世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

ウクライナ ‘Coup d’État’:「ネオナチ政権」を支援するObama・EU首脳

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        3月18日クリミアSimferopol・「ロシア帰属」を喜ぶ市民


キエフ ’Fascist’「新政権」の誤算:クリミア「ロシア帰属」・東部「離反」、そして破局か?

                                    山上 真
 
  先ず、ウクライナ・ロシアでのごく最近の出来事を列挙してみよう。

  今日3月22日朝8時台のBBCニュースは、「ウクライナ危機」以来ロシアの「株式が20%下落した」ことを、如何にもプーチン・ロシアの「失敗」であるかのように報じていた。元々クリミア「ロシア帰属」が巨費を要する「大事業」であることは、ロシアにとって覚悟の上のことであっただろう。要は、クリミア住民が期待するような「生活向上」を実現できるかどうかであり、その為に、80% 以上のロシア人が「犠牲を払う」ことに賛成した。

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                 米国ヌーランド国務次官補
ブログ『阿修羅』より
「ウクライナ騒乱の黒幕はオバマ政権だった!?ヌーランド国務長官補の通話記録が暴露される!ウクライナの政府上層部を事前に米国が選出! new!!
アメリカのオバマ政権で、重要な位置に居るヌーランド国務長官補の通話記録が暴露されました。この暴露された通話記録にはウクライナに関する情報が入っており、その中で政府指導者などをアメリカ側が事前に選出していたとのことです。
海外メディアの報道した記事によると、ヌーランド国務長官補らは「ヤツェニュクが将来の政府のトップとして最適だ。クリチコとチャグニボクは蚊帳の外にいるほうがよい。国連がまとめ役であるのはよいことだ」等と話していたようで、これは非常に重要な情報だと言えるでしょう」

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          「キエフ革命」の先頭に立った極右 'Svoboda' の面々

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         公然と「ファッシズム礼賛」する 'Svoboda' 党首チャニボク

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 昨年11月米国共和党「重鎮」マケインと談笑する「暫定首相」ヤツェニュク及び チャニボク


 キエフの国営TV局・局長をウクライナ議会与党・極右’Svoboda’ 議員5人が「親ロシア報道をしてきた」という理由で暴力的に襲い、「辞職署名」を迫る。最近のプーチン大統領がクリミア編入署名をした場面の映像を放映許可したという理由。この乱入場面はカメラに映され、そのヴィデオはネットを通じて数十万人が見たという。オバマ・EUはこういう連中に数兆円を供与しようとしているのだ。
BBC・France 2:生々しい襲撃場面を放映   3月20日早朝

Ukraine crisis: State TV boss forced to resign
「ウクライナ危機:国家TV局長、暴力的に辞職を強いられる」
3 hours ago
The acting chief executive of Ukraine's state broadcaster has been forced to sign a resignation letter - by MPs who broke into his office.
The group of men, from the far-right Svoboda party, were angry with Oleksandr Panteleymonov's decision to broadcast a ceremony from the Kremlin on Tuesday.
Rebecca Donovan reports.

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 ウクライナ東部国境では、ロシア軍の「侵攻」に備えて,ウクライナ軍が展開しつつあるが、各地で軍用車・戦車などが現地農民・民衆に進行を妨害されている。ドネツク南方Michurino—「ここは平和な農地だ、兵士が居ると住民の我々が危険に曝される」など、叫ぶ。ウクライナ兵士は「命令だから来ているだけだ」の押し問答。–BBC Worldニュース 3月19日8:00PM

Tensions run high on Ukraine's border with Russia
「ウクライナ・ロシア国境緊張高まる」
19 March 2014 Last updated at 06:33 GMT
While the unrest in Crimea continues, tension has also been high along Ukraine's long border with Russia further north.
Ukraine's army is making preparations in case of any further military intervention by Russia.
In one village, the Ukrainian troops were asked to leave by local people, who thought their presence put them in danger.

 既に住民投票で「ロシアへの編入」を決めたクリミア住民に次いで、ウクライナ東部ドネツク・ハリコフなどでクリミア同様のreferendumを求める激しいデモが続いており、もしそれらの結果が「ロシア編入」と出た場合、キエフ指導部は最重要産業地帯を失うことになる。そうなれば、緊急支援に乗り出そうとしているEUにとっても、資金回収の目処も立たないことになり、量り知れない打撃となることは疑いない。

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           ドネツクでの「親ロシア」デモ

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               ハリコフでの「ロシア国旗」

