世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2011年 01月 ( 5 )   > この月の画像一覧

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                  1月28日カイロ市内

              


「急転」に困惑するサルコジ政権・米国・EU諸国

                               山上 真

 一国の「革命」というものは、ほんのちょっとしたきっかけで起こってしまうものの様だ。勿論、その社会の素地には、極度の貧困とか、圧制に由る絶望とかが必ず在るのだが。
 『ニューヨーク・タイムズ』紙(1月21日付)は、チュニジアで起こった、「革命」にまで発展してしまった小事件の発端について、現地取材の詳報を伝えている。

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             「贅沢と腐敗」の象徴 ・ベン・アリ夫妻


 事の起こりは、果物の行商に従事し、7人の家族を養っていた26歳の男性Mohammed Bouaziziが、46歳の婦人警視に「違法営業」を咎められて、その部下の警官との揉み合いの最中に、彼女から平手で顔を打たれたことから、始まったという。彼は恥辱に耐え切れず、塗装用のシンナーを頭から被り、自身に火を付けた。


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 「違法営業」の取締りを免れる為に、普通のこととして、数日分の稼ぎに相当する20ディナール(14ドル程)の「賄賂」を係員に提供することが罷り通っていた。一般にチュニジアでは、どの社会段階でも、汚職と腐敗が蔓延っているということだ。
 しかし、日頃小説や詩を嗜む「インテリ」のMohammed は、手入れの際に賄賂の提供を拒否したのだった。そして、「もめ事」が起きた。
 

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 去年12月17日、チュニジア中央部の都市Sidi Bouzidでのことだ。全身に90%の火傷を負い、病院での治療も空しく、この1 月4日に亡くなったが、その間に、この事件を契機にして起こった反政府デモが首都チュニスまで広がっていた。各地方で14%から30%にも達する失業率・権力による拷問・貧困が常態の社会は一気に暴動状態に陥った。
 西欧諸国が「安定政体」と看做していた独裁政権のZine el-Abidine Ben Ali 大統領は1月14日に国外逃亡した。当初、亡命先をパリにしたかったようだが、流石に仏政府は受け入れなかった。

 昨年12月17日から1月中旬までに、首都チュニスを中心に、確認されただけで78人が警官の発砲などの武力行使により死亡し、約100人が負傷したという。

 1956年までチュニジアを保護領としていた旧宗主国フランスは、「迂闊にも」今度の政変を勃発まで知らなかった。寧ろ、ドイツなど、他のEU諸国と同様に、「独裁」ベン・アリ政権を「文明化された西欧の友人」と褒め称えていた。


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        「愚かな」仏外相・ミシェル・アリオ・マリー女史


サルコジ政権の外務大臣Michèle Alliot-Marie女史と来たら、ベン・アリ大統領が逃亡する3日前に、フランス議会で「ベン・アリ政権にフランス的警備のノウハウを提供する」と述べており、現在、フランス左翼は一斉に、この「愚か極まる」外務大臣の辞任を要求している。
 仏紙『フィガロ』(1月19日付)が明らかにしたことだが、実は、フランス政府は密かに、ベン・アリ政権を援護する為に大量の催涙弾・ヘルメット・盾など「暴動制圧」用の機材をチュニスに送る準備を進めていた。ベン・アリが国外逃亡をしたことが分かり、慌ててシャルル・ド・ゴール空港からの輸送を取りやめたという。

 例の「ウィキリークス」が明らかにしたところに拠ると、チュニス駐在の米国外交官は夙にベン・アリ大統領の「腐敗振り」を掌握して本国政府に伝えていたが、この政権の「イスラム・テロに対する手腕」を評価して問題にしなかった。


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 ベン・アリ大統領夫妻が、「金塊1.5トン」を中央銀行から持ち出して、サウジアラビアに逃亡した後、Mohammed Ghannouchi元首相が暫定政権の樹立に向けて動き出したが、イスラム勢力・左翼など非合法化されていた旧野党は、結局、「ベン・アリ残党」が政権に残っていることを理由に政権に加わらなかった。これは、ベン・アリ独裁政権の「残党一掃」を求めるデモが依然として数千人規模で続いているからである。


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          次に追放される「独裁者」は誰か?


