筈の米軍「戦闘部隊」が依然としてイラクに留まっていることを示している。

 約50,000人のイラク駐留米軍の内、4,500人がイラク軍と一緒に、「特殊作戦部隊」として、「反政府武装勢力」に対する攻撃に参加している。

 上記ファルージャでの事件は、これまでもよくあったことであるが、米軍当事者の説明と、現地警察・民衆の証言とが全く違っている。前者は、イラク軍の、「テロ分子」に対する作戦を「顧問」として支援中に反撃を受けて応射したということだが、後者は、夜間に米軍ヘリ4機が参加した合同作戦だったと言う。イラク人死者が誰によって射撃されたかについては、明確になっていない。
恐らく、闇の中で突然の反撃を受け、盲滅法に発砲した結果だろう。


 同じ15日には、北部都市モスルでミニ・バスが路傍爆弾に触れて、乗っていた9人のイラク軍戦闘員が死亡し、7人が負傷している。

 イラク連立政権協議は、未だ暗礁に乗り上げた侭で、見通しがまるで効かない。宗教・人種・地域対立を抱えた「統一」の困難さは、2003年の米・英両国による「イラク侵攻」当初から,少なからずの識者によって予測されていたものだ。中近東「地政学」に無知な「超大国」の指導者によって引き起こされた悲劇のツケは余りにも重いと言わなければならない。
                                   (2010.09.17)




<写真> The New York Times, BBC News

 
by shin-yamakami16 | 2010-09-17 06:27 | Comments(0)
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                9月9日 札幌


「世論」操作罷り通る「民主主義国」日本

                            山上 真

 選挙運動終盤を迎えた民主党「代表選」は、東京・大阪・北海道の3会場で、数千から万を超える演説聴衆を集めて大成功に終わった。

 政党党首を決める選挙の演説会で、これほどの盛り上がりを見せたのは、今回は首相を決めるものとは言え、政治史上希有なこと思われる。
 
 いずれの会場でも、熱烈な「小沢」コールが会場を圧倒していることが一目瞭然だった。札幌では、「菅」支持者もちらほら居たようだが、NHK のニュース番組で、カメラが、「小沢」ビラを次から次へと受け取っているのに「菅」ビラは誰も取ろうとしていない場面を一瞬「うっかり」映してしまっているのには、笑ってしまった。番組担当者が上から「叱責」を受けたのではないかと心配だ。

 民放TVは、最初から「菅」支持で凝り固まっている訳だから、上記のような場面を何とかして隠したかっただろう。しかし、致し方なく実像が現われてしまうと、「これは小沢派の『動員』の所為だろう」(TBS)と宣う始末だ。
 
 どこの国でも、民主主義を打ち立てて来たのは、民衆のデモや集会などの直接的な「示威行動」である。そこには、政治参加の熱気と願望が生の形で発揮されるからだ。何の作為も効かないエネルギーが現出する。今回の「代表選」で、活き活きとしたこの場面が見られたことが、日本の民主主義にとって「貴重な成果」と言っても過言ではない。「小沢」立候補によって、この得難い機会に恵まれたことを喜びたい。


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                  9月5日 大阪


 当初、どのメディアでも、「この時期に、何故立候補するのだ?」という、小沢氏の行動を叱責するが如き言説が蔓延っていた。この「厳しい経済環境」の時には、「余計なことをするな」という乱暴な主張である。それに加えて、「短期間で首相を替えるのは、国際的にも良くない」という尤もらしい言訳が充満した。

 今や誰も認めているように、菅氏と小沢氏の政策には大きな違いがある。経済面では、「財政出動」の規模、消費税の扱い方、地方財政への手当など、外交面では、米国との「対等関係」強調の仕方、「普天間・辺野古」および米軍基地についての認識など。これらの問題は、争点として充分に討議され、いずれかが選択されなければならない。だからこそ、小沢氏が「対論」を唱え,立候補したのであった。この当たり前のことに異議を唱える「評論家・記者」が、日本には実在しているのである。誠に呆れ果てる次第だ。

 経団連会長などが、消費税増税推進・法人税引き下げの方向を持つ菅首相を続投させたがるのは当然であるが、彼らは、メディアの「独立性」が乏しい日本では、経営権を通じて直接・間接的に放送・報道内容に干渉し、力を及ぼしている。会長が財界出身の公共放送NHKも、その影響力を免れられない。

