世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

二つの原爆を生き延びた人

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                 Yamaguchi Tsutomuさん


遅過ぎた国の「原爆症認定」
                       山上 真

 去る3月25日の英国紙『ガーディアン』及び『デイリーメール』に、老いた日本人の原爆被害者の写真入り記事が掲載された。

 「93歳のYamaguchi Tsutomuさんは、第二次世界大戦末期の二つの米国原子爆弾『被爆者』として、公式的に認定された。彼は既に、1945年8月9日の長崎原爆投下の『被爆者』として認定されていたのだが、今回は、長崎原爆投下より3日前の広島原爆の生存者としても認められたのである」

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                   広島原爆

 「Yamaguchiさんは1945年8月6日、仕事で広島に行っていたのだが、その日にアメリカB29が原爆を投下した。彼は上半身にひどい火傷を負い、その晩はそこに居たが、翌日、故郷の長崎の町に戻った」

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                   長崎原爆

 「我々が知っている限り、彼が広島と長崎両方の原爆被害の生存者として公式的に認められた最初の人物だ」と、長崎市役所のMiyamotoさんは言う。
 「とても不運なケースだが、彼のような人は他にもいそうだ」

 「原爆症認定を受けると、国からの手当(月額13万7千円余り)、無料診察、葬儀費用を受けることが出来るが、二度の被曝だからといって、手当が増えるわけではない」

 「日本は唯一の被爆国であり、広島で約14万人、長崎で7万人が死亡した。
Yamaguchiさんは、これら原爆攻撃から生き延びた約26万人の中の一人であり、被爆者は、ガンや肝臓障害など、放射線被曝による様々な病気を発症している」

 「長年に渉って、数千人の被爆者が認定を求めて訴訟を起こしてきたが、日本政府は拒否してきた。最近になって漸く、厳し過ぎる認定基準を緩めている」


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                  原爆投下後の広島市


 例えば、原爆投下直後に、現地で救護活動に当たった人々を、原爆被害の認定から外すというような不合理さが改められるのは、全く当然のことだ。

 原爆被害者は、当時広島・長崎に居た外国人も含まれており、その数は数万人に達するとされる。こういう方々が幅広く救済されることが必要なことは言うまでもない。

 最近になって、米国の指導者層の中にも、僅かながら原爆被害に目を向ける人々が現れてきた。例えば、民主党ペロシ下院議長が去年広島を訪れた。近いうちに是非、オバマ大統領に二つの被爆地を訪れて欲しいものだ。彼の訪問は、「核兵器なき世界」の実現に大きく役立つだろうと確信する。                     (2009.03.27)
 
 

<写真> The Guardian, Daily Mail
by shin-yamakami16 | 2009-03-27 21:20