世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

<   2012年 06月 ( 3 )   > この月の画像一覧

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         6.29首相官邸前「原発再稼働・反対」デモ ー NYT



国民利益擁護と、財界・「御用」メディア排撃の為に

                                  山上 真

 民主・自民・公明の「野合」の結果としての消費「増税法案」の帰趨がいよいよ近づいている。
 
 日本財界の根本的利益を確保することが主目的の「反国民的」増税法案は、財界の走狗たるマス・メディアの助けを借りて、遂に国会上程に至ったのである。

 各メデイアは、民主党からの反対・棄権者を、やれ40だの、やれ60だのなどという「希望的数字」を並べて、如何にも増税法案に対する反対勢力が衰退しているかの印象を及ぼそうとする努力に腐心していた。

 そこには、後藤某だの、伊藤某だの「政治」評論家が居り、小沢氏が「如何に悪質で、非国民か」を具体的事実も示さず、恐らくTV局側の「要望」を受けて、述べ立てていた。特徴的なのは、各局とも、それらのいい加減な言説に対して異論を差し挟む事を一切しないのである。「民自公」合意を支持する、全くの宣伝放送なのである。

 NHKの場合は、一応「公正報道」の装いを取るものの、例えば街頭インタヴューでの意見を紹介する際に、政権支持者の声を多く採用するなどして、「傾き」を露骨に見せている。そこには、国民世論6割以上が「消費増税」に反対している事実を覆い隠す意図が込められている。

 NHKの最近の報道で、最も弾劾されねばならない事実は、6・22「反原発」首相官邸前「4万人デモ」を全く報道しなかったことだ。6月25日の国会委員会の議論の中で、この大デモのことが取り上げられて、初めて知った国民も多かった筈である。如何に「政権寄り」とは言え、国民の生活に関わる重要な事実を報道しないという態度は、公共放送としては失格であり、高額な「視聴料」など到底求めることは出来ない。

 さて、今後の「消費増税」国会の展開についてだが、日本財界と、その御用メディアに泡を吹かせ、国民生活を守る大義の為には、是非とも、真の野党勢力と共に、民主「良心派」が協力して、参議院での「増税廃案」を実現しなければならない。

 その為には、先ず小沢氏グループと、他の「反増税・民主」人士が共闘して「野田政権」不信任案を用意し、野党勢力の協力の下に、政権を追い込むことが最も実行可能性大なりだ。「自・公」の本音は「解散・総選挙」のようだから、この方向を断り切れまい。

 もし、民主「良心派」が本当に「消費増税」を阻止したいなら、「政局」への忌避を優先すべきでなく、民衆の生活を守る為の「実効的」な行動が求められている筈である。 (2012.06.26)

 
<写真> The New York Times

                  <追記>

1. 「民主・小沢」を個人攻撃する為に、大新聞『読売』が小沢氏の妻の「離縁状」などを大きく掲載して、「三文新聞」の「真価」を遺憾なく示したことは、特記されて好い。これらのメディアが文字通り「手段を選ばず」消費増税・反対派を貶めようとした結果が、却って造反派を大きくしただけで終ったことは、体制側の「悲喜劇」に違いない。

2. 経団連会長・米倉某が「増税案」採決前後に二度に渉って声明を出して、その反対派を誹謗し、政権側などを激励した事実は、「消費増税」実施が日本財界の「至上命令」であることを露骨に暴露したものである。「国民の為」などと宣う野田・民主、自民などは、実は巨額な資金拠出を狙う IMFと日本財界の「使い駒」に過ぎないのである。 (2012.06.27)

3. 6月28日付『毎日新聞』世論調査に依れば、消費増税の今国会での成立を「望まない」と答えた人は63%に上り、「望む」は35%にとどまったという。この調査結果は、一連の世論調査の中でも最も如実に、国民世論の「反増税」感情を反映したものである。野田首相が「民主主義の徒」であるなら、この際きっぱりと「増税断念」を決めるべきだ。
 なお、この「毎日調査」で注目されるのは、「三党合意」に加わった公明党は、その支持層の65%が「増税」を支持していないことである。恐らく、この党の指導部はそのことを知っているのだろう、昨日筆者の住む近辺を、時期外れの同党「街宣車」が何かをがなり立てていた。「支持離れ」の危機感から出た行動に違いない。 (2012.06.29)

4. 6月29日付『ニューヨーク・タイムズ』紙は、同日東京「首相官邸」前で繰り広げられた15万人規模の「大飯原発再稼働・反対」デモの様子を大きく掲載した。そこでは、これまで大きく意思表示することのなかった一般日本人が、産業界の一方的要請を受けて、何ら「安全性」の根拠もなく原発再稼働に踏み切った野田政権に対する、激しい抗議の声を挙げ始めたことを伝え、この運動は止まることを知らぬものに発展するだろうと結論付けている。ー<原文・参考資料> (2012.06.30)


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              1機102億円 F35ステルス戦闘機

5. 野田政権は29日、航空自衛隊の次期主力戦闘機として、1機当り102億円もする最新鋭ステルス戦闘機'F35' 4機購入する契約を米国政府と結んだという。最終的には42機、整備費用など合わせて総額1兆6千億円以上に上るようだ。一方、同日、総事業費3兆円に及ぶ整備新幹線3区間の着工認可を国土交通相が出したという。
 野田首相は、「消費増税」強行の理由として、「危機的国家財政は一刻の猶予もない」からと言っているが、その日を生きるのにも苦しむ多くの国民を他所に、「人を殺すこと」しか目的が無い兵器を、途方もない金額で買い込む理由を説明しなければならない。新幹線導入で、*その沿線住民が地方鉄道という便利な交通手段を失うことになる一方、ゼネコンが潤うばかりの、「国家財政赤字」を無視した「巨額投資」の理由を説明しなければならない。 *注ー<参考資料5>
(2012.06.30)


                  <参考資料>

1. 『サンケイ』ニュース

【民主分裂】自民、小沢氏造反で「話し合い解散」に黄信号 不信任案どう対応
2012.6.26 23:17
 民主、公明両党との信義に基づき社会保障・税一体改革関連法案に賛成した自民党。法案成立後の「話し合い解散」に向け、一歩前進したかに見えるが、民主党の小沢一郎元代表らの大量造反により、谷垣禎一総裁が描いたシナリオには黄信号がともった。

 「自民党の主張を全面的に反映させ修正合意し、衆院通過したことは『決められる政治』の実現に向け、大きな前進だった」

 26日の衆院本会議後、谷垣氏はまるで与党党首のように胸を張った。その上で「参院でも協力する用意はあるが、民主党が体制を立て直し、造反者をきちんと処分することが前提だ」と断言。「政策面と政権基盤の双方で政権担当能力の喪失はますます明らかだ。国民の信を問う必要はますます強まった」と早期解散もちゃっかり要求した。

