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by shin-yamakami16

西欧メディアが伝える「オバマ訪日」

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厳しさ増す米国「軍事基地配置」批判

                            山上 真

 大統領就任後一年を経て、初めてのオバマ氏の日本訪問は、何とか双方の面子を守った形で終った。日本に於ける「政権交代」の後、対立を顕在化しかねない沖縄基地の問題を先送りして、従来の「日米同盟」路線を確認することが先ず優先事項であった。

 しかし、より客観的、或は自由な立場から見れば、日米双方、特に日本側の遠慮がちな態度が目立ってしまうのはどうしようもない。例えば「普天間基地」の移転問題をどのように解決したいのか、本音が分からず、何とももどかしいというのが、欧米メディアのほぼ共通の印象だ。

 「オバマ訪日」の直前11月12日、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「日本はオバマ訪日を醒めた目で待ち構えている」、「沖縄の人々は米軍基地をなくす希望を打ち砕かれて、苛立っている」という見出しの2本の記事を掲載した。その主旨は、民主党政権が米国と「対等」の関係を求め、前自民党政権下で取り決められた「普天間」移転計画を反故にしようとする兆候を、米国政府を始め各方面が只ならぬ警戒心で見つめていること、日本側も、沖縄民衆の「反基地感情」が11・8大集会で示されたように極めて強く、鳩山政権も「沖縄見直し」をマニフェストで公にしている以上、「明らかな後退」が難しいことなどを指摘している。


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 英国『インディペンデント』紙(11月12日付)は、「ヒロシマはバラックを大歓迎したいが、忙し過ぎて無理だって」という記事を載せている。そこでは、広島・長崎がオバマ氏の「反核プラハ演説」を高く評価して、オバマ氏の訪問を熱望しているのに対して、米国内の政治的圧力が、今回の両市訪問を断念させた可能性を示唆している。米国では、今なお6割の国民が、1945年8月の原爆投下を是としているからである。尤も、テキサス州の基地内で直前に起きた「銃乱射事件」が、同氏のスケジュールを無理なものにしたことは確かだ。

 仏誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトウール』(11月13日付)は、米国大統領の誰も、これまで被爆地を訪ねて、「謝罪」したことがないという事実を指摘している。僅かに、退任後のジミー・カーター氏が広島を訪問した事実があるということを付け加えている。
 更に同誌は、先日沖縄県民が2万人集会を開いて、軍事基地撤廃を強く求めたこと、先週末には東京で幾つもの「反戦・反米デモ」が展開されていたことを伝えている。そして、極東で中国の台頭が目立つ反面、米国が次第に影響力を失いつつあると結論づけている。

 11月13日の英国『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、沖縄問題など米国との外交関係をめぐって、鳩山内閣内の不一致が目立ち、「うろたえている」(dither) ことを案じている。首相、外務大臣、防衛相がそれぞれ、「普天間」移転先の問題について異なる方針を示していることを衝いているのだ。ただ同紙は、政権に就いた以上は、現実的対応が必要だとする。

 仏紙『リベラシオン』(11月13日付)は、「沖縄は最早米国兵にとっての楽園であることを望まない」という見出しで、ルポルタージュを載せている。
 
 「140もの島から成り、美しい海岸、亜熱帯気候と独特の文化を持つ沖縄は、それこそ旅行に適した楽園であり得るが、日本全土に89ある米軍基地の3 分の1を抱えて、至る所が金網と有刺鉄線で囲まれている」


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 「私たちは普天間からの基地移転ではなく、全ての米軍基地撤去を求めているのです」と語るのは、反戦市民団体活動家の Hitomi Arakaki さん(26歳)だ。 彼女は、11月8日の大集会に参加して、「戦争はいやです」( Non à la guerre! )と訴える。

 沖縄国際大学の Nobuyuki Nishioka 教授は、
「米国人は、この沖縄駐留を正当化する為に、あらゆる形の『脅威』を煽っているのです。北朝鮮、中国、そしてロシアというように。しかし、どう言っても、彼らの利害のために我々を人質にすることは正当化できませんよ」と語る。


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 実射演習による汚染・環境破壊、戦闘機などの凄まじい騒音、加えて、米国兵士による数多くの犯罪行為も深刻な問題になっていることを『リベラシオン』は指摘している。

 米国オバマ政権は、当初「チェインジ」を標榜して、多くの期待感を引き寄せたが、こと外交政策に関する限り、大部分、前ブッシュ政権のものを引き継ぐだけに終始している。特に極東政策は、「北」朝鮮問題を梃にして、軍事基地配置の基本線を変えようとしていない。これは、オバマ氏が、嘗て共和党の為に働き、イラク戦争に賛成したこともあるヒラリー・クリントン女史を国務長官として起用したこと、及び、前ブッシュ政権の国防相ロバート・ゲイツ氏を再任したことが大きく響いていると思われる。

 日本新政権は執拗に、国民の利益を守る為の努力を米国に対して貫いてゆく外ない。今度の首脳会談で、「日米同盟深化」の為の協議開始が約束されたが、是非とも日米安保条約の「根本的見直し」にまで繋げて欲しいものだ。
                          (2009. 11. 15)
 


<写真> Le Nouvel Observateur, Libération, The Independent


 
 
 
by shin-yamakami16 | 2009-11-15 10:16 | Comments(0)