世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

北京の「成功」とロンドンの憂鬱


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「オリンピック」再考
                              山上 真  
 メディアの世界では、漸くオリンピックの熱狂から解放されて、やや醒めた雰囲気が漂っている。この期間中は、世界で大きな事件が起きても、目立たない見出しと、数行の記事で済まされてしまった。「何とか一色」という表現が,決して誇張ではない。

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 北京での今度の大会は、様々な角度から注目された。曰く、極東アジアの、曰く、共産主義国の、曰く、大地震被害を蒙ったばかりの、曰く、大気汚染の物凄い国で主催されるオリンピックという具合だ。

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 蓋を開けて見ると、皆がわっと言う様な開会式だった。凄まじい花火、奇想天外な仕掛け、圧倒的な人海戦術。「統制国家」ならではの予算規模で準備された大会だった。心配されたテロも起こらなかった。大会期間中の大気汚染も、汚染物質を生み出す工場が操業中止するという、「自由企業社会」では考えられない措置によって、目につく程でなかった。

 各国選手11,000名、米国・ブッシュ、ロシア・プーチン氏を初めとする各国元首クラス約90人が参列するという、オリンピック史上最大の大会となった。当初、チベットでの人権抑圧問題が少なからず影響を及ぼすのではないかと指摘されていたが、結局のところ、'REAL POLITICS' が勝った形だ。壮大な企ての前には「少々の」問題は力を持たないということだ。IOCは中国政府に対して、大会期間中のデモなど示威行為を許すように約束させたようだが、現実には、警察力によって封じ込まれて、大会後の記者会見の席で、ジャック・ロゲIOC会長は両手を広げて肩を竦めるばかりであった。この点では、今度の大会は、特異だったと言わなければならない。依然として、中国に於ける「民主化」運動が、その途上にあることを示している。

 筆者は「メダル獲得競争」には殆ど関心が無かったが、主催国中国がよくも51個もの金メダルを取ったものだと呆れている。無理な選手養成方法が採られなかったのだろうか、気になる。成績が好いのに越したことはないが、度が過ぎると、見て居られない。その点で、日本選手の在り方は、全体的に自然に見えた。故障があれば、無理して出ることはない。メダル数も程々で好い。

 一つだけ、最初から終わり迄、TVで見たのは、韓国対キューバの野球決勝戦である。印象に過ぎないのだが、昔のキューバ選手は、もっと精悍だったように思われる。もう一つ元気さが欠けて、敗北した感じだった。アマとプロの違い、というようなことは、自分にはよく分からない。
 次の大会では,野球、ソフトボールが競技種目から姿を消す、というのは何だろう。英国では、やる人がいないから、というのだとすれば、乱暴なやり方だ。

 印象深いシーンは、女子1600mリレーでの表彰式で、左側4人が2位白人ロシア選手、中央1位が黒人米国選手4人、右が3位ジャマイカ選手4人がずらり並んでいたことだった。陸上競技で、いかに黒人選手が多く活躍しているかを歴然と示している一コマだった。

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 閉会式の最後で、次期オリンピック主催国・英国のプレゼンテーションがあったが、如何にも英国らしい趣向を凝らした演出に見えた。その中で、五輪旗引き継ぎに現れたロンドン市長ボリス・ジョンソンの,やや軽薄な仕草が目立った。英国メディアによると、このボリスの「傲岸で野卑、無礼な態度」に対して、中国内で厳しい批判が起こっているという。ボリスは、中国式形式主義に対して,「我々は肩肘張らずにやるんだ」という所を見せたかったのだろうが、誤解を招く恐れは十分にある。少なくとも、一緒に並んでいたIOC会長ロゲ氏や、郭金龍北京市長の、謹厳な物腰とは対照的であった。

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 さて、そのロンドンであるが、例えば開会式での「口パク」問題に見られる様な
日本での批判とは大違いで、「北京オリンピック」総体を極めて高く評価している英国民は、果たして自分たちが、4年後の2012年に、あれだけのことを、無事に出来るんだろうか、と大いに心配しているのである。
 先ず予算面で、中国のそれの半分以下でやらなければならない。中国は、200億ポンド(4兆700億円)の費用をかけた。ロンドンは、93億ポンド(1兆8900億円)を予定している。今年は、経済成長率0%に落ち込んで、英国でのオリンピック開催批判派が少なくない中、追加支出は望めない。北京での大会をTVで見ていた若者たちが、開催支持に回る一方、年率4%という超インフレと低い年金額に苦しむ高齢者は、多くが支持していない。

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 大会期間中の、交通機関や会場でのテロの危険性も、北京の場合と較べて遥かに大きい。イラク、そしてアフガニスタンでの戦争に加担した国として、「イスラム原理主義」グループの正面のターゲットになっているからだ。最近も、ブラウン首相の暗殺を企てた容疑で、3人の男が捕まっている。

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 素人の私見であるが、オリンピック行事に金がかかり過ぎているのではないか。普通サイズの国がなかなか引き受けられない構造になっているのではないか。古代ギリシャの「都市国家間の祭典」の様に、などとは言わぬが、もっとコンパクトに出来ないものだろうか。
 最近の誘致運動を見ていると、自国の「景気浮揚の為」とかの、国益を前面に出した動きが目立ち過ぎる。英国・ブレア氏、日本の石原氏などの言動がそうである。

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 将来は発想を変えて、例えば、アフリカの発展途上国で、時々開催するのはどうだろうか。経済先進国が大いにインフラ整備に援助して、その国の恒久的発展に繋げてやるのだ。気候が難しい場合には、時期を選べば好いだろう。「アフリカ飢餓・貧困問題」解決の一助になるかもしれない。
 
 最後に蛇足であるが、2016年の「東京オリンピック」の可能性は、はっきり言って、無いだろう。「北京」の後、極東アジアで10年以内に再び開催されるなんてことは、常識的にあり得ないからだ。           (2008.08.29)
 
<写真> The Daily Mail 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-08-29 23:01 | Comments(0)