 政権担当能力を失った政党を支えながら、早期解散を求めるのは矛盾する。小沢氏らが民主党にとどまるのか。新党を結成するのか。その動きが見えないため戦略を絞り切れていないのが実情なのだ。

 「小沢切り」は自民党のかねての要求でもある。民主党が分裂すれば、政局の主導権を握り、消費税増税を成就させた上、内閣不信任決議案をちらつかせながら解散に追い込むことができると踏んだからだ。

 ところが、小沢氏に同調する造反者は自民党の予想を大きく上回った。小沢氏が新党を結成し、「消費税増税阻止」を掲げて法案成立前に内閣不信任案を提出すると、自民党も厳しい立場に追い込まれる。

 「法案成立までは応じない」と自民党が否決に回れば、内閣を信任したことになり、その後内閣不信任案を使って解散を迫る手法は使いにくい。逆に不信任案に同調すれば谷垣氏の悲願でもある一体改革法案は闇に葬り去られ、衆院選になれば、民主党とともに「増税談合勢力」のレッテルを貼られ、集中砲火を浴びることになる。

 しかも9月に総裁選を控える自民党では「民主党との協調路線のままで衆院選は戦えない」との声が日増しに高まっている。法案成立後、「谷垣降ろし」が一気に噴き出すことも十分あり得る。(佐々木美恵)

© 2012 The Sankei Shimbun & Sankei Digital

2. 6月27日付『東京新聞』

消費増税 衆院可決 政権交代が終わった日
2012年6月27日 朝刊

 消費税率引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革関連法案は二十六日午後の衆院本会議で民主、自民、公明三党などの賛成多数で可決、参院に送付された。消費税増税法案の採決で、民主党では小沢一郎元代表や鳩山由紀夫元首相ら五十七人が反対し、十六人が棄権・欠席した。元代表は当面は党に残留しながらも、離党・新党結成に踏み切る意向を示唆。民主党は事実上の分裂状態となった。消費税増税への反対の世論が根強い中、野田佳彦首相はこうした民意に耳を傾けず、今国会中の成立を目指す意向を表明した。
 二〇〇九年の夏が、はるか昔に感じられる。一二年六月二十六日は、政権交代が終わった日だ。
 国民の圧倒的な期待を受けて政権を獲得した民主党はこの日、消費税増税の関連法案をめぐり、事実上の分裂状態に陥った。政権交代のけん引車だった小沢一郎元代表と民主党政権の初代首相・鳩山由紀夫氏を含む五十七人が反対するという、過去に例をみない事態。野田佳彦首相ら執行部も元代表らも、民主党に寄せられた約三千万人の民意を分断させてしまった罪は大きい。
 首相は党が割れるのを覚悟の上で、衆院選では約束しなかった消費税増税を実現しようとしている。そして衆院選で戦った自民、公明の両党と組む「疑似大連立」に踏み込んだ。
 民主党を押し上げたのは、霞が関と癒着して劣化した自民党政治に代わり、国民が主役の政治を実現してほしいという国民の期待だ。だが、期待はすぐに失望に変わってしまった。マニフェストの主要政策は、ほとんど結実していない。その理由について民主党は、財源確保の見通しが甘かったことを上げるが、もしそうならば、霞が関の既得権にもっと切り込む道もあったはずだ。だが野田政権はその道を取らなかった。政権を取り、自民党時代から続く「主権在官」の体質に染まってしまったのだろう。
 政権の変質は消費税増税以外でも、ひっそりと進む。原子力基本法、宇宙航空研究開発機構法を改正。原子力と宇宙は平和利用に限るとの理念を捨て、軍事利用への道を開いた。自民党と連携し、そのタカ派的な体質まで引き継ぐようになると、どれだけの国民が想像しただろうか。
 民意と無関係なところで政治が動いている。正すのは、私たちの一票しかない。そのためにも、次の衆院選まで、政権交代が終わった日のことを記憶にとどめておく必要がある。 (関口克己)
<社会保障と税の一体改革> 高齢者に偏りがちな社会保障制度を子育て世代に広げ、安定財源確保のための税制改正を進めるとした取り組み。現在5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることが柱。3党は6月21日に関連法案の成立で正式合意。関連法案は26日に衆院を通過した。

3. 6月29日付『日刊ゲンダイ』

小沢新党「支持率15%」は低いのか
【政治・経済】

2012年6月29日 掲載
民主党だって 自民党だって 15%
<これからどこが上向くのかが問題>

「小沢出て行け」なんて怒鳴っている民主党執行部の連中は、「ウーン」とうなっているのではないか。朝日新聞と共同通信が28日公表した世論調査で、小沢新党の支持率が“高かった”からだ。
 世調は朝日、共同とも、消費税増税法案が衆院で可決された直後の26~27日にかけて実施された。それによると、「小沢新党に期待する」が朝日で「15%」、共同では「15.9%」だった。
 この結果を受け、大マスコミは相変わらず、「期待しないが8割」とネガティブキャンペーン一色だが、この見方は大間違いだ。同じ調査で、民主党の支持率は「17%」「17.1%」、自民党は「15%」「22.1%」だった。「小沢新党の期待」=支持率と見れば、民・自の支持率とほぼ拮抗しているのだ。
 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。
「『15%』という数字は、既存政党に不満を持ち、仮に小沢新党が出来れば、まず確実に投票する人たちです。支持政党なしが増える中で、この数字は大したものです。確かに小選挙区で戦う状況は厳しいかもしれないが、比例は十分当選ライン。小沢さんのコアな支持者は、自由党時代からの人たちが多い。これは少数でも政治理念を追求する――という姿勢に共感した人たちです。今の政治状況とソックリだし、こういう支持者がいるから小沢さんは強いのです」
 つまり、小沢新党の「15%」は最低限の支持率でありまだまだ上がる可能性が十分にあるということだ。
 それにしても、立ち上がってすらいない「小沢新党」への期待感を調査すること自体、異常だし、その結果をことさら強調してマイナスイメージを煽(あお)るメディアって一体何なのか。財務省の先兵として、そこまでして小沢新党を拡大させたくないのなら、四の五の言わず、「朝日は小沢を殲滅(せんめつ)します」と一面トップで宣言すればいい。それだけの話だ。

4. 6月29日付『ニューヨーク・タイムズ』紙 ー「東京で数万人の人々が原発再稼働に抗議した」

The New York Times
June 29, 2012
In Tokyo, Thousands Protest the Restarting of a Nuclear Power Plant
By MARTIN FACKLER

TOKYO — Shouting antinuclear slogans and beating drums, tens of thousands of demonstrators gathered in front of the prime minister’s residence on Friday, in the largest display yet of public anger at the government’s decision to restart a nuclear power plant.

