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by shin-yamakami16

ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト

最下位英国の歎き
                                山上 真
 去る25日、セルビアの首都ベオグラードで開催されたヨーロッパ最大の音楽の祭典
『ユーロヴィジョン歌謡コンテスト』で、参加43ヵ国中、英国はまたしても最下位に甘んじた。
 今年の優勝は、ロシアのDima Bilanで、旧ソ連圏諸国の大部分の投票を得て、272点を稼いだ。2位はウクライナである。

 英国からは黒人歌手Andy Abrahamが出場して、素晴らしい歌唱力を披露したにも拘らず、僅かにサン・マリノとアイルランドの投票を得て、14点を稼ぐのみであった。
 因に去年は、最下位のアイルランドに次いで、フランスと同位であった。出場したのは、Scoochという白人のチームで、航空搭乗員に扮したシンガーの派手な踊りを伴っていたが、肝心の歌唱力は、音楽に疎い筆者から見ても、とても上出来とは言えなかった。

 この歌謡祭は、ヨーロッパで1億5千万人の視聴者を持ち、BBCは毎年、3時間以上の放映時間を割いて、中継しているのだが、自国のエンターテイナーの不振ぶりには忸怩たるものがあるに違いない。なにしろ、この10年間で、英国が10位以内に入ったのは、たったの1回に過ぎないのである。

 このような結果については、英国人の多くが、「どうも英国はヨーロッパ大陸の人々から不当な差別を受けているのではないか」といった感情を抱いているようだ。大陸側がEU統合で概ね団結し、共通通貨ユーロを使用しているのに対して、英国は将来の見通しが立っていない。何かと違和感を抱いたり、抱かれたりしているのではないか、という恐れが付きまとっているのである。大陸側でも、政府間ではともかく、一般民衆のレベルでは、「英国はちょっと違う。付合いにくい」といった感情が根強くあるようだ。恐らく、底流には、経済格差が歴然としていることがあるのだろう。ポーランドなど多くの東欧出身の労働者たちが英国に行き、低賃金で出稼ぎしている。
 マルクスの言う通り、下部構造が上部構造たる文化を規定しているのかも知れない。英国の歌手たちは、「自分の歌唱力が低いから」と気に病む必要はないだろう。個人の力を遥かに超える要因が働いているのだ。


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by shin-yamakami16 | 2008-06-05 19:49