世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2010年 10月 ( 4 )   > この月の画像一覧

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               11月5日 ロンドンの花火 



ガイ・フォークス「議場爆破」未遂事件の「教訓」は如何に


                                   山上 真

英国・ロンドンでは今、「ガイ・フォークス・デイ」と呼ばれる歴史的記念日当日の「歴史的」消防士・ストライキを巡って、大論争が巻き起こっている。


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                10月23日 スト中の消防士たち

 この日の由来について先ず触れておきたい。
 11月5日は、1605年、実行犯ガイ・フォークスを含む13人のカトリック教徒過激派が、当時の政府転覆及び国王ジェームズ1世の暗殺を謀り、イングランド上院議場を爆破しようとしたが、実行直前に露見して失敗に終った日である。この日、英国では、事件に因んだ祭事が各地で開催され、夜遅くまで花火が轟いている。


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 離婚問題のこじれという個人的な理由でローマ教会と対立したヘンリ− 8世は、1534年にローマ教皇庁と絶縁して、自らがイギリス教会の首長であることを宣言し、ここに英国国教会が成立した。
 しかし、彼の死後、熱心なカトリック信徒であったメアリ− 1世は、英国をカトリック教会に戻そうとして、プロテスタントに対する弾圧を行い、 ‘BloodyMary’ の異名をとった。
 続くエリザベス1世は、どの宗派にも偏しない「中道政策」を採って、英国国教会の位置付けをより明確なものにした。
 1586年にスコットランド女王メアリー・スチュアートがエリザベスの暗殺を謀った罪で捕えられ、翌年に死刑が執行されたが、これを機に、1588年のスペインとの「アルマダ海戦」に繋がって行く。英国のカトリック信徒の間では、メアリ−・スチュアートを「殉教者」として称えることになった。
 そのメアリーの息子であるスコットランド王ジェームズ6世は、1603年、イングランド王ジェームズ1世として即位したが、母親と同じカトリック信仰を持つと思われたのも束の間、彼は1604年に各宗派代表を集めて開かれた ‘Hampton Court Conference’ で、英国「国教会堅持」を宣言して、カトリック教徒を甚く失望させた。

 「閉塞状況」を打ち破ろうとして首謀者ロバート・ケイツビーが導いた結論こそが、ウェストミンスター宮殿内にある「議事堂爆破」という前代未聞の陰謀だった。国王のみならず、国会議員の多数を占める国教徒、そして清教徒をも同時に殲滅して国会機能を麻痺させた後、政権をカトリック教徒が奪還し、ローマ教会に従う王国を再興しようというのだ。


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             1605年11月 捕えられるガイ・フォークス


上院議事堂直下の地下室に大量の爆薬を仕掛けて、1605年11月5日の開院式に出席するジェームズ1世、国会議員の多くを一挙に暗殺しようとする途方もない計画は結局、この陰謀を知らせる一通の匿名の手紙と、それに基づく直前の「手入れ」で実行犯ガイ・フォークスが捕えられ、終焉した。過酷な拷問による自白によって事件の全てが明らかになり、加担した13人は皆処刑された。
 この事件を契機に、1606年、「宗教刑罰法」が強化されて、カトリック教徒に対する弾圧は一層苛烈なものとなったという。


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 11月5日は、以後英国では特別な日として記憶され、1859年に廃止されるまで2世紀半にわたって「国民の休日」となった。毎年この日、「ガイ」と呼ばれる人形を市中に曳き回した後、篝火で焼く行事が各地で行われたが、現在では専ら打ち上げ花火を楽しむ祭りとなっている。

 なお、英国では1829年に「カトリック解放法」が布告され、宗教差別は公的には無くなったとされる。

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                  オズボーン蔵相

 「消防士スト」の話に戻ると、この10月20日のオズボーン蔵相演説で、公務員49万人削減、地方自治体予算の3分の1カット、児童手当などの廃止または削減、失業給付の大幅削減、付加価値税(消費税)の引き上げなど、極めて過酷な「緊縮財政」政策が発表された。これに反対する労働者たちは、抗議デモを展開して、既に「年金問題」を巡ってフランスで行われているような全国規模の抗議運動に発展させようとしている。


