世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

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                 アフガン「敵対的地域』


拡大する一方の「タリバン支配地域」

                           山上 真

昨年末にも「アフガン情勢」の悪化について書いたが、米国・英国など「連合軍」にとっては、今年もなお一層深刻な「戦況」を呈している。

 12月27日付の仏紙『ル・モンド』は、米国経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』掲載の二枚の「国連秘密地図」を紹介して、これまで「戦闘地域」でなかったアフガニスタン北部まで、タリバンが進出していることを伝えている。


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 ヘルマンド州などアフガン南部・東部地域は、英国・米国軍が長期に渉って特別作戦を続けており、依然として「高度危険地域」にも拘らず、後退にまで至っていないが、北部Kunduz及び西部ヘラトでは、警戒段階が「中」から「高」へとエスカレートしている。この事実について同紙は、

 ‘Ces documents internes à l’ONU contredisent le discours official de la Maison Blanche, selon lequel des “progrès fragiles” ont été obtenus contre les talibans.’ (これらの国連秘密文書は「若干の進歩」がタリバンに対して図られたというホワイト・ハウスの公式声明と矛盾するものだ)
と述べて、オバマ大統領の次のようなアフガン作戦「成功」声明(12月16日)、即ち、
‘We are making considerable gains toward our military objective’
   (我々は軍事目的に向かって相当の前進を遂げている)
に反論している。


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           「アフガン作戦前進」と言うオバマ大統領


 今年はすでに、708人のNATO「国際保安部隊」(ISAF) 兵士が戦死しており、その内、米軍が497人である。

 現在、アフガン全土のISAF部隊は、追加派遣の米軍兵士30,000人を含めて約140,000人が戦闘に参加しているが、タリバンのますます熾烈な抵抗に直面している。

 英国部隊の司令官Sir David Richards は、タリバン側も打撃を蒙っており、過去3か月間に、3,300人以上の武装抵抗勢力が死亡したか、捕えられたと語る。

 一方、国連機関の調査によると、アフガン戦争に巻き込まれた民間人犠牲者は、今年1月から10月までで2,400人、負傷者は3,800人以上に上るという。
 
 一昨日28日、ヘルマンド州Lashkar Gah地区で道路に敷設されたIED(即製爆弾)処理に当たっていた英軍兵士Charles Wood(34歳)は、不運にも爆発に巻き込まれて死亡した。2001年の英国軍参戦以来、348人目の犠牲者となった。今年に入ってからは、彼を含めて102人が死亡している。


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          妻Heatherさんと一緒の在りし日のCharles Woodさん


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                                  (2010.12.30)


<追記> 12月31日付『読売新聞』が伝える、米CNN TV と'Opinion Research'社が30日発表した合同世論調査によると、アフガニスタンで米軍が展開している軍事作戦に63%が反対し、「賛成」は35%だった。アフガン情勢に対する認識をめぐっては、56%が「悪い」と答え、3月時点の調査結果43%を上回ったということだ。これを見ても、オバマ政権のアフガン政策は米国民大方の不信を買っていることが分る。                           (2010.12.31)




<写真> Le Monde, The Daily Mail, The Guardian
by shin-yamakami16 | 2010-12-30 20:41 | Comments(0)
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     クリスマス「訓話」を述べるRowan Williams カンタベリー大司教


注目される英国「改革」政権への辛辣な批判

                        山上 真


 12 月26日付の英国各紙は、Rowan Williamsカンタベリー大司教のクリスマスに因んでの「説教」演説を大きく伝えたが、特に、『デイリー・メイル』紙では、キャメロン政権の「売り物」である‘Big Society’ 政策の問題点を厳しく批判する内容となっている。

 「政府の福祉手当削減は、不当な受給者のみならず、正直で勤勉な貧しい人々に打撃を及ぼす恐れがある」

 「もし現政権の『改革』が導入されるならば、貧困を自分から選んだ訳ではない多くの人々、特に子供たちが深い不安感に襲われるに違いない」

 「いわゆる『大きな社会』構想については、人々は一体どんな具体的投資が社会共同体に為されるのかを知りたいと思っている」

 こう述べて、ローワン・ウィリアムズ大司教は、キャメロン政権の「社会政策を慈善団体や社会的起業家などに委ねる」構想に、疑問を呈している。

 この「保守・自民」連立政権の下で、困窮者の為の「公共住宅」費が縮減され、「働く気のない」人々の福祉手当は無くされ、子供手当も所得度に応じた限定的な支給となった。大学授業料は三倍近くに跳ね上がった。全て、「個人責任の原則」から出た政策の為だ。

