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by shin-yamakami16

「右傾化ニッポン」なぜ公約に「国防軍」「尖閣常駐」「核武装」に言及もー『毎日新聞』特集ワイド

漸く日本「極右傾化」に警鐘を鳴らし始めたマス・メディア

                                  山上 真

 近年の大新聞、TV局などは、財界からの「要請」を背景に、「消費増税・TPP・原発」など国民の安寧を脅かす重要問題に対して、「保守・政権」側の支持に回ることが日常化しており、大いに不信感を抱かざるを得ない状況を呈しているが、そんな中で、今日12月5日付『毎日新聞』夕刊は、極めて注目すべき「特集ワイド」記事を掲載している。最近の危機的とも言える「極右」台頭の政情に直面して、マス・メディアの中にも、一部ではあるが、漸く「警鐘」を鳴らす動きが出てきたことを歓迎したい。以下に、その『毎日』記事全文を紹介する。

特集ワイド:「右傾化ニッポン」なぜ 公約に「国防軍」「尖閣常駐」 「核武装」に言及も
毎日新聞 2012年12月05日 東京夕刊

 ◇75年前、第三極躍進→日中戦争へ 「今回の衆院選に類似」

 衆院選が公示され、各党・候補者の論戦がいよいよ本格化してきた。それにしても、前哨戦の段階から「核武装」「国防軍」など、これほどきなくさい言葉が飛び交った選挙も記憶にない。海外の一部メディアに「右傾化」と指摘されるような現在の状況をどう見たらいいのか。識者と考えた。【井田純】

 「日本は徐々にではあるが明確な右傾化のただ中にあり、第二次大戦以来、地域で最も対決的な姿勢を示している」。今年9月、米紙ワシントン・ポストは「中国の台頭と日本の右傾化」と題してこう論評した。英誌エコノミストも同月、尖閣諸島の写真を表紙に使い、巻頭記事で「対中強硬派の都知事による購入計画」が発端となり、尖閣をめぐる対立が日中の衝突に発展する危険性を警告している。

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東郷和彦・元外務省条約局長=手塚耕一郎撮影

 元外交官の東郷和彦さん(67)はこれらの報道について、「事実認識に不正確な点はあるが、日本の政策が右寄りになっているのは事実」と語る。

 右傾化の厳密な定義は難しい。保守化をとおりすぎて、国粋主義的な対外強硬論に傾くことを指すことが多い。

 外交・防衛問題についていえば、野田佳彦首相は7月12日の衆院予算委員会で、集団的自衛権の法的解釈見直しに言及している。総選挙では「自衛隊の国防軍化」を公約する安倍晋三総裁の自民党が第1党をうかがい、躍進の予想もある日本維新の会の石原慎太郎代表は「核保有検討」に言及する状況だ。

 国民感情も変化している。内閣府が先月発表した世論調査では、中国に対して「親しみを感じない」「どちらかというと感じない」と答えた人は合計80・6%で1978年の調査開始以来、過去最高だ。韓国についても「親しみを感じない」が昨年より23・7ポイント増えて59・0%に達した。竹島に李明博韓国大統領が上陸し、尖閣諸島近海に中国の海洋監視船が毎日のように現れる現状では、両国への反発は“自然な”感情とも言える。

 しかし、東郷さんは「外に強いことを言う指導者を待望するポピュリズムは民心がへこたれている表れ。右傾化を望む人にとっては中韓の一連の対応は、天の配剤でしょう」と話す。

 東郷さんが特に警戒するのは、自民党が政権公約の「領土・主権」の項目で、尖閣に公務員を常駐させるなどとしていることだ。新政権が、常駐を「さやに収めた刀」として使い、現実的な落としどころを探る外交政策を展開する可能性はあるとしたうえで、「実際に日本がそういう対応を取ったら、中国はどう出るか」と問いかける。
例えば、監視船が今のように日本の領海に定期的に入っては出ていくのではなく、常時10隻単位で領海内にとどまるかもしれない。あるいは1日に10メートルずつ尖閣に近づいてくるかもしれない。多数の漁船を領海内操業に誘引し、それを保護する形をとるかもしれない。その時、日本はどうしますか? 監視船に放水や銃撃を加えるのですか?」

 東郷さんは、尖閣領有の法的根拠については日本に100%理があると考える。だが現状は、国による同諸島の購入が、中国側に対応をエスカレートさせる口実を与えてしまった。その元は石原代表が都知事時代に打ち出した都による購入計画だ。「中国の今の行為は、国連憲章に照らして許されないが、既得権化してしまった行為をやめさせるには外交力を結集した対話がいる。尖閣情勢を今の状況にしてしまったのは、戦後の日本外交で最大級の失敗です」

