世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

「日本捕鯨船、Ady Gil号を真っ二つに」(仏‘Libération’ 紙)

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国際的に問われる日本「調査捕鯨」の妥当性

                            山上 真

 去る1月6日、南極海で日本捕鯨船団に随行していた監視船「第2昭南丸」(712トン)が、反捕鯨団体 Sea Shepherd の「ハイテク」抗議船 Ady Gil 号(26トン)と「衝突」し、後者の船体が切断される事件が起きた。船員は一人が肋骨を折ったものの、無事に Sea Shepherd の僚船に救助された。

 この事件を筆者が初めて知ったのは、NHK BS1のニュース番組であったが、その際は「日本船の前を故意に横切った抗議船に衝突した」と報じ、ヴィデオ映像も衝突直後の模様を映して、実態が不明確なものだった。その後の情報も、日本では、例えば『時事通信』が「アディ・ギル号が第2昭南丸の前方を横切る際に急減速、避け切れなかった第2昭南丸の前方とアディ・ギル号の船首がぶつかった」と伝えたような主旨の報道が続いた。
 

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 ところが、その後英国・フランス・オーストラリアなどのメディアが伝えたヴィデオ映像と説明では、明らかに日本での報道内容と異なるものであった。先ず、第2昭南丸と抗議船は、かなり離れており、後者は何らかの原因でほぼ静止状態にあった。ところが、前者は、放水しながら加速度的に接近し、 Ady Gil 号に向かって舵を切るようにして衝突したのである。しかも、沈没の恐れがあった抗議船の乗員救助をせずに、第2昭南丸は現場を離れたのである。
 YOU Tube 動画などで、何時でも見られるので確かめられるが、何らかの意図で、第2昭南丸は「衝突」したのである。明らかに、避けようと思えば避けられた「事故」であった。この辺の事情は、『ニューヨーク・タイムズ』紙(1月7日付)でも、報道している。

 日本側が「テロリスト」と断ずるSea Shepherd 側が、捕鯨船団に対して、異臭弾を投げ込んだり、レーザー光線を照射したりするなど、様々な妨害行為を行っていることは事実であるが、今度の場合は、「当たり所」が悪ければ、人命が失われる恐れが十分にあった重大事件である。
 この事について、日本政府の農林副大臣の談話は、日本側の正当性を主張するのみであったが、対外的反響を考慮するならば、極めて思慮を欠いた対応である。


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 世界各国の、この事件についての新聞報道は、比較的穏やかな内容のものが多いが、ヴィデオ付の報道では明らかに日本船団側の「攻撃的」姿勢を示唆している。かねてから「反捕鯨」世論が圧倒的な英国など欧州諸国、オーストラリア、ニュージーランドでは、反日世論が盛り上がりを見せ始めている。注目すべきは、今度の事件を特に大きく報道している中国メディアである。
 中国系新聞及びブログが、日本捕鯨船団の「挑発的行為」を各国で大きく取り上げているのである。

 ここに、幾つかの新聞の読者欄の「声」を紹介しておきたい。

 「ヴィデオ映像を見れば、環境活動家が言うように、明らかに静止状態のAdy Gil 号に向かって日本船が舵を切っている」
 
 「クジラはこの地球上で最も美しく、素晴らしい哺乳類だ。私はクジラを絶滅から救うどんな行為も支持する。彼らは日本人の蛮行に立ち向かう英雄だ、というのが私の意見だ」                (The Times)

 この他、現ラッド政権が、オーストラリア経済水域での日本商業捕鯨を許していることへの批判や、日本の、「調査」に名を借りた商業捕鯨を非難する声が多く見られる。
 勿論、一方には、反捕鯨を標榜するNGO Greenpeaceが、危険行為を避けて、南極海での日本捕鯨船への「直接行動」を自粛しているのに対して、Sea Shepherd 側が, テロリストまがいの行動形態を取っていることに対する批判が、少なからずあることも事実だ。

 『朝日』など日本メディアが伝えているように、オーストラリア・ニュージーランド両国が、この「衝突」事件の調査に乗り出すことになった。外交か、国際法廷での解決に委ねることになる。


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            オーストラリア・ABC news (1月9日)より

 更には、「調査捕鯨」という名の商業捕鯨の妥当性についても、これを機にクローズアップされることは間違いない。今や遠洋に捕鯨船団を出しているのは唯一日本だけだ。
 この辺で、「調査捕鯨」などという屁理屈を止めて、日本沿海の「伝統捕鯨」に回帰した自己主張を、国際社会に訴える方向に改めたらどうだろうか。                      
                             (2010.01.08)

<追記> オーストラリアのニュースを見る限り、Sea Shepherd はテロリスト団体とは看做されず、「熱心な」動物愛護団体と遇されているようだ。野党・自由党は、ラッド政権が公約を果たさず、日本の捕鯨を事実上、容認してきたことを追及している。 (ABC News)
 なお、Sea Shepherd は、「沈没した」Ady Gil 号に替わる新鋭船を建造することを発表している。 (News.com.au)                          (2010.01.09)         


<写真> The Times, The Guardian, Libération
 
by shin-yamakami16 | 2010-01-08 16:24 | Comments(0)