世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

「日本の歴史を否定する新たな企て」— The New York Times 「社説」

世界中を不安にさせる「右翼国家主義者」日本・安倍首相

                             山上 真

 正月2 日付の米国紙『ニューヨーク・タイムズ』は、その年頭「社説」で、日本・安倍首相に対する厳しい批判を掲載した。米国の同盟国の指導者に対する斯くの如き批判は、極めて異例と言える。

 その「社説」全文訳は、次の通りである。

 「アジアの安定にとって、日本と韓国の間の関係ほど重要なものは無い。しかしながら、日本の新首相安倍晋三は、韓国との緊張状態に火を点け、協力関係を困難にする重大な過ちを以て、任期を開始しようという気でいるようだ。彼は、朝鮮人や他国の女性を性的奴隷として扱ったことを含む、第二次世界大戦中に於ける日本の侵略行為に対する謝罪を、見直そうとするシグナルを出しているのである」

 「1993年に日本は、日本軍隊が軍隊内売春施設で、数千人のアジア人や欧州人の女性をレイプし、奴隷状態に置いたことを漸く公式的に認め、それらの残虐行為に対する最初の全面的謝罪を表明した。1995年の村山富市首相による、更に進んだ謝罪では、『植民地的支配と侵略を通じて』、日本は『多くの国々の人々、特にアジア諸国の人々に対して、途方もない損害と苦痛』を及ぼしたことを認めた」

 「右翼ナショナリストの安倍氏は、産経新聞とのインタヴューで、1995年の謝罪を訳の分からぬ『前向き声明』によって置き換えたいと述べたということを、月曜日にロイター通信は伝えている。2006-7年の前自民党政権は、戦時中の日本軍隊で慰安婦として仕えた女性たちが事実上強制されていた、という証拠を全く発見しなかったと、彼は述べた。しかしながら、先週の記者会見で、官房長官・菅義偉は、安倍氏が『1995年謝罪』は維持するが、『1993年声明』は見直すことを示唆した」

 「日本の自民党総裁・安倍氏が『謝罪』をどのように修正するのか明らかでないが、しかし彼は以前に、日本の戦争史を書き直したいという願望を隠そうとしなかった。その戦争犯罪を否定し、謝罪を薄めようとするいかなる企ても、日本の野蛮な戦時支配を蒙った中国・フィリピンのみならず、韓国の激怒を買うことになるだろう」

 「安倍氏の恥ずべき衝動は、北朝鮮の核武装計画のような諸問題についての、地域的に不可欠な協力関係を脅かすものだ。そのような修正主義は、過去を糊塗することでなく、長期停滞経済を改善することに集中するべき国民にとっては、頭痛の種だ」


 『ニューヨーク・タイムズ』社説は、今日でもなお世界中で最も読まれている政治・社会論説と言って差し支えなく、その影響力は量り知れない。一国の首相が、「まな板の鯉」の如く、斯くも「見事に」論断されていることは、「愛国」主義者たちには苦痛極まる事件に違いないが、この際、我が国が世界で置かれている位置を、頭を冷やして正しく認識することが何よりも大切なことではないか。 (2013.01.04)

 The New York Times ‘Editorial’ 原文

January 2, 2013

Another Attempt to Deny Japan's History

Few relationships are as important to stability in Asia as the one between Japan and South Korea. Yet Japan’s new prime minister, Shinzo Abe, seems inclined to start his tenure with a serious mistake that would inflame tensions with South Korea and make cooperation harder. He has signaled that he might seek to revise Japan’s apologies for its World War II aggression, including one for using Koreans and other women as sex slaves.

In 1993, Japan finally acknowledged that the Japanese military had raped and enslaved thousands of Asian and European women in army brothels, and offered its first full apology for those atrocities. A broader apology by Prime Minister Tomiichi Murayama in 1995 conceded that “through its colonial rule and invasion,” Japan had caused “tremendous damage and suffering to the people of many countries, particularly to those of Asian nations.”

In an interview with the Sankei Shimbun newspaper, Mr. Abe, a right-wing nationalist, was quoted by Reuters on Monday as saying he wants to replace the 1995 apology with an unspecified “forward looking statement.” He said that his previous administration, in 2006-7, had found no evidence that the women who served as sex slaves to Japan’s wartime military had, in fact, been coerced. However, at a news conference last week, the chief cabinet secretary, Yoshihide Suga, said that Mr. Abe would uphold the 1995 apology but hinted he may revise the 1993 statement.

It is not clear how Mr. Abe, the leader of the Liberal Democratic Party of Japan, might modify the apologies, but he has previously made no secret of his desire to rewrite his country’s wartime history. Any attempt to deny the crimes and dilute the apologies will outrage South Korea, as well as China and the Philippines, which suffered under Japan’s brutal wartime rule.

