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by shin-yamakami16

深まり行く英国大不況

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中部工業都市 Wolverhampton に見る惨状

                         山上 真

 英国経済の現状にについて、つい3、4日前には「底を打った」という報道が為されたと思うと、今度は、「下げ止まらぬ就業率」が新聞のタイトルとなっている。全般的に、依然として出口が見えない状態であることは確かなようだ。

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 6月18日付の『ガーディアン紙』は、英国経済が三方面から打撃を受けていると言う。

 一つは、財政赤字が2009年から2010年にかけて1900億ポンド(約30兆円)に達し、政府自体に歳出カットと、増税への圧力を強めることになる。
 
 二つ目は、商業取引が5月には先月よりも0.6%落ち、前年度比で、1.6%低下している。特に、衣料品の落ち込みがひどい。
 
 三つ目としては、銀行経営が不安定なことも手伝って、一般企業への貸し出しがマイナス5.4%となり、過去9年間で最大の低落を記録したという。

 同紙によると、失業者数は30年来最大規模で、226万人、就業人口の7.2%に達する。この4月までの3ヶ月間だけで、23万2千人が職を失った。


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  大量解雇に抗議する精油所の 'wildcat strike' (山猫スト)参加者と「取締り」の警官



 このような厳しい状況に対して、政府側が何ら有効な対策を取っていないことを、自民党など野党側は批難する。ブラウン政権は、予想された線より低めであることを自己弁護の材料にしているが、2010年中に300万人の失業者を数えるのは、ほぼ確定的のようだ。

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 『テレグラフ』紙(6月18日付)は、大不況に苦しむミッドランドの都市ウオルヴァーハンプトン (Wolverhampton) を訪ねて、その実情を探っている。筆者も3年程前に、バーミンガムから足を伸ばして、2泊した所だけに、当時ののんびりした佇まいからの変化に驚いている。

 この都市は元々、羊毛取引の為のマーケット・タウンとして始まったのであるが、17世紀以降、工業都市として急速に発展し、20世紀前半には、自動車産業の拠点の一つとなった。

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 1980年代から製造業種が次第に中国への移転を始め、近年の原材料高騰で地場産業が苦境に陥っている最中、止めを刺すように去年9月頃から大不況が襲ったのである。銀行の倒産で、企業は資金不足に陥った。たちまち、14,000人の労働者の半分が職を失って、失業手当を受けるようになった。

 この急激な「変化」は衝撃的であった。「全ての自信、信頼感が失われてしまった」と、金属メーカー経営者 Peter Mathewsさんは言う。

先月、7,000人の労働者が近接するバーミンガムまでデモ行進して集会を開き、雇用を守る為の施策を政府に求めたということだ。「銀行を救うのなら、我々の雇用を守れ」というのが主張である。しかしその後も、Van メーカーが破産し、800人以上の失業者が出たそうだ。

 言うまでもなく、英国で起こっている事は、日本でも、多くの場合、なお一層深刻な形で起こっている。我々が最低限できる事は、先ず現実を直視して、次なる行動の可能性を探る事だろう。  (2009.06.20)



<写真> The Guardian, The Daily Telegraph, Wikipedia



 
by shin-yamakami16 | 2009-06-20 22:54