The crowd, including women with small children and men in suits coming from work, chanted “No more Fukushimas!” as it filled the broad boulevards near the residence and the national Parliament building, which were cordoned off by the police.

Estimates of the crowd’s size varied widely, with organizers claiming 150,000 participants, while the police put the number at 17,000. Local media estimated the crowd at between 20,000 and 45,000, which they described as the largest protest in central Tokyo since the 1960s.

Protests of any size are rare in Japan, which has long been politically apathetic. However, there has been growing discontent among many Japanese who feel that Prime Minister Yoshihiko Noda ignored public concerns about safety this month when he ordered the restarting of the Ohi power station in western Japan.

Ohi was the first plant to go back online since last year’s accident in Fukushima led to the idling of all of Japan’s 50 operational nuclear reactors, which supplied a third of the nation’s electricity. Three reactors at the Fukushima Daiichi plant melted down after a huge earthquake and tsunami knocked out crucial cooling systems.

Mr. Noda said he ordered the restarting of two of Ohi’s reactors to avoid power shortages that could cause blackouts during the sweltering summer and also cripple industry. However, political analysts have warned of a public backlash after opinion polls showed that two-thirds of Japanese opposed the restart, with many saying that the government had failed to persuade them that the plant had been made safe.

On Friday, many of the protesters complained that Mr. Noda was trying to take Japan back to its political business-as-usual of powerful bureaucrats and industry executives making decisions behind closed doors. Some described their outrage over the restart decision as a moment of political awakening, saying they were taking to the streets for the first time.

“Japanese have not spoken out against the national government,” said Yoko Kajiyama, a 29-year-old homemaker who carried her 1-year-old son. “Now, we have to speak out, or the government will endanger us all.”

“To restart the nuclear plant without ensuring its safety is crazy,” said Naomi Yamazaki, 37, another homemaker and first-time demonstrator. “I know we need these plants for power and jobs, but I don’t trust the authorities now to protect us.”

Organizers said a such mistrust has led to a quick growth in the size of the protests, which have been held every week since late March. The protests began with a few hundred participants, but rose into the thousands after Mr. Noda’s restart decision, said one organizer, Misao Redwolf, a illustrator based here in Tokyo.

Tetsunari Iida, director of the Institute for Sustainable Energy Policies, an energy policy group based in Tokyo, said the protests reflected wider discontent toward the government, which many say failed to protect public health after the accident, and then rushed to get the country’s reactors back online.

“There is anger and a loss of confidence in the government,” Mr. Iida said. “This is an irreversible change, and I expect this type of movement to continue.”

For his part, the prime minister seemed unfazed by the protests. “They’re making lots of noise,” Mr. Noda remarked to reporters as he left his office for his private quarters.

While noisy, the protesters on Friday demonstrated Japan’s penchant for being well organized and fastidiously polite. In many places, they kept passages clear for pedestrians and stood in neat lines along sidewalks. When the protest ended at 8 p.m., organizers quickly dispersed participants using megaphones, with hardly a scrap of garbage left behind.

Hiroko Tabuchi contributed reporting.

5. 6月30 日付『朝日新聞』

長崎新幹線「ノーサンキュー」 在来線沿線住民、恨み節

 九州新幹線・長崎ルート(長崎新幹線)が10年後に全線開業する見通しになった。国にお金がないなかで、便利になるのは大都市間のみ。わずかな時間短縮のために新たな新幹線が本当に必要なのか。取り残される形の並行在来線の沿線住民からは、うらみ節も聞かれた。

■在来特急本数激減で「犠牲」

 「消費税増税のどさくさに紛れての認可。我々を切り捨ててでもやらなきゃいけないのか」。佐賀県鹿島市に住む久原正之さん(72)は、やりきれない思いだ。地元・肥前鹿島駅を通るJR長崎線は特急が1日約25往復走るが、開業後は約5往復に減る見通しだ。

 2007年、工事凍結を求める市民グループ「なし?会」をつくった。政権交代後も民主党政権に期待をつなぎ、10年には4965人分の署名を提出した。

 ところが、署名提出後はなしのつぶて。「民主政権は『見直す』と言うが何も変わらない。タチが悪い」

 「5千億円を投じ、我々を置き去りにしてまで造る必要があるのか」。前鹿島市長の桑原允彦さん(66)も無念さを口にした。

 長崎線を走る特急かもめを、存亡の危機にある「絶滅危惧種」と名付け、異議を唱えてきた。長崎新幹線を走るフリーゲージトレインは、ほかの新幹線ほどは速度が出ず、九州新幹線のように山陽新幹線へ乗り入れられるかどうかもわからない。「こんな新幹線のために犠牲になると思うと残念でならない」

 佐賀駅から博多駅に通勤・通学で在来線を使う人も多い。特急で35分だが、新幹線でも8分短縮されるだけだ。約10年間、福岡・博多の職場に通う太田清之さん(49)は「今のままで全く困らない。料金も上がるだろうし、いずれにしてもノーサンキューです」。
by shin-yamakami16 | 2012-06-26 22:34 | Comments(1)
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      2012年6月17日 政治勢力地図:赤系が左派、青系が右派


一方で、「排外」風潮に乗じる「FN進出」の危険性

                                   山上 真

 フランスでは、大統領選挙で「左翼」オランド氏が僅差で当選した後、ほぼ一か月後の6月10 日、577議席を争う国民議会総選挙が行われた。この第一回投票では、各選挙区の過半数の票を獲得した36人の候補者が当選したが、その内25人は社会党を中心とする左翼議員で、右派は11人であった。支持率は左翼陣営が46.8%で、右派の34.1%を大きく引き離した。この数字に基づく推定では、第二回目の選挙で、左翼陣営は293〜323議席を獲得すると予想され、場合によっては社会党単独で過半数を握る可能性が出ている。オランド政権は既に、18、19歳から働き始めた人々の「年金支給年齢」を60歳に引き下げる政策など、迅速な「選挙公約」実現を図っているが、今後は一層安定的に実行できることになる。


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 第一回投票での「見所」は何と言っても「極右・国民戦線」FN 党首マリーヌ・ル・ペンと直接対決すべく、仏北東部「Pas-de-Calais第11選挙区」に「落下傘降下」した「左翼戦線」メランション元大統領候補の戦いぶりだった。歴史的に移民が多く、産業が衰退して23%という高失業率の選挙区でのこの両者の対決は、例えば英国『ガーディアン』紙が長文の『ルポ』記事を記載する程、国際的にも注目されて、連日両候補の周りには「選挙民より多い」位のマス・メディア取材陣が随いて回っていた。