 斯くて、「公共・民放」問わずの、凄まじい一大「反小沢」キャンペーンが全国に谺した。小沢氏個人の「政治と金」問題は、今度の政策論議とは全く次元の違う事柄であるが、菅候補自身を含めて、「小沢攻撃」に利用した。更には、最高裁が「タイミング図って」下したらしい「宗男・上告棄却」にこじつけた攻撃が加わった。

 9月11日付『サンケイ』に依ると、放送倫理・番組向上機構(BPO)の「検証委員会」は、10日、TBS、BSジャパンなどの4番組について、「参院選挙の公平・公正性に欠ける不適切な放送があった」として、審議入りすることを決めたということだ。そこには、参院選告示後に、或るタレントが候補者名を連呼する映像を流したTBSの番組が含まれている。
 今回の民主「代表選」に於いても、各TV局、特にTBS報道に於いて、「世論調査」結果を、「民主・サポーター投票日」に合わせて、「誘導目的」で繰り返し「テロップ・映像」で流していたが、このような一方的報道の是非も検証されなければならない。

  また、『東京新聞』、『読売新聞』では、どの位の対象者に当たったか(母集団)を示さずに、「菅支持多し」という「世論調査」の結果を発表していたが、これも、大メディアの作法に似合わない恥ずべき「手口」だ。

 来週14日(火)に民主党新代表・首相が決まる。菅氏、小沢氏のいずれが選ばれるにせよ、極めて困難な仕事が待っている。
 とにかく、現状を肯定することに力点を置く人よりも、定かでないにしても、命がけで「変革」の可能性を生み出す人に賭けたいものだ。  
                            (2010.09.11)



<追記 1> 先程目にした「ネット記事」によると、「民主代表選・予想結果」は次の通りである。
  (O:小沢氏、K:菅氏 数字はポイントを表す)
国会議員 O 520 K 300 地方議員 O 40 K 60
党員・サポーター  O 180 K 120
合計 O 740 K 480

                                 (2010.09.11)


<追記 2> 9月10日付米経済紙『ウォール・ストリート.ジャーナル』は、「日本のキング・メーカーが王位に就こうとしている」と題する、小沢氏についての長文の記事を掲載している。そこには、「嫌われ者」にも拘らず、政界の実力者として多大な影響力を行使し、最近では、大衆に近づいてその印象を変えることに成功しており、今度の選挙でも、現首相にとって替わる可能性を示唆している。また、仮りに首相にならなくとも、大きな政治力を今後も維持するだろうと予測している。
 一方、11日付の『ワシントン・ポスト』紙は、次期首相になる「恐れのある」小沢氏が、米国人について、'Simple-minded'と述べた点を過剰に心配しており、沖縄米軍基地問題の「再交渉」と、中国への日本の接近への懸念を「単細胞的に」表明している。参考の為に、両紙の原文(一部割愛)をご紹介する。
                                   (2010.09.12)


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英国メイジャー首相と小沢氏(1996年)

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 中国胡錦濤主席と

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                ドイツ・メルケル首相と

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                米国クリントン国務長官と

           (いずれの写真も The Wall Street Journal 掲載のもの)


The Wall Street Journal

By YUKA HAYASHI And DAISUKE WAKABAYASHI

TOKYO—Ichiro Ozawa is Japan's longtime leading political power broker, who last year engineered an upset of the party that ruled nearly uninterrupted for half a century. His peers call him the "god of elections." But he's a god more feared than loved.

Gruff and blunt, wielding influence largely out of sight and portrayed in the media as a dark kingmaker, he is to many Japanese a despised figure. It hardly helps Mr. Ozawa's image that he is enmeshed in a campaign-finance investigation.

And yet, in a showdown election on Tuesday, Mr. Ozawa is making a credible run to overthrow a Japanese leader from his own party and seize the prize that has always eluded him, prime minister.

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Bloomberg News
Power broker Ichiro Ozawa has emerged from the shadows to battle for his nation's premiership.

The Go-To Man

1969: Ichiro Ozawa takes seat in Japan's House of Representatives; re-elected ever since.