 つまり、キエフでの政変・「クーデター」は、待望された果実を得るどころか、最も重要部分を含む国土を失ってしまうという最悪の結末に帰するのだ。
 やはり誤りがあったということだ。それが何処にあったのか、オバマなど欧米諸国指導者たちが「目を瞑って居たい」政変過程を具体的に見てみよう。

 取材する各国レポターの語学力:今度の場合、ロシア語力のお粗末さが浮き彫りにされた。BBCの若い記者はドネツクで、「昨日大デモが市庁舎に進入してロシア国旗をはためかせた事件の後,警備を強化した結果、デモ隊はご覧のように消え失せた」と、平穏な町の風景を映しながらレポート。しかし、翌日朝から人々が集まり始め、午後には空前の親ロシアデモが展開された。
 やはり,民衆の中に深く入って、英語を話せる人々だけに話を聞くのでなく,ロシア語又はウクライナ語で取材するのが当然であり、その能力に欠けるところから誤った報道に陥ってしまう。

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 クリミア住民投票結果:投票率83% ロシアへの編入支持 95.5%
欧米メディアはタタール人の多くがreferendum 投票に反対していると伝えたが、真実とは程遠いことが判った。事実、投票を終えたばかりの老婦人は、自分がタタール人であることを明かして、ロシアへの編入を支持する投票をしたと述べた。クリミアの民族構成はロシア人が6割、タタール人・ウクライナ人が4割とされているが、上の数字から見て,ロシア人以外の過半数が投票行動に参加し、実に全住民の約80% がロシア編入を支持したことになる。これは、「クリミア住民投票」を全く認めないとする米国ホワイトハウス・EU本部にとって、「手痛い打撃」であろう。

 ウクライナ東部十数都市でも、クリミアと同様の、ロシア帰属の「レファレンダム」を求めるデモが起こっている。特にハリコフ及びドネツクでは数万人規模で、警官隊・暴力分子などとの衝突で合わせて死者3人、負傷者十数人が出ている。米国 'Black Water' や極右暴力集団が暗躍しているという。

 ウクライナ東部:重工業地帯が含まれ、その製品をロシアに輸出、依存関係が強い。そこの労働者の声として、「ウクライナがEUに入れば、ロシアとの取引が少なくなり,我々は仕事を失う」と述べた。—BBC ニュース

 欧米ネット上でプーチン氏の人気が極めて高いことを当惑気に仏『フィガロ』紙が取り上げていた。欧米各紙では、殆どが親「新ウクライナ政権」寄り記事内容であるが、それら記事の*コメント欄では、圧倒的多数の意見が記事批判でであることを見れば、欧米側にかなりのロシア・プーチン政権支持勢力が存在することが分かる。

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        3月18日クリミア首脳とプーチン氏:「ロシア帰属」調印

 EU加盟:直ぐにでも「財政破綻」するかも知れぬ国に対して加盟を認めることは有り得ない。米国やEUがIMFを通して合わせて2兆円規模の緊急財政援助するにしても、約13兆円とされる対外債務を抱え、更に財政基盤の大部分を担うウクライナ東部が、クリミアに続いて同国から離反する事態になれば、EU加盟国の多くは到底ウクライナ加盟を認める筈がない。

 クリミア「ロシア帰属」は、如何に欧米側が「ウクライナ憲法・国際法」に違反する」と言ったところで、それは「国家よりも人民主権」を尊重する近代民主主義原理を否定することに他ならず、英国名誉革命・フランス革命・米国独立革命などを認めない論理と同じことになる。
 17日7時台のBBC ニュースは、キエフ特派員の論評として、クリミア投票結果を受けて欧米のいかなる指導者も、クリミヤ・ロシア編入の動きをもはや阻止出来ないであろうと述べている。

 プーチン・ロシア大統領は3月18日の声明で、クリミア住民投票の結果に基づいて、民族自決権 ’self-determination’ を尊重する立場から、ロシアへの帰属を認めると述べた。

 「民族自決権 ’self-determination’ とは、各民族集団が自らの意志に基づいて、その帰属や政治組織、政治的運命を決定し、他民族や他国家の干渉を認めないとする集団的権利。自決権ともいう。
国連憲章第1条2、国連総会決議第1514号(1960年12月14日)「植民地諸国、諸人民に対する独立付与に関する宣言」においても認められ、その後の国連や諸国家の行動を経て、植民地人民の独立の権利は一般国際法上の権利として認められるに至った。1966年に採択された国際人権規約により、規約締約国は自決権を保障する国際法上の義務を負っている」—Wikipedia