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 この選挙戦の中で、メランション候補は終始、外国人への ‘haine’ (憎しみ)と訣別し、「友愛と分ち合い」の思想を人々に説いて回った。他方ル・ペンは、「あなた方がメランションに投票したら、*マグレブ人に投票したことになる」と公言して回った。更には、FN 一派の仕業と見られるが、メランション候補のポスターの顔をヒトラーの似顔に変えるという悪辣な工作までやったのである。

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 選挙結果は、メランション候補が「汚職に塗れた社会党」の候補者に僅かに及ばず、得票率21%の第三位に甘んじた。トップは42% を超える得票をしたル・ペンであった。メランションの大胆な企ては成らなかった。この選挙区では、42%という棄権率も目立っているが、「選挙に行っても無駄だ」という絶望感を象徴しているのだろうか。

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 総選挙・第二回投票を目前にしてのメディアの関心は、仏中西部ラ・ロッシェルの「Charente-Maritime 第1選挙区」に「落下傘降下」して突如立候補した社会党大物女性候補セゴレーヌ・ロワイヤルと、社会党中央から「除名された」現職候補オリヴィエ・ファロルニ氏の「同士討ち」の帰趨である。事が大きくなったのは、ロワイヤル女史がオランド大統領の「元・事実婚妻」である為、盟友だったファロルニ氏を捨ててロワイヤル支持に回ったことと、「現・事実婚妻」バレリー・トリエルバイレール女史が最近のツイッターで、ファロルニ氏は「無私で地元民に奉仕してきた立派な人」と讃えて、支持を表明したことである。この現職大統領周辺の「ねじれ」は、地味な地域活動を無視して、大物候補を優先する大政党に有りがちな「不手際」の結果に過ぎないが、「反乱候補」ファロルニ氏を「保守」UMPが支持することを表明し、次点だった同氏が一躍「当選濃厚」の世論調査結果が出るに及んで、エロー首相を始めとする社会党首脳の苦悩は深い。しかし、この件は政治的に見れば、余り重要性を帯びていない。何故ならば、ロワイヤル女史は元大統領候補者になってサルコジと争ったが、元々社会党内「保守派」であり、既に「過去の人」と見られるからだ。

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                   La Rochelle 埠頭

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         元リセー「歴史・地理」教員・現下院議員Olivier Falorni氏


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現職社会党議員がいる選挙区に「パラシュート降下」したSégolène Royal元大統領候補(右の女性)


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          オランド大統領と現「妻」Valérie Trierweiler 女史


 第二回投票で寧ろ重大性を帯びるのは、「第一回」を生き残った61人に及ぶ候補者を擁する「極右」FNの伸張を、仏国民が許すかどうかという点である。
一般的な観測としては、FN当選者は0〜2 と予想されているが、党首ル・ペンは数十議席獲得が見込めるとの意欲を露にしている。

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  「極右・FN」候補者が第二回投票に残っている選挙区(黄色は2人区・青は3人区)

 今年3月23日付英国『インディペンデント』紙が、「フランスで広範に巣食う排外主義」を厳しく指摘しているが、確かにこの国では、米国・英国などとは聊か異なる「白人中心的ナショナリズム」が跋扈しており、このことがナチス的「人種差別」を平然と宣う「国民戦線」FNの支持率を17%程にまでも高めている要因となっている。

 この17日の投票結果が、「オランド政権・安定化」のみならず、仏国民意識が「国際的開放化」の方向へと進む一里塚になって欲しいものだ。  (2012.06.14)


<注> *マグレブ人:アルジェリア・チュニジア・モロッコなど北西アフリカに住む人々を指す。


<写真・資料> Le Monde,Le Figaro, Libération, L'Humanité, The Guardian


                   <追記>
1. 6月14日、パリ・アンヴァリッド(廃兵院)に於いて、先週9日、アフガン・カピサで自爆テロに遭って死亡した4人の仏軍兵士を追悼する式典が行われた。オランド大統領、サルコジ前大統領など歴代大統領、首相などが参列した。2001年以来のアフガン仏軍死者は87人を数え、NATO軍全体では3000人を超えている。昨日14日にも、英国軍兵士1人が、Helmand 州で手榴弾攻撃を受けて死亡した。英国軍兵士は2001年以来、418人が戦死している。 (2012.06.15)


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2. 6月17日投票が行われた仏総選挙では、予想された通り、左派勢力の大勝に終った。社会党など左翼議員は577議席中343議席を占めた。その中でも、「緑の党」が17議席を、「左翼戦線」が10議席を獲得したことが注目される。「話題の人」社会党ロワイヤル女史は、元社会党現職議員ファロルニ氏に対して大差(63%/37%)で敗北した。極右「国民戦線」は1980年代以来初めて2議席を得たが、党首マリーヌ・ル・ペンは社会党候補に対して118票差で落選した。この件について、ル・ペンは異議を唱え、「票の数え直し」を求めている。 (2012.06.19)


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                   仏国民議会


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                  <参考資料>

1. 英国5月26日付『ガーディアン』紙ー「仏左翼闘士がマリーヌ・ル・ペンに挑戦」

  France's champion of the left sends a challenge to Marine Le Pen
In a contest that has been billed as Le Duel, Jean-Luc Mélenchon has chosen to take on the Front National leader on her own ground in an area of high unemployment

Kim Willsher in Libercourt
guardian.co.uk, Saturday 26 May 2012 19.55 BST

Jean-Luc Mélenchon, the Parti de Gauche leader, campaigns at an open-air market in Hénin-Beaumont in Nord-Pas-de-Calais. Photograph: Pascal Rossignol/Reuters
The 12-year-old boy with the razored flat-top haircut and even sharper wit hardly drew breath when asked what he wanted to do when he grew up. "Be unemployed," he said, with all the wannabe teenage attitude he could muster. He hesitated a fraction of second before adding: "Only joking."

They imbibe this kind of black humour with their mother's milk in Libercourt, a town in the Nord-Pas-de-Calais, the gritty deindustrialised region of northern France. For this boy's parents, uncles, aunts and neighbours, and those of his school friends, however, it is not funny. In an area struck by the double whammy of high unemployment and an unusually high early death rate there is little to laugh about.

Libercourt is part of a constituency that has become the stage for a monumental battle between France's far right and far left. It is here that the far-left firebrand Jean-Luc Mélenchon has chosen to stand, provoking what the press has nicknamed "Le Duel" with the Front National president Marine Le Pen, his main rival. In the first round of the presidential election in April, he scored lower than the polls predicted with 11.1% of the national vote, against 17.9% for Le Pen.