1989-1991: Secretary-general of entrenched Liberal Democratic Party.

1993: Forms new party that is part of coalition government that briefly ousts LDP.

1998: Becomes president of the Liberal Party, a forerunner of Democratic Party of Japan.

2006: Becomes DPJ president.

May 2009: Steps down amid accusations of fund-raising improprieties.

August 2009: The DPJ takes power in a landslide election observers credit in part to Ozawa's organizing.

February 2010: Prosecutors handling fund-raising probe decide not to indict Ozawa.

April 27: Citizens' panel reinstates probe of him.

June 4: Ozawa quits party post at behest of resigning Prime Minister Hatoyama , who is succeeded by Naoto Kan.

July 11: DPJ loses control of upper house of parliament.

Aug. 26: Ozawa challenges Kan for party president and thus premiership; vote is 14 Sept. 14.

At the age of 68, Mr. Ozawa has emerged from the shadows and launched a charm offensive, flashing smiles at town-hall meetings and making jokes on television talk shows he once shunned.

Mr. Ozawa jolted Japan 2 1/2 weeks ago by announcing he would try to unseat Prime Minister Naoto Kan as president of the governing Democratic Party of Japan, or DPJ, a role that would make him prime minister because of the DPJ's clout in parliament. The audacious move injected new volatility into a political system still adapting to the DPJ's landslide defeat a year ago of the long-ruling conservative party, the Liberal Democrats.

Mr. Ozawa's economic prescriptions—intervention in currency markets to halt the yen's rise, bigger spending and possible new borrowing by an already debt-laden government—have roiled Tokyo's financial markets. He has touched nerves in Washington with a vow to shake up Japanese diplomacy, promising a more "equal" relationship with the U.S. and possible renegotiation of a controversial pact that permits a big Marine base in Okinawa.

Even a defeat could be consequential. A strong second-place showing could bring a newly influential role to Mr. Ozawa—or, if he didn't gain one, lead to a defection from the party by supporters, changing the political dynamic.

A member of parliament for 41 years, Mr. Ozawa is Japan's leading political strategist, a master at working a system he helped build over two decades of upheaval. A lot of his power derives from his prodigious fund-raising abilities. His biggest detractors concede he would offer strong leadership, a contrast to a string of recent premiers widely regarded as weak or indecisive.

Mr. Ozawa is also known for attention-getting remarks. He has been widely quoted in the Japanese press for saying, in November 2009, that "civilizations with an exclusive Christian background are now stuck at an impasse"; and last month that Americans "tend to be simple-minded."

Surveys of eligible voters show the race close, with Prime Minister Kan in a slight lead but with many still undecided and Mr. Ozawa appearing to gain momentum. The brusque, somewhat menacing-looking Mr. Ozawa has gained traction with efforts to soften his image and paint himself as a man of the people.

In a surprise appearance on a live talk show on an Internet site, Mr. Ozawa, sitting straight in a dark suit, chatted with casually clad young scholars and journalists. Topics jumped from labor policy to what book he is reading (a history of the Meiji Restoration period, when Western influences supplanted shogun-led feudalism).

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Associated Press
1996: Mr. Ozawa with Britain's John Major.

"The Internet is great because I can talk to the people directly," Mr. Ozawa said on the site, whose name translates as Smile Live. "Newspapers and TV shows...take just a few words out of the 10 lines I give them and slap together their own stories."

Mr. Ozawa was jovial, his eyes widening. Speaking nearly nonstop, he elicited a message from one online viewer suggesting he take a sip of water.

The eligible voters in Tuesday's party election are about 340,000 registered DPJ members, including ordinary citizens and local officeholders. But a complex formula gives two-thirds of the voting power to just 1%, the 412 DPJ members who have seats in parliament.

They are Mr. Ozawa's base. Many owe their success to him.

His coaching of aspiring members of parliament is intense and relentless. Hisatsugu Ishimori, a brain surgeon turned politician whom Mr. Ozawa guided to a seat in parliament, says Mr. Ozawa demanded a handwritten report every month listing how many hands he had shaken, posters he had put up and fliers he had distributed.