 中国は10手先を読んでいる。こちらは20手先を読まなければならない、と東郷さん。「巡視船を急速に増やし、海保の人員を大幅増員、海保と海自の連携を訓練する。当然すべて国民の税金です。そういう覚悟と準備を整え、なおかつ、できる限りの対話を尽くす。ただ公務員を常駐させるのでは単なる挑発です」

    ■

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坂野潤治さん=岸俊光撮影

 「今回の情勢を見ていて思い出すのは、昭和12(1937)年4月の総選挙です」。淡々とした口調で語るのは、「昭和史の決定的瞬間」「日本近代史」などの著作がある坂野(ばんの)潤治・東大名誉教授(75)だ。

 坂野さんが類似を指摘したのは、戦前最後の正常な総選挙とされる1937年の第20回衆院選。議会第1、2党は民政党と政友会で、いわゆる「第三極」の一角だった社会大衆党(社大党)が躍進した。社大党のスローガン「広義国防」は、国民生活の改善を柱に国防政策では陸軍支持を意味するものだった。

 「資料によると、社大党に投票した有権者の多くは、生活水準の底上げとともに戦争回避への期待があった。ところが、社大党がそうした声に応じて軌道修正をする前、選挙からわずか2カ月余りで盧溝橋事件が起きた」

 そこから時代は日中全面戦争、そして太平洋戦争へと向かう。坂野さんが社大党に重ねるのは、旧・太陽の党と合流した日本維新の会だ。坂野さんは、維新の橋下徹代表代行のもともとの支持者は、既得権益の打破、国内の政治行政改革を求める層だったと見る。その支持層が、旧・太陽との合流で、石原代表ら対外強硬勢力に糾合されていく構図がよく似ているという。

現在と大きく違うのは日中の立場だ。「日本は米ソに次ぐ世界第3位の軍事大国で、経済力でも中国をはるかに上回っていた」。だからこそ日本は力を付けるべきだという声が選挙戦でも聞こえてくるが、「中国に拮抗(きっこう)する力を整えるには少なくとも20年かかるでしょう。安倍自民党総裁は、憲法改正、国防軍設置と言いますが、中国がそれを黙ってみているという保証がありますか」と警告する。

 坂野さんは「今、生活の苦しいフリーターなど若い世代が、対中強硬発言にひかれる気持ちもわからなくもない」と言う。そのうえで、歴史家としては、と続けた。「盧溝橋事件当時だって、日本陸軍内に日中戦争を回避したい勢力があったが、開戦に至ってしまった。同様に、今偶発的事態が尖閣で起きた場合、中国側がみな理性的に対処するとは限らない。『現代は国際社会が日中の武力衝突を許さない』と思うのは楽観論だ」

 選挙で強硬論を唱える勢力は、極論に訴えて人気を得ようとする少数者、いわば「ノイジーマイノリティー」に過ぎない、と坂野さんは信じる。東郷さんも「戦後日本が築いてきた平和主義が無意味だったはずがないし、あってはならない」と語る。

 行く手にあるのは「いつか来た道」ではないのか。立ち止まって考えたい。

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 <外交・防衛に関する気になる発言>

 ◇安倍晋三・自民党総裁

 「(中国と)話し合う余地はない。領土問題はないのだから、1ミリも譲る気はない」(10月15日)

 「憲法を改正して自衛隊を国防軍とする」(11月21日)

 「まずは物理力で(中国船による領海侵犯を)阻止しなければならない」(11月29日)

 「尖閣諸島に船だまりも含めて、公務員常駐を検討する」(11月30日)

 ◇野田佳彦・民主党代表

 「(集団的自衛権の解釈見直しについて)その議論というのはさまざまなレベルで行われてしかるべきだろう」(7月12日)

 ◇石原慎太郎・日本維新の会代表

 「核を持っていないと発言権が圧倒的にない」「日本は核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいい」(11月20日)

 「シナになめられ、アメリカのめかけに甘んじた日本をしたたかな国に」(11月21日)

 「尖閣問題を放置したら、チャイナはどんどん勝手なことをする」(11月26日)

 ◇橋下徹・日本維新の会代表代行

 「日本に必要な防衛力をしっかりと考えるべきだ。海洋国家日本において海保も含めた海防力強化が喫緊の課題。集団的自衛権の行使も必要。日米安保の強化も必要だ」(9月27日)

