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by shin-yamakami16

オバマ一般教書「演説」と、その反響

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        オバマ大統領、後ろはバイデン副大統領とペロシ下院議長


「国民医療法」より「雇用創出」優先か?

                                山上 真

 今日午前11時過ぎ(日本時間)から71分間行われた米国オバマ大統領の議会演説は、相次ぐ「下院補選」の敗北後のことだけに、その首尾の程が心配されたが、落ち着いて、言いよどみが見当たらない「余裕の」演説だった。『ワシントン・ポスト』紙は、最早‘ Mr. Nice Guy’ ではなく、 ‘rough, tough, and undaunted ’ (粗野で、タフで、恐れを知らない)大統領と形容している。

 演説冒頭、オバマ氏は上下両院議員を前にして、徒に政争に明け暮れることなく、「国家的団結」を呼びかけた。
 内容は先ず、大統領就任一年間の、金融危機対策の成果についての肯定的自己評価、今後の中小企業援護の方針と、今年中の150万から200万人に及ぶ雇用創出、更には、1兆4千億ドルに上る財政赤字対策ということが中心的テーマであった。彼はこれら経済問題に、演説時間の3分の2を費やした。

 注目されるのは、演説中程で触れられたエネルギー対策である。環境対策を考慮して、「安全でクリーンな」核プラントを開発する方針を明確にしたが、これは、従来の民主党主流の「バイオ」など「非核エネルギー」の主張と相容れないもので、大きな論議を呼ぶことだろう。しかし議会場は、この件で、共和党議員からと思われる大拍手に湧いていた。

 焦眉の課題だった筈の「医療制度」改革については、「十分な説明を尽くさなかった」ことを詫びて、当初の包括的法案より小規模のものに変える意図を示唆しているのは、一般に驚きをもって受け止められている。今後どうするのかについて、明確な説明がなかったのは意外とされている。

 対外的な問題は比較的少ない言及しか為されず、はっきり言って、内政面重視の演説だった。深刻なアフガニスタン「情勢」の分析もなく、「北朝鮮」・イランの核開発問題についての「警告」以外、何ら新味が無かった。パレスチナ問題については、言及さえしていない。
 一方、中国・ドイツ・インドの数学・科学技術面などの水準高揚・進歩に比して、米国が立ち後れていることに警告し、すべての段階の教育水準を高める方策を明示した。


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 大統領就任時にモットーとしていた「チェインジ」については、オバマ氏は、「そう素早くチェインジが齎されるものではない」とした。
 共和党議員はオバマ演説に対して、「儀礼的起立」も少なく、嘲笑的な態度を取る者も居て、強い対抗意識を燃やしているようだった。

 米国内での「オバマ演説」直後の反応は、CNN調査に依ると、去年の一般教書演説の時より、熱狂的支持が20%程落ちているものの、約70%の視聴者が肯定的に評価しているという。この演説が、中間階級とされる「無党派層」の支持をターゲットにしたと言われているが、その目論見は一応うまく行ったようだ。 (2010.01.28)


<写真> The New York Times

 
 
by shin-yamakami16 | 2010-01-28 18:37