世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

日本「大地震・津波」と原発「メルトダウン」の衝撃

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「人災」核事故を「小さく見せる」管政権・メディア

                                   山上 真

 日本の東北・東関東地方を、3月11日、とてつもない地震と大津波が襲った。

 この日午後2時過ぎ、筆者は偶々千葉県東部のホーム・センターに居た。木材などの資材売り場を歩いていた時、突然ガタガタと屋根が音を立て始めて、同時に自分の身が揺らぐのを感じた。辺りには幾人か人が居て、最初は何事か気づかない様子だったが、異常に長引く震動に驚いて、漸く騒然となった。

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 普通の地震ならば、1分位で収まるものだが、この場合は、全く異なっていた。最初の大きな揺れから数十秒毎に、激しい震動が繰り返された。

 揺れが少し収まって、店員・客が集まっている家電売り場のテレビを見ると、このマグニチュード8.8の地震の震源は仙台沖合であることを知った。その後地震規模は9.0という未曾有の数字に修正されたが、震源地から400キロも離れた所での斯くのごとき揺れを体験し、改めて「震源地・東北」の被害の大きさを想像して怖れた。

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 この後二階駐車場の車に戻って、暫く様子を見ようとしている間も、下から突き上げる激しい震動に、車がひっくり返るのではないかと怖れる様な状態が続いた。ラジオのニュースで、この辺り沿岸も数メートルの津波が襲う恐れがあることを知り、ともかく帰宅を急ぐことにした。

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 途中の交差点の信号は停電で機能していなかった。普段は無い渋滞が始まっていて、特に東京方面に向かう車の動きは滞っていた。道沿いの店舗はどれも照明を失っており、レストラン・コンビニなども閉店の様子に見えた。「大地震」後一時間も経ていないのに、正に異常な風景になっていた。


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 日を追って被害の全容が明らかになりつつあるが、死者行方不明は1万6千人以上、損壊家屋10万という空前の規模である。地震後一週間を経て、数十万の人々が追い打ちをかけたような降雪の寒気の中に生きて耐えねばならない。

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 地震・津波という不可避的な自然災害に加えて、原子力発電施設「機能不全」による放射能被害という人災が人々を苦しめ、その「原子炉・炉心溶融」事故の「普遍的重大性」が世界中の関心事になっている。「人智を超える」規模の大津波が、核施設の冷却装置という付属施設を押し流してしまったことが原因だという。


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 その建設に当たってきた人々は、地震対策は万全だったという言い訳をしているが、今度の事故で分かるように、原子炉冷却施設が不可欠であるからには、その保全を充分に考慮して、津波対策を完備しておくことは当然だった筈である。「何せ想像外の大津波だったから」では済まされない。

 「炉心溶融」という事故は、米国「スリーマイル島原発」(1979年)、ロシア「チェルノブイリ原発」(1986年)事故を思い出させ、原爆体験を持つ日本人には「核と放射能」という殊更悲劇性を帯びた事件として受け止められざるを得ない。

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 この核事故が起きてから、当事者の東京電力は言うまでもなく、日本政府及び監督官庁の経済産業省は、出来る限り事故を過小に見せるように努めていた。当該原発の放射能測定値が公表されているものより遥かに高いことを、災害救助に当たっていた米軍ヘリの乗員によって指摘される始末であった。危険を感じた米国艦は、「事故原発」から遠ざかるべく北上したという。

 米国オバマ政権は事故発生当初から、原子炉冷却機材などの提供を含む援助を日本政府に申し出ていたが、菅首相は、原発「廃棄」を怖れる東京電力側の意を酌んで、断ったということを『読売新聞』(3月18日付)が報じている。大型ヘリからの「海水注入」の策も米国側の再三に渉る要請を受けてのものだった。

 事故の「深刻さ」を国際的に評価する値も、例えばフランスの原子力専門家が今度の日本原発事故について早くから「レベル6」としているのに、日本原子力・保安院は今日18日、漸くこれまでの「レベル4」から「レベル5」に引き上げたという。これは、折しも来日中のIAEA事務局長天野氏が菅首相に会って、「情報公開をきちんとするように」求めた後のことだ。


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 こうした後ろ向きの日本政府・社会の状況に対して、災害そのものの過酷さに立ち向かう日本人の「強靭さ」を称えつつも、批判的な見方が強まっている。「福島原発」の周辺30キロ「危険域」を米国・英国など幾つかの国々は、80キロ圏に拡げており、フランスなどは、日本そのものからの仏人離日を勧めている。実際のところ、成田空港では、帰国する外国人が列を為しているという。
 こう見ると、日本は「魅力的な国」どころか、自然災害に加えて、人為災害に鈍感な、「危険な国」というイメージを抱かれ始めているのかも知れない。

 我が国の現状を「手前味噌を並べて」肯定的に伝えていることが多いマス・メディアの責任は大きい。発足前は慎重だった管政権が「原発推進」路線に転じ、更には企業・財界の意を受けて、インド・ヴェトナムなど海外に原子力施設・資材を輸出することにまで及んでいても、メディアは何ら批判めいたことを口にしなかった。今更、新聞がその社説で、原子力「安全神話の崩壊」などと書いても、もう遅過ぎるのだ。

 原子炉から放射能が漏れて、重大事態が生じている今でさえ、TV報道では「大したことはなく、安全だ」などという、意識的に「呑気な」言動をする「学者・評論家」を多く登場させている。「事故原発」から少しでも遠く離れて、幼子を守ろうとしている人々の「苦しい心」を嘲弄することは許されない。                             (2011.03.18)


<写真> Le Monde, Le Figaro, The Times, The Daily Mail, The New York Times
by shin-yamakami16 | 2011-03-18 22:39