「それにしても中国は品がない。僕に言われたらおしまいだね。これではまだまだ世界において名誉ある地位を占めることはできない」(9月28日)

 「韓国と中国は民主国家として先進国入りしていない」(11月29日)

                                  (2012.12.05)

                    <追記>
1. 各メディアの中で、日本の「極右」石原・安倍・橋下などを激励している『産経』・『読売』グループは、「日本未来の党」代表・嘉田女史の動きを一々批判的に取材しているが、今日も、彦根市長が、衆議院選挙戦への参加で、一時的に知事職から離れることを余儀なくされている嘉田知事に対して、「給与不払い」の住民監査請求を出した件を大きく報道している。同じ「事情」を抱える大阪・橋下のことは無視して、嘉田女史だけを「差別」する手法は、公的メディアとしての「倫理」に著しく違背する行為であることを銘記するべきだ。まあ、進出が予想される「未来の党」を何とかして「閉じ込めたい」という体制側の願望を反映した策動の一つには違いないが、幼稚な妨害行為に加担することは、メディアとしての「自殺行為」だ。 (2012.12.06)

2. 今月2日、三重県桑名市長選挙で、嘉田女史率いる「日本未来の党」・伊藤徳宇氏が圧勝したが、マス・メディアは全て、当選者が「未来の党」出身であることを隠して報道していた。ここに、その事実を指摘しておきたい。 (2012.12.07)

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      嘉田「未来政治塾」出身・桑名市長伊藤徳宇(いとう・なるたか)氏

(1)ブログ「日月神示の研究と実践」より

桑名市長選で示された日本未来の党の実力
2012-12-07 04:24:26 | 政治・社会
<陽光堂主人の読書日記より転載>

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桑名市長選で示された日本未来の党の実力

 直近の世論調査では、自民党が有利な状態で、日本未来の党は支持率が伸び悩んでいるとされています。相変わらずマスコミは、虎ノ門の指示に従って情報操作しているようです。

 今月2日に三重県桑名市の市長選がありましたが、注目すべき結果が出ています。新人の伊藤徳宇氏が圧倒的な勝利を収めたのですが、この人は日本未来の党党首の嘉田由紀子氏が塾長を務める未来政治塾の出身です。

 ところがマスコミはこの選挙結果そのものを採り上げず、わずかに報道されたケースでも、嘉田未来政治塾の存在は言及されていません。日テレNEWS24は、3日付でこう報じています。(http://news24.jp/nnn/news86211255.html)

   桑名市長選、36歳の伊藤氏が初当選(三重県)

 2日、三重県桑名市の市長選挙の投開票が行われ、前市議会議員で新人の伊藤徳宇氏が、現職の水谷元氏を破り初当選した。伊藤氏は現在36歳で、民放テレビ局勤務と桑名市議会議員を経て今回、桑名市長選に2度目の立候補。合併前の旧桑名市時代を含め事実上の6選を狙った現職の水谷氏を倍以上の得票数で破り、初当選を果たした。桑名市では去年、公共工事をめぐる入札妨害事件で市の職員や水谷氏の支援者らが逮捕されるなど、不祥事が相次いでいた。当選した伊藤氏は「うみを出し切って、市民が誇れる桑名市にしたい」と意気込みを述べた。 (下線は引用者による)

 上述のごとく、伊藤氏の履歴に未来政治塾の名は出て来ません。今回の総選挙では、嘉田氏の日本未来の党が(良きにつけ悪しきにつけ)話題をさらっていますから、マスコミなら採り上げてしかるべきです。わざと無視したとしか思えません。

 この桑名市長選は、現職が長いこと市長の座を独占し、不祥事も相次いでいたことから、嘉田氏の知名度や塾生の実力による当選と言い切ることはできませんが、圧倒的な得票数から期待されていることは間違いありません。

 嘉田滋賀県知事は近畿地方では人気があって、ここを基盤とする日本維新の会も安閑とはしていられないと言われています。今回の市長選でこれが裏付けられました。日本未来の党やその支持者にとって、明るい材料です。

 一兵卒となって地方を遊説している小沢氏は、石原慎太郎が自民党との連携に前向きなことを捉えて、「旧守勢力である自民党と組もうとしている政党が維新を名乗るのは可笑しい」ときつい一発をお見舞いしています。

 この点、自民との連携を否定した松井幹事長の方が筋が通っています。石原らと組んだのが間違いで、これでは支持は伸びません。空中分解するのも時間の問題でしょう。面白い展開になって来ました。

(2)ブログ「永人のよそ道」より

桑名市長選で「嘉田未来塾出身者」が圧勝!!