 チュニジアの「国の花」を名に取った「ジャスミン革命」が今後どのように展開して行くか、予断は未だ許されないが、親西欧・独裁政権が続くエジプト・ヨルダン・アルジェリアなどへの「波及」を懸念しているのは、イラン・パレスチナ問題を抱える米国・西欧諸国の指導者たちであることは間違いない。北アフリカ・イスラム圏の均衡状態が崩れてしまうことを何よりも恐れているからである。 (2011.01.23)



<追記 1> 今日1月25日、チュニジア・チュニス、レバノン・ベイルート、エジプト・カイロで大規模な「反政府デモ」が展開されている。レバノンでは、デモの影響で、Saad Hariri首相が辞任して、ヒズボラのNajib Mikati首相が誕生した模様だ。
 カイロでは、「ネット」の呼びかけで約8万人がデモに参加すると見込まれており、仏『ル・モンド』紙によれば、チュニジアの次の「革命」はエジプトで起き、ムバラク政権崩壊に至ることを示唆している。これに対して、エジプト政府は約3万人の警官を配備しているようだ。                                           (2011.01.25)

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          1月25日カイロでの反「ムバラク独裁」デモ


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<追記 2> 1月25日付『ワシントン・ポスト』紙によれば、米国務長官クリントン女史は異例の声明を発表し、「エジプトは中近東に於ける米国の重要な同盟国であり、ムバラク政権は反政府デモにも拘らず安定している。政府・デモ隊共に、暴力を避けるようにして欲しい」と述べた。これは、米政府がいかに最近のチュニジア革命、とりわけ、エジプトの今後の情勢に懸念しているかを示すものだ。                                 (2011.01.26)

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                カイロ市内・1月25日夜のデモ


<追記 3> 米国ABC News(25日夜)によると、エジプトでの反政府デモと警官隊の衝突で少なくとも3人が死亡したという。スエズ市で2人のデモ参加者、カイロ・ダウンタウンで1人の警官が死亡したということだ。デモはアレクサンドリア(2万人以上参加)などエジプト各地に拡大している。(仏紙『フィガロ』、『ユマニテ』などはデモ参加者の死者を3人としている)                                           (2011.01.26)


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     1月25日カイロ市内、催涙弾・放水銃が「弾圧」に用いられている



<追記 4> 『ル・モンド』紙が伝える所によると、チュニジア首都チュニスでは、25日相変わらず数千人の「暫定政権打倒」を叫ぶデモが続く一方、数百人規模の「暫定政権支持」を主張するデモが初めて現われたということだ。しかし、双方の衝突は避けられている模様だ。  (2011.01.26)


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            2011年1月25日米オバマ大統領「一般教書演説」


<追記 5> 25日の「一般教書演説」で、オバマ大統領はチュニジアでの「独裁政権終焉」を成し遂げた民衆の運動への全面的支持を表明したが、30年間独裁を続ける「ムバラク政権」に対して現在展開されている、エジプト「反政府デモ」についての言及は一切無かった。   (20011.01.26)


<追記 6> 「ムバラク独裁」はいよいよ正体を自ら暴露したようだ。英国『タイムズ』紙によると26日、政権はデモ禁止令を布告し、催涙弾などを使用して、カイロ市内中央広場で座り込んでいた民衆約1,000人を逮捕したという。                    (2011.01.27)


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            以上はいずれも26日のカイロの様子


<追記 7> 26日夜のBBC Radio 5 ニュースによると、現在のところ、エジプト政権は強圧手段によって首都カイロの「反ムバラク」デモを封じ込めているものの、スエズなど地方都市では、政府関係建物などが放火されたりして、混乱を極めている。死者は合わせて7人に達している。デモ参加者は、宗派・政治的立場を問わず、あらゆる国民階層から成っており、法律・ジャーナリスト団体も加わっているという。
 「反ムバラク・デモ」の拡大に伴い、エジプトを同盟国として年間15億ドルの援助をする一方、「独裁」には目を瞑って来た米国政府は、ムバラク政権が 'Twitter' などの閉鎖を含む弾圧手段を今回採っていることについて、困惑を深めている様だ。            (2011.01.27)