 欧米や日本メディア、例えば『朝日・社説』(3月18日)などは、「ロシア軍の銃口が向けられた住民投票」だから、9割超のクリミア住民がロシア編入に賛成したのだ、という苦し紛れのコメントを載せていたが、TV映像などで現地の状況を具に見れば、この「ネオナチ政権・欧米べったり」社説は噴飯ものだ。
 欧州議会議員を含む23か国の国際監視団が「選挙不正」を見出せず、過半数の「被抑圧」タタール人たちが投票に参加した事実を隠すべきではない。—参考資料・ブログ『マスコミに載らない海外記事』参照
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 二か月程前のNHK・BS番組で、黒海沿岸の国々を北上して現地の人々の生活ぶりを案内する映像を偶然見ていたところ、最後にウクライナ・オデッサ近くに住む農民一家を訪問する場面に行き当たった。家族5,6 人が団欒する中で、年輩の母親がしみじみと、
「キエフなどに住む町の人たちはEU 加入を叫んでデモしているが、私たち農民は、我が国がEUに入れば農作物の価格が下がるだけで、困るばかりだ」とこぼしていた。
 これは、ウクライナの首都キエフで、ヤヌコーヴィチ政権がEU加盟を主張する反政府勢力によって倒される直前のことである。

EU と言えば、その創立理念は「欧州に三度戦争の惨禍を起こすこと無き様に」としていた筈なのだが、米国率いるNATO と組んで「*コソボ」・「アフガン」・「イラク」・「リビア」と相次いで戦争行為に加担し、今や平和理念とは無縁の「政治・経済ブロック」に成り果てた観がある。国家としての独自性を主張し、EU通貨’Euro’ を使わずポンドを維持する英国は、国民の56%がEU脱退に賛成しており、2017年末までにEU残留如何を問う ’Referendum’「国民投票」を行おうとしている。
国家破産の瀬戸際にあるギリシャ、やはり財政危機に見舞われて「緊縮財政」下にあるポルトガル・スペイン・イタリアでは、EU脱退派が勢力を増している。EU中核国のフランスさえ、左派勢力に加えて、「反移民」の立場でEUに反対している極右 ’Front National’ が台頭しており、今日ほぼ国民半ばはEU脱退に賛成していると見られる。

 この様な状況でも、ウクライナ国民のかなりの人々はEU加入後の「バラ色の未来」に希望を託して、キエフ「独立広場」・ ‘Maidan’ に馳せ参じた訳であるが、果たして今度の出来事が最も賢明な選択であったかどうかに就いては,大いに疑問の余地が残る。

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 昨年11月末から始まった反政府デモが爆発的な広がりを見せたのは、ヤヌコーヴィチ大統領がEUへの加盟予備交渉を中断したことがきっかけであるが、底流には「腐敗した」政権への不満が長らく燻っていたことは間違いない。

 <ヤヌコーヴィチ氏が2010年2月の大統領選挙で当選した経緯については、2010年2月10日付本ブログを参照されたい>
 
 ヤヌコーヴィチ前大統領がEUとの交渉を見送った理由としては、釈放を求められたティモシェンコ女史の汚職疑惑が拭い難いこと、EU圏での失業率が12%程度に高止まりして、魅力が低下していること、そして何よりも、ロシアへのエネルギー資源の全面的依存関係が挙げられるだろう。

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 2月22日夜、大統領の「変身」に憤った数万の人々のデモの先頭部隊を、’Svoboda’ と呼ばれる「反ユダヤ・反ロシア」を標榜する極右分子、更には極右暴力集団 ’Pravy Sektor’ が占めて、治安機関から奪った銃器を用いて警官隊を追い詰め、議会内に侵入し、遂に身の危険を感じたヤヌコーヴィチ大統領を「逃亡」に追い込んだ。

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                キエフ・極右活動メンバー

 この間に議会内で取り交わされた早期の平和的「政権交代合意」は反古にされた。
 もしこの時点で反政府勢力がクーデターに走らず、つまり「合意」に基づいて、ヤヌコーヴィチ氏を数か月間だけ大統領に留めておく選択をしていたなら、クリミア半島の「ロシア帰属」は無かったのではないか?