 
 これに対して大司教は、

 ‘Hard-working and honest people who do their best really do face problems; so do people with disabilities, with mental health issues or limited mobility.’ (最善を尽くして正直に勤勉に働く人々も確かに様々な問題に直面しているが、障害を持った人々、精神的問題を抱える人々や、行動の自由を奪われた人々も、同様に苦難に直面している)
 
と述べて、社会的弱者への思いやりに欠ける政策を批判している。

 英国現政権が史上最大の「財政赤字」を克服しようとしているのは事実であるが、キャメロン氏の「大きな社会」構想は実質的に、既に「弱者切り捨て」で悪名高い「新自由主義」に基づく、「小さい政府」の裏返しに過ぎないことは明らかだ。要するに、国家の福祉負担を徹底的に減らして、個人責任を「重んじる」行き方である。
 こうして、英国の伝統とされてきた「揺かごから墓場まで」の福祉社会は、完全に潰えようとしている。

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     ハンプトン・コート宮殿でのエリザベス女王「クリスマス挨拶」


 因にエリザベス女王は、「スポーツは共同体を結束させる手段として高く評価されるべき」という、再来年開催予定の「ロンドン・オリンピック」を多分に意識した「クリスマス挨拶」を国民に述べた。これは、国民の間であまり「オリンピック支持」の雰囲気が盛り上がっていないことを危惧しての言及であろうか。

 政治・社会の在り方に、国家・社会の権威者として、時の政治権力から離れた立場で、忌憚ない批判・批評を加えるという伝統は高く評価されていい。それに引き較べて、日本の場合には、こういう「慣習」が全くと言っていい程有り得ないことは、甚だ残念だ。                         
                                  (2010.12.27)


<写真> The Guardian, The Daily Mail
by shin-yamakami16 | 2010-12-27 15:29 | Comments(0)
米軍基地問題:明確になった国民世論

                                   山上 真

 12月16日付『朝日新聞』は注目すべき世論調査結果を発表した。この面接調査は全国3,000人の有権者を対象にしており、回答率は67%という信頼性の高いものである。

 米軍普天間基地を名護市辺野古に移設するとした「日米合意」については、「見直して米国と再交渉する」という意見が59%に上り、管政権の方針通りにそのまま進めるというものは30%に留まったという。米軍基地についての今後の方針については、「国外に移転する」が51%と最も多く、「沖縄県以外の国内」が32%、「沖縄県内の別の場所」が12%だったという。この結果は、管政権が目指す「辺野古移転」が如何に国民の求めるものと「乖離しているか」を如実に示している。

 この際管政権は、国民世論の「真実」を率直に受け止め、改めて米国政府に対して「再交渉」を求めることが「民主主義」の原理を生かす唯一の道であることを自覚するべきである。

 なお、この世論調査公表については、『朝日』が紙面で示した「配慮」の点で、若干気になることがあるので触れておきたい。

 筆者がこの世論調査の件を初めて知ったのは、同紙の電子版であったが、詳細を知ろうと紙面を見ると、最初はどこにその記事があるのか定かでないくらい「慎ましい」扱い方であった。このような記事は、「事の重大性」からして、第一面トップでもおかしくないのだが、その面の下の方に小さく掲載されていた。末尾には、「詳細は24日付の朝刊に掲載予定」とある。

 やや意地悪かも知れぬが、推測してみると、『朝日』論陣は、この世論調査の「意外な結果」に驚いたのではないか。昨今の「朝鮮半島情勢」をめぐる緊張が国民意識に影響を及ぼし、例えば、「現状肯定・日米協調」が色濃く示される様な、もっと違った結果が出ることを「期待していた」のではないか。それが覆って、「現状打破」を厳しく求める結果となって表れたのに対し、殊に最近では「親米基調」の同紙論説陣が「たじろいだ」結果が、紙面の「不思議な扱い方」となったように思われてならない。いずれにせよ、24日朝刊の同紙「詳細」が待たれるところだ。    (2010.12.17)


 
<追記 1> 12 月 24日付『朝日』第10面に既述の世論調査結果「詳細」が掲載されたが、日米両国民の「安保」観などと一緒に編集されていて、現今、焦点となっている「普天間・辺野古」問題の重大性を弱める内容となっている。ただ、コメントしている立大教授李鐘元氏の「60%以上の国民が米国との再交渉を求めている」という指摘が唯一「救い」となっている。                                (2010.12.24) 


