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by shin-yamakami16

「イラク戦争加担」検証で早期の「小泉喚問」を

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       3月5日「イラク証言」を行うブラウン首相(前蔵相)
       証言中の「納得率」が左欄に表示される(『テレグラフ』紙より)




総選挙を控えたブラウン首相証言「参戦は正しかった」の影響は?

                               山上 真

 先程からBBC World News Live で英国「イラク戦争検証委員会」でのブラウン首相の証言を聴いている。十数分の休憩後に、彼の証言が再開される。
 これまでの所、ブラウン氏の証言は、ほぼ、先に行われているブレア証言に沿ったもので、若干のニュアンスの差はあれ、何ら新味が感じられないものになりそうだ。ブラウン首相は冒頭、イラク戦争戦死者に対する哀悼の意を表して、証言を始めた。
 
 「2003年の英米のイラク侵攻は正しかった」
 「イラク・フセインが国際法に違背したから、戦争になった」
 「戦費に上限はなかった」
 「戦争開始にあたって、戦争内閣の意思疎通は緊密に行われた」

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などのブラウン証言は、「戦後処理について米国に充分な備えが欠けていた」などの点を除いて、ブレア証言を倣ったものであった。ただ、チルコット委員長に、イラク戦争の総費用を執拗に問われて、80億ポンド(約1兆8,400億円:当時)に上ることを漸く答えた際には、やや憮然とした表情を見せた。
  179人の戦死者を出し、戦費は、開戦当初の見積りの3倍に達したのである。その英国は今、西欧諸国の中で、ギリシャと並んで最大の財政赤字 (GDPの160%)となっているのだ。戦争がいかに国家に打撃を与えるかが、如実に分かる。

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 顧みて、我が日本が小泉首相時代に、米国の要請を受けてイラク戦争に深く関わったことを忘れている人々は少ないであろう。小泉純一郎氏は、日本国憲法の規定する「海外派兵禁止」を、非戦闘地域なら問題ないという強弁によって、イラク南部サマーワに陸上自衛隊を派遣した。しかし、日本自衛隊は十数回にわたって、現地で迫撃砲弾などを浴びた。イラク全土が戦闘地域になっていたのに、非戦闘地域が存在すると思う神経の持ち主は、やはり相当の「変わり者」に違いない。

 「人道復興支援」の航空自衛隊も、当初は軍事物資・連合軍兵士を運ばないと言っていたのに、実は米軍兵士などを半ば公然と輸送していた。全くの所、戦争に加担していたのである。

 2003年12月から2009年2月までの自衛隊イラク派遣に要した費用は総計約900億円と推定されている。このほか、イラク政府への開発援助額が、2003年から3年間だけで約1600億円である。もし「イラク開戦」というものがなかったら、これらは殆ど不要であっただろう。これだけ多額の税金が、何の大義名分のない戦争の為に浪費されたのだ。
 
 その責任を明らかにするのが当然なのは、「朝日社説」(2010.02.22)が冒頭で述べている通りである。
 
 「戦争にかかわったなら、後でその政策決定に至る過程をきちんと分析し、是非を判断する。それは国家としての責務ではないか。ましてや間違った戦争となればなおさらである」

 また、最近のNHK『クローズアップ現代』で、イラク民衆の中で援護活動に従事していて武装勢力に連れ去られ、釈放された後は、日本での「勝手な行動」というバッシングを受けた高遠奈緒子さんの不屈の活動を放映していたが、これも、イラク戦争の暗部を衝く証言となった。

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 ここで気になるのは、この問題に対する民主党政権の「優柔不断さ」である。支持率傾く中、自民党政権のエラーを衝く絶好の機会なのに、「お上品にも」それをしない。各方面のNGO、政党などがイラク戦争検証の為の「独立委員会」設定を求めているのに、これまで何ら政府側の動きが見られないのは、どういうことか?

 勘ぐれば、「普天間」問題との関わりで、主体的にイラクに侵攻し、「戦闘終結宣言」後も、未だに「戦争責任」を明確にしていない、オバマ政権下の米国の「機嫌」を害いたくないという「気配り」でもしているからなのか。

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               バグダッドでの反米デモ


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               イラク中南部・ナジャフでの反米デモ


 日本の「イラク検証」は、それこそ我が国の独自の課題であり、他国に何の遠慮もするべきではない。むしろ、イラク戦争に反対の立場だったオバマ氏に、好い意味の示唆を与えることになるだろう。「戦争国家」米国を正すのにプラスに働くに違いない。検証中の英国、既に「イラク戦争は国際法違反」の結論を下したオランダに次いで、日本も、米国に於ける「イラク戦争検証」を促すことを期待したい。 (2010.03.06)


 
<追記> 「イラク証言」を行った翌日3月6日、ブラウン首相は突如としてアフガニスタン南部の前線を「電撃訪問」した。野党保守党幹部や元軍最高幹部に、ヘリコプターや、装甲車、兵士の装備などの必要経費出費を、蔵相だったブラウン氏が削減していたことを厳しく非難される中、総選挙を数週間後に控えて、「証言」の懸念される悪影響を弱めることと、メディアの「攻撃対象」を分散させることを狙った、多分に政治宣伝的スタンド・プレー(political stunt)と受け取られている。
BBC ニュースによると、そのアフガン戦線では、サンギン地区などで、過去6日間に6人の英国兵が爆弾・銃撃などで死亡しているということだ。 (2010.03.09)


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 <写真> Daily Telegraph, David Leeson, AfterDowningStreet. Org, PIGBIRD
   The New York Times, The Times
Commented by 山口ナツオ at 2011-02-01 21:26 x
小泉こそ証人喚問すべきだ。
by shin-yamakami16 | 2010-03-06 11:11 | Comments(1)