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     カイロに入ったモハメッド・エルバラダイ前国際原子力機関事務局長


<追記 8>エジプトは今日28日、その歴史に決定的契機をもたらすことになりそうだ。全国的なイスラム宗教行事の後、100万人参加することが予想されている「ムバラク独裁」反対デモが展開されようとしている。このデモには、前IAEA事務局長で、次期大統領候補のエル・バラダイ氏も参加するという。彼は先日メディアに対して、米国務長官クリントン女史の「ムバラク政権は安定している」という認識を示したことを厳しく批判しており、「エジプトに民主主義を打ち立てる必要がある」と述べている。この日に備えて、政権側は未曾有の警備体制を敷いており、既にカイロ、アレクサンドリアなどでは、デモ隊との大規模な衝突が始まっている様だ。昨日、シナイでは、デモ参加者が射殺されている。本日付英国『デイリー・テレグラフ』紙は、エジプトでのこの状況を「革命の淵に瀕している」と表現している。                        (2011.01.28)

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    28日のTV放送演説で、「無辜の犠牲者を悼む」と述べるムバラク大統領


<追記 9> 28日の「エジプト全国デモ」での警官隊・軍隊との衝突で、スエズで13人、カイロで5人のデモ参加者が死亡した。負傷者は1,000人を超えるという。警察・軍には、デモ隊に対して傍観したり、同調する者も出ており、カイロ市内では「解放区」も存在するようだ。軍の主流は今のところ中立的立場を保っている。テレビに姿を漸く現したムバラク大統領は、政府の更迭を発表したが、自らの進退を明らかにせず、国民大方の憤激を買っているようだ。この「ムバラク声明」を受けて、早速オバマ大統領は、「民主化を進める限り、ムバラク氏を支持する」という趣旨の発言をしているが、中近東での米国の立場がいよいよ危いものになっているという「緊張感」を漂わせていた。スエズ運河を抱え、中東中枢部に位置するエジプトの情勢が、世界的に重大な意味を持つことは、ニューヨーク株式が166ポイント急落したことでも分かる。こうして「エジプト革命」は、第二段階に入っている。
 なお、現在の「エジプト情勢」を最も客観的かつ迅速に伝えているのは、'BBC World' と思われる。                                   (2011.01.29)

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                1月29日カイロ中心部


<追記 10> 5日目に入った「エジプト革命」は、「ムバラク声明」後も全国でデモが続いており、首都カイロは半ば「無政府状態」に陥っているという。(BBC、英紙『デイリー・テレグラフ』)
カイロでは、「大統領辞任」を求める5万人規模のデモが展開されており、地方では警察署が焼き打ちに遭っているという。また、二か所の刑務所で暴動が起きているそうだ。
 当局側発表では、これまでにエジプト全土で少なくとも35人が死亡し、その内、10人が警官ということだ。一方、「ロイター通信」は、70人以上が死亡しているという。軍隊の一部は実弾を発砲しているようだ。エジプト政治に詳しい英国人専門家は、「今後の動向は実権を握っている軍の動きにかかっている」と言っている。             (2011.01.29)


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<追記 11> 今日の仏『フィガロ』紙によれば、「反ムバラク」デモ発生以来の死者は102人に達したということだ。また、仏『ル・モンド』紙は、エジプト全土に軍隊が大量に進出しているという。一方、これまでエジプト国内で「生中継」して、中近東全域に配信していた『アルジャジーラ』がエジプト情報省によって活動禁止になったという。これら一連の動きは、「ムバラク政権」が生き残りを賭けて、軍事力を後ろ盾とした「最後の攻勢」に打って出ようとしていることを示すものだろう。
                                   (2011.01.30)


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                 30 日カイロ中心部

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           超低空飛行でデモ参加者を威圧する戦闘爆撃機
 