As the leader of a relatively new party, he could have chosen to seek election as an MP to the Assemblée Nationale in one of the areas where his party scored highly in the first round of the presidential election, including regions in central France, the Dordogne or Provence. Instead he has chosen to risk a direct confrontation with the woman he has described as a "beast spitting hatred", a "bat", a "dark presence" and "half-demented" (which he insisted wasn't such an insult as it "at least left the other half").

The Nord-Pas-de-Calais has been hard hit over many decades by the closure of its mines and other industries and the loss of up to 200,000 jobs. Le Pen, whose "social programme" has played well with the out-of-work and disaffected in the region, picked up her best scores here during the first round of the election.

However, the opinion polls are suggesting Mélenchon might just pull it off this time. An Ifop survey found Mélenchon trailing Le Pen in the first round of the general vote by 29% to 34%, but suggested that by picking up those who voted for the Parti Socialiste candidate in the second round he would win with a comfortable majority.

Both have appropriated the legacy of working-class suffering highlighted in Emile Zola's Germinal, the grim 1880s novel set in France's northern minefields that portrayed the disparity between the rich and poor, workers and bosses, unrelenting misery and suffering versus privilege and exploitation, with all its tragic consequences. Mélenchon blames what he sees as pernicious free-market capitalism and bankers; Le Pen points the finger at immigrants and Europe.

In Libercourt, home to around 9,000 people, a large majority with immigrant roots, Mélenchon was welcomed like a conquering hero last Thursday. As he strode into a housing estate, they came out to welcome him, to chant "Mélenchon, Mélenchon", to thrust their babies in his face, toot their car horns and invite him in for coffee.

Mélenchon walked up a hill. They followed, lugging pushchairs, trailing children, even dragging a wheelchair up the grassy mound. Locals helpfully told journalists that it was not a hill, but the waste heap from the local mine down which many of their fathers and grandfathers had toiled. They explained the history of Libercourt, the waves of immigrants – from Poland in the 1920s and 1930s, from Italy in the postwar period and from Morocco and Algeria in the 1950s and 1960s – who came to work in the mines.

Mélenchon walked down again, trailing supporters like the Pied Piper.

Today, 23% of Libercourt's inhabitants are unemployed; in nearby Hénin-Beaumont, the main town in the constituency, the level is 15.8%, both well above the national average of 9.7%. Regional health officials say the level of premature death in the population is 65% higher than the national average, and the number of cancers linked to alcohol and smoking is 81% higher. Cardiovascular disease, linked to poor diet and lifestyle, is 50% higher.

The local Parti Socialiste of recently elected president François Hollande, the natural recourse for the people of Libercourt, has been mired in allegations of corruption over misuse of public funds, leaving it discredited and giving Mélenchon and his Front de Gauche party, including the Communist party, a chance to scoop up leftwing votes.

As Mélenchon continued his walkabout in Libercourt, Aïssa Khélifa, a 45-year-old self-employed businessman, nudged his way to the front of the surrounding crowd to sum up the problem and the anger. "It's just about work," he said. "That's the problem. No work. They said to us if you want to integrate you have to get educated and work. So we got educated; we have some of the most qualified people you will meet around here. We got diplomas, but didn't get any work. It's a very big frustration, especially among the youngsters."

Abdel Belhathat, 22, an accountancy student, said: "Marine Le Pen is too divisive. People feel rejected. Ten years ago people were arguing about immigration and are still arguing. My parents have been in France for 25 years, they have worked, they have paid their taxes, they have papers to stay, but they cannot vote. That's not right."

Mélenchon, in pointed shoes, jeans, red tie and black jacket with a red carnation in the breast pocket, nodded. He was at home here. "Shouldn't people feel at home wherever they are?" he asked rhetorically as the crowd pressed in on him. "How many generations are we going to piss off with this question of immigration and where you were born?"

He was preaching to the converted. Salim Bouaoune, 36, and his wife Karima, 33, who have three children, are typical of the ethnic mix in Libercourt. Salim's family is from Algeria and Karima's from Poland and Algeria.

"We are now two, three generations in France and still feel a bit like outsiders. Even here with such a large number of people with immigrant backgrounds the Front National scored well. We don't understand why," said Salim.

Serge Delbassé, 61, retired, says that he, like most in Libercourt, comes from a mining family: "Our parents worked in the mines, and it was a hard life. Now there is no work here any more. It's hard for everyone, but especially the youngsters who have no hope."

Outside the railway station in Hénin-Beaumont, election posters featuring Le Pen's photograph have been defaced by Hitleresque toothbrush moustaches. Public opinion of the two candidates is, however, divided. Pierre, 52, who does not want to give his full name, says he will vote Le Pen. "I'm not racist. I've worked all my life with Algerians, my neighbours are from there, but even so..."

He launches into a discourse which concludes that Romanians, Gypsies, north Africans and "other foreigners" are milking the system, taking jobs, and are to blame for the woes of the local population, the "Français de souche" (pure French). "Marine Le Pen is the only one who talks honestly about this problem," he said.

Back in Libercourt, Aïssa Khélifa and his neighbours say they will vote Mélenchon, but many confess they do not have much faith in politicians of any colour.

"I've lived here all of my life and as far as I know no politician has come to Libercourt before," he says. "Even the local councillors don't come here. Marine Le Pen certainly hasn't. I'm not sure how much he can do, but I think Jean-Luc Mélenchon is our best hope."


2. 仏6月13日付『リベラシオン』紙 ー「エロー(首相)はファロルニに対してロワイヤルとの対決を取り止めるように呼びかけている」
           
Ayrault appelle Falorni à se désister face à Royal

13 juin 2012 à 16:29 (Mis à jour: 16:47)

Le Premier ministre demande au dissident PS, donné favori face à Ségolène Royal, de «prendre ses responsabilités».

Le Premier ministre, Jean-Marc Ayrault, a appelé mercredi le dissident socialiste Olivier Falorni à «prendre ses responsabilités» et à se désister en faveur de Ségolène Royal, candidate investie par le PS, confrontée à un second tour délicat dans la 1ère circonscription de Charente-Maritime.

«J’ai pris connaissance d’un sondage qui montre que Mme Royal est largement soutenue à gauche, alors qu’Olivier Falorni est devenu le candidat de l’UMP et du Front national, qui eux seuls peuvent amener sa victoire», a déclaré à l’AFP Jean-Marc Ayrault.

Le Premier ministre faisait référence à un sondage Ifop/Fiducial, réalisé lundi et mardi, donnant Ségolène Royal battue dimanche par le dissident socialiste (42%-58%), largement grâce à des voix de la droite.