 武装デモ隊が議会を取り囲む中、反ヤヌコーヴィチ勢力各派から成る「暫定政権」が発足した。

 この辺の事情に就いて、3月6日付の米国・CNN.Com で、David Speedle記者が*詳述している。その所見は明らかに欧米指導者・メディアのキエフ「暫定政権・美化」とは全く異にする。
 そこでは2012年「欧州議会決議」で、ウクライナ議会内極右 ’Svoboda’ はEU創立理念に反するから、民主的党派が決して連合することがないように求めていると指摘している。


 治安部隊とデモ隊の衝突で、双方に26人の犠牲者が出たが、主として正体不明の「スナイパー」つまり狙撃兵(複数)の仕業と見られている。
 ロシア外相・ラブロフ氏は、一方的に大統領側警官隊の所業という「新政権」見解を一蹴し、狙撃兵の正体を厳密に調査するように要求した。例えば、夙に活動し始めたと噂される米国民間軍事会社 ’Black Water’ など、外人部隊の陰謀的行為の可能性を排除出来ないのである。
 
 欧米諸国指導者およびメディアは、以上手短に述べた「政権移行」問題に全く触れず、キエフ・極右「新政権」を合法化・正当化しているが、各国新聞記事のコメント欄を見る限り、「ヤヌコーヴィチ政権は確かに腐敗していたが、今度キエフにクーデターで姿を現した『ネオ・ファシスト』政権の方が遥かに危険だ」という声が圧倒的だ。こうした危惧を、オバマなど欧米指導者はどう考えているのか、甚だ不可思議だ。

 例えば,今日の英国やフランス,或は米国で、ナチスのゲッペルス宣伝相を褒め称える人物が政権閣僚に選ばれたとしたらどうなるか?途端にその政権を不承認又は打倒する為の方策が組まれることだろう。いま、その事態がウクライナで現に起こっているのだ。キエフ暫定政権の副首相・国防相など5閣僚が*極右 ’Svoboda’ 出身だという。
*アンドレイ・バルビ・「国家安全保障国防会議」(軍事・外交の大統領顧問機関)新議長は、「スヴォボダ」のオレーフ・チャフニボーク総裁と共に、1991年、ネオナチの「社会国家党」を創設した経歴がある。
 *ドミントロ・ヤロシュ・「国家安全保障国防会議」新副議長も、第二次世界大戦中、ナチスと協力して9万人のユダヤ人やポーランド人を虐殺したファシスト「ウクライナ民族主義組織」の直系の活動家で、「ロシアとの全面戦争」を唱えている。
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 米国・EUなどは、ロシアのクリミア「編入」に対する制裁措置を発動しているが、欧州28か国がロシアの天然ガス・石油に依存しているという事実を見れば、自ずから制裁範囲は限られざるを得ず、モスクワ・外交政策を変えさせる程の効果は期待されないだろう。年間380億ドルという比較的貿易量の少ない米国の場合と異にして、欧州は年間4490億ドルの対ロシア交易量を維持しており、例えばフランスの場合、すでに完成した価格12億ユーロ(約1690億円)の高性能戦闘艦 ’Mistral’ 2隻を、発注したロシアに引き渡すべきかを巡って大きな論議が巻き起こっている。こうして、現代世界は、問題が大きくなればなる程、欧米の蒙る損失も無視出来ない構図になっている。

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            ロシア発注の 軍艦 'Mistral':仏「制裁」で宙に浮く


  米国などNATO諸国が過去数十年間にコソボ・イラク・リビアなどで行った一方的「侵略行為」が何の制裁もされずに罷り通ったことを顧みれば、プーチン大統領の「クリミアは民族自決の原則からロシア帰属を選んだ」という立場が欧米の制裁行為の対象として適当なものか,疑問符が打たれるだろう。
 そのことは、総体的に「歓喜に沸き立つ」クリミア民衆の様子を見れば判ることだ。要はプーチン氏が言う様に、少数派タタール・ウクライナ人への差別を許さない体制を整えることだ。

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 ウクライナでのロシアの行動を非難する大合唱の中、「制裁」では何事も解決しないという立場を表明した論説記事が,英国『ガーディアン』紙に掲載されたので、ここにその概要を紹介しておきたい。筆者Jenkins 氏は著名なコラムニストである。

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                 Simon Jenkins 氏

The west's do-somethings will do nothing for Ukraine
The response to Crimea shows just how easily misjudgment can emerge from political machismo and belligerent posturing
–—Simon Jenkins

「何かをやるという西側の態度はウクライナでは何の役にも立たないだろう」

副題:「クリミアへの対応は如何に容易く誤った判断が政治的無鉄砲さと好戦的仕草から生まれるかを示している」

「ロシアのクリミア再占領を止める為に何かをしなければならないと皆が言う。各所で,様々な場で相反する立場の人々が議論して衝突するが,結局何も出来ないということになる。唯一幸いなのは、そこでは武力を使おうとする雰囲気が皆無なことだ。唯、ロシアに対して弱みを見せないことでは一致する」

「プーチンに彼の行為が誤算だったことを悟らせるべく、何かをすることになれば、経済制裁、或は、ビザ発給制限、更には『ロンドン・ケンジントン』立ち入り制限などという全く無関係のことに落ち着く」