<追記 12> エジプトでのデモ参加者の死者は遂に150名を超えたようだ。ムバラク政権は、「アル・ジャジーラ」など海外メディアの閉め出しを図る一方、国営TVでの一方的政治宣伝を行っており、全面的な「情報統制」に乗り出している。こうした中、「外出禁止令」を無視してデモに参加したエル・バラダイ氏が、改めて「ムバラク辞任」を求める演説をしたことが注目される。ムバラク政権が「弾圧政策」を一層押し進めようとしていることが明らかになった以上、米国オバマ政権を始めとする西欧政権の、ムバラク政権への「適切な対応」が厳しく問われている。  (2011.01.31)


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             食料不足に苦しむカイロ市民


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              カイロ市中央広場 2月1日朝


<追記 13> 今日2月1日、エジプト全土でゼネストを伴う「反ムバラク」デモが100万人規模で展開されようとしている。このデモ参加者は当然、大統領「宮殿」に向かうものと思われるが、「人民には銃口を銃口を向けない」と声明した軍は果たしてどう出るのだろうか、注目されるところだ。エジプトでは通商・観光・銀行業務が停止しており、大量の失業状態による貧困に加えて、深刻な食料不足が追い打ちを掛けている。多くの人々が「一日一食」の生活を余儀なくされているという。(英国『インディペンデント』紙)生活がぎりぎりの所に追い詰められている広範な人々は、「平和的なデモ」の余裕をいつまで持ち続けられるのだろうか。             (2011.02.01)           

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              2月1日カイロ Tahrir Square

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<追記 14> 昨日の「反ムバラク」デモは、エジプト全土で、「少なくとも100万人」(BBCニュース)が参加して平穏に終った。その最中に、ムバラク大統領の「今年9月退陣」声明が出されたが、「即時辞任」を求める「反ムバラク連合」は、現在もデモを続行している。一方、「ムバラク声明」を受けて、エジプト軍部は「平常の生活に戻るよう」に呼びかけている。
 今や、いつ「ムバラク体制」を終焉させるかという問題に移っており、ここで、この体制を実質的に支えてきた米国・英国・フランスなどの「出方」を世界中の人々が見詰めている。(2011.02.02)



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      2月2日カイロTahrir Square  手前が「親ムバラク」デモ


<追記 15> BBC World TVによると、今日2日午後(現地)カイロ中央広場で、「反ムバラク」デモ参加者と、進入してきた数千人の「ムバラク支持」派との間で衝突が生じ、投石したり、殴り合っている。死傷者も出ているようだ。「反ムバラク」派は金曜日に大集会とデモを予定しており、エジプト国内の「分裂と闘争」が懸念される。                  (2011.02.02)


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<追記 16> BBC ニュースによれば、2日の「ムバラク支持」派による自動小銃などの発砲により、主として「反ムバラク」側に5人の死者と約800人の負傷者が出たという。この事態に鑑み、軍当局者は、「ムバラク支持」派に対して、戦車からの銃撃などの措置を検討しているということだ。                                      (2011.02.03)

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                 2月4日 カイロ

<追記 17> 今日金曜日、三度「ムバラク即時辞任」を求める大デモがエジプトで繰り広げられている。ムバラク大統領は、「辞任したいが後が心配だ」という理屈で拒んでいる。しかし、米国もEU外相も、「即時辞任」要求に踏み切ったようだ。ところが、『朝日新聞』によると、我が「愚かな」外相・前原某は、「エジプト国民の気持ちは分かるが、すぐに辞任というのは現実的でない」という見解を示したという。この男には、「ムバラク独裁」の真実も、今エジプトで起きている「現実」もまるで分かっていないのだ。こういう類いの「政治屋」は、一日も早く「お払い箱」にしければならない。                                  (2011.02.04)                         

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年15億ドルの米国資金で維持される「エジプト軍」、これが「民主化デモ弾圧」に向けられる?