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 そのような共通課題に加えて、消防士組合の場合は、当局側が提案する「勤務シフト」を撤回させる運動を進めようと闘っている。10月23日には第一波の8時間ストが行われたが、ロンドンで通常150台稼働する消防車の内、この日は27台のみが動いただけだった。

 危険業務の一つとされる消防士の勤務体制は、これまで、
 第1日目  午前9:00 ------午後6:00 (9時間)  昼間勤務
 第2日目  同じ昼間勤務
 第3日目  午後6:00-------午前9:00 (15時間) 夜間勤務
 第4日目  同じ夜間勤務
 第5、6、7日は休日 となっている。

 今度の当局側提案は、昼間12時間勤務を二日続けた後、夜間12時間勤務を二日続けて、4日休みにするというものである。その目的は、夜間勤務を減らして、昼間勤務の間に、「火災予防の為のキャンペーン」活動に重点を移す為という。
 
 今度の争議の本質は、勤務シフトの問題よりも寧ろ、「専門職業」としての消防士に対する雇用当局側の「尊重欠如」と雇用不安定、「契約変更を呑まなければ解雇する」という強硬な態度にあるようだ。それに加えて、政権側の「緊縮財政」政策による賃金凍結・手当圧縮という一般的な「反労働者」的政策が怒りを呼んでいるということだろう。

 キャメロン政権は、「争議」の内容に踏み込むことは避けているが、「11月5日」ストというタイミングについては「挑発的で、向こう見ず」だと非難している。
 消防士労組としては、ストライキの効果が一番大きな時期にやるのが当然だとしているが、スト自体を目的としている訳ではなく、当局側が「正当な要求」を受け入れれば、事前に中止される可能性が十分あるという。

  1605年「ガイ・フォークス」の乱の原因には、当時の政府の「反カトリック」政策という宗教的根本問題が横たわっていたが、今日の「労働者の乱」は、世界的「緊縮政策」という強敵に抗う「国際的な闘い」の一環である。その意味で、英国内ばかりでなく、世界の目が注がれている。
                                    (2010.10.29) 



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             「遠距離通勤するロンドン消防士たち」


<追記 1> 今日29日付『デイリ−・メール』紙は、「海外に住んでいるのに、消防士たちはロンドン居住の為に5,000ポンドのボーナスを要求している」と題する「中傷記事」を掲載した。ロンドン消防士5600人の内、2700人がロンドン市外から通勤しているというのだ。誰であれ、仕事自体に差し障りなければ、どこに住もうと自由の筈なのに、こういう「場違い」攻撃をするのが、大衆紙の常だ。とにかく保守系メディアは「消防士スト」を抑え込もうと躍起になっている。                                            (2010.10.29)


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「11・05スト」参加中のBBC 「花形スター」Martha Kearny, Huw Edwards, Fiona Bruceの諸氏



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 対談相手を「屁とも思わぬ」不遜な態度で「有名な」ジェレミー・パックスマン氏


<追記 2> ロンドン消防士組合ストは、11月5日早朝、実施予定直前に中止された。組合側の要求について、今後の交渉で折り合いが付けられる見通しが立ったことと、 'Bonfire Night' でのストには影響が大き過ぎることなどの為である。
 なお、この日、BBC の'The National Union of Journalists' が大規模な48時間ストに突入した。経営側の「年金縮減」計画に抗議する為である。このストには、花形キャスターも参加し、定例番組の多くが予め録音・録画された番組で埋められている。前日木曜日の「ニューズ・ナイト」を主宰しているBBC名物男Jeremy Paxman は、いつもは次の日の番組予告で終る筈なのに、「明晩はね・・・何が起こるかさっぱり分らんね・・・という訳でお休みなさい 」と告げて番組を閉じた次第だ。
                               (2010.11.05)




<写真・資料> Daily Mail, The Guardian, BBC News, The Daily Telegraph, Wikipedia
 
by shin-yamakami16 | 2010-10-29 12:07 | Comments(0)

「軍事傾斜」の菅政権

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          10月24日朝霞での「観閲式」で満足げな菅首相        



