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by shin-yamakami16

「プリウス」を巡る幾つかの「不思議」

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      2月6日英国『テレグラフ』紙に掲載されたトヨタ社長の表情


トヨタは何故「リコール」を遅らせているのか?

                                    山上 真

 今トヨタ車の問題が、全世界で話題に上っている。少し前は例のJAL「破産」が世界のメディアを騒がせた。日本が長らく誇ってきた筈の「資産」が音を立てて崩れ始めている。

 今朝の各国紙を見渡しても、トップ記事扱いで「プリウス」の問題を報道している。「プリウス」は確かに、世界トップクラスの低燃費と低排出ガスを誇る優秀車であるが、ここに来て、突如として、その名声を傷つける事態に直面している。 

 英国『タイムズ』紙は、「トヨタはプリウスのブレーキ故障の原因調査を命じられた」という見出しで、A4 二ページに当たる紙面を割いて、「日本政府は最新型プリウスのブレーキ・システムの欠陥問題を調べるように命じて、トヨタはその名声を改めて害った」としている。

 フランスでは、『ル・モンド』紙が、「トヨタはプリウスのブレーキ故障のことで数十件の苦情を受けている」というタイトルの記事だ。『リベラシオン』紙は、「ペダルの後はブレーキ?」、『フィガロ』紙は、「トヨタのプリウスのブレーキに対する幾つもの苦情」といった具合だ。いずれも、米国・日本でのアクセル・ペダル故障に関わる膨大なリコールに続く、トヨタの抱える問題の深刻さを指摘している。

 英国『デイリーメイル』紙 (2月3日付) は、「ブレーキが効かない!…しっかり掴まって、神に祈って!:トヨタ「レクサス」衝突事故で亡くなった彼と家族の最後の言葉」というセンセーショナルな見出しで始まる告発記事を掲載している。カルフォルニア San Diego の高速道で、トヨタ車のアクセル・ペダル故障の為に亡くなったMark Saylor 氏一家3人と親族1人が、事故1分前に、地元パトロール隊に緊急電話した様子を詳述している。この場合は、米国で既に広く伝えられている、「レクサス」(2009 Lexus ES350)車のアクセル関連の事故だ。
 

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     「 レクサス」事故 (2009.08.28) で亡くなった Mark Saylor さん一家


 米国では、事故が多発して苦情が出ているにも拘らず、トヨタ側がリコールを敏速にしないなど、対応が鈍く遅いことが問題となっている。これについて、米国・LaHood運輸長官は、トヨタに対して「制裁金」を課すことを表明している。
 
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 トヨタ車の「運転を止めるべき」と発言、その後取り消した米国・ラフード運輸長官

 
最新型プリウスが「1秒間ほどブレーキが効かず」追突事故を起こしたなどの事件について、ここに幾つかの疑問を呈したい。

 日本国内での「苦情」の件数が、最初、十数件としたのに、その後、「トヨタ代理店への分が増えて」約70件に達したことはどういうことか?

 続いて、米国内の、プリウスについての「苦情」が、約100件出ていたことの経緯は?筆者が知る限り、突然出て来た数字である。

 伝えられる所に依ると、トヨタは苦情が出ていたのに、公表せずに、一ヶ月前に「ブレーキ・コンピュータ」の手直しをして、既に「処理済み」としている。そして、それぞれの「苦情」毎に対応をとっている、としている。しかし、その間に、何も知らされない顧客は、新たに買ったりしており、ブレーキ関連の問題を抱えていたことになる。

 プリウスの問題が公表されたのは、つい最近であるが、報告を受けていた政府側の対応に問題はなかったのか?ここに至って、前原・国土交通相が、「リコールするべきか調べる」と言っているのは、かなり不可解だ。閣僚の中に、何かトヨタと「深い繋がり」でも持つ者が居て、客観的な判断が為されていないことでもあるのか?

 目下のところ、「トヨタ問題」を、立派なことではあるが、NHKが先行して報道していることが気になる。例えば、国民の「生命の安全」には余り関わらないと思われる「小沢」報道には、あれ程精力を注ぎ込む民放TVなどが、この「トヨタ問題」には、放送時間を僅かしか割かないのは何故か?車の宣伝収入に大きく頼っている商業放送の「宿命」と言ってしまえば、それまでだが。

 トヨタの車が「日本経済を担っており、これが駄目になるとえらいことになる」といった判断が優先され、人命にも関わる重大な問題という基本認識が欠けていなければいいのだが、その辺は大丈夫か?日本国内では大甘に見られても、国際舞台では通用しない。一層、総体としての「日本は危ない」というイメージが強まるだけだ。

以上の「素朴な疑問」を呈して、関係者の猛省を促したい。 
                           (2010.02.03)


<追記 1> 今日2月5日、トヨタ社長・豊田章男氏が名古屋市で「漸く」記者会見し、トヨタ車問題について陳謝したことは、直ちに欧米メディアによって伝えられたが、米当局と協調して対策は取るものの、「プリウスのリコールを未だ決めていない」ことをいずれも指摘している。


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<追記 2> 2月6日付の英国『デイリー・テレグラフ』紙は、トヨタ社長の口を歪めた写真と共に、'Toyota woes: Staring into the abyss' (トヨタの苦悩:深淵を凝視して)という見出しの長文記事を掲載している。『ロイター』配信の同じ写真が、仏『リベラシオン』紙にも掲載されている。(冒頭写真)


<追記 3> 2月7日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、'TOYOTA has Pattern of Slow Response on Safety Issues' (トヨタは安全性問題についての遅い対応を様式化している)という見出しの、長文の記事を掲載している。「プリウス・リコール」は実施することに決めたようだが、厳しい批判は当面続きそうだ。


<写真> The Times, Daily Mail, AP=共同, The New York Times, Daily Telegraph
by shin-yamakami16 | 2010-02-04 12:07 | Comments(0)