The Washington Post

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'Simple-minded' Americans might want to pay attention to Japan's election
Saturday, September 11, 2010; A16

IT'S NOT ONLY voters in Washington and Maryland who will cast fateful votes on Tuesday. In Japan, a new prime minister could be chosen. If so, Japan, which has gotten into the habit lately of running through one prime minister a year, will toss out the latest incumbent after barely three months.

Americans have reason to care. Japan for decades has been America's most important U.S. ally in Asia, a leading democracy and an economic powerhouse. Its recent political upheavals have limited its global influence and its ability to get its domestic affairs in order. How long Japan continues to punch below its weight could have consequences for both the U.S. and Chinese roles in Asia and beyond.

The choice facing Japan on Tuesday makes the election particularly consequential for the United States. Incumbent Prime Minister Naoto Kan is being challenged by Ichiro Ozawa, a longtime backroom power broker who has dreamed and schemed for decades in hopes of becoming the out-front leader. Exactly what governing philosophy Mr. Ozawa would bring to the job is hard to say, because his professed ideologies have mutated over the years. But in his current incarnation he is less friendly to the U.S.-Japan alliance, and more attracted to China's dictatorship, than most Japanese leaders -- and, according to polls, than most Japanese.

Mr. Ozawa recently referred to Americans as "somewhat monocellular." We couldn't tell you exactly what that means, but we're pretty sure it wasn't a compliment, especially since he added, "When I talk with Americans, I often wonder why they are so simple-minded." Perhaps more important than his prejudices, Mr. Ozawa also said he would reopen negotiations with the United States over realignment of U.S. forces in Okinawa -- an issue that fruitlessly preoccupied and ultimately helped doom Mr. Kan's predecessor, Yukio Hatoyama. Allowing the U.S.-Japanese relationship again to be consumed by the base realignment -- which Japan has now agreed to, twice -- would set back any hopes for the countries to make progress on other important issues.

Public opinion polls show that Mr. Ozawa is out of step with the Japanese majority on these issues of foreign policy. In fact, he is out of step, period: A huge majority would rather see Mr. Kan, who has been prime minister only since June, remain in office.

In this case, however, the Japanese people don't get to decide. The ruling Democratic Party of Japan (DPJ), to which both Mr. Kan and Mr. Ozawa belong, will vote for a party leader on Tuesday, with the winner automatically becoming prime minister. Votes from members of parliament carry the most weight, and many of those politicians were elected with Mr. Ozawa's fundraising and strategic assistance. A survey of party voters in the Yomiuri newspaper on Friday found that the race is too close to call. We hope DPJ officials take a multicellular view as they consider their choice.



<追記 3> 沖縄・名護市議会選挙で、13日未明、基地反対派が圧倒的に勝利し、議会過半数を握ったことは、辺野古基地建設を進めようとしている菅政権にとって大きな衝撃となっているが、この事実を13日夜7時及び9時のNHK ニュースでは一切報道しなかった。基地反対派の前進は「菅氏の方針」を決定的に阻むものだけに、「民主代表選」を直ぐ前にして、何とか「小さい事件」として処理しようとするNHK首脳部の意向を反映したものであろう。こうした「恣意的」報道態度は、視聴者の受信料によって運営されている公共放送の土台を掘り崩すものであることを銘記するべきだ。
 なお、TV朝日夜10時の『報道ステーション』では、今度の「名護市議選」の結果を詳しく報道し、菅首相のコメントも紹介した。このようなメディア姿勢が「常識」であり、NHKがいかに度外れているかを暴露している。これでは、客観・公正報道を旨とする公共放送として、「視聴料」支払いを求める根拠を失ってしまう。
                                   (2010.09.13)


<追記 4> 注目された「民主党代表選」は、マス・メディアの予想通り、菅直人氏が主として地方議員・党員サポーター票を多数取り込んで勝利した。国会議員票はかなり接近しており、今後の「政局」は波乱含みのようだ。これまでの大々的「反小沢」キャンペーンを考慮するならば、小沢氏は善戦したと言える。今後の「菅民主」は、沖縄.経済問題を抱えて、手の平を返したような批判的メディアに曝され、苦難の道を歩むことになる。再び「小沢待望論」が出て来るかも知れない。
                                 (2010.09.14 4:20)