「更には、制裁として銀行口座凍結、通商・合弁事業中止など続くかも知れないが、プーチンは全て計算済みでやっており、痛くも痒くもない。ロシアのウクライナ占領は、法的には違法かも知れないが、欧米がコソボに就いてセルビアに対してやったことに匹敵するが、ヒトラーのズデーテン侵攻や、イラク・アフガニスタンに対してやった乱暴極まる侵略とは大分違う。世界的な憤激を買う事件とはまるで趣を異にするのだ」

「しかし、1914年の*サライェヴォ事件のように、面子から生じる誤った判断からとんでもない悲劇的戦争に発展しかねないのだ。犠牲を払うと、それに報いなければ、ということだが、大混乱がどうやって起こったのかを誰も知らない」

「プーチンのクリミア占領が西側の国境強化策に対する病的恐怖心からのものかどうかとか、キエフの独立闘争がロシアの失地回復主義に対する正当な恐怖心から出ているものなのかどうかとかは、私には分らない。唯、私にはいずれの国も我々を脅かしていないし、『我々のものでもない』ことが分かっている。唯、闘いの場から除け者にされるのに耐えられない人々が居るということだ」

*サライェヴォ事件:1914年6月28日にオーストリア=ハンガリー帝国の皇帝・国王の継承者フランツ・フェルディナント夫妻が、サラエヴォ(当時オーストリア領、現ボスニア・ヘルツェゴビナ領)を視察中、ボスニア出身のボスニア系セルビア人(ボスニア語版)の青年ガヴリロ・プリンツィプによって暗殺された事件。この事件がきっかけとなって、第一次世界大戦が開戦した。


 今後更なる「重大な」展開を予期しなければならないのは、ウクライナ東部ドネツク・ハリコクなどウクライナ東部「ロシア帰属」運動の広がりと様相である。もしキエフ暫定政権が既に見られた様に武力によって強圧的にデモを抑えるならば、必ずや前ヤヌコーヴィチ政権の轍を踏むことになるだろう。ロシア人の「流血の惨事」を前にして、果たしてプーチン大統領が座視して居られるか、大いに疑問だ。
 仮にプーチン氏が「ロシア人救出」の為の軍隊派兵に踏み切れば、恐らくキエフ「新政権」の求めに応じたNATO軍出動は目に見える。こうなると世界的な破局を迎える。 

 危機回避の為に、先ず米国・EUがキエフ「暫定政権」に対して、閣内のネオナチ分子を排除又は無力化させ、ロシア語「公用語廃止」など反ロシア的政策を改めるように求める。一方プーチン・ロシアは、ウクライナ東部ロシア系住民に対して、ロシアへの「編入」の可能性は無いこと、それ故にその’referendum’ 実施へのデモを中止し、ウクライナ国内での「政治変革」に取り組むように呼びかけるべきだ。                           (2014.03.22)


<写真> Le Monde, The Guardian, The Independent, Le Figaro, BBC News
 
              <参考資料>
1. *CNN
Rein in Ukraine’s neo-fascists —「ウクライナ・ネオナチを抑えろ」
By David Speedle
March 6, 2014
Editor's note: David C. Speedie is senior fellow director for the U.S. Global Engagement Program at the Carnegie Council for Ethics in International Affairs, an educational, nonprofit, nonpartisan organization that produces lectures, publications and multimedia materials on the ethical challenges of living in a globalized world.
(CNN) -- Russian President Vladimir Putin says neo-fascist far-right groups are firmly behind the putsch -- coup d'etat -- in Kiev and questions the democratic credentials of "men with black masks and Kalashnikovs" who became the poster children of the Maidan for Russians.
Does this assessment have any truth to it? In the fast-moving and chronically complex course of events in Ukraine, the issue has been debated from the beginning: the role of the far right in the events that led to the toppling of the Viktor Yanukovych government and in the present and future disposition of political power in the country.
 <後略>
2. 各紙「コメント」欄
The Washington Post
hatebigbrother
12:06 PM GMT+0900
In the US many of you seem to be unaware that the violent overthrow of the elected, albeit corrupt, government of Ukraine was led by armed neo-nazi Svobada and Right sector thugs.
If you don't believe me then checkout Svoboda's own website. These are NOT nice people.
Le Monde
PAKALY 17 MARS 2014 À 21:32
Il ne faut pas confondre la Crimée qui est arrivée presque par hasard dans le giron de l'Ukraine et l'Ukraine. Il était tellement évident que les Russes et la majorité des Criméens n'aspiraient qu'à se rejoindre, qu'il est ridicule de ne pas accepter cet état de fait.
by shin-yamakami16 | 2014-03-22 11:17