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                シナイ半島北部 AL-Arish

<追記 18> 「ムバラク追放の日」は大統領の「踏ん張り」で不発に終ったようだ。現政権を支えているのは、明らかに強大な軍の存在である。軍の守備で、デモ隊は大統領宮殿に近づくことさえ出来ないようだ。国民多くの不満は頂点に達しており、この折りに、イスラエル向け輸出石油のパイプラインが北シナイで爆破・炎上している。「反ムバラク」デモは、5日も数千人規模で続けられている。
                                  (2011.02.05)




<写真> Le Monde, Le Figaro, Libération,The Independent, The New York Times,
   The Daily Mail, The Times

 
by shin-yamakami16 | 2011-01-23 09:23 | Comments(0)
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         1月21日「チルコット委員会」で証言するブレア元首相



懲りない「好戦」姿勢に反撥する英国世論

                             山上 真

 今日1月21日、ロンドンで開催された「イラク参戦経緯調査」の為の「チルコット委員会」で、ブッシュ前大統領と共に英国をイラク戦争へと導いたトニー・ブレア元首相が再び証言席に座って、各委員からの厳しい質問を浴びた。これは、前回の証言(2010.01.29)での同氏の主張の矛盾点を糾す為のものである。


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         この日、デモを避けて未だ暗い時間に着いたブレア氏


 焦点は、当時の法務長官ゴールドスミス氏の、「イラク参戦は国際法に違反する恐れがある」という指摘に対して、ブレア前首相がどのような対応を行ったかにあった。結局、今日の証言では、ブレア氏は、米国との「共同歩調」を取ることを至上命題として、戦争という選択肢を遠ざける「ゴールドスミス勧告」を無視したということだ。


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            会場前の「イラク反戦』デモ

 この日のBBC Radio 5 は「ブレア証言」を午前11時過ぎから同時中継していたが、当初、矢継ぎ早の質問に答えるブレア氏の声は、やや上擦っていて、「当惑の様子」が聴いていて分かる程であったが、聴聞が進むにつれて、次第に落ち着きを取り戻していたようだ。

 ブレア氏は、「反省・悔恨」の言葉を発することは避けて、現代に於ける「イスラム過激派」の脅威や、イラン「核問題」にまで言及して、軍事行動を正当化し、自らの「イラク戦争責任」を回避する姿勢に終始した。


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 しかしながら、この「ブレア証言」を見守る英国言論界は、左右を問わず一様に厳しい目を向けており、特に近年は、米国の「ユダヤ社会」などを始めとして世界中で講演旅行をして回り、「大金を稼ぎまくる」同氏の生き方を冷たく見ている。   (2011.01.21)



<追記> ブレア氏は昨日の証言の後半で、「多くの生命の損失を深く悲しむが、あの戦争は正しいものだった」と述べて、傍聴席の憤激を買った。                                                           (2011.01.22)


<写真> The Independent, The Daily Mail, BBC News
by shin-yamakami16 | 2011-01-21 21:49 | Comments(0)
「中立・公正」原則の「放送法」違反を正せ

                             山上 真

 菅政権の内閣改造後のNHKの報道内容を視て少なからず驚いた。特に、本日日曜日の、政治関係の報道の仕方が、殆ど野党の「声」を無視した形で、政権側のPRをそのまま報道している姿勢には呆れ果てた。

 民放TVなどは、比較的公正な立場で、前自民党・与謝野氏の政権参加是非などについて、突っ込んだ報道をしているのに対して、NHKの態度は、政権側発表と、野党側批判を8対2という様な不公平な時間スペースで扱う形に受け取れた。

 例えばその典型的な番組は、今日(16日)9時からの「日曜討論」である。筆者は当然のこととして、この番組には、新政権側と、批判の手ぐすねを引いている野党側が激しい論戦を交わすものと期待して、番組の開始を待っていた。開けてみると驚いたことに、出ているのは民主党閣僚の皆さんばかりで、さながら「座談会」か、意見交換会かの趣であった。これでは、番組の名称「討論」が泣いてしまう。全国の視聴者を馬鹿にするのも程があるというものだ。

 恐らくNHK当局が政権に対して「破格の扱い」をしたのは、かねてから支持している「管・民主丸」が、政権発足の冒頭から野党攻勢や「厳しい世評」の大嵐に遭って「沈没」しかねない危機を感じ取ってのことだろう。
 NHK経営委員会で幅を利かせる財界圧力をもろに受けて、「消費税増税・TPP参加推進」に舵を切っているNHKとしては、是が非でも管政権を支えなければならなくなっている観がある。