「思いやり予算」・「尖閣」利用の軍拡を許すな

                            山上 真

 各紙によると、24 日(日)に自衛隊「観閲式」での演説で菅首相は最近の「尖閣」問題をめぐる中国の出方に触れ、事実上自衛隊強化の必要と「日米同盟の深化」を強調したという。

 元来、民主党は寧ろ極東アジアの軍事緊張を高めることに批判的であり、その為にこそ、鳩山前首相が「東アジア共同体」構想を打ち出し、小沢一郎氏が「日中友好」の為の様々な努力を重ねて来たのであった。そうした脈絡から見ると、いかに「尖閣諸島」問題が起こったとは言え、菅氏の言動は行き当たりばったりの無責任かつ危険なものと看做す外ない。

 「観閲演説」は、恐らく、最近の管政権が表明している「軍事関係」政策と無関係ではなさそうだ。
 「武器輸出3原則」の緩和の動き、米軍への「思いやり予算」では自民党政権時代より先を行っている。

 前者では、米国以外の国との軍事装備品の共同開発・生産を可能にする方向であり、これは軍需産業界を中心にした財界の要請及び米国政府の意向に沿うものである。手段を選ばず経済復興を狙う余り、今後の大々的な「武器輸出」に繋がる危険な動きだ。今の「民主・国民」連立政権は、「平和憲法」の制約など、まるで顧慮していないようだ。

 後者では、政権発足当初は大幅減額を目指していた筈であるが、「米側と折り合わなかったため」断念、1881億円という巨額な予算を「現状維持」のまま認めることになった。
 菅氏が日頃訴えている「財政再建方針」の「絵空事」は、この一点に象徴されている。

 現在、西欧などの諸国は、軍事支出の重荷に苦しみ、その削減に四苦八苦しているところだ。

 例えば、巨額の財政赤字に苦しむ英国では、キャメロン政権が今後4年間で実質8%の「防衛予算」削減を発表している。「イラク・アフガン戦争」への加担のツケが応えているのだ。
 
 ドイツでは兵員を25万から15万人に減らして、軍事予算・13億ドル削減を打ち出している。
 
 フランスでは同じく、前年度比15%、61億ドル、スペインでは9%、7億ドル以上、イタリアでは10%、17億ドル以上の軍事予算を減らそうとしている。

 このような欧州の動きに対して、米国政府は深刻な懸念を抱いているという。
 北大西洋条約機構 (NATO) で「主役」を担って、最近では「イラン」で事を構えようとし、その軍事費が既に6600億ドル(53兆4600億円)に達しているアメリカにとっては、極めて深刻な事態なのだ。

 日本「防衛省」は、このところ、一機当り40億円以上もする「無人偵察機」3機の米国への発注、数隻の警備用艦艇建造などを企てているという。
 日本は、確かに欧州諸国と較べて、「優等生」として米国には映ることだろう。しかし、その「立派さ」を演じる為に、「消費税」増税などを唱うことは許されない。
 
 今日24日の衆議院議員補選「北海道5区」選挙結果を見ても分かる通り、民心は急速に「民主」を離れている。「自民」がいいからでなく、「先ず国民生活を」という初心を失った「民主」政権に失望した大方の選挙民が、棄権という「選挙忌避」の行動に出ている為なのだ。 (2010.10.24)



<写真> 東京新聞より
by shin-yamakami16 | 2010-10-24 22:57 | Comments(0)
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「琉球王国」・沖縄を蹂躙した「日帝」・「米帝」からの解放を!

                            山上 真

 聊か旧聞に属するが、去る8月発刊の英国『ニュー・レフト』誌上に、これまでに極東アジアの国際関係論を多く書いているGavan Mccormack 氏の、「沖縄問題」を歴史的に論じた長い評論文が掲載されている。そこでは、日本で否定的に「話題の人」となっている民主党・小沢一郎氏について、その「沖縄問題」の認識の正しさ故に、極めて高い評価を下しているので、ここにマコーマック論文の概要を紹介しておきたい。


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 この ‘OBAMA VS OKINAWA’ と題する論文は、先ず、日本の2009年政権交代によって、米国の極東アジアに於けるヘゲモニー(覇権)が衰退し、日本、中国などアジア諸国の「上昇」機運が起きていることを、日本の新首相鳩山氏の次の言葉で表現している。
「イラク戦争の失敗と経済危機の結果、米国が率いるグローバリゼーション時代の終焉を迎えつつある。そして、我々は多極化時代に向かっている」
 こうして、鳩山氏が「友愛」という精神に基づく「東アジア共同体」構想を提起したこと、そしてワシントンとのより平等な関係を築こうとする姿勢を高く評価している。

