世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

今年を振り返って・個人的感想

                          山上 真

 去年4月から今年春まで英国・ロンドン北東部郊外で暮らしていた頃、よく思ったことは、日本の社会・政治が保守政治の範疇内でも、少しは「安定」に向かうのではないか、ということでした。何しろ、しょっちゅう首相が変わって、英国メディアでは、日本政界の誰が誰やら分からないという混乱が起こっていたのです。
こういう状態が続くと、国際社会での日本の地位そのものが低下することが懸念されました。

 今日の日本がどのように海外で受け取られ、理解されているかということは、国際関係が国益に密接に結びついている点を考慮すると、外国の地に住んでいる者のみならず、一般国民にとって大きな関心事に違いありません。

 英国に於ける「日本」は、印象的に申し上げれば、一昔と較べて、影が薄くなってきているように見えます。その主因は、言うまでもなく、日本経済の沈下です。
その結果として、英国に於ける日本の資本投下が著しく減り、日本企業の撤退が目立っています。一説には、50%の事業所が閉鎖されたと言われています。例えば、ロンドン市内にあった3、4の日本の百貨店は、一つが残っているだけになって久しいです。
 
 この事実は、文化面の交流に少なくない影響を及ぼしています。日本語を学習する英国人学生の減少と、例えば英国北部ダーラム大学の場合のように、大学での日本語学科の廃止・縮小という傾向が顕著になっています。それと対照的に、最近では、中等学校での中国語選択者が増えているようです。これは、中国の目覚ましい経済発展と結びついた傾向です。

 英国BBCなどのテレビで、しばしば旧日本軍の残虐行為を描いた戦争映画が放映されるのは、近年の日本の指導者の「タカ派的発言」と無縁では無さそうです。靖国神社の参拝問題を巡っての中国・韓国などとの対立について、英国メディアは極めて敏感に反応し、日本支配者の「超右翼」的発言の度毎に、英国軍人が「シンガポール陥落」や「捕虜収容所」で受けた仕打ち・屈辱を忘却させないような意識的努力をしているようです。

 英国で日本の存在を否応無く意識させるのは、日本メーカーの自動車・オートバイ、テレビ、音響機器、プリンターなど電気製品の優秀さ、そして、'healthy' である鮨・豆腐など日本食品でしょう。これらの物品は、都市部を中心に、かなりの人気を博しています。未だ歴然たる差はあるものの、韓国製品が、それに追いつこうとして、一定の成果を上げていることは注目されます。

 日本が英国で悪名高い分野は、製薬会社の動物実験と、捕鯨です。前者は、数年前からの日本大使感館前での、動物愛護団体による反対示威行動で目立ってきています。
 捕鯨は英国全体を反対派としている、重大問題になっています。これは、日本人全体に「幼気な哺乳動物を捕獲し、食する野蛮な国民」というレッテルを貼りかねない、深刻な問題になりつつあります。当然のことながら、反捕鯨運動の急先鋒
'Greenpeace'に対する評価は、日本での状況と裏腹に、高まっているのが実情です。

 女王を元首として戴く英国民にとって、日本に於ける最近の「皇位継承」問題ほど解りにくい事は無かったことでしょう。女性が天皇を継承出来ないとは、どういうことなのかという強い疑問が、英国メディアの関心を呼んだのです。この一件で、「先進国日本」が、現代世界に於いて極めて「特殊な国」という印象を与えたことは確かです。

 芸術・文化面では、小津安次郎とか、黒沢明の映画が時たまテレビで放映されていますが、現代物は目立ちません。音楽では、陣太鼓実演の催しがしばしばあります。絵画では、江戸時代の広重の絵などが、時々披露されています。
 園芸で、日本的な盆栽、竹、もみじ、飛び石を基調とする和風庭園が人気を博しているようです。

 日本に何らかのきっかけで関心を持った英国人でも、日本に行くとなると、長時間の飛行の苦しみと高い運賃を考えて、二の足を踏むことになるのは、致し方ないと言えるでしょう。その傾向を一層強めているのは、先に述べたような、最近の日本についての否定的側面なのです。以前よりも、日本は魅力的な国ではなくなっているのです。
 
 この際、日本が「過去に回帰している奇妙な国」というイメージが固定化することは、何としても避けたいところです。米国がオバマ氏を次期指導者として選んで新たな航海に乗り出したように、日本も真の意味で「未来志向」に転じなければなりません。そうすることが唯一の「閉塞状況」脱出の道と言えるのではないでしょうか。
(2008.12.30)

 
Commented by 通りすがり at 2009-01-19 22:32 x
英国の島国からみる日本という島国ってとってもかわいそうなんですね。残虐行為と言うのなら、戦争や植民地支配そのものが残酷ではないか? それを批判する英国は自分のしたこともされた事と一緒に思い返すべきだろう。他国にとやかく言えるほどの行いをインドでしたのかしら? 個人的に知り合うインド人は英国人の自分勝手なイデオロギーに怒りを感じる人も多い。だが、 中国韓国に学んでほしいところは彼らが日本を今でも叩くようにインド人はイギリス人をあまり叩かないところでしょうか。大英博物館に植民地で盗んだものを飾りたてている英国人には分からない哲学でしょうね。  また、皇位継承に関しては、開かれた王室で困っている英王室が言うのであるならばまあ一理あるでしょう。それを無知な、一般人が御託を並べるのも、なんだか滑稽なものですね。 日本の皇室と英国の王室をよく一緒くたに考える人いますが、まず天皇と皇后の役割分担がされている皇室では男系継承が女性を助けている事実もご理解されてから口を挟むべきですね。 内部の事情を知らずして、ヒステリーなフェミニストは単に批判でもなんでもなくゴシップです。
Commented by shin-yamakami16 at 2009-01-20 10:45
帝国主義国家だった英国は20世紀初頭に至るまで、世界中で植民地政策に伴う搾取・残虐行為を行ってきたことは、紛れもない事実ですが、現在では、そのことを自覚し、不充分ながら贖罪・補償措置を行っています。英国マス・メディアが、努めて歴史問題の啓発を行っていることも、感心できる点です。ところが、日本の場合、政府からメディアを含む民間まで、僅かな例外を除いて、自国の負の遺産について相応しいだけの反省がありません。他所の国、民衆から指弾されるようではいけません。
皇室問題は、日本国内で様々な意見があるばかりでなく、国際的に見て、著しく「封建的」と看做されることは、将来的にも日本の利益にならないでしょう。この際、国民の総意として、皇室でも「男女平等」という普遍的原則を打ち出すべき時期と思われます。
by shin-yamakami16 | 2008-12-30 06:42 | Comments(2)