アフガン戦争:遂に「400大台」を超えた英兵戦死者
2012年 03月 09日
改めて問われる戦争の「大義」
山上 真
今週6日(火曜日)、アフガニスタン南部Helmand州で作戦中の英国軍戦闘車両が、タリバンによって仕掛けられたと思われる路傍爆弾IEDに触れて爆発し、同乗の6人の兵士全員が死亡した。IED自体が極めて爆発力が大きかったことに加えて、装甲車内の砲弾などが誘引爆発した為に、車体は原型を留めない程、破壊されていたようだ。
これだけの英国軍被害は、死者14人を出した英国空軍偵察機Nimrod が2006年9月にアフガン上空で爆破・墜落した事件以来のことである。2001年に英国軍がアフガン参戦を始めて以来、404人の兵士が戦死したことになる。
6人が乗ったのと同型の戦闘車両
今度の悲劇的事件で注目されたのは、犠牲者の内5人までが19歳から21歳の若者たちであったことと、その多くが、西ヨークシャー出身の友人同士であったことだ。
BBC など主要メディアは、親族の悲しみと共に、「国の為に命を捧げた勇敢さ」を讃える報道や記事を流している。
首相キャメロンは、「アフガンに英国軍が駐留しているのは、英国本国の安全保障の為であり、アフガニスタンの独立を助けている。彼ら若者たちの犠牲は無駄に終わることは無い」と言う。しかし、
「英国兵は2014年に撤退すると言うが,何故今じゃないのか?ここに何十年居ても何も変わらないのに」という声が現地将兵の間で高まっているという。
「我々はアフガンで敗北した。この文化的に異質な土壌の上にどんなに長く居ても、何も変わらない」
というような醒めた主張が、保守系『デイリー・メイル』紙などにも現われ始めている。
このところ、アフガニスタンではタリバンが一層勢力を強め、アフガン国軍内部にさえ浸透しつつあり、先日も、訓練を施していた米軍兵が一日の内に6人、同僚アフガン兵に射殺される事件まで起こっている。正に事態は「混沌の極み」と言っても過言でない。 (2012.03.09)
<追記>
1. 上記のアフガン「英国兵6人爆死」事件に就いては、NHK が衛星TV などで翌日に短く報道したのを除いては、『読売』、『毎日』など新聞でも全く報道していない。『朝日』は、英国関係の記事として、同じ日に「英国王室三女性そろいぶみ」などという取るに足らない記事を載せているのに、「庶民の子弟の悲劇」については無視の態度だ。このような日本メディアの「報道姿勢」が一体何処から来るのか分からないのだが、もし、「戦争遂行」欧米政権への「特別な配慮」からだとすれば、「客観報道」を旨とするマス・メディアの、これほどの「頽廃」は想像するのも難しい。
(2012.03.10)
<写真> The Guardian, Daily Mail
<参考資料> アフガン戦争 NATO軍死者
ISAF参加国・派遣人数 (2012/1/9現在)と死者数(3/6まで)
派遣国 派遣人数 死者数
United States 90,000 1,911
United Kingdom 9,500 404
Canada 510 158
France 3,832 82
Germany 4,715 53
Italy 3,956 45
Denmark 750 42
Poland 2,472 35
Spain 1,502 34
Australia 1,550 32
Netherlands 1,167 25
Romania 1,876 19
Georgia 935 10
Norway 412 10
Estonia 150 9
Hungary 412 7
Czech 626 5
New Zealand 189 5
Sweden 500 5
Latvia 185 3
Finland 156 2
Portugal 117 2
Turkey 1,846 2
Albania 286 1
Belgium 520 1
Korea, Republic of 350 1
Lithuania 237 1
by shin-yamakami16
| 2012-03-09 22:44