 論文は1998年の結成以来の民主党の活動経過を述べ、そこでの小沢一郎氏の大きな役割を明らかにしているが、とりわけ、彼が同党の「基本的外交政策」を漠然とした形乍らも策定したことを述べている。それには、アフガニスタン米軍へのインド洋上での自衛隊「給油」作戦、更には、沖縄米軍「基地新設」計画への反対姿勢が含まれている。

 ここで、マコーマック論文は、政治家小沢氏について、次のような賛辞を表している。
 ‘Ozawa is that rare Japanese politician, an effective operator with a shrewd sense of both strategy and tactics.'
「小沢氏は戦略と戦術双方についての鋭い感覚を兼ね備えた誠に希有の日本人政治家であり、凄腕の持ち主である」

小沢氏の生い立ち、政治経歴を説明した後、
 ‘If he has asserted a consistent principle since then, it is that Japan should become a “normal” sovereign state, able to determine its own foreign policy’
「彼が当時から一貫した原則を主張しているとすれば、それは、日本が自身の外交政策を決定できる『まともな』主権国家になるべきだということだ」
とする。

小沢氏が2009年、米国務長官との会見後に、「邪悪なメディアは、過去の汚職嫌疑に基づく反小沢キャンペーンを大々的に展開」し、その結果、民主党党首を鳩山氏に譲ったが、幹事長として、又「影の将軍」として影響力を維持した。
 民主党が社民党と組んで、2009年8月の総選挙で自民党に大勝したことは、小沢氏の組織力に拠るところが大きいと指摘する。
 
 論文は次のように続く。

 自民党が敗北を喫し、鳩山民主・社民連立政権が成立したことはワシントンに大きな衝撃を与えた。とりわけ、就任間もない鳩山首相が、沖縄米海兵隊の「辺野古」移駐計画を見直す方針を示したことが米政府を驚かせた。


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 オバマ政権は、共和党政権時代と変わることなく、ハーヴァード学者Joseph Nye 氏などの主張、即ち、「極東アジアで米軍事力を維持することと、日本自衛隊がより積極的役割を演じるように求める」ことを目指していたからだ。

 米国政府は、あらゆるチャンネルを使って、日本政府に対して「約束を守る」ように圧力をかけたのであるが、マコーマック氏は、ここで、ゲイツ米国防相訪日直後に書かれた『朝日新聞』主筆・船橋洋一氏の文章に注目している。 
 その要旨は、「ワシントンの忍耐力にも限度がある。もし普天間問題が大混乱に陥った場合、日米両国にとって非常に不幸なことになるだろう」ということであるが、この頃を境にして、民主党が分裂し始めたというのだ。一方、米国メディアでは、『ワシントン・ポスト』紙が、「核非拡散」サミットに出席した鳩山首相が「オバマにまともに相手にされなかったこと」を、「最大の敗北者」と揶揄したことを取り上げている。

 結局、鳩山氏は自ら課した期限内での「米国との交渉」を断念させられ、「支持率低下」も重なって「首相辞任」ということになった。次の首相・管氏が直ぐさま自民党政権下での「日米合意」に回帰して、「辺野古」計画を復活させたことで、米国との「より平等な関係を目指す企ては水泡に帰した」と論文は言う。

 マコーマック論文は、この後、沖縄が「琉球王朝」だった頃、日本よりも寧ろ中国との交易を行っていたこと、それ故に、中国的文化・生活様式を代々継承していたことを語る。しかし、1590年代に、豊臣秀吉の「朝鮮・中国への侵略」への協力を断ったことから、「琉球王朝」への「薩摩大名」の侵攻が始まり、1634年以後は、沖縄が「徳川政権・日本」の事実上、植民地化したとする。

