安倍 'Australia' 訪問:惹起させた対 'China' 姿勢「分裂」
2014年 07月 16日
豪・日・中-間の「軋轢」ー'Canberra Times'(7月11日)
アボット首相「旧日本軍・讃辞」が巻き起こした「世界的波紋」
山上 真
先週、安倍首相はオセアニア3国を訪問して、それぞれの国で貿易・「軍事」協力など、本人からすれば、「大きな成果」を挙げて帰国したが、折しも日本列島では「台風8号」との格闘に忙しく、大した注目を集めなかったのはお気の毒なことであった。
しかしながら、同氏のオーストラリア訪問直後から、アボット首相の「不適切な挨拶」を契機として、同国の中国との「関係悪化」を惹起しかねない恐れが生じ、国論二分の論争が今巻き起こっている。
この件の経緯については、豪州内外の幾つかのメディアが取り上げているが、ここでは、’ABC’・オーストラリア放送協会 (Australian Broadcasting Corporation) の論説コラム ‘The DRUM’ の*記事 ‘Note to Abbott: don’t mention the war’—「アボットへの注意:戦争に触れるな」内容・要旨をご紹介しておきたい。ー<原文・参照資料1>
執筆者はシドニー大学「中国研究センター」主任Kerry Brown氏で、7月10日に発表されたものである。
先ず副題で「首相の、第二次大戦中の日本兵讃美のコメントは中国を激怒させている。これは、ただ単に危うい外交に留まらず、貧困な歴史知識だ」としている。
「外交の黄金律は黄金律など無いということだが、かなり良い経験則と言えば、他国と関わる際に、危険を覚悟の上でそれらの国々の内政に関われ、それも必要な時のみだ、ということだ」
「戦争や、国際的波及を伴う内政不安定、目に余る政治的権力乱用などは、証拠があれば,見解を述べるのが有効な事柄だ。しかし、一部に現在(海洋境界紛争)を含み,一部に過去(第二次大戦)を含む、日本や中国の様な二つの国が長期に渉っての苛烈な口喧嘩を交わしている場合、オーストラリアの様な国は出来るだけ後者(戦争)の件からは距離を置いて居た方が賢明だ。特に歴史問題で一方の側に引き摺り込まれることは、通常負け戦になる」
「トニー・アボットはこのことを、アベ・シンゾー首相がオーストラリアを訪問中に日本の第二次大戦・日本兵を讃えたようなコメントをした後、痛切に学んだかも知れない」
「アベの訪問は意義深い通商交渉や、第二の経済パートナーとしての関係強化など祝福するべき成果を挙げている」
「しかし、最近米国ヒラリー・クリントンが豪州の中国に対する姿勢は隷従的だとしたことでも分かる様に、常に我が国の外交について内外の圧力に晒されている。その中でアボット首相も、表明する必要も無い問題に不必要な見解を無理矢理表明させられているかに見える」
「第二次世界大戦中の出来事についての、日本に対する悪感情は中国の間に存在するばかりでなく、例えば韓国では,慰安婦問題が、日本政府の否定的態度と相俟って、依然として日韓の間に横たわっている」
「日本人が未だに過去を清算出来ずにいる現在、問題が生で在り続けている今日、意見を述べることは危険だ。それは危うい外交と貧弱な歴史観を露呈させることになる」
「オックスフォード大学Rana Mitter 教授の中日戦争についての優れた研究によれば、大戦中に2,000万人の中国人が死亡し、更に5,000万人が家を失ったという。上海など諸都市は戦場となり、恐るべき悲劇の巷と化したということだ。田園的、未発達国に対する近代化した工業国の戦争行為は、殆ど根こそぎ中国を破壊するような行為であったとMitter 教授は言う」
「しかも,中国は当時連合国側に立ち、ファッシズムに対する世界的闘いの前線であった。オーストラリア人も戦い、英雄的な犠牲を払った」
「よく忘れられるが、我々の脅威となったのは日本であり,南のダーウィンまで攻撃を仕掛けて来たのだ。それ故、日本の戦争行為を称賛することは、単に中国での憤りを引き起こすばかりでなく、オーストラリアの歴史を中傷することになる」
「今日の日本は民主主義国家として我々の通商パートナーであり、国際的規範に則った相互関係を維持出来る立派な相手国だ」
「オーストラリアは、何の干渉も必要ない重要な二国間の議論について、知性よりも偏見に訴えるような見解を述べる必要は無い。だからこそ、米国ケリー国務長官のコメントを聴く必要もないのだ。そうしたことは不必要で、役にも立たない」
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7月11日付*『キャンベラ・タイムズ』紙は、「中国論者は、危険な時期に見解を分裂させた」という記事を掲載し、安倍首相の豪州訪問を契機に、これまで中国外交で同調していたアボット政権・自由党と労働党が、中国への対応の仕方を巡って対立を強め始めていることを伝えている。