<写真> 共同通信,朝日新聞
by shin-yamakami16 | 2010-09-11 14:11 | Comments(2)


国民「世論」を僭称する「拝米・財界」メディアの哀れな宿命

                                山上 真

 昨日、民主党代表を新たに決める激烈な選挙戦が始まった。事実上、次期首相を選ぶことになるだけに、誰もが少なからずの関心を抱くのは、当然の成り行きだ。

 見る所、言論界は、果たして「政治と金疑惑」の小沢氏が立候補するのか疑問視していたが、そこには、これだけ叩かれているからには、やはり、立候補しないのではないかという「希望的観測」があった。「反小沢」キャンペーンに身を窶してきたメディアとしては、その「成果」に自信を持ち,結局は小沢氏が立候補を断念するだろうと高を括っていたのだ。

 ところが、そのようには運ばなかった。小沢氏は,「正々堂々と」出馬した。驚いた「メディア翼賛」評論家・記者連中は、顔色を失ったようだ。予想が見事に外れた人々の中には、「遅い夏休み」の為かどうか知らぬが、姿を現さなくなった者も少なからず居る。ともかく、ショックがそれほど大きかったのだろう。
 マス・メディアが何故、小沢氏を嫌うのか。それは、既に述べた小沢氏の個人的「問題」というよりも、もっと別の、より重大な「問題」にあることを、メディアは表立って言いたがらない。何故なら、それは、メディア自身の「素性」即ち、「拝米・財界奉仕」の姿勢を明かしてしまうことになるからだ。

 小沢氏が、
*米国依存よりも、アジア、特に中国重視の主張をしていること。
*沖縄普天間・辺野古問題を、米国との「再交渉」によって解決を図ろうとしていること。
*「消費税」論議を棚上げにしてしまうこと。
*既成秩序を「ぶっ壊してしまう」こと。

 以上のような「小沢手法」の中には、メディア関係者が最も恐れている「官房調査費」の実態暴露があるかも知れない。数十人の評論家・記者に、現金などが渡されていたというスキャンダルである。恐らく,日本の言論界を根底からひっくり返す「歴史的事件」に発展するに相違ない。

 最初の「討論会」で、菅氏は小沢氏の政治姿勢を「古いもの」と決めつけたが、菅政権の「消費税」増税路線や、「普天間・辺野古」移設方針が何故「新しいのか」全く理解不可能だ。

 今日2日の「記者クラブ」主催の討論会で、小沢氏の主張する「国民生活が第一」を、『読売』の老記者が「当たり前のこと言うな」と取れる調子で反駁していたが、このことをいつも念頭に置いて、国民生活を重視する政治を実行しようとすることと、「雇用重視」を唱えつつ、実質的に「財界サービス」に現を抜かす菅政権の姿勢とは、大違いであることを、この記者は知らない筈はない。この討論会では、質問者代表の『朝日』の記者も小沢氏に「きびしい質問」を浴びせていたが、過去のTV番組で事実上「菅」支持の立場を明かしている者が、公平な「討論運営」を出来る筈がなく、さながら、「小沢吊るし上げ」の様相を呈していた。しかし、小沢氏が、同氏の「健康問題」などの狡猾な質問にも、見事に対応していたのは立派である。
 付け加えれば、先程の2古参記者は、「官房機密費」に絡む氏名リストに名を連ねているようだ。
 唯、普天間・辺野古問題で、小沢氏が、「日米の既成の約束を守る」ことを述べるだけでなく、もう一歩進んで、「再交渉」を約束して欲しかった。

 折しも,今日の『東京新聞』が報じる所に依ると、何か日米間の問題が起こると直ぐに顔を出す「知日派」の元米「国家安保会議」アジア部長マイケル・グリーン氏が、小沢氏について、「日米関係に打撃を与えた」とし、小沢氏の登場に米国政府が苛立っていると述べたそうである。これは,明らかに、「小沢首相」の誕生の可能性を前にして、これまでやって来た事と同様に、同氏を阻止しようとする米国の意思を露にしたものである。確かに過去に於いては成功した「手口」かも知れないが,いつまでも有効な手段と思ってはならない。米国が日本の政治に干渉可能な時代は終わったことを悟らせねばならない。

