世界中で起きている重要な事件、事象についての忌憚なき批判、批評の場とします。


by shin-yamakami16

「世界恐慌」の恐れは?

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  「濃霧」に包まれる新「商業・金融センター」 'Canary Wharf' (London)


'XL' 破産と英国経済の窮境
                                山上  真

 9月14日、米国証券会社大手、'Lehman Brothers' が破産し、'Merrill Lynch' が 'Bank of America' に買い取られた。いずれも従業員数万人を抱え、負債額数十兆円に及ぶ衝撃的な金融危機を象徴するものである。従業員11万人の世界最大の保険会社AIGの方は、破産させた場合は余りにも影響が大きいという理由で、米国政府は、膨大な税金を注ぎ込んで、事実上の国有化をした。産業活動の「規制撤廃」を政策原理とする共和党の大きな方針転換を余儀なくされた訳である。このことは、共和党大統領候補のマケイン陣営に、少なからずの衝撃を与えることは間違いない。

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 経済活動の「自由放任」か、それとも「規制」かは、マケイン対オバマの大きな争点の一つになっている。ブッシュ政権が追い込まれた対策は、マケイン氏が最も嫌っていたものだが、彼自身も、「一般投資家たちを保護する為には致し方ない」と、認めざるを得なかった。これは結局、少なくとも一部の彼の選挙政策の破綻を意味するものであり、今後の選挙戦の行方を左右することになるだろう。

 「素性の知れぬ」女性副大統領候補の「ペイリン」効果とかで、確かな当てもない人気に頼って上向いていた支持率も,ここに来て、下落し始めた。この10日程の間に、マケイン氏が最高49%まで支持率を伸ばしたものが、9月17日時点で、45%となり、オバマ氏の支持率47%に逆転された。(gallup調査)

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 経済不況の深刻な具体例を、最近の英国での倒産事件に見ることが出来る。英国第3位の規模の旅行会社「XLレジャーグループ」が9月10日、突如として破産し、この会社のツアーに参加していた旅行者8万7千人がカリブ海や、ギリシャ辺りで身動きが出来なくなった。これから出かけようとしていた20万人も、ガトウィックなど英国内空港に着いて初めて事件を知り、途方に暮れた。

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 この旅行社トップの説明では、日頃の資金難に加えて、一年間で倍増した航空機燃料の高騰が大きな打撃になった。「XLレジャーグループ」は、地中海、カリブ海を中心とする世界50の目的地に、年間230万人の旅行者を運ぶ航空会社、旅行社など10の会社から成る大企業体で、今回の破産によって、1700人の地上勤務員、200人のパイロットが失職すると云う。

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 燃料騰貴と、経済不況の煽りを受けての旅行者減少の為、今後も航空・旅行関係の企業にとっては厳しい状況は続き、今年度末までに、世界全体で30の航空会社が倒産すると予測されている。

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 9月18日には、英国・住宅金融最大手の ’ HBOS’ (Halifax Bank of Scotland) が、米国サブプライム問題の余波を受けて破産の危機に直面し、金融大手の ’Lloyds TSB’ に買収されることになった。

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 相次ぐ企業倒産の結果、英国では失業率が既に5.5%を記録し、今年中に失業者数が200万人に達しようとしている。去る8月30日、ダーリング蔵相が『ガーディアン』紙のインタヴューを受けた中で、「英国は過去60年の間で、最悪の経済状態に陥るだろう」と述べて、その余りにも率直な吐露の仕方が物議を醸したのだが、現状を見ると、まさに正鵠を射ていた発言ということになる。
 
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 米国FRB(連邦準備理事会)の元議長グリーンスパン氏は、今度の経済危機を「   50年か100年に一度という位の一大事」と述べたということだが、株価は乱高下して、ウォールストリートの「パニック状態」は未だ収まっていないようだ。1920年代の世界恐慌に喩える向きもある。業界1、2位のモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス証券の株が20〜30%下落し、他企業との合併話が持ち上がっていることなどを見るにつけ、世界経済混迷の「底無し」霧中状況は、見通しが利かない。   
                           (2008.09.19)


<写真> The Times, The Daily Mail, The Independent, The Guardian
  The New York Times 掲載のもの
by shin-yamakami16 | 2008-09-19 11:31 | Comments(0)