Selon ce sondage, 82% des électeurs de la candidate UMP Sally Chadjaa, qui n’a pas pu se qualifier pour le deuxième tour, indiquent ainsi qu’ils voteront pour Olivier Falorni, contre 6% qui choisissent Ségolène Royal.

«La primaire a eu lieu au premier tour (dimanche dernier) et Mme Royal est arrivée en tête, donc M. Falorni devrait se désister comme cela s’est fait dans d’autres circonscriptions entre candidats de gauche», a fait valoir Jean-Marc Ayrault.

«Il lui appartient en conscience de réfléchir au sens de sa candidature», a ajouté le Premier ministre. «Je le mets en face de ses responsabilités et je lui dis de penser aussi à l’intérêt général», a-t-il encore dit.

(AFP)
by shin-yamakami16 | 2012-06-14 13:30 | Comments(0)
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王制:「維持派」対「廃止派」の飽くなき戦い

                             山上 真

 明日6月3日から4日間に渉って英国テームズ川周辺で派手に展開される「英国女王即位60周年」記念式典を巡って、イギリス社会を二分する激しい論戦が巻き起こっている。

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 テームズ川を1,000 隻の「祝福船団」がチェルシー桟橋から出発し、その内の一隻に乗船するエリザベス女王が沿岸に集う群衆の歓呼に応えるという演出の祭典は、キャメロン政権下の「緊縮財政」で生活に呻吟する多くの国民に少なくとも「違和感」を抱かせており、BBCなど一般的メディアが既成体制に呼応する形で「祝福感」を煽っている一方では、 ‘Republican’ と呼ばれる王制廃止派の大規模デモに加えて、今度の「アナクロ」な行事に極めて「冷めた」論陣を張る大手メディアも現れている。


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   エリザベス女王「即位60周年記念式典」の主要舞台となるタワーブリッジ


 例えば、今日2日付の経済専門誌『ファイナンシャル・タイムズ』紙 (FT) は、トップ記事として「女王の資産収入は9,200% 増えた」とする論説を掲載して、結果的に王制という特権制度がその資産増大を利する働きをしていることを暴露している。—<参考資料1>

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                   念入りな「予行演習」

 中立紙『ガーディアン』(5月31日付)は、「女王即位60周年記念式典:つまらない王家と蜃気楼の国家 — 何を祝うべきなのか?」と題する記事を、コラムニストのPolly Toynbee 女史が認(したた)めている。副題としては、「王制という概念そのものが我々の評価を落とすとしても、生活の現実の方が国家にとってずっと恥ずべきであり、破壊的である」とする。

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           著名なコラムニスト Polly Toynbee女史

 この論説の大要は次の通りである。

 「壮大なる記念式典は、この日曜日からテームズ川の一千隻の船の行進と河畔の教会の轟く鐘の音と共に始まる。船上のオーケストラの奏でるヘンデルの水上音楽に合わせて進む数百の船の壮観さを誰が見たくないであろうか」

「この演出が途方もなく華々しいほど、その目的は馬鹿げたものになる。この全ての豪華さと仰々しさの生気ないど真ん中には、虚無があるだけだ。鐘の音が高ければ高い程、空しさが口を拡げるばかりだ。一体何を祝おうと言うのか?」

 「王制の持つ専制的な影響力は、封建的な宗教と結びついた精神的支配力に在る。その存在が上に有る限り、我々は白い毛皮を付けた英国貴族を拝む、従順なる僕で居なければならない」

 「王家の人々が如何に権威付けても、取るに足らぬ才能の凡人たちであることは明らかであり、何でこんな人々に敬意を払わねばならないのか。彼らは、庶民が逃れられない相続税なども国に支払っていないのだ」

 「最近の女王主催の昼食会で、圧政の象徴国 ーバーレーン・サウジアラビアなどーの王家を招待しているのを見れば分かるように、英国王制も主張する『王家の血筋』などというものは、とんだお笑い種なのだ」

 「現在の保守政治が齎す社会的・経済的不平等は、英国の王制という構造と一体的なものであるが、1930年代を超える未曾有の経済危機が見舞う今日、緊縮政策は社会的に最も弱い底辺の人々を苦しめている」
                           —<参考資料2>
 
 トインビー女史は最後に、「王制廃止派の抗議デモが日曜日一時半にシティーホールで開催される」と書いて文章を結んでいる。

 左翼紙『モーニング・スター』(6月1日付)は、「在るのは60年に渉る恥ずべき女王時代」という記事を刺激的な写真と共に掲載して、「民主主義に反する世襲的王制は過去の時代の遺物であり、今こそ他の選択をしなければならない」として、女王の目につく所での大規模「王制廃止」デモを呼びかけている。

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 こうした「王制反対派」の動きに対して、BBCや、比較的自由な報道姿勢で知られる『チャンネル4』までも、メイジャー元首相の「王制の未来に何の不安もない」とか、進歩的宗教者とされるカンタベリー大司教ローアン・ウィリアムズ氏の、「エリザベス女王は、やや毒の隠ったユーモアに長けている」とする肯定的な評価を紹介しており、「王制廃止派」の声を余り表に出していないのは、日本の場合と同様に、資本・既成秩序と一体となっている大手TVメディアの「宿命」と言えるだろう。  (2012.06.02)

                    <追記>
1. 6月2日(土曜日)夜の討論番組 BBC 'Dateline' に、上記『ガーディアン』紙コラムニストのポリー・トインビー女史が参加して、'Die Welt'、'Global Post'など外国特派員とシリア問題などを論じていたが、冒頭に 'Diamond Jubilee'が話題に上り、女史が理念的に王制の問題点を主張したのに対して、後者は、国家の「象徴的存在」や、「観光資源」的な面での王制の価値を肯定的に述べていて、全く話が噛み合なかった。外国人の立場からして、「お世辞」の域を出ない意見は仕方ないにしても、BBC司会者が、王制は政治的な権限を全く持たないから好いのではないか、と述べていたのは、これからテームズ河畔で展開される「壮大な無駄使い」を取材し、世界的に放映する立場からの「無理な合理化」ということだろう。 (2012.06.03)

2. 英国『インディペンデント』紙はこれまで全国紙の中では「最左翼」と看做されて、特にその「反戦」姿勢は高く評価されてきたが、今度の女王を巡る「祭典」の報道を見ると、殆ど他紙と変わらぬ「翼賛」姿勢が顕著だ。そんな中で、今日5日付の紙面には、投稿された長文のブログ「ダイアモンド・ジュビリー:国家を干上がらせたエリザベスの60年間」が掲載されている。その意見は、多くの王制廃止論者と同様のもので、王制が英国に巣食う階級制度を固定化する要因となっていることを指摘している。ー<参考資料3>   (2012.06.05)