 民放TVなどは頻りに、世論調査での菅首相「支持率の高さ」や、欧米メデイアでの「小沢評判の悪さ」を派手に宣伝しているが、それは、小沢氏が実績を着実に積んで行くことで、必ずや説明され、解消される懸念だ。

 今度の民主「代表選」が米国やマス・メディアを通じての日本財界の干渉にも拘らず、国民の利益に沿った選択・決定が「正々堂々と」下されることを確信している。 
                                      (2010.09.02)


<追記 1> 本日8:30過ぎ、TV朝日「スーパーモーニング」で小沢一郎氏が、鳥越氏など幾人かのコメンテイターのインタヴューを受けていたが、そこで小沢氏が述べた注目点は、次の通りである。

 *「円高」問題の解決法としては、外需に頼らず、国内産業の育成を図る。低めの経済成長率でいい。円を海外での資源確保・調達などの為に大いに使えば、一石二鳥だ。
 *雇用の為には、非正規労働者の割合を「法的規制」で減らして行く。企業内の利益分配率を労働者に多くなるように変える。現在は,200兆円もの内部留保があり、多過ぎる。法人税「減税」も再考の要がある。
 *人口減を食い止める為には、欧州などで成功している「子供手当」支給を、マニフェスト通りに実行する。規制緩和して、比較的自由な形の「保育所」、「託児所」を設け、女性が働き易い環境を整える。高齢者の雇用も拡大する。
 *「普天間・辺野古」については、米海兵隊が事実上、日本から去ろうとしており、米国が陸上部隊を日本に置く意味は少なくなっている。米国とは、これら軍事・外交問題について、「対等な立場」で話合って行く。「核の傘」については、現実に存在するが、「敢えて言う」必要はない。

 この番組での雰囲気は、これまでの険しい「小沢像」を打ち消すような、「和やかな」ものであった。                                 (2010.09.03)


<追記 2> 今晩 9:00からのNHKニュース番組に小沢氏が登場し、質問を受けていたが、何せキャスター・解説者側の不勉強、未熟さが目立ち、また、小沢氏の背後に「ぼやけた菅氏の顔」を大きく映し出すなど、極めて「低劣な番組」であった。「菅支持」らしいNHKは、最初から、小沢氏の「政治と金」問題を蒸し返し,長い時間を割いて小沢氏に「弁明」を求めた。また、「消費税増税」支持らしいNHKは、小沢氏に財源の裏付けが全くないかのような質問をし、同氏の具体的な説明によって、厳しい反駁を受けたが、それにも、解説者は、何ら「再質問」が出来なかった。結局、沖縄問題など、より重要な問題に全く質問が及ばなかったのは、意図的な「問答構成」と受け取れる。小沢氏が去った直後に、予め用意していたらしい「批判的なコメント」を加えるなど、何ともぶざまな番組であった。なお、小沢氏も、この「冷たい雰囲気」を察して、NHKを含む「マスコミ」批判をかなり露骨に展開していた。                   (2010.09.03)


<追記 3> 昨日4日(土)新宿駅前で開かれた民主代表選「演説会」は、約3,500人の聴衆が集まった熱気に溢れたものだったが、各メディア、特にTVニュースは、どう言う訳か正確に報道していないようだ。NHKニュースでは、聴衆の様子を殆ど映さず、集まった人々の数にも触れていない。新聞報道では、『毎日』が聴衆人数と、盛んな「小沢コール」が沸き起こっていたことを伝えている。『東京新聞』、『読売』に至っては、この演説会の「実像」を全く伝えていないようだ。やはり、これまでの「世論調査の結果」とはまるで異なる「新宿の雰囲気」に、衝撃を受けて、どうしていいか分らぬ事態に立ち至っている所為だろうか。事実を「ご都合で」報道しようとしないのは、言うまでもなく、メディアの「自殺行為」だ。                   (2010.09.05)              

<追記 4> 今日5日の 7時台から始まった『フジTV』の「小沢・菅」討論は、比較的公平な立場のコメンテイターが参加し、この局にしては良い番組であった。注目されたのは、大蔵省出身の榊原英資氏が、小沢氏の言う「マニフェスト」原則実行は、国債発行などで十分可能だと述べたことだ。


