2010年:708人に達したアフガンNATO軍戦死者
2010年 12月 30日
アフガン「敵対的地域』
拡大する一方の「タリバン支配地域」
山上 真
昨年末にも「アフガン情勢」の悪化について書いたが、米国・英国など「連合軍」にとっては、今年もなお一層深刻な「戦況」を呈している。
12月27日付の仏紙『ル・モンド』は、米国経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』掲載の二枚の「国連秘密地図」を紹介して、これまで「戦闘地域」でなかったアフガニスタン北部まで、タリバンが進出していることを伝えている。
ヘルマンド州などアフガン南部・東部地域は、英国・米国軍が長期に渉って特別作戦を続けており、依然として「高度危険地域」にも拘らず、後退にまで至っていないが、北部Kunduz及び西部ヘラトでは、警戒段階が「中」から「高」へとエスカレートしている。この事実について同紙は、
‘Ces documents internes à l’ONU contredisent le discours official de la Maison Blanche, selon lequel des “progrès fragiles” ont été obtenus contre les talibans.’ (これらの国連秘密文書は「若干の進歩」がタリバンに対して図られたというホワイト・ハウスの公式声明と矛盾するものだ)
と述べて、オバマ大統領の次のようなアフガン作戦「成功」声明(12月16日)、即ち、
‘We are making considerable gains toward our military objective’
(我々は軍事目的に向かって相当の前進を遂げている)
に反論している。
「アフガン作戦前進」と言うオバマ大統領
今年はすでに、708人のNATO「国際保安部隊」(ISAF) 兵士が戦死しており、その内、米軍が497人である。
現在、アフガン全土のISAF部隊は、追加派遣の米軍兵士30,000人を含めて約140,000人が戦闘に参加しているが、タリバンのますます熾烈な抵抗に直面している。
英国部隊の司令官Sir David Richards は、タリバン側も打撃を蒙っており、過去3か月間に、3,300人以上の武装抵抗勢力が死亡したか、捕えられたと語る。
一方、国連機関の調査によると、アフガン戦争に巻き込まれた民間人犠牲者は、今年1月から10月までで2,400人、負傷者は3,800人以上に上るという。
一昨日28日、ヘルマンド州Lashkar Gah地区で道路に敷設されたIED(即製爆弾)処理に当たっていた英軍兵士Charles Wood(34歳)は、不運にも爆発に巻き込まれて死亡した。2001年の英国軍参戦以来、348人目の犠牲者となった。今年に入ってからは、彼を含めて102人が死亡している。
妻Heatherさんと一緒の在りし日のCharles Woodさん
(2010.12.30)
<追記> 12月31日付『読売新聞』が伝える、米CNN TV と'Opinion Research'社が30日発表した合同世論調査によると、アフガニスタンで米軍が展開している軍事作戦に63%が反対し、「賛成」は35%だった。アフガン情勢に対する認識をめぐっては、56%が「悪い」と答え、3月時点の調査結果43%を上回ったということだ。これを見ても、オバマ政権のアフガン政策は米国民大方の不信を買っていることが分る。 (2010.12.31)
<写真> Le Monde, The Daily Mail, The Guardian
by shin-yamakami16
| 2010-12-30 20:41