Mr. Abe’s shameful impulses could threaten critical cooperation in the region on issues like North Korea’s nuclear weapons program. Such revisionism is an embarrassment to a country that should be focused on improving its long-stagnant economy, not whitewashing the past.

                   <追記>
1. 今日1月5日の『朝日新聞』に依れば、安倍新政権は次期「防衛費」を1千億円増額することに決めたと云う。一頃マス・メディアは、「国家・財政赤字『一 千兆円』に上るから消費増税をするべきだ」と騒いできたが、ここに来て、果たして彼らは、「無駄な軍事費を増やすべきでない」と言うだろうか?米国・財界・軍事産業の「僕」たる安倍政権は、「尖閣・竹島」問題などの「他国・脅威」を利用して、軍拡に乗り出す構えだが、如何に愚かな国民でも、「殺すこと」にしか役立たない軍事費拡大を許すことはないだろう。「戦力はこれを保持せず」という「平和憲法9条」は、日本・アジア人民数千万の犠牲と流血の果てに生まれたことを忘れるな!(2013.01.05)

1月5日付『朝日新聞』
防衛省、予算1千億円上積みへ 中国軍拡念頭に態勢強化

 防衛省は2013年度予算の概算要求で、野田内閣当時の昨年に要求した4兆5800億円より、1千億円超を上積みする方針を決めた。12年度当初予算を400億円超上回るが、安倍内閣は防衛予算を11年ぶりに増やす方針のため、おおむね認められる見通しだ。
 要求の上積み分は、陸上自衛隊を中心とした人員増と、陸、海、空各自衛隊の装備に関する中期防衛力整備計画(中期防、11〜15年度)の前倒しからなる。中国の軍拡や海洋進出を念頭に、態勢を強化する。
 安倍内閣は、民主党政権で10年末に策定された防衛計画の大綱を見直す方針。防衛省は現大綱の「人件費削減」などの見直しを今年中に終え、14年度予算に反映させる予定だ。小野寺五典防衛相は13年度も「大綱見直しを前提に予算を検討する」と表明。見直しを先取りする形で人員を増やし、14年度以降の人員増につなげたい考えだ。

2. 1月11日『産経』が、今頃になって 'NYT' 紙の「安倍」社説を攻撃しているのは、滑稽至極だ。安倍氏が日本・新首相として、新春早々、ワシントンに招かれて初舞台を飾りたかったのに、オバマ氏に断られ、欧米、特に電話会談した仏・オランド氏にも袖にされ、仕方なく、ヴェトナムなどに訪問先を変えなければならなかった原因が、他ならぬ自身の「タカ派保守」姿勢にあることを、「賢い」マス・メディアならば、指摘するのが当然なのに、誰もそうしていない。今のところ、殆どの日本メディアが、国際的に全くと言える程通用しない「日本・新政権」に迎合する報道姿勢を取っているには、実に奇妙だ。 (2013.01.11)

1月11日付『産経新聞』
ポトマック通信 「談話」のツケ重く
2013.1.11 03:13 [外信コラム]

 米紙ニューヨーク・タイムズがひどい。一党独裁で言論の自由がない中国や北朝鮮ではあるまいし、民主国家日本の首相を「右翼の民族主義者」呼ばわりし恬(てん)として恥じないのだ。
 同紙は今月3日、「歴史を否定する新たな試み」と題し、旧日本軍による慰安婦募集の強制性を認めた河野談話に関し、有識者による再検討の必要性に言及した安倍晋三首相を口を極めて酷評した。
 当時、官房副長官として河野談話作成に深く関わった石原信雄氏は、証拠はないが謝罪した方が得だと判断したと私にかつて語った。韓国政府が非公式に「強制性を認めれば事を荒立てない」と伝えてきたからだ。だが韓国政府がその後も態度を変えなかったため、石原氏はだまされたと悔やんだが、後の祭りだった。
 証拠もなく、閣議決定も経ないまま、河野談話が発表された平成5年8月4日の翌日、宮沢内閣は総辞職している。前年の1月13日には、慰安婦問題への軍の関与に言及した加藤紘一官房長官談話が発表されている。3日後、首相の宮沢喜一氏が訪韓し、談話は手土産にされた。事実より政治決着を優先させたのだ。ニューヨーク・タイムズは経緯をどこまで調べて批判しているのか知らないが、談話は日本叩(たた)きに利用され続けている。(佐々木類)