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             6月5日 セント・ポール寺院での「祝賀ミサ」

3. 昨日5日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、この数日間の米国TVメディアの「英国女王即位60周年」祝賀についての「常軌を逸した」取材・報道ぶりを「アンカーマンたちは王冠の周りで浮ついている」という見出しで、痛烈に批判する記事を掲載している。それに依ると、「四日間の狂態は愚の骨頂であり、'ABC'、'NBC'、'CNN'は押し並べて酷く、僅かに「保守」FOX だけが英国の「低俗な」出来事を無視して、寧ろ「反王室」的言辞で番組を締めくくったと言う。皮肉な事だ。ー<参考資料4>  (2012.06.06)

4. 'The Diamond Jubilee' 最後の行事となったSt. Paul 寺院での「祝賀ミサ」の講話で、カンタベリ大司教ローワン・ウィリアムズ氏は、女王の「無私の奉仕」を讃える一方、金融街シティーの「どん欲ぶり」や、環境破壊、国民大方に巣食う「外国人排斥」の雰囲気を厳しく論難したが、大衆紙『デイリー・メイル』は6日、この「場違い」な大司教の指摘について、「祝賀の場」をハイジャックして、間もなく退任を迎える人物が自己の持論を披瀝する手前勝手な「演説会場」に変えてしまったと非難している。メイル紙は他の多くの大衆紙と同様に、今度の行事報道を通じて、一貫して「英国愛国心」を派手に煽る紙面編成をしており、当然と言える反応だ。 (2012.06.07)


<写真> BBC news, The Guardian, FT, Morning Star


                    <参考資料>
1. 6月2日付『ファイナンシャル・タイムズ』紙 −「女王の資産収益は9,200% 増えた」

Last updated: June 2, 2012 1:03 am
Queen’s property revenues rise 9,200%
By Ed Hammond, Property Correspondent

Queen Elizabeth’s rental property empire has survived the peaks and troughs of the market to return a 9,200 per cent increase in revenues during her 60-year reign, more than three times the rate of inflation.
The Crown Estate, the company that owns the sovereign’s land and property in the UK, produced rental income of just £2.5m in 1952 – enough to buy a mid-market central London house today. In its results for the year to the end of March 2011, the company reported revenue of £230m.
The jump in income from the Queen’s portfolio reflects the steady increase in British property values during the past 60 years. Revenues at her estate have outpaced the wider market, however, by virtue of owning property in some of the country’s best performing postcodes.
The Crown’s assets include Regent Street in London, one of the world’s most coveted retail pitches, and St James’s, the central London heartland of the hedge fund industry.
Rents in both areas have soared during the past five years, with demand from international companies mitigating the economic uncertainty damping the UK’s property market.
The portfolio, which belongs to the monarch for the duration of their time on the throne, comprises large swaths of the UK’s beaches and the seabed for 12 miles (19km) from shore; the Royal Parks and 263,000 acres (106,000 hectares) of farmland. It does not include Buckingham Palace, Windsor Castle or the Balmoral estate in Scotland, which are owned by the Queen herself.<後略>

2. 5月31日付『ガーディアン』紙 ー 「女王即位60周年記念式典:つまらない一族と幻影の国家。何を祝うべきなのか?」

Queen's diamond jubilee: a vapid family and a mirage of nationhood. What's to celebrate?
If the very idea of monarchy diminishes us, the living reality is much more humiliating and damaging to our country
Polly Toynbee
guardian.co.uk, Thursday 31 May 2012 21.00 BST

The mighty royal jubilee bells will toll their way down the Thames on Sunday on a floating belfry leading a thousand boats, echoed by pealing church bells all down the riverside. Who could miss the spectacle of a hundred tall ships serenaded with Handel's Water Music played by a floating orchestra?
The more outrageously glorious the performance, the more preposterous its purpose. There at the heart, in the dead centre of all this pomp and circumstance, is the great emptiness, the nothingness, the Wizard of Oz in emperor's clothes. The louder the bells, the more gaping the grand vacuity. What are we celebrating? A singularly undistinguished family's hold on the nation, a mirage of nationhood, a majestic delusion.
How close to religion it is, with all the same feudal imagery, God as Lord and sovereign, sovereign anointed by God, knelt before in a divine hierarchy of power ordained by laws too ineffable to explain. The tyranny of the monarchy lies not in its residual temporal power but in its spiritual power. It subjugates the national imagination, infantilising us with false imaginings and a bogus heritage of our island story. For as long as they rule over us, we are obedient servants, worshipping an ermine-wrapped fantasy of Englishness. (Despite the kilts, the monarchy was never really British.)
Every country needs its founding myths, its binding identity rooted in a valiant story that rarely stands up to historical scrutiny. What matters is the nature of that story, and ours is as pitiful as our embarrassingly shoddy national anthem: no US "land of the free", just "long to reign over us". if the very idea of monarchy diminishes us, the living reality is even more humiliating. What are we doing paying homage to the unimpressive personages invested with this awe? They are the apogee of celebrity culture, because there is nothing there but empty celebrity. Ah, say the royalists, it's their very "ordinariness" that is their mystique.
<以下中略>
The Republic protest takes place at City Hall at 1.30pm on Sunday

3. 『インディペンデント』紙 − 『ダイアモンド・ジュビリー:国を疲弊させたエリザベスの60年』

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The Diamond Jubilee: Elizabeth’s 60 years draining the state
By Charlotte Rachael Proudman
Notebook - A selection of Independent views -, iPolitics
Tuesday, 5 June 2012 at 4:00 am

