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by shin-yamakami16

消費増税「反対圧倒」世論に挑むメディアの「悪あがき」

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             軍事関係支出上位国(単位10億ドル)


マス・メディア「一方的宣伝」への監視機関を

                                  山上 真

 消費税を増税しようとする野田政権は、ほぼ6割の国民が反対で固まっており、難儀している。財界が法人税増税への方向をブロックすべく、国民負担を狙うのは自然な話で、支配下にある新聞・テレビなどのマス・メディア機関を総動員して、国民大方の「反対世論」を覆そうと謀るのは当然の動きだ。しかしながら、最近の「読売・世論調査」で、「野田一体改革」の消費増税支持が僅か16%であることを示されているように、ますます困難を来している。

 野田が首相としての演説で「一体改革」なるものを改めて訴えた直後から、国民世論の反撃に遭ってひと頃鳴りを潜めていたマス・メディアは一斉に、有らん限りの機会を使って、「消費増税」キャンペーンを再開した様だ。特にTBS系とANN系は、呆れる程不自然な番組編成で「消費増税・宣伝」を展開しており、異様だ。例えば、これらの報道機関は、消費増税を必要としている背景として、間もなく累積額一千兆円を超える財政赤字を挙げて、「赤字時計」などを利用して危機感を煽っているが、何故これだけの赤字額になったのかの説明を一切していない。

 危機感を露にするTBS系は、例えば 野田政権に協力姿勢を示さない「谷垣自民」への圧力をかけるつもりなのだろうか、既に「賞味期限」を過ぎている筈の前首相森某の発言,即ち「野党は消費増税に協力するべきだ」などを長々と紹介したり、「サンデーモーニング」で議員定数減を主張する寺島某の「少数政党など無視して実現すべきだ」などの暴言を許しており、「公正中立」の原理を守るべきメディアの立場を逸脱している。
 「朝日」系は、ANN TVの古館某が、例の財政赤字進度「時計」を用いて野党の「消費増税」反対姿勢を揶揄する手に出ているが、ここでも、何故巨額赤字に陥ったかの説明が無い。
 一般に、政治家の資質を最もはっきりと表す「公約」遵守の姿勢を、殆ど問わないのも、最近のマス・メディアの特徴だ。「マニフェスト」をほぼ全面的に反古にした野田の「約束違背」を責めず、寧ろ、その姿勢そのものに協力する報道態度が顕著である。こうなると、もう「言論機関」としての自滅を告白しているのと同然だ。
 
 消費税は元々,16世紀にスペインと戦っていたオランダが「戦費」を調達する為に民衆に課したことから始まったようだ。それ以来、金持ちを優遇して、貧富に関わらず、「等しく」課税出来る便利な税として各国で活用されてきた。

 フランスでは、消費税に当たる付加価値税TVAは現在19.6%であるが、食料品は5.5%に抑えている。つい最近、サルコジ大統領は、アフガン・リビアなどでの戦費が嵩んでいる為、更に1.6%を上乗せすることを発表している。
 この他、大統領は、TVAでの「金持ち優遇」印象を避けるべく、「金融取引税0.1%」を導入しようとしている。

 英国の付加価値税は20% で、食品一般には課税されないが、外食・テイクアウト・菓子には20%課税されている為、外食を好んでする国民性故に、庶民泣かせの税であることは確かだ。この国でも、イラク・アフガン・リビアなどでの相次ぐ戦争参加で財政困難に陥っており、付加価値税収入が補填されていることは疑いない。

 日本では、自衛隊という「憲法違反」の軍隊に4兆7752億円(平成23年)という膨大な支出が為されており、その費目には護衛艦1155億円、潜水艦547億円などの数字が並ぶ。今後も一機99億円のF35戦闘爆撃機40数機を米国から購入することになっており、ベラボウな数字に及ぶ。だからこそ,次のようなブログも書かれている。