それに依れば、安倍氏の議会演説は与野党によって比較的好意的に受け止められたのだが、その演説内容は、「日本が同盟国と共に軍事作戦に踏み切ることを明言したこと」と、事実上「日本が中国との戦争を覚悟して準備している」という展開に、オーストラリア与野党共に、その事態の「深刻さ」に漸く気付いたという訳だが、それに追い打ちを駈ける様に、中国の7月11日付*『人民日報』は、「豪首相よ、媚日にもほどがある」という論文を載せ、アボット首相の「旧日本軍精神・讃美」の軽卒な挙動を、「中・豪親善」関係を害いかねないものとして、痛烈に非難している。労働党・前首相ラッド氏は、中国語を自由に操る,大の「親中派」であっただけに、アボット政権の「裏切り」行為は中国にとって「許し難い」ものと受け取られているのであろう。
7月10日付英国*『インディペンデント』紙は、見出しに「トニー・アボットは酒に酔って股を拡げたスナップ・ショットを披露しながら、第二次大戦の日本軍を讃えて、オーストラリア国民を当惑させた」とする記事を掲載している。
そこでは、「平和憲法」を蹂躙して軍備強化に走る日本安倍政権を無批判に受け入れる一方、「窃盗・レイプ・拷問・殺人を行った日本軍の『技能の高さ』に無知で、賞讃さえした」アボット首相に激怒する中国政府の*論評を紹介している。
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6月下旬、約200人のスリランカ人が豪州近海で「不法入国」を拒否され、海上で送還された事件でアボット政権は「人道上の保護義務」違反として、国際的非難を浴びた。
「アポット演説」:Said Abbott: "We admired the skill and the sense of honour that they brought to their task, although we disagreed with what they did. Perhaps we grasped, even then, that with a change of heart the fiercest of opponents could be the best of friends."—‘Canberra Times’ 11.July
「我々は、日本軍人が行ったことには不同意であるが、彼らが大戦中の軍務に於いて示した技術と栄光観に敬服する。恐らく当時でさえ、改心で最も荒々しい相手さえも最良の友になりうることを理解したことだろう」
「アボット政権批判」:
* ‘Canberra Times’ 紙—「経済学者たちはアボットの危機主張を拒絶」
Economists reject Abbott crisis claims
Gareth Hutchens Published: July 12, 2014 - 9:24AM
Leading economists have rejected the federal government's claims of a ''budget emergency", saying it is only a medium-term "problem" rather than a crisis, which should be dealt with sooner rather than later. —以下原文<参考資料>参照
「主要なエコノミストは連邦政府の『財政緊急事態』という主張をきっぱり否定しており、危機というより、早期に処理されるべき危機中期的な問題に過ぎないとしている」
*NICHIGO PRESSS(日豪プレス・オーストラリア生活情報サイト)
与党支持率が急落、予算案の緊縮策が不評
アボット政権の支持率が急激に落ち込んでいる。主な世論調査で、5月13日の予算案発表直後に野党労働党の支持率が与党保守連合(自由党、国民党)を逆転した。予算案で実質的な増税策を含む緊縮策を打ち出したことが国民の反発を買った格好だ。
民間の調査会社ニューズポールが5月16〜18日に実施した最新の世論調査によると、各党支持率は保守連合が36%と前回調査(5月2〜4日実施)比で2ポイント下落、労働党は38%と同2ポイント上昇した。左派の環境保護政党グリーンズ(緑の党)は11%と3ポイント下落、「そのほか」は15%(1ポイント下落)だった。党首別の支持率に相当する「どちらの党首が首相としてふさわしいか」の設問では、アボット氏が34%(6ポイント下落)、労働党党首のショーテン氏44%(6ポイント上昇)となり、ショーテン氏が初めてアボット氏を上回った。
また、調査会社ニールセンなどが予算案発表直後に実施したほかの主な調査でも、各党支持率で労働党が保守連合を逆転するなどニューズポールとほぼ同じ結果が出ている。
一方、ニューズポールの調査で「予算案は豪州経済にとって良い、悪いか?」を聞いた設問では、39%の回答者が「良い」(「非常に良い」と「まあまあ良い」の合計)と答えた。これに対して、48%が「悪い」(「非常に悪い」と「まあまあ悪い」の合計)と回答し、同調査結果がある1998年以来最大となった。