 ここで注目しておきたいのは、NHK労組「日放労」の動きである。この組合は、本来はNHKの存立原則「中立・公正」報道の為に奮闘努力する筈のものだが、「残念乍ら」菅政権の支持母体となっている「連合」の基幹労組の一つとなっている為に、労使相俟って、時の政権を支え合うという「悲喜劇」的構図になっているのだ。これでは到底、「政治的中立性」など維持出来る筈がない。
 この根源には、本来、労働者・国民の利益・福祉の為に闘わなければならない「労組センター」が、財界・国家体制の「御用」を承る機関に変質しているという大問題がある。少しは、「本当の労働組合」らしいフランス労働総同盟CGTの「爪の垢でも-------」と言いたいところだ。

 このようなNHKに更に付きまとう「暗い影」がある。現経営委員の中に、次の様な「危険極まる」言動を弄する人物・安田某がいるという。

「私は、今の若者に徴兵制はだめとしても、徴農制とか、徴林制とか漁村に行けとか、そういう法律で、テレビの番組も何時から何時まできちんと見るということにすればいいと思います。この番組を見なければ会社に就職させないとか、抜本的に政策を変えないと、日本は本当に大変なところへ行くのではないかと思います。したがって、そういう面でNHKの役割は非常に大きいので、許される範囲を超えるものもあると思いますが、もっときつい方策をとらなければならないところまで来ているのではないか思います」                         ———Wikipedia
明らかに「憲法違反」の上記の如き言動を為す人物が、公共放送の心臓部に居て、経営方針に参加していることは到底許されない。NHK当局は、これらの事実如何を明らかにしなければならない。

 NHKが、特に「大平洋戦争」などの歴史的事実に基づく優れた番組を放映していることは、最近、質的低下一方の「民放」と較べようがない程立派であることを認めつつ、厳しい苦言を呈する次第である。                            (2011.01.16)
by shin-yamakami16 | 2011-01-16 22:44 | Comments(0)
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米国「銃社会」は民主主義と両立するか?

                             山上 真

 米国アリゾナ州第二の都市トゥーソンで起きた銃乱射事件は、これまでも度々起きている乱射事件とは異なる意味を持つ悲劇として、世界に衝撃を及ぼしている。


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 米国での銃乱射事件は、過去約十年間で大きなものだけでも7件に上り、それぞれ一度に4人から33人が死亡している。米国では年間約10万件の射撃事件が起こっており、3万人が死亡している。個人所有の銃の数は2億を超えると言われる。
 

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 米国史での銃による大統領暗殺事件は、未遂を含めて10件あり、その内、よく知られているのは、リンカーン大統領(1865年)とケネディ大統領(1963年)暗殺事件である。議員の暗殺事件は少なく、1978年の民主党下院議員Leo Ryan氏がJonestown(ガイアナ)で暗殺された。


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 この1月8日、アリゾナ州Tucson 北西部のスーパーマーケット‘Safeway’ 前で起きた事件では、22才の犯人が自動拳銃で少女を含む6人を射殺し、14人を負傷させた。去年再選されたばかりの民主党下院議員Gabrielle Giffords さんが「議会報告集会」を開いている最中の出来事であった。彼女が参加者の夫婦に新たな「医療保険法」の説明をしている時に、タクシーで乗り付けた犯人 Jared Lee Loughter がギフォーズ議員にごく近くまで接近し、彼女やスタッフの女性、支持者に対して乱射を始めたという。約30発の弾倉が空になった後、犯人が新たな弾倉を入れ替える間隙に、すでに負傷している女性が犯人に飛びかかって拳銃を奪おうとしたが、巧く行かず、犯人は弾丸を再装着させて射撃を始めた。しかし、そこで幸いにして銃の故障が起きた。もしそうでなければ、更に数十人が被害に遭うところだったという。そこに居合わせた男性も加わって、犯人は漸く取り押さえられた。


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                犯人Jared L. Loughter