さる12月2日に行われた三重県桑名市の市長選挙に立候補した伊藤徳宇(なるたか)氏(36歳)が、現職の水谷 元(げん)氏(56歳)を一騎討ちの末、大差で破り、初当選した。

水谷氏は過去17年の間市長を続け、合併後の桑名市においても今回は3選目を目指したが、前回に続いて2回目挑戦の伊藤氏に3倍差をつけられ、落選した。

伊藤氏は嘉田未来塾の出身で、今回は未来塾推薦。

水谷氏は民主・自民・公明・維新の4党相乗りでの推薦を受けたが、約3倍の差をつけられ落選の憂き目を見た。

それにしても「未来の党」に対する期待は、ものすごいものがある。

全国のマスコミはこの事実をひた隠しにする。困ったものだ!!!

当選・伊藤徳宇36(なるたか)42.354
   無職、元市議、未来の党推薦

次点・水谷 元56(げん)   16.254
   現職市長
民主・自民・公明・維新の四党推薦

☆☆
前回の市長選は、2008年11月30日に投開票された。

当選・水谷 元(52)     23、249
次点・伊藤徳宇(32)    17、485
津坂勝哉        7、235
岡村信子        6、566


◎桑名市では平成21年以降収賄や競売入札妨害事件などで市の職員4人と市長の私的運転手が逮捕された。

伊藤氏は「元市長の長期政権、多選の弊害で、組織が硬直化し停滞している」と主張し、「市民と一緒になり、信頼される市政に刷新したい」と訴えて支持を集めた。

市民団体が昨年末に水谷氏の解職請求(リコール)運動を展開したが、期限内に必要な数の署名が集まらず、お流れになった。◎

このことで水谷市長は変な自信を持ったのかも知れないが、やはり市民は「事の善悪を見抜いていた」のだろう。

◎今の衆院選への影響を恐れてか、民・自・公・維新を勝たせたいマスコミはこの選挙の結果を報道しないので、できる限り皆様に拡散願いたく、よろしくお願い申しあげます。

3. 米国経済紙 'The Wall Street Journal' 日本版に、米国在住女性記者が「日本右傾化」を厳しく論難する注目すべき評論を掲載しているので、ここに紹介しておきたい。 (2012.12.13)

【肥田美佐子のNYリポート】世界が右傾化日本に「ノー」 総選挙を前に
2012年 12月 10日 7:03 JST

 最近、欧米メディアで、「Japan(ジャパン)」の5文字をたびたび見かけるようになった。通常なら、ツイート・ゼロも珍しくない日本の政治のニュースが、かなり読まれている。報道数も従来より多い。マイナーなオンラインメディアまでが日本について論じている。なぜか。

 沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)に続き、石原慎太郎・前東京都知事や橋下徹・大阪市長、安倍晋三・元首相の動向など、ナショナリズムの台頭を懸念してのことだ。日本では、軍事大国化防止と平和推進が務めであるはずのメディアの中に、彼らを持ち上げ、はやし立てるようなケースも見受けられるが、欧米では、日本社会右傾化の兆しとして警戒されている。

 東日本大震災では、国民の忍耐強さや誠実さ、秩序などに世界中から称賛が集まった。だが、長期低迷する経済を含め、今や一転して、要注意の存在として、注目されているのだ。

 藤崎一郎駐米大使が首都ワシントンでの講演会で反論を試みたとされる英誌『エコノミスト』(9月22日号)の特集「アジアは、これら(尖閣諸島)をめぐって本当に戦争に突入するのか――諸島をめぐる争いは、同地域の平和と繁栄への重大な脅威」は、12月7日現在、オンライン上で約200のツイートと4100の「いいね!」、2273件のコメントを集めている。

 また、同誌10月6日号の「日本のナショナリズム――ポピュリスト(大衆迎合主義者)に気をつけろ<迎合するメディアの追い風を受け、一握りの国粋主義者が、日本沿岸を超えて危険な影響を及ぼしうる>」も、ツイート349、「いいね!」が499という人気ぶりである。コメントも451件と、日本ネタとしては異例の大ヒットだ。

 「ポピュリストに気をつけろ」によれば、敗戦以来、アジアの平和と繁栄の力強い源泉となってきた日本が、保守派さえも懸念を抱く、石原前都知事の尖閣購入案という右派的ポピュリズムで中国の怒りを買い、かき回されているという。安倍元首相の自民党総裁就任により、そうした極右的見解が、今や国政の本流にまで流れ込む可能性があると指摘する。