アボット政権は、社会福祉や教育・医療の縮小、一般医(GP)の診療費有料化(1回7ドル)、富裕層への期間限定の所得増税(年収18万ドルを超える所得の2%を3年間徴収)、燃料税の実質引き上げといった緊縮策を発表した。しかし、アボット首相は労働党から政権を奪回した昨年9月の選挙前に「増税や新税導入はしない」と言明していた。このため、予算案の施策は「公約違反」との批判が強まっている。
* ‘Newsweek ‘ 誌
環境破壊に突き進むオーストラリア
An Environmental Train Wreck
保守派のアボット政権が暴走し地球を守る環境規制を次々に撤廃
2014年5月15日(木)16時29分
リネット・アイブ
政権奪取からわずか半年で、オーストラリアのトニー・アボット首相は環境政策を「脱線」させた。環境保護派の学者たちは、口をそろえてそう言う。
アボットの政策は世界で最もデリケートな生態系のいくつかに取り返しのつかないダメージを与えかねないと、彼らは警鐘を鳴らす。だが環境に優しい政策に戻るよう訴え掛けても、超保守派のアボットの反応はなきに等しい。
アボット率いる自由党は、二酸化炭素の排出に課税する炭素税および鉱物資源利用税を廃止し、経済発展を阻む「環境規制の束縛」を断ち切ると公約。昨年9月に、労働党から政権を奪還した。
オーストラリア鉱業協会のブレンダン・ピアソン会長に言わせると、両税の廃止は投資と雇用の確保が目的。同時に地域社会を支援し、税収を増やし、エネルギー価格を下げ、国際社会におけるオーストラリアの競争力を高めるためでもある。
しかしジェームズ・クック大学で生物多様性などを教えるビル・ローランス教授は、アボット政権の環境に対する政策転換の規模とスピードに愕然としている。炭素税の廃止は「雪崩」のような問題の一部でしかないと、ローランスは言う。
アボット政権の「福祉予算」削減・公務員「人員整理」などの政策は国民の反感を買っている。
*‘news.com.au’— 「Queensland州議会でアボット与党敗北の見通し」
Tony Abbott backs Queensland Premier Campbell Newman
8 HOURS AGO JULY 12, 2014 2:40PM
Prime Minister Tony Abbott has called on Queensland voters to stick with Premier Campbell Newman and claims they can’t entrust the state to Labor.
An opinion poll released earlier in the week suggested Mr Newman and more than half his MPs face losing their seats at next year’s state election.
The ReachTEL poll of voters commissioned by The Sunday Mail and the Seven Network indicated that up to 40 of the Liberal National Party’s (LNP) 73 sitting members could be voted out, reports based on the poll said.
「アボット首相はオーストラリア北東部Queensland州知事選で、LNP・自由国民党のCampbell Newman現知事再選を支持しているが、最近の世論調査結果では、Newman 氏を含む同党過半数の州議会議員が来年予定されている議会選挙で議席を失う予測になっているということだ」
*安倍・議会演説(関連):
‘Herald Sun’
SIGNING agreements to boost trade and defence ties, Japanese Prime Minister Shinzo Abe on Tuesday became the first leader of his country to address the Australian Parliament.
The Canberra visit came a week after Mr Abe announced a reinterpretation of his nation's pacifist constitution to allow Japanese armed forces to come to the aid of friendly nations under attack.
Previously the constitution only allowed armed forces to act in Japan's self-defence.
It's feared Japan's decision could inflame tensions with China and South Korea, which have competing claims for territories and resources in the East China Sea.