 事件現場から僅か10分程の所に住む犯人ジャレッド・ラフナーの身元は直ぐに判明した。近くの「コミューニティ・カレッジ」に通っていたが、教室や図書館で暴力事件を起こし、中退していた。教師の中には、授業中に背後から撃たれるのではないかと心配していた人もいたそうだ。英国『デイリー・メイル』紙によれば、犯人はヒトラーの『我が闘争』や、ジョージ・オーウェルの『動物農場』を好んで読んでいたという。


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         至近距離から頭部を撃ち抜かれたGiffords 下院議員


 左頭部を撃ち抜かれたギフォーズ議員は、医師の適切な処置で一命を取り留める見通しであるが、彼女が「シナゴーグ」に時々通うユダヤ教信者であり、イスラエルを訪れたこともある事実が、事件にどう関わるのかは未だ不明である。

 今度の事件に関連して、米国・全国紙は、「保守的風土」が特徴的なアリゾナ州の、政治的に「特異な」雰囲気を問題視している。南部国境をメキシコと接していることから、不法移民を強制追放するなどの「厳しい移民法」を布いているほか、民主党議員への「乱暴狼藉」、妨害行為が跡を断たないようだ。
 

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前共和党副大統領候補Sarah Palin女史の'website':ギフォーズ議員を「打倒」の「標的」としていた


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       次期共和党「大統領候補」を目論むペイリン女史

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          2008年 米軍訓練基地でのペイリン女史


 アリゾナ選出の共和党上院議員・前大統領候補マケイン氏が、「米国政治史上、最も恥辱的な事件であり、決して許されることではない」として、事件を厳しく論難しているのは、この前の大統領選挙で副大統領候補として共に戦ったSarah Palin 女史が、例の共和党「過激派」'Tea Party Groups’ を率い、アリゾナ州でも ‘Don’t retreat; reload’ (退かないで、弾を込め直しなさい)というやや「危険な」な呼びかけをして、民主党ギフォード議員などに対抗していた経緯があるからだろう。


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 この事件について筆者が最も心配するのは、「銃社会」米国の、参加型民主主義の行方である。直接的に民衆に混じって交流しつつ、政治を身近にするという行き方が困難になるのではないかと心配するのである。もし犯人、或は、そのグループ(もし存在すれば)が、そのような「威嚇」を狙っているとすれば、誠に深刻な事態と言わねばならない。それこそ、米国民主主義の「葬送」となりかねないからだ。                         (2011.01.10)
 


<追記 1> Gabrielle Giffords 下院議員は民主党内で中間派に位置し、例えば「銃規制」問題では、アリゾナ州の「銃を隠し持つ権利」を支持して、自らも所持していたという。今度の事件に遭い、幸運にも生存出来て意識を取り戻せた時、果たして「銃規制反対」の態度を維持するであろうか。
                                 (2011.01.11)

<追記 2> 1月10日のABC TV ニュースは、犯人ラフナーが無職なのに5,000ドルもする自動拳銃を使って犯行に及んだ不可解さを指摘している。一方、ニューヨークを拠点とする 77WABC Radioの解説者は、事件の背後に、共和党'Tea Party'を動かすSarah Palin女史の存在を指摘し、犯人がこの団体の一員であるとしている。                  (2011.01.11)
 

<追記 3> 今日12日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、事件前に幾度か警察が今度の事件を起こした犯人Jared Loughter宅を訪れていたという。しかし、どのような事情での訪問かは未だ不詳である。犯行当日の「警備体制」の適切さ如何も疑問が生じるところだ。ここに来て、米国のラジオの「トーク」番組では、犯人像の件に加えて、「銃規制」の問題がクローズ・アップされている。右派系'FOX Radio' さえも、かなり客観的に、米国に於ける「銃所持」が世界的にも支持されていない現実を指摘していた。 (2011.01.13)


<追記 4> 1月13日オバマ大統領は、現地アリゾナ大学体育館での追悼演説で、'civility'(市民としての礼節)の大切さを説いて、再び銃を用いた悲劇が起こることがないように国民に訴えた。一方、ひん死の重傷を頭部に負っていた下院議員ギフォーズさんは、初めて目を開いたということだ。
(77WABC Radio News) (2011.01.14)