<追記 2> 菅政権は先日、保留にしていた沖縄・名護市への「交付金」16億円を、「辺野古」への基地移転への「非協力」を理由に、支給しないことに決めたと言う。これは、民主的手続きで選出された地方行政への「無謀な弾圧」と言うべきであり、「民主」党の名が泣く事態だ。こうした民主党の「自民化」が進むに連れて、同党への支持率が下降していることは明らかだ。 (2010.12.27)
by shin-yamakami16 | 2010-12-17 12:13 | Comments(0)
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正当化されるべき「米帝国」の「乱暴狼藉」暴露

                             山上 真
 
 先日ロンドンで、「ウィキリークス」創始者ジュリアン・アサーンジ氏が「不名誉な罪」に問われてロンドン警視庁に出頭・逮捕されたという。
 しかし、このことで、彼の「偉業」は聊かでも損なわれることなく、横暴極まる世界的権力に対する「果敢な闘争」という大事業は弛まずに展開されるに違いない。


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             ロンドン Westminster magistrates court 前


 今回ウィキリークスが公開を予定している文書は250,000点に及ぶとされているが、既に明らかになった約1,000 点の中で、特に注目されているのは次の諸点である。

* 米国務省が国連事務総長、常任理事国外交官の銀行口座番号・メールなどの暗証番号、更にはDNAサンプルを盗むように米国外交官に指示したこと
* イラク戦争犠牲者約11万人の内、民間人死者が約66,000人に及ぶこと
* 2007年にイラクで米軍「アパッチ・ヘリ」の機銃掃射により、ジャーナリスト数十人が射殺されたこと


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        「乱射・誤射」日常茶飯事の米軍アパッチ・ヘリ


* サウジアラビア政府が米国に「イラン爆撃」を求めていたこと
* ロシアはプーチン氏をトップとする「マフィア帝国」と看做されていること
* 米国政府は中東通信社『アルジャジーラ』をカタール政府の「代弁放送局」と看做していること
* 米国が「テロとの戦い」の上で、特に戦略的に重要であるとしている全世界数百か所の通信・エネルギー・軍事産業・製薬工場などの拠点を明示したこと


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               戦略的重要拠点・スエズ運河


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             ドイツ Ludwigshafen のBASF 化学工場


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                 フランス国内・外重要拠点

            
などであるが、英国関係について見ると、

* 米国外交官は、英国各政権が、「偏執病的」に米国との‘special relationship’ (特別な関係)を維持することに執着していることを「面白がっている」こと
* 英国キャメロン政権は、政権に就く前から、米国からの一層多くの「武器購入」を約束するなどの「親米姿勢」を示していたこと
* 「ロカビー航空機爆破」*事件の犯人が、釈放前に英国の刑務所で病死した場合、リビア・カダフィ大佐が、原油利権など経済面を含む全面的な報復行動を取ることを英国政府が恐れていたこと

などである。

 ウィキリークスは、英国紙『ガーディアン』、仏紙『ル・モンド』、ドイツ『シュピーゲル』紙などと協力関係を結び、内部告発者などからの情報の真偽を調査し、信頼性が得られたものから順次、公開している訳であるが、その協力者は世界中で800人を超えている。今回は米国が極めて激しくウィキリークスの「所業」を非難し、それに応えて、送金サービスのPayPal、Visa、Master Card、サーバー提供のamazon などが一斉に手を引く事態となっているが、このような米国「帝国主義」に対する抵抗運動もネット社会を中心に「世界的規模」で始まっているようだ。


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「情報の自由と真実を語られる権利を信じる故に彼を支持する」と言う「セリブリテ」カーン女史


 ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサーンジ氏がロンドン警視庁に身柄を拘束されるや否や、映画監督Ken Loach、慈善団体会長Jemima Khan女史など著名人がアサーンジ氏の「保釈」を求めて裁判所に集まり、総額200,000ポンド(約2600万円)を用意した。結局保釈は認められなかったが、今後の波状的支援の広がりを示唆する風景であった。

 ケン・ローチ監督は、
「彼のことを個人的に知っている訳ではないが、彼がやっている事は私心の無い公的事業だ。我々を統治している人々の取引の実態を知る権利があると思う」
と語る。

 こうして世界中で、ひたすら「真実」を追求する人々と、米国務長官クリントン女史やジョー・リーバーマン議員に象徴される「民主党」戦争屋の、恣意的情報管理との熾烈な闘いが開始された。      

<注> *「パンナム・ロカビー爆破」事件:1988年12月18日スコットランド・ロカビー上空でパンナム航空機が爆破され、機内の259人と、住民11人が犠牲となったテロ事件。容疑者はリビアの航空職員二人とされたが、一人は証拠不十分で、もう一人も「ガン」罹病の理由でそれぞれ釈放された。