But Mr Abbott stood up for Japan, saying it had been an "exemplary international citizen" since the end of World War II.
"Give Japan a fair go," Mr Abbott said.
Mr Abe told parliament - in only his third official speech in English since becoming prime minister - that a deal to transfer defence equipment and technology would only be the first part in "engraving the special relationship". <後略>
<要旨>
「アベ首相は日本の武装部隊が攻撃を受けた友邦国を助けるべく来援出来る様にする平和憲法の解釈変更を表明した一週間後にキャンベラを訪問した」
「日本の決定は領土や東シナ海での島嶼を巡る紛争について、中国や韓国との間の緊張の火を掻き立てる恐れがある」
「アベ氏は議会で、防衛装備品や技術移転は両国の『特別な関係を構築する』上で、最初の一部に過ぎないと述べた」
「豪・日・米三国の同盟関係を結んで,防衛作戦・訓練を行う」
「我々は日本を、太平洋からインド洋を包含する広範囲な海洋に於いて,法の支配に基づく国際秩序を構築する国にしたい」
「アベ氏は中国との問題に直接言及しなかったが、近隣国が一方的に現状変更するべきではないと述べた」
以上の内容からも分かるように、安倍氏は、米国の意を受けて、事実上の米・日・豪三国の「軍事同盟」を結成し、中国の海洋進出を封じ込めようとしている。その目的を達成する上で,日本・自衛隊の「軍事行使」を可能にすることが不可欠であり、「集団的自衛権・行使」決定を急いだということだ。
(2014.07.16)
<写真> Caberra Times, The Independent uk, Herald Sun, news.com.au
<参考資料>
1. ‘ABC’ Australian Broadcasting Corporation
The DRUM
Note to Abbott: don't mention the war—「アボットへの注意:戦争に触れるな」
By Kerry Brown
Posted Thu 10 Jul 2014, 3:36pm AEST
The Prime Minister's comments in praise of Japanese soldiers during World War II have angered China. This isn't just shaky diplomacy - it's also poor history, writes Kerry Brown.
While the one golden rule of diplomacy is that there are no golden rules, a pretty good rule of thumb is that when engaging with other countries, you become involved in their internal affairs at your peril, and only when you have to.
War, internal instability with international ramifications, flagrant government abuses - all these, when the evidence is there, are valid things to express a view on. But when two countries like Japan and China are having a long-term, highly acrimonious spat that partly involves the present (disputed maritime borders) and partly involves the past (World War II), it best for countries like Australia to steer as far clear as possible of the latter. Being dragged in on one side or another, particularly on historic issues, is usually a losing wicket.
Tony Abbott may learn this the hard way after he made comments during prime minister Shinzo Abe's visit to Australia which seemed to praise Japan's World War II soldiers.
<中略>
Oxford Professor Rana Mitter's superb study China's War with Japan, issued last year, sets out eloquently and authoritatively just why many in China now might still have strong feelings about this history. Twenty million of their compatriots died in this struggle, and large parts of the country were decimated. Fifty million were made homeless. Cities like Shanghai became bloody war fronts, with terrible human suffering. The pitting of a modernised, industrial nation against one still largely rural and undeveloped was, Mitter argues, something that almost fundamentally destroyed China. It only just survived as a country.
Mitter's book makes one more salient point that Mr Abbott might pay attention to before he speaks up about this matter in the future. China was our ally in that conflict, and its battle fronts were ones that were crucially important for the global struggle against fascism. Australians fought in those battles and made heroic sacrifices.
2. 英国 ‘ The Independent’ 紙
Tony Abbott embarrasses Australia by praising Japanese WWII military, ‘getting on the sake’ and posing for ‘crotch-shot’ photo opportunity
The Australian prime minister has been doing all he can to ensure an historic trade deal is pushed through smoothly
Adam Withnall
Thursday, 10 July 2014
Tony Abbott, the Australian prime minister, has agreed a historic economic pact with his Japanese counterpart Shinzo Abe – but in doing so admitted to being hungover live on TV, angered the Chinese government and exposed his crotch for a photo opportunity.
In a week in which the leader clearly decided the ends justify the means, Mr Abbott started off by hailing Japan’s controversial attempts to build up a more robust military in spite of its pacifist constitution.