国防予算


★日本国憲法は前文で、「日本国民は恒久の平和を念願し」、第9条で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は永久にこれを放棄」、「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」、「国の交戦権はこれを認めない」。と定めている。


★さて現実はどうか。スウェーデン・ストックホルムの国際平和研究所は各国の軍事予算を調査し、毎年年報の形で発表している。2006年7月、YEAR BOOK2006が公刊された。その中に「15の主要軍事費支出国(2005)」という資料がある。毎年のことながらその中に日本の名前がある。次表はその中のトップ10。国際平和研究所は頭文字[SIPRI]だけで知る人ぞ知る存在だ。

米10億ドル(為替レート換算)
rank        Country           Spending
1           USA            478.2
2           United Kingdom    48.3
3           France          46.2
4           Japan           42.1
5           China           41.0
6           Germany          33.2
7           Italy            27.2
8          Saudi Arabia          25.2
9             Russia 21.0
10              India 20.4
       
 これだけの「不急の」大軍事費を支出する一方、政府は、一度約束した筈の福島県知事の求める、18歳以下の「医療費無料化」を拒否している。費用は僅か年間100億円弱で、F35機一機分に過ぎない。これがどういうことか、メディアは追及しようとしない。

 戦後六十余年に渉って浪費され続けた「防衛費」は、現在の国家累積赤字一千兆円の内のかなりの部分を占めているに違いない。もし、日本国憲法を遵守して、「武力」に頼らず、平和的に外交問題を解決する道を選んでいたら、有り得なかった「大赤字」なのである。これは長期間政権の座に居た「自民」など保守党の責任が大きいが、今日多くの人々の「変化」への期待を担った筈の「民主」党が、殆ど同じ誤りを引き継いで変えようとしないのは、大きく成長してしまった軍事産業を抱える日本財界及び、中国・ロシア・「北」朝鮮を事実上の「仮想敵国」とする米国の戦略的野望と結び付いているからに他ならない。とにかく、途方もない軍事費を垂れ流している限り、どんなに消費税を上げたところで、決して「財政赤字」が減ることはないことは、英・仏などEU諸国の先例を見れば一目瞭然であり、日本の政治家諸君もこの事実を銘記するべきだ。

 消費税は、所得が少ない人ほど、より高い割合で払わねばならない「逆累進性」故に、所得の少ない人々に打撃を及ぼす一方、利潤・利子・配当に課税されない故に、富裕層に有利な「最悪の税制」と言って差し支えない。

 国民本位の財政を確立する為には、真の経済的平等性に基づいて、所得税及び法人税に増税対象を絞るべきだ。そうすることが、安定的な「福祉社会」を築く唯一の方法である。

 かれこれ10年程前までは、日本のマス・メディアも時の政治について、厳しい批判的態度を取っていたように思われる。少なくとも,今日見られるような、どの新聞もテレビも「消費増税」について「全面支持」というような付和雷同は無かった。どうしてこのような「ていたらく」になったのか,という点については、一つには、日本メディア界に対する日本財界の支配力が強化されたことと、米国国務省などの徹底的な工作が成功し、CIAの工作員が社長になったY新聞ばかりでなく、他のメディアでも「米国帰り」が編集部で幅を利かすことが普通になっていることが挙げられよう。その結果として、最近の新聞紙上などで、「米国外交への批判」は稀にしかお目にかからない。それどころか、最近の「イラン」問題で見られるように、米国・EUなどの戦争瀬戸際策と言える「経済制裁」支持が、大手を振って罷り通っているのである。この結果が何を齎すか、「火を見る」よりも明らかだ。

 資本を握る側の一方的「情報操作」を規制する必要が,今や出て来たように思われる。ただ単に「粗悪番組」に注意するだけでなく、時の政権や財界と結びついた「追従報道」を客観的に「監視」し、行き過ぎた報道姿勢に対しては、公聴会などで「公的批判」を展開できるような民間機関を設けたらどうだろうか。最終的には,司法判断を仰ぐ可能性もある。 (2012.01.30)

