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by shin-yamakami16

日本「教育予算最下位」の波紋

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        クラス・サイズ各国比較:青は公立、赤は私立小学校

OECDレポートと「教育貧困国」日本・英国
                             山上 真

 OECD(経済協力開発機構)は、パリに本部を置き、「民主主義と市場原理を支持する」30カ国が参加している。その主な目的は、各国の経済発展の支援、生活水準向上などである。
 9月9日に発表されたOECDの『図表で見る教育』2008年版レポートが、英国、日本などに、今年も大きな波紋を及ぼしている。
 一般的に言えば、近年の高等教育への高まる需要に対して、各国教育支出が追い付いていかず、過去5年間に私費負担が、ほぼ3倍に増えている。特に日本では、私費負担の割合が50%を超え、韓国では75%に達している。

 OECDレポートは、日本について、特に社会・人文科学分野でアジア諸国からの魅力的な留学先になっていること、授業料が比較的低い水準にあることなどが肯定的な特徴として挙げられている。
 しかしながら、OECD諸国が教育費(公費+私費)として、GDP(国内総生産)の5.8%を支出しているのに対して、日本では、2000年に5,1%であったものが、2005年には4.9%まで低下したことを指摘している。公的に支出された文教費だけを取り上げると、GDPの3.4%となり、OECD諸国中、「最下位」の汚名を甘受することになった。
 
 具体的に見ると,冒頭に掲げたグラフが示すように、小学・中学校段階の学級規模で、日本と韓国が突出している。日本の小学校は、一学級28.3人、中学校では、33.3人となっている。欧州では、英国が目立っており、小学校24.5人、中学校22.4人で、西欧30ヵ国中4番目に大きな学級サイズであることが、各新聞などで大きく取り上げられている。

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 学級規模を小さくすることが、教育を真に可能にする根本的要件であることは論を待たないだろうが、最近、「そうでもないんだ」というような非常識派が居るようなので、敢えて触れておきたい。
 教育を成り立たせる基本的条件は、人間対人間の精神的触れ合いだ。人間同士が深く分かり合える為には、出来るだけ少ない人数であることに越したことはない。
 この相互理解を基盤として、初めて教育活動が始まる。
 一定のクラス規模で、一方的授業ではなく、指名して発表させ、質問を促すことも容易になる。
 語学などでは、理解度を測る為のquiz(小テスト)も頻繁に行える。
 こうして、学習効果の飛躍的向上が可能となる。

 日本の教育支出が低下している唯一の原因は、他ならぬ無差別的な国の経費抑制方針である。長引く不況で、税収が落ち込み、国家財政の規模が縮小していることは事実であろうが、何を大きく削り、何を維持,或は増やすべきかの判断が求められているのに、相変わらず、意味もない軍事費を温存させ、抜本的に増大させるべき教育費を削減しているのだ。一機70億円もするジェット戦闘機購入を10、戦闘艦一隻減らせば、教員数を増やして、一クラス25人の規模が容易に実現するのではないか。

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 教育費は、将来の社会発展の為に削減してはならないという、根本的認識の欠如が為政者の側にある。
 長期に渉る人件費削減、即ち「給与抑制」によって、人材確保が難しくなっている。この先例は、英国で見ることが出来る。広範囲に及んで、専門教員不足が起きている。特に、物理、化学など自然科学系の教員確保が困難を来している。
 英国は、周知のように、「イラク」、「アフガン」に膨大な軍事費を注ぎ込んできた関係上、財政逼迫し、教員を含む公務員給与が抑えられてきた。その結果、優秀な人材が、高給で迎える民間企業に行ってしまい、教育分野が疎かになってしまった。現在、同様のことが日本で起きていると思われる。

 公立、私立を問わず、大抵の教員は、多過ぎる年間行事をこなすのに明け暮れている。その結果、忙し過ぎて、基本的教育活動たる「知育」に十分な力を注ぎ込めないことになる。  
 この事態を見て、「学校頼れず」という雰囲気が醸し出される。上への進学の為に、余計な費用を払って、学校外の「塾」などに向かうことになる。
 滑稽なのは、公立学校施設での「塾開設」である。公教育が自ら「価値なし」と宣言する「自殺行為」に外ならない。こういう事を認めた教育委員会などは、解散して然るべきだ。
 
 今や、経済格差=教育格差という現象は、日本、英国、米国など、市場原理が蔓延っている国々の共通のものとなっている。そこでは、「普通の道」を外れた若者たちが、絶望に打ち拉がれ、自殺、或は犯罪へと駆り立てられる。必然的に、極めて混乱した,不安定社会が現出することになる。

 目先の経済状態よりも、1、2世紀後の日本がどう在るべきかを見据えるべき、政治家たちの責任が問われている。    (2008.09.12)



<グラフ写真など> The Independent 紙、しんぶん「赤旗」掲載のもの
Commented by 自由勢力 at 2008-10-01 11:39 x
大きな政府の国のほうが抑圧は強いでしょう。教育予算増加の要求が反自由主義、社民主義のイデオロギーからきていることはわかりました。だから反対します。
Commented by shin-yamakami16 at 2008-10-01 23:00
問題は、「大きな政府」とか、イデオロギーの問題ではなく、どうしたら良い教育を実現できるか、ということにあります。そこを貴方に伺いたいですね。
by shin-yamakami16 | 2008-09-12 10:53 | Comments(2)