During a parliamentary address, which was attended by Mr Abe, the prime minister went on to praise the bravery of a group of Japanese submariners who attacked Australia during a 1942 raid on Sydney harbour.
He said: “We admired the skill and the sense of honour that they brought to their task although we disagreed with what they did. Perhaps we grasped, even then, that with a change of heart the fiercest of opponents could be the best of friends.”
Part of the agreement signed this week will see an increase in military transfers between the two countries, in what Mr Abe said was the launching of a “special relationship” on matters like defence and the putting aside of any lingering enmity from the Second World War.
<後略>
3. 中国『人民日報』
豪首相よ、媚日にもほどがある
人民網日本語版 2014年07月11日08:15
日本の安倍晋三首相のオーストラリア訪問時、アボット首相は日本による集団的自衛権の行使容認を高く評価したうえ、安倍氏の弁護人まで務めた。オーストラリア人の首相でありながらこのような政治姿勢を表明するとは、われわれは実に理解に苦しむ。(文:胡文竜・中国軍事文化研究会常任理事。環球時報掲載)
アボット氏は「たとえ第2次大戦中でも、たとえ日本の行為に賛同せずとも、オーストラリア人は日本人が戦争中に示した技能と使命を必ず果たす栄誉観に相当敬服した」と述べた。周知のように、第2次世界大戦中に日本帝国主義の発動した太平洋戦争は中国や他のアジア諸国の国民に深刻な災禍をもたらしたのみならず、オーストラリア国民にも重大な損害を与えた。日本は真珠湾奇襲後、オーストラリアのダーウィン港を数十回空襲し、真珠湾よりも多くの爆弾を投下した。約1万7000人のオーストラリア兵が対日戦で戦死した。およそ正義感のある国家や民衆なら、このような戦争の技能を深く憎まぬ者はいない。だが、アボット氏は心から敬服したうえ、自らの見解を全ての「オーストラリア人」に押しつけた。これはオーストラリアの面目をつぶすものだ。
今回安倍氏がオーストラリアを訪問して両国間の貿易パートナーシップ協定、防衛装備協力協定に調印したことは、首相に就任してからさほど経っておらず、政治的業績を挙げることをひたすら望んでいるアボット氏にとっては大きな手みやげといえよう。だが、アボット氏の反応はいささか行き過ぎだと言わざるを得ない。
アボット氏は日本による集団的自衛権の行使容認を大いに称賛し、その理由としてオーストラリアの「国民と指導者は歴史のために未来を台無しにすることを一貫して拒否している」ことを挙げた。アボット氏は第2次大戦中に日本の犯した罪を知らないのか?そうではないようだ。唯一可能な解釈は、過去の戦争について過ちをごまかそうとし、隠そうとすればするほど馬脚を現す安倍氏の弁明を彼が信じ込んでしまったということだ。安倍氏の弁明が言葉遊びであることは、少しでも頭脳明晰な人なら誰でも知っている。
オーストラリアにとって中国は最大の貿易相手国であり、アボット氏が故意に中国の機嫌を損ねるはずがない。彼は演説で「豪日の協力パートナーシップは誰かに抵抗するものではない」とも述べた。もしこれがバランスを取るための発言だとするなら、これほど下手なバランス術はない。アボット氏がオーストラリアにとって最も有利な正しい選択をすることのできる賢明さも持ち合わせていないことは明らかだ。中国人に対する彼の考えも甘すぎる。オーストラリアメディアでさえ、アボット氏が日本と一緒に中国に焦点を合わせようとしていることを見抜いている。ましてや中国人が、彼と安倍氏の調子合わせが当然意味するものを見抜けないわけがない。つまるところ、オーストラリアと日本は米国のアジア太平洋戦略の停泊地であり、従僕である両国は米国の設けた大きな枠組みから跳び出すことはできない。
中国とオーストラリアの間には領土紛争も、歴史的積怨もない。正常な考えを持つ人なら、アボット氏がなぜ対中問題で表に出ようとするのか理解に苦しむ。もしなんの気なしの言動だったのなら、アボット氏が中国に十分な釈明をすることを望む。もし故意に行った言動だったのなら、アボット氏はオーストラリアの利益を深刻に損なうだろう。(編集NA)
「人民網日本語版」2014年7月10日
by shin-yamakami16
| 2014-07-16 12:47