 維新の会などの第3極を論じた英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月19日付電子版)では、両者とも強烈な個性で知られ、領土問題や原発など、カギとなる政策でズレのある橋下市長と石原氏の連携について、上智大学の中野晃一氏(政治学)の弁を借り、「真の問題は、政策の違いよりもエゴのぶつかり合いだろう」と結論づけている。

 米ブルームバーグニュース(11月12日付電子版)も、言い得て妙だ。コラムニスト、ウィリアム・ペセック氏は、個人的見解という但し書きは付いているものの、「右翼日本、19世紀に帰る」と題する記事の中で、日本の指導者たちは、軍事大国化へと突き進んだ1800年代と決別できないようだと、痛烈に批判する。

 次期首相になるであろう安倍氏と石原氏、橋下氏という三大政治家は、機会があふれているダイナミックなグローバル環境に飛び出していくのではなく、国粋主義の下で、日本の内向き化という誤った方向に進もうとしていると、ペセック氏は残念がる。

 米国人エコノミストなどに取材すると決まって言われることの1つに、日本の「内向き志向」があるが、次期国務長官の就任も取りざたされる知日派のハーバード大学のジョセフ・ナイ教授も、『フィナンシャル・タイムズ』への寄稿「日本のナショナリズムは、弱さの表れ」(11月27日付)で論じている。

 安倍、石原、橋下3氏や日本の世論の右傾化について、同教授は、「真の問題は、日本が国際社会で過度に力を示そうとしているのではなく、弱く、内向きになっていることかもしれない」と分析。20年に及ぶ低成長や財政赤字、米国の大学に留学する日本人が、2000年当時の半分以下に落ち込んだことを挙げながら、「日本は、偉大な力強い国であり続けたいのか。それとも、甘んじて二流の地位へと流されるのか」と、問いかける。

 経済のかじ取りについても辛らつだ。米国の経済専門テレビ局CNBC(12月4日付電子版)は、6年間で、もうすぐ7人目の首相が誕生する日本は、長きにわたって金融緩和を行いながら、いまだに停滞から抜け出せないどころか縮小していると指摘。毎年、10%ずつ膨らみ、国内総生産(GDP)比で220%余りに達した先進国中最悪の公的債務残高を例に挙げ、欧州も米国も日本の状況に比べたら、まだ序の口だが、日本を警報とすべきだという。

 どれも耳に痛い指摘ばかりだが、特に政治家は、警告として肝に銘じるべきだ。ポピュリズムで国民を手なずけようとしても、国際社会の目はシビアである。経済にしても、根拠のない楽観論は、国民の問題認識の目をくもらせ、日本の競争力をそぐだけだ。

 日本からは、「内向きで、どこが悪い。ぜいたくや成長さえ望まなければ、まだまだ食べていけるのだから、今のままでいいじゃないか。国際社会でのプレゼンス(存在感)を高めて何の得がある?」といった声も耳にするが、企業、個人を問わず、食うか食われるかのグローバル化時代にそんな悠長なことを言っていては、現状維持もおぼつかない。

 最大の経済成長圏であるアジアの安定が損なわれれば、状況に応じて交渉国や戦略などを変える東アジアでのピボット外交で経済的恩恵を得ようとする米国にとっても厄介だ。日中関係の悪化や日中韓のあつれきは、世界経済の足も引っ張りかねない。

 なにより日本は、福島の復興、原発・放射能問題、被ばくした人たちの長期健康管理という最重要任務を抱えている。40年にも及ぶ東京電力福島第1原発廃炉への技術的・人的・財政的算段や賠償金の確保すら、いまだにおぼつかない状況だ。そんな中、「国防軍」論議や防衛費のGDP1%枠撤廃などで、最大の貿易国である中国や他のアジア諸国を刺激し、国際社会を不安にさせることが、義援金やボランティア活動で応援してくれた世界の人々への答えなのか。

 「美しい日本」はけっこうだが、「強い」のは、経済と、復興と危機解決に向けた結束力だけでいい。

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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト
 東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などにエディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・トリノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。現在、『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』などに寄稿。『週刊新潮』、NHKなどの取材、ラジオの時事番組への出演、日本語の著書(ルポ)や英文記事の執筆、経済関連書籍の翻訳にも携わるかたわら、日米での講演も行う。共訳書に『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com
by shin-yamakami16 | 2012-12-05 20:51 | Comments(0)