                  <参考資料>
1. 1月9日付『東京新聞』
【政治】
防衛安倍色鮮明 11年ぶり予算増へ
2013年1月9日 朝刊
 防衛省は二〇一三年度予算の概算要求で、一二年度より約千二百億円、2・6%増の約四兆七千七百億円を計上した。認められれば、防衛予算は十一年ぶりの増額になる。安倍晋三首相は、就任後はタカ派的な言動を抑え、経済政策を最優先にしているが、防衛分野では「安倍カラー」が鮮明になった。(生島章弘)
 Q 防衛予算の概算要求が増えた理由は。
 A 自民党が衆院選で、自衛隊の人員や装備、予算の拡充を訴え、新たに盛り込まれたからだ。沖縄県・尖閣諸島など領土をめぐる緊張の高まりを受け、安倍晋三首相は「日本の領土、領海は断固として守る」と繰り返してきた。政権を取ったことで、従来の概算要求を白紙にし、公約を実行に移した。米国の新型輸送機MV22オスプレイの購入を検討するための調査・研究費八百万円は象徴的だ。
 Q なぜ防衛予算は減り続けたのか。
 A 国の借金が膨らみ、社会保障費が年々増えていることが大きい。当初予算の比較で防衛予算が減り始めたのは、防衛庁時代の〇三年度。二〇〇〇年代初めは四兆九千億円台だったが、一二年度は四兆六千五百億円と、ピーク時を三千億円ほど下回る規模だ。民主党政権下で昨年九月に行われた一三年度の概算要求では、こうした流れをくみ、前年度比六百二億円減に抑えていた。
 Q 予算増額は、首相が改憲で実現を目指す「国防軍」への布石か。
 A 防衛省は、北朝鮮によるミサイル発射や尖閣を含む南西諸島の防衛など、目の前の課題に素早く対応する体制を整備するためだと説明している。
 ただ、首相は集団的自衛権行使のための憲法解釈変更に意欲を示し、政府は年内にも「安倍カラー」を反映した新たな防衛計画の大綱と、中期防衛力整備計画を策定する見通しだ。今回の予算増額が直接、国防軍に結び付くわけではないが、自衛隊の役割を大きく拡大する第一歩になる可能性は否定できない。

2. 1月10日付韓国『東亜日報』
国際
米国の大学生、「日本軍慰安婦被害」告発に乗り出す
JANUARY 10, 2013 03:03
米ニューヨーク市立大学(CUNY)系列のクイーンズ・コミュニティカレッジのローレン・ハーシさん(19・女・生命工学1年生)は8日、ニューヨークのクイーンズフラッシングで、韓国人のキム・ジョングァンさん(80)をインタビューした。同校のホロコーストセンターに開設された「第1期北東アジア歴史インターンシップ」課程に参加したハーシさんは、第2次世界大戦で日本がアジア諸国に行った「悲しい歴史」を生の声で聞き、表情が固まった。
ハーシさんは、戦争当時、日本のために苦痛を受け、現在米国に住むアジア人を探す米国の大学生の1人だ。在米市民団体の市民参加センターとホロコーストセンターが共同で企画し、米国で初めて開設されたこの課程には、クイーンズ・コミュニティカレッジの学生9人が参加した。2日に終わった12週の課程で、彼らは日本軍が第2次世界大戦の時に犯した従軍慰安婦問題、強制徴集、拷問、731部隊の生体実験などに関する講義を聴いた。ハーシさんは、「主に欧州の被害者について教育を受けたが、韓国などアジアにもこのように広範囲で辛い歴史があることを知らなかった」と話した。一緒にインタビューをしたウェイウ・リーさん(19・生物学1年生)は、「聞いた話を両親に話したが、信じてもらえなかった。特に慰安婦問題が衝撃的で、ふと祖母のことを思い出した」と話した。

80、90代の韓国のおじいさん10人は、孫ほど年齢の大学生に話しをすることに躊躇したが、徐々に当時の体験を話し出した。

チョン・ヒョンモさん(80)は、「姉がいなくなり、工場に連れて行かれて働いていると思った。帰ってくると、私たちを避け、遠くに穴蔵をつくって暮らした。後になって慰安婦として連れられて行ったことを知った」と証言した。また、「慰安婦に送るまいと幼い年で結婚させた親も多かった」と付け加えた。別のおじいさんは、「日本政府が関与しなかったというのは嘘だ。統班長に命じて慰安婦女性と徴用兵を招集したため、表向きは介入していないように見えるが、誰がそれを信じるだろうか」と述べた。

コロンビア大学のキム・ジミン博士(37・韓国史専攻)は、今回の課程は、この地域のホロコーストセンターに倣って開設したと明らかにした。ユダヤ人は、ホロコーストの生存者を探して膨大な記録を蓄積し、これを基に教案を作成して公立学校に配布するなど、ホロコーストの人権迫害を広く知らしめたという。「私たちもインタビューなどを基に年内に教材を作り、米国の学校に配布する計画だ」と語った。

市民参加センターのキム・ドンソク常任理事は、「日本によるアジア諸国の被害を米国社会に広く知らしめようとこの課程を開設した」とし、「僑胞社会、韓国政府や企業が関心を持ってほしい」と呼びかけた。
by shin-yamakami16 | 2013-01-04 13:34