<追記 5> 昨夜11時からのTBSニュース番組に小沢が登場し、インタヴューを受けたが、キャスター・解説者の無礼な態度が目立った「粗悪な番組」であった。局側の「小沢をやっつけよう」という作為と意図が目立ち過ぎ、最初から興がそがれた。こうした局側の前提として、「消費税増税」に否定的な小沢氏を、何とかして阻止したいという願望が先行しているようだ。この番組でも、瑣末な「政治と金」質問に多くの時間が費やされ、普天間など米軍基地問題に全く触れられなかったのは、「沖縄問題に熱心な」TBSの態度が如何に欺瞞的なものかを示している。また、メディアが意図的に誘導して「捏造」した「世論調査」結果を、いかにも「正論」であるかのように掲げて相手に迫る「手管」は、もはや何の効用をもたらさないことを、悟らねばならない。 (2010.09.07)
                                                                                
<追記 6> 9月6日付『ニューヨーク・タイムズ』紙社説が日本の「民主代表選」についてコメントし、「余り政権が替わり過ぎることは日本と世界の為に良くないことだ」とする指摘を、日本メディアは特にクローズ・アップする報道をしている訳であるが、内容を詳しく調べてみると、かなり事実は異なる。
 同紙は、事実上、小沢氏提起の経済政策を支持している。即ち、日本が経済を立て直す為には内需を刺激する為に一層の努力を注ぎ込むべきであるとし、経済推進力としての外国貿易への依存を減らすように勧めている。そして、国民の購買力を拡大する為に,財政的刺激策を維持するべきだと主張する。これは,オバマ大統領の政策と対応している。
 一方、菅氏の「財政赤字を減らすことを主眼にした経済運営」は、不況下では'a bad idea'と呼んで、「消費税10%増税」にも暗に疑問を呈している。
 同紙は、今後の日本の政治が、次の首相の下では「経済・外交一貫性」の為に、長期的継続性を維持するように求めて結んでいる。                     (2010.09.08)             

<追記 7> 「民主党代表選」は、中盤から終盤に差し掛かるに従って、例の如く、メディアによる個人「中傷記事」や、根拠の乏しい「誘導数字」を並べたり、連呼したりの「激しさ」を見せているが、とにかく何としてでも「小沢」を貶めて「首相就任」を阻みたいという企ての点で、「全員一致」の様相だ。つい先程までTV、新聞では共に、国会議員票では「小沢」が「菅」を20ポイント程度リードしているとしていたのが、最近では、『読売』、各民放TV局は、「変化」の根拠を何ら示さず「菅・小沢」共に165人の支持者を獲得し、地方議員・サポーター票で、「菅」有利と一斉に報道している。ところが、『産経』によると、昨夜9日の2回目「菅」支持「決起集会」では、衆参150人出席が期待されていたのに、124人(『毎日』121人)しか集まらず、期待されていた小沢陣営からの「雪崩現象」は起こらなかったという。また、TV朝日の「ワイドショー」で鳥越俊太郎氏が、鳩山氏側情報として、175対145で、国会議員票は小沢氏が優位に立っていると述べた。
 この段階に及んで、「未決定の投票行動」に影響を少しでも及ぼそうとする,なりふり構わぬ、しかしながら「空しい努力」の主体は、政治能力に乏しい「菅」を何とか浮かび上がらせようと意図する「拝米・財界先兵」のマス・メディアだ。               (2010.09.09)            

<追記 8> 今日9日の民主代表選・札幌演説会で,菅氏は法人税率「引き下げ」の方針を表明したが、一方では国民生活に重大な影響を及ぼす「消費税」増税の方向を維持しており、管政権がますます「財界奉仕」の路線を採っていることが明らかになった。日本企業は現在、約240兆円に上る「内部留保」を保持しており、法人税引き下げの理由として管氏が言う所の「国内企業維持」の為というより、「大企業の利潤」を一層増大させるだけで、ますます日本国内の「貧富格差」を拡大させることになるだろう。「円高」問題に無為無策の逃げ道として、「財界サービス」に現を抜かす政権は、いずれ国民の厳しい審判を下されるに相違ない。            (2010.09.09)
by shin-yamakami16 | 2010-09-02 20:40 | Comments(0)