                    <追記>
1. 新聞記事に目を通していたところ、上記内容と関連した興味深い記述を偶々見つけたので、ここにご紹介しておきたい。(2012.02.11)

『産経新聞』
「官報複合体」になるな 財務省の論理に“洗脳”されつつあるメディア
2012.2.2 07:12 [消費税]
 日本経済新聞時代の後輩で、日経記者をやめて米カリフォルニアに拠点を構える牧野洋氏が刺激的な本を書いた。彼は本欄の執筆者のひとりでもある。(フジサンケイビジネスアイ)

 タイトルは、「官報複合体」(講談社)。氏は大手新聞一般の「官報化」、つまり官製報道化を取り上げているわけだが、ではわれわれの古巣、日経はどうかと気になってくる。

 かつて日経ではよく、「官報みたいな紙面をつくるな。官製発表にひきずられるな」と同僚とよく議論したものだ。今の日経でも、同じ志を抱く記者は少なくないのだが、残念ながら主流にはなっていないようだ。

 そんなときに、1月31日付の日経朝刊のある記事をみて、「うーん、官報かこれは」と、思わずうなってしまった。記事は、財務省による歳出と歳入の見通しを報じたもの。消費税率を2015年10月に引き上げても国債残高は21年度末に1000兆円を突破し、同年度の国債利払い費は20兆円へと倍増するという。さらに、消費増税を柱とする「社会保障と税の一体改革」をした場合でも財源不足は45.4兆円に上るが、しない場合53.6兆円に膨れる、とか。

 が、試算なら必ず前提条件がある。人目を引く見出しに躍らされず、内容をうのみにしないためにはそのチェックが欠かせない。よく読むと、名目成長率を1%台半ば、新発10年物国債利回りを2%程度、とある。米欧の予算見通しでは3%台が当たり前の名目成長率なのだが、こうも極端に名目成長率が低ければ、いくら増税しても税収は増えないのは、これまでのデフレ下の税収の低迷を見ても明らかだ。

岩田規久男学習院大学教授の試算によれば、名目成長率1%の上昇は国税収入を2.3~3.4%増やす。名目成長率4%が11年度以降継続すれば、15年度の国税収入は10年度比で23兆~37兆円も増える。10兆円余りの消費税5%アップの場合の消費税収増よりも、名目成長率向上による増収効果は絶大だ。

 財務省の今試算のもくろみは、消費税10%でも財政悪化は進む、だからもっともっと消費税率を引き上げる必要があるという財務官僚の考えの、世論への「刷り込み」だろう。野田佳彦内閣は、こうした財務省の論理にとっくに「洗脳」され、成長率をアップさせる政策よりも、増税を優先させている。

 日経記事の唯一の救いは、財務官僚の思惑に沿ってもっと増税せよ、とは言わなかったことだ。そのかわり「歳出削減が不可欠」ともっともらしい副見出しを付けたが、本筋の議論ではなかろう。

 増税また増税という財務官僚路線では、デフレがさらに深刻化し、それに連動して超円高が続き、日本経済規模が縮小に縮小を重ね、財政自体も破綻しかねない。日経がそんな問題意識を持てば、「官報」に堕すことはない、と思うが、いかがだろうか。(産経新聞編集委員・田村秀男)

2. 時事通信「世論調査」結果(2月9,10実施)は次の通りです。ほほ,同時期に行われたNHK「世論調査」では、野田政権支持率が何と31% という「高率」なのですが、これはどういう「配慮」なのでしょうか?因にフジ・FNN では26.4% で、他のメデイアの調査でも、野田内閣支持率は全て20%台です。この所、NHKの消費増税賛成キャンペーンは常規を逸しているようです。(2012.02.29)

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<資料> Gigazine
by shin-yamakami16 | 2012-01-30 10:26