 その後の「沖縄・日本支配」時代の過酷さ、そして、米軍管理下の実状が論文で詳述されているが、ここでは割愛しなければならない。論文は、戦後60余年経ても猶、外国軍が日本の巨額な資金援助を受けて「大手を振って」駐留し、騒音を撒き散らし、様々な犯罪を重ねている現実、更には、アジアばかりか、中近東まで沖縄基地から米軍部隊が発進している事実を指摘して、米国の「帝国主義」的世界政策を弾劾している。

 マコーマック氏は最近の沖縄での幾つかの選挙結果、即ち、名護市長選、議員選挙などで革新系候補が勝利し、「沖縄米軍」撤退を求める声がますます大きくなっていることに大きな期待感を表明して、文章を結んでいる。

 以上のような論文が、英国の定評ある「左翼誌」に掲載されていることは、どのような意味を持つのか、考えさせられる。この論文では、日本政治の実状だけでなく、日本「マス・メディア」の奴隷根性丸出しの「対米追従」振りをも槍玉に挙げている。日本の「真の独立」を目指す我々は、先ず「内なる敵」を摘み出すことから始めなければならない。        (2010.10.17)
 
 
<写真・資料> The Guardian, New Left Review
by shin-yamakami16 | 2010-10-17 10:07 | Comments(0)
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   アルカイダ・テロの標的の一つとされるロンドン『ピカデリー・サーカス』


「財政緊縮化」への責任はどこに?

                            山上 真

 現下の欧州は、「アフガン戦争」のツケとしての「テロ脅威」と、向こう見ずな国際的「投機」行為に端を発した経済危機による「緊縮財政」に抗議するスト頻発で、麻痺状態に陥っている観がある。今時彼の地への旅行を計画している人々は、余程の覚悟をして出かけねばならないだろう。

 米国務省は10月3日、渡欧する自国民に対して、「アルカイダによる欧州でのテロ・リスクが高まっている」として、警戒を呼びかけた。交通機関や観光施設が標的になる恐れがあるとしている。

 英国政府もほぼ同時に「フランスとドイツでテロの脅威が非常に高まっている」という警報を発した。


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           2008年インド・ムンバイ(旧ボンベイ)テロ事件


 一方、フランス政府は10月5日、アヴィニヨン・ボルドー・マルセイユの各都市で、「イスラム過激派」とされるグループの一斉検挙に乗り出して、12人を「*ムンバイ型テロ」を企てた罪で逮捕した。彼らは、カラシニコフ自動小銃と弾薬を所持し、少なくとも5つの欧州空港を攻撃目標にしていたという。
彼らはまた、アフガニスタンでの「欧米連合軍」との戦闘に加わる若者たちを募集していたということだ。
 パリでは、先日までに二回、エッフェル塔に爆弾を仕掛けたという騒ぎがあったばかりだ。

 このテロ・グループ取締りの翌日6日、今度はフランス外務省が英国に渡航するフランス人に対して、「公共輸送機関や観光地でのテロ攻撃の恐れが高まっている」とする警告を出して、注意を呼びかけた。

ドイツ政府は最近、自国に於けるテロ脅威は高くないと発表しているが、アフガン戦争に、国内の圧倒的反対論にも拘らず、4,200人もの兵員と戦闘爆撃機などを送り、アフガン現地民に対する深刻な**誤爆事件を誘発させた行動が、イスラム勢力の憎しみの対象にならない筈がない。
       
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              ブリュッセル・EU本部前でのデモ


  去る9月29日、欧州全域から集まった10万人の労働者たちが、ベルギー・ブリュッセルのEU本部前でデモを繰り広げた。それは、銀行や株式トレーダーたちが「無謀な投機行為」によって引き起こした経済危機を、EU委員会が各国政府に対して、「緊縮財政」によって乗り切るように求め、労働者の賃金カット、減員、年金・手当縮小などの犠牲を強いていることに抗議する為である。


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                「財政緊縮」に「ノン」



 英国『インディペンデント』紙が伝える所によると、同日、欧州13首都でデモが繰り広げられ、スペインでは、自動車産業を中心とする労働者数百万人がストに参加して、「国民の祝日」の如くに国全体が静止状態に陥ったということだ。