Anti-monarchy protestors on Sunday staged a demonstration on the banks of the Thames ahead of the Diamond Jubilee river pageant. Among the protestors was the chief executive of Republic, Graham Smith, who said “the hereditary system is offensive to all the democratic values this country has fought for in the past. The jubilee represents a celebration of everything we, as republicans, oppose”.
North Ayrshire Labour MP Katy Clark is among many Labour MPs who have refused to pay for a present for Elizabeth to mark her Jubilee celebrations. Katy Clark MP said: “I have never thought we should have a Royal Family as they are the ultimate symbol of inequality and class division. Compared to many other countries we live in an incredibly class-ridden society with huge inequalities in wealth and power”.
I can’t help but agree with Graham Smith and Katy Clark MP. Their sentiments certainly echo my own opinion, a head of state appointed by the feudal process of primogeniture goes against every democratic principle that our country stands for. In my eyes, partaking in the Diamond Jubilee is not just a celebration of Elizabeth’s 60 year reign, but a celebration of something far more sinister – to me, it’s a celebration of the ingrained inequality and class segregation within our country. It seems to me that the monarchy represents the worst of Britain: a class structured society governed by select elite whom are out of touch with the rest of the country.
Despite doing little and achieving even less, it seems the Royals expect respect and deference from us. The most brave, talented and accomplished working class woman and man are expected to praise the royals for their military service and charitable deeds. But is their use of charities and the military to bolster their own reputation really just used as a smokescreen to deflect attention from the real issues? Engaging in what can only be described as hobbies – to them – could be done without royal titles and without any cost to the state. After all, the royals are paid astronomic hourly rates for jobs they did not even have to apply for, neither are they at risk of redundancy. The Royal Family are the very antithesis of meritocracy.
Contrary to media rhetoric, the monarchy does not act as a stabilising and unifying influence on our lives. The monarchy does not have the power to prevent or stop war, oppression, inequality or divisive political policies. Stability and unity are the products of a democratic country where power is vested in the people to elect an accountable Government and head of state. This is exemplified by the USA, a republic and one of the most stable and prosperous countries in the world.
Pageantry and tourism is irrelevant to our constitution. While some enjoy the quaintness of North Korea’s pageantry, our state is not based on pageantry. Neither is our state based on tourism. In any event, the Royal Family does not generate the majority of our tourism. Of the top 10 tourist attractions in Britain collated by the Association of Leading Visitor Attractions, the only place of interest with direct royal association is the Tower of London.
The tourist argument is often used to distract people from the real issue that the monarchy is not value for money. According to the Civil List, the total official spending by Elizabeth which was paid for by the state in grants and the civil list in 2011 was a whopping £32.1 million: £13.7 on the civil list and reserve, £11.9 million on property, £6 million on travel grants and other grants and £0.5 million on communications and information grants.
<後略>

4. 6月5日付『ニューヨーク・タイムズ』紙 ー 『アンカーマンたちは王冠の周りではしゃいでいる』

June 5, 2012
Anchors Get Giddy Around The Crown
By ALESSANDRA STANLEY
God save us from the queen.

There’s nothing like a regal celebration to bring out the royal pains of American television. And the four-day extravaganza to celebrate the 60-year reign of Queen Elizabeth II was particularly rich in folly.
With so much time and so little new to say, anchors and commentators are emboldened to be their worst selves. Viewers are like Elizabeth Bennet in “Pride and Prejudice,” who watched helplessly as her sisters made spectacles of themselves at a ball and concluded, “that had her family made an agreement to expose themselves as much as they could during the evening, it would have been impossible for them to play their parts with more spirit, or finer success.”
And that was certainly the case on ABC’s “Good Morning America,” whose anchors Robin Roberts and Lara Spencer mugged in front of Buckingham Palace on Tuesday wearing goofy ribbon fascinators on their heads and acting like teenagers on a sugar high at a shopping mall. Other news organizations showcased Elton John and Paul McCartney at Monday’s concert outside the palace. Ms. Spencer singled out Grace Jones’s Hula-Hoop performance, which gave Ms. Spencer an excuse to segue to a clip of herself gyrating with a Hula-Hoop on an old episode of “Good Morning America.” “Honestly, it was the moment of the concert,” she explained.
ABC was hardly alone in finding silly and self-serving ways to pep up Jubilee coverage, but there was a particular élan at “GMA,” which has narrowed the lead of “Today” on NBC, and has actually come out ahead in weekly viewership several times in recent months. ABC didn’t prevail by getting more substantive than NBC; the Jubilee provided a fresh canvas for the program’s newfound confidence in dumbing down.
Ms. Roberts, who used to be the Miss Hathaway of morning television, has reinvented herself as a girl who just wants to have fun with Ms. Spencer: over four days the two drank Pimm’s cups, donned frilly hats, and danced and D.J.’ed their way through the royal events. The BBC coverage, shown on BBC America, included commentary by the historian Simon Schama. Ms. Roberts relied on the expertise of Len Goodman, a judge on the hit ABC show “Dancing With the Stars.”
NBC took the whole event more seriously, but there was just as much self-interest. The network is spending over a billion dollars to broadcast the 2012 London Olympics, so “Today” found all kinds of ways to link the games to the Jubilee. The soccer star David Beckham was interviewed about the queen and his chances of making the British Olympic soccer team. The NBC correspondent Stephanie Gosk did a stand-up amid crowds gathered in Trafalgar Square, which, she explained, is where the British go to celebrate momentous events like the end of World War II and, as she put it, “where it was announced that London would be hosting the Summer Games.”
Famous anchors are sometimes described as American royalty, but lately some have a way of echoing the lower moments in the history of the House of Windsor. “Today” brought back alumna Meredith Vieira as a special correspondent to anchor Tuesday’s Jubilee finale with Matt Lauer, and the two laughed and teased each other as if they were a newly reunited Prince Charles and Camilla Parker-Bowles.
Ann Curry, who is Mr. Lauer’s actual co-anchor, was the one “Today” star left out of the London coverage; even the weatherman Al Roker made the cut. (A“Today” show announcer rubbed it in by trumpeting a special edition, “ ‘Today’ at the Queen’s Diamond Jubilee,” with Matt Lauer live at Buckingham Palace and Ms. Curry “live from Studio 1A in Rockefeller Plaza.”) Actually, Ms. Curry wasn’t even on the set in New York. From his chair next to Ms. Vieira, Mr. Lauer said briskly, “Ann has the morning off.”
<中略>
Jon Stewart mercilessly mocked the television coverage, particularly the often inane enthusiasm of Piers Morgan on CNN, who described the flotilla on Sunday as an “orgy of excitement.” On Tuesday Mr. Morgan gushed over the queen for many hours straight, but perhaps with more envy than admiration. As Royal Air Force jets streamed red, white and blue smoke while flying over Buckingham Palace, Mr. Morgan said, “I wish I was king.”
CNN did devote almost as much to the Jubilee as BBC America did, but it’s a little unfair to judge that cable news network by a royal event. CNN functions best in hard news and international disasters. And now, more than ever, CNN serves as cable news’s best antidote to the solipsistic ranting of histrionic and proudly biased evening hosts on Fox News and MSNBC.
CNN’s ratings on many nights are at a low point, which makes the network’s refusal to follow its more successful rivals down the path of single-minded opinionating all the more admirable. Mr. Stewart joked that CNN, like Britain, is a fallen and enfeebled world power. But like Britain, CNN is a diminished empire that on special occasions still commands respect and attention. Except, paradoxically, when it gives lavish, unfiltered coverage to a glittery extravaganza like the Diamond Jubilee.
by shin-yamakami16 | 2012-06-02 17:34 | Comments(2)