<写真> The New York Times, The Washington Post, Los Angeles Times
The Daily Mail, The Times
by shin-yamakami16 | 2011-01-10 23:01 | Comments(0)



「新しい日本」の為の大胆な「提言」

                            山上 真
 元日の新聞「社説」を見て、これほど呆れたことはない。
 各社揃って、例のTPP、「消費税」増税支持のオンパレードである。

 一貫しているのは、日本の危機を救う為には、国際競争の為の「バスに乗り遅れる」という選択は日本にないという主張である。

 そして、日本農業がTPP加盟によって受ける打撃は、加盟せずに産業界が受ける打撃と較べれば、取るに足らぬ「微小」なものだという主張が続く。

 そこには、国民生活の根本を揺るがす「食料自給率」確保、そして「食の安全」保障という、国民の「生存権」への配慮の視点が全くない。

 あるのは、自動車・電器・機械工業など主要産業の輸出拡大を目指す財界への盲目的支持と、それを頼りにする菅政権への肩入れ姿勢だけである。

 勿論、消費低迷で購読率低下に喘ぐ新聞界は、「産業興隆」の結果齎されることが期待される「広告料」収入の増大に希望を繋ぐのは致し方なかろう。

 しかし、だからと言って、国民生活を直接的な危機に陥れるTPPなどという「米国農業救済・日本農業破綻」の愚策を支持して良いというものではない。米国肉牛の「狂牛問題」、「農薬汚染」問題に対処できるのかをはっきり言うのが責任ではないか。
 
 これら各紙が、外国農産物の「洪水的」輸入の齎す、日本農業の「壊滅的打撃」について全く語らないのは偶然ではない。この事実は、彼らが最も秘匿したい大問題であるからだ。

 新聞業界は、財界に殊更おもねって、管政権の「法人税引き下げ」に文句も言わず、米軍への巨額な「思いやり予算」にも反対せず、メキシコ・カンクンのCOP 環境会議での日本代表「京都議定書・裏切り」*にも不平さえ言わなかった。

 各紙「口を揃えて」賛成の「消費税」増税については、今後の「財政赤字」問題について、例えば英国での新聞がよく主張するようなことだが、
 庶民への増税を言う前に、何故世界で有数の規模となった「軍事支出」を減らせと言わないか?
 何故、膨大な皇室費を減額せよと言わないか?
 何故、「法人税引き下げ」の前に、約220兆円にも及ぶ企業「内部留保」を取り崩せと言わないのか?
 何故、銀行役員などの何億円というボーナスを減らせと言わないのか?

 ここで、「新しい日本」を築く発想として、次の諸点を「大胆にも」提起しておきたい。
 
 *工業製品の輸出に依存するシステムは限界があり、拡大を目指すべきでな  
  く、国内市場の開発・拡大を。 
 *大・小規模に応じた農業拡大・品質の高さによる輸出。
 *医療・介護従事者の大増員・システム規模拡大。 教育職員の大増員。  
  不定期・派遣雇用の解消。
 *中国・ロシア・南北朝鮮・東南アジアとの経済・文化交流を全面的に拡大。    
 *アフリカなど発展途上国への長期的な支援、経済協力拡大。 
 *領土問題の「国際的な場」での解決。憲法上、武力による解決を完全に放
  棄する。
 *「防衛・軍事」支出を半減させる。「敵」を作らない外交に終始する。  
 *「日米安保」の解消と、沖縄「日・米」軍事基地の全廃を具体化する。

 以上のような「原則」に基づいたジャーナリズムは、必ずしも「夢想」ではなく、戦後少なくとも暫時は生きていた筈なのである。    (2011.01.02)


<注> COP「京都議定書・裏切り」:11月30日、COP16(国連気候変動枠組み条約締結国会議で日本政府代表は、「米中などが加盟せずに地球温暖化を進めているのに、何故日本が条約に縛られなければならないのか」と述べて会場の顰蹙を買い、環境NGOは、交渉を後退させたとして「化石賞」に日本を選んだ。
by shin-yamakami16 | 2011-01-02 21:20 | Comments(0)