 ギリシャでは、医師が24時間、勤務を止めて、交通機関が停止した。スロヴェニアでは、「賃金凍結」に抗議して、公共部門の労働者が三日目のストに突入した。アイルランドでは、「途方もない銀行救済」に抗議する人物が ‘Dail’ と呼ばれている国家議事堂の正門をコンクリート・ミキサー車で閉鎖してしまった。


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EUでの失業率は約10% であり、スペイン・ラトヴィア・エストニアの三国では20%に上る。ラトヴィアでは、加えて、教員・看護師・警官など公務員は30%に及ぶ「賃下げ」が実施されているという。

 フランスでは、「年金赤字」解消のために、退職年齢を60歳から62歳に引き上げようとしているサルコジ政権に抗議する大規模ストとデモが、既に300万人規模で展開されているが、この12日には、仏全土の高校生も参加する形で、一層大きな「緊縮財政」抗議の運動が展開されるようだ。


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     「資本主義体制の下では『自由』・『平等』は空念仏に過ぎない」


 資本主義制度の下では、経済活動の上昇と下降が不可避な現象とは言え、常に最も過酷な形で犠牲になるのは、何の生産手段も持たない人々である。過去二世紀に渉って支配してきた経済現象を唯繰り返すだけでは何の進歩もないことになる。この辺で、広範な人間の幸福を実現する為の、新たな「仕組み」を作らねばならない。               (2010.10.08)


<注> *「インド・ムンバイテロ事件」:2008年11月26日から29日にかけて起きた10件の同時多発テロ。外国人34人を含む174人が死亡、239人が負傷した。犯人は「デカン・ムジャヒディン」などと自称する10人から25人のグループで、自動小銃・手榴弾などで武装していた。アルカイダとの関係は不詳。

   **「ドイツ軍・誤爆誘発事件」:2009年9月4日、アフガン・クンドウズ州に駐留中のドイツ軍が、「タリバンに乗っ取られたガソリンタンク・ローリー車」への爆撃を米軍に要請したが、その「誤爆」で民間人多数を含む約100人の死者が出た。事件当初、ドイツ軍当局は「民間人殺傷」の事実を隠していたが、後に誤爆が明るみに出て、軍高官2人辞職。


<追記 1> 仏サルコジ政権の「年金改革」に反対する抗議行動が今日12日、フランス全土で展開され、正午の段階で既に50万人がデモ行進に参加しているという。この日、パリの三分の一、仏全土の357校以上のリセーが閉鎖され、多数の高校生がデモに参加しているようだ。(フィガロ紙)
                                   (2010.10.12)


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              10月14日 パリのリセー「ボルテール校」

<追記 2> 一昨日のストと大デモに引き続いて14日も仏国鉄・製油施設などでのストが行われている一方、全国約550のリセー、レンヌの大学が閉鎖され、デモの主体が学生に移りつつある。この日、「スト続行」問題について、TV F2で、政府代表と労組代表が激論を交わしていたが、焦点は、サルコジ政権側の譲歩が見られない現状では、学生を中心とする運動の 'radicalisation'「過激化」が進むのかどうかという事であり、ジャーナリズムの「懸念」も、この点にあるようだ。
(2010.10.14)

<追記 3> 14日の高校生デモには仏全土で5万人以上が参加したようだ。彼らは、「今度の退職年齢引き上げに依り、若年層の失業率が高まる」ことを主な抗議の理由としている。なお、次の労働者・学生による全国統一行動は10月19日に決まった。           (2010.10.15)


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    15日、仏政府への抗議行動に加わった routiers (長距離トラック運転手)たち


<追記 4> 連日の学生デモと警官隊の衝突で、目に閃光弾を受けた高校生が失明の恐れがある。また、パリ・Argenteuilで婦人警官が負傷したという。これまでに、パリ首都圏の全ての製油所が閉鎖され、新たに長距離トラック組合が抗議行動に加わったということだ。一方、オルリー空港への交通が遮断され、荷物を持った旅行客が徒歩で行き来しているようだ。    (2010.10.15)
  

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            10月12日(火) パリ


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                12日 マルセイユ


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               パリのリセー「閉鎖」


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               リセアン(高校生)のデモ
            


<資料・写真> Le Monde, Libération, The Independent, Daily Telegraph, Wikipedia, Le Figaro
by shin-yamakami16 | 2010-10-08 16:29 | Comments(0)