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by shin-yamakami16

混迷のアフガニスタン(改訂)

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                                 山上 真
英国兵戦死者、遂に100人を超える
 
 6月10日の英国各紙は一斉に、アフガニスタンで作戦中の英国兵三人が路傍に敷設されていた爆弾の炸裂によって死亡し、2001年の参戦以来、アフガン戦死者が100人に達したことを伝えた。特に『デイリーメール』紙は、「名誉の死」と題して、この100人全ての顔写真と氏名、死亡年月を公表し、「何が間違っていたのか?」と、アフガニスタンでの戦争について疑問を呈した。
 この戦争は、2001年9月11日の米国での同時多発テロ事件を契機に、アルカイダ撲滅を標榜するブッシュ氏が、アルカイダを支援しているタリバン掃討を目的として始めたものだが、当初、英国は米国を支持しつつも、首都カブール周辺を拠点として、民政安定を主な任務として部隊を展開したのであった。
 ところが、ブレア首相は2006年、タリバンの反撃が活発化したことに伴い、ブッシュ米大統領の要請を受けて、アフガン南部への兵力配置を決めた。当時の国防相ジョン・リード氏は、「英国軍はヘルマンドで一発の銃弾も発射することなく、これから数年の任務を終えるだろう」との期待を示した。ここが、戦闘能力を回復しつつあるタリバン勢力の心臓部であることを見逃していたのである。英軍指揮官が、「50年前の朝鮮戦争以来初めて」と表現する様な、壮絶な戦闘を強いられることになった。現地では、暗視装置などの装備が貧弱な上に、作戦展開に必須なヘリコプターが不足しており、このことが犠牲者を多く出していると指摘されているが、膨大な戦費を要したイラク戦争を抱えてきた後のことであり、国内財政は逼迫している。これ迄さえ、アフガン戦費は、年間16億5千万ポンド(3,465億円)に達している。
 
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英国ーアフガンの「危険な関係」
 
 19世紀の二つの戦争の後、英国の保護領にされたアフガニスタンの民衆の間には、必ずしも英国人を親切な友人とは思わない雰囲気が今なお残っているようだ。アフガンの母親が、子供に対して、「良い子にしていなさい。でなければ英国人が攫って行くよ」と言ったり、「英国人は悪魔」に喩えている気風が残っているとされる。このような風土にあっては、たとえ善意の作戦であっても、アフガンの指導者さえ、英国軍の存在を迷惑に思ったりするのである。最近でも、英国外交部と結びついたEU関係者がタリバン要人と「和平工作を行った」ことで、カルザイ大統領の激怒を買った。
 
 
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混迷するアフガン情勢
 
 英国政府は、「タリバンは殲滅されつつある」として、アフガン情勢が好転していることを事ある毎に強調しているが、6月10日付ガーディアン紙上の、現地派遣兵の証言が示すように、タリバンが混乱している様子はまるでなく、英国軍は相変わらず激戦を余儀なくされている。折しもミリバンド外相は10日、アフガニスタンでのタリバンとの戦いを、第二次世界大戦での「白きドーヴァー断崖の防衛」に喩えて、アフガン戦争がナチス・ドイツ侵略からの防衛作戦と同様の意味を持つことを国民に訴えている。タリバンが勝利することになれば、英国がテロの脅威に曝されるというわけである。
 しかし、米英を主体とするNATO軍は、最近の状況を見る限り、一層混乱に陥っている様子だ。6月10日には、米軍機がアフガン国境に近いパキスタン領内で誤爆して、タリバン兵と看做されたパキスタン兵11 人が殺された。当然の事乍ら、パキスタン国内での大規模な反米デモを誘発した。6月13日には、タリバン兵30数人がカンダハルの刑務所を爆弾攻撃し、15人の刑務官を殺害した上、400人のタリバンを含む1,000人以上の受刑者を「解放」した。これは、今度のアフガン戦争史上、連合軍側の最大の失敗になると見られている。
  6 月12日パリで開かれた「アフガン支援国際会合」で、日本はカルザイ政権に当面の措置として5.5億ドルの財政支援を申し出たが、政権内部、周辺の腐敗・汚職についての非難の声が欧米で高まっている。戦争の行方についても、見通しが立たない。この際改めて、2001年の「アフガン侵攻」が妥当なものだったのかどうか、検証するべきだと思う。

<注>使用写真は『ガーディアン』紙掲載のものである。

[追記]
 6 月12日、二人の英軍兵士が哨戒中に攻撃を受け死亡、2001年以来102人目の戦死者となった。
 更に加えて、6 月17日、ヘルマンドで哨戒中の車両が爆破され、女性一人を含む4人の英国兵が死亡した。ロンドンを訪れたブッシュ大統領との会談後、ブラウン首相が総計8,000名を超える迄の増派を発表したばかりであった。


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爆死したセイラ・ブライアントさんは、現地パッシュトゥー語に秀でた情報部員だった。

<注>セイラさんの写真は、『デイリーメール』紙掲載のものである。


<参考資料> Pakistan troops 'aid Taliban'
   http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/22/pakistan.afghanistan
by shin-yamakami16 | 2008-06-15 14:53 | Comments(0)