                          (2010.12.09)


<追記 1> ロンドンの高等法院は今日16日現地午後2時頃、アサーンジ氏を「保釈許可」したということだ。「逃亡の恐れが無い」という理由である。高等法院の前にいた数十人の支持者からは、この知らせを聞いて歓声が挙ったという。その一人は「戦争犯罪を暴くことが犯罪になる訳がない」と語っていた。(『インディペンデント紙』より)             (2010.12.16)


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<追記 2> 16日のBBC News は釈放されたアサーンジ氏の意気軒昂な姿を紹介し、「今後も闘う」という同氏の声明を伝えた。BBCは、同氏が反体制運動の英雄としての「声価」が高まる一方だとしている。


<追記 3> 17日の朝 5時、日本のメディアも概ねトップニュースとしてアサーンジ氏の釈放を伝えているが、不思議なことにNHKTVニュースは一切報道しなかった。どういう「配慮」で伝えようとしなかったのか、興味深々だ。                     (2010.12.17)


<写真> The Guardian, The Independent, The Daily Telegraph, The Morning Star,
    BBC Nems, Le Monde, Le Figaro, AP




 
by shin-yamakami16 | 2010-12-09 23:28 | Comments(0)
管政権の「対米盲従」の果ては?

                            山上 真

 例の「ウィキリークス」は、日本政治の重大な内実まで暴き始めた。

 今夜7時のNHK・TVトップ・ニュースは、このところ相次いで米国政府などの機密暴露を続けている「ウィキリークス」が、日本の「武器輸出三原則」の見直しを日本政府に求めていることをウェブサイト上で公開していると伝えた。
 これより先に、『東京新聞』も、この事実を伝えており、それによると、日米が共同開発しているミサイル防衛 (MD) の海上配備型迎撃ミサイル (SM3ブロック2A) について、欧州への売却を可能とするため、米政府が日本の「武器輸出三原則」を変えるように要求しているということだ。

 最近になって、民主党政権が極めて性急に「三原則」に見直し案を同党の「外交・安全保障調査会」でまとめていることを不思議に思っていたのであるが、米国の要求であることを知って、合点がいった。

 民主党はこの「見直し」で、1976年に三木内閣が厳格化して、事実上の「武器禁輸」としたものを180度転換し、一般武器よりも「殺傷能力」が遥かに高いミサイル輸出を合理化しようとしている。

 この事実は、現民主党政権が「自民」より露骨な「反憲法的」本質を内在させていることの証左に外ならない。同時に、この政権がいかに米国政権や、「三菱グループ」など、日本の「武器商人」の圧力に屈し易いかをも明示している。

 管政権の「米国盲従」姿勢は、今後とも、「朝鮮半島」での危険な事態、「沖縄米軍基地」問題など、あらゆる場面で展開されることが予想される。
 そのことで、「日本の平和」が危機に曝されることがないように、この政権が出来る限り早期に終息することを願うと同時に、それまでの間に、万が一にも「愚かな選択」をすることがないように祈るばかりだ。
                 (2010.12.01)

 
<追記 1> 先日の記者会見で、「親米・タカ派」外相前原君は、今回の「ウィキリークス」情報公開を激しく非難していたが、恐らく対米交渉の過程で「思い当たる秘密」があるのだろう。それらが「沖縄」か、TPPか、「武器禁輸見直し」か、或は以上の問題の全てに関わっているのかも知れぬ。
そうでなければ、正当な情報公開を「テロ」呼ばわりするなどという暴挙には出なかった筈だ。
 なお、『朝日TV』(報道ステーション)の「言論人」古館君も、外相と口裏を合わせるように、アサーンジ氏らの活動を「テロ」呼ばわりしていたが、自分らの言論活動の「非力」を棚に上げた、とんだ「お笑い種」だ。
ともかく、今後の展開が「待ち遠しい」。
                                      (2010.12.04)
 
<追記 2> 一昨日管首相は、社民党福島党首との会談後に、「武器禁輸三原則・見直し」を見送る方針を明らかにしたが、どういう経緯があれ、もしこれが守られるならば好ましいことだ。更に進んで、軍事関係費・増額方針を止め、「普天間・辺野古」問題について、米国との「再交渉」に乗り出すならば、まずは「政権存続」の可能性が大きくなるに違いない。    (2010.12.08)
by shin-yamakami16 | 